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2007年7月25日 (水)

キヤノン特許部隊 その1

キヤノン特許部隊 丸島儀一 光文社新書

 ひさびさ知財系の読書です。 いわずと知れた、キヤノンの元特許部長です。 というか、今、名刺交換して、キヤノンの知財部ですといわれると、この業界では、興味津々話題の中心です。 この前デジカメを見に行って、キヤノンの製品はどうですか?って聞いたところ、キヤノンは好きな人がいますからねぇ~、どうしてもキヤノンじゃなきゃ嫌って人がいるんですよ~って言ってました。。。 ブランド戦略の最たるものですね。

 

32頁 「ブレードというのは印刷インクをかき取るのに使う道具ですが、それにゴムを用い、当てる角度なども工夫して完成させました。 しかしこれはあまりにもシンプルな方法だったため、特許を取るのに苦労しました。 審査官からは、これは自動車のワイパーと同じではないか、チューインガムをかき取るへらと同じではないかといわれたのです。」

 クレームを見てないので何ともいえませんが、機械ものの用途発明としての成立の難しさを物語っているような気がします。 用途発明といえば、化学、それも合金や医薬の専売特許ですね。

 そーいやぁ、専売特許って普段使いますね。 話それますが、調べて見ました。

広辞苑第5版によれば、

「専売特許 発明品などを専売することに対する官許」

 特許とはまた違った考え方ですね。 特許では独占排他権は付与されますが、専売権が付与されるわけではないですからね。 上記定義だと、特許権はなくても、専売特許となることはあるって感じですかね。

33頁 「自社の成果を人に突破されたくないとなると、自社で使う技術だけでなく、その代替技術をも特許で押さえる必要があります。 ・・・ それを未然に防御する意味で、自社の事業に使ってない技術でも事業を守るための特許を出そう、ということです。」

 まさに知財マネジメントですね。 ここまでやれている企業さんてどこまであるんですかね? 機械・電気では(特に、電気)、そもそもちょいちょいと発明ができるようですし、そのできた発明が次々に明細書に表せる発明足りえるとか、この周辺を固めやすいというところが、クロスライセンスの世界へと繋がっていくのかもしれません。 私のいる分野からでは、この辺りの考え方や開発の流れを含めて理解し難い部分だったりします。 そもそも回りが固まるっていうのが難しいような気がします。 まぁ、私のいるところでも、1000や2000の出願をすればいいのでしょうが、その場合、1000の出願となるよりも、1000頁の一出願となりそうです。  とはいえ、弁理士としては、こういった側面からも発明者の方と話ができるといいのではないかな!?と思います。 一弁理士では、中々、企業戦略にまで踏み込めないのも事実ではありますが。。。 休眠特許との切り分けが難しい部分でもありますね。

59頁 「発明の本質的な思想を捉えずに、単にひとつの実施形態を書いただけなのです。」

 と、確かに、機械・電気分野では、発明の本質がなにで、それをどう明細書に表すのか!というのは弁理士として腕の見せ所な気がします。 「○○手段」とかはまさにその好例だと思います。 化学屋の私からすると、あーいうのは機能クレームに見えて仕方ありません。 例えば、「酵素ポケットに認識される手段と酵素のアミノ酸○○と水素結合する手段とを有する化合物A」なんて出願しても、不明確で一蹴されます。 ホント、機能クレームって機械のためにあるんでは?って私には思えて仕方ありません。 確か、審査基準って機械分野のために作られているもんだというのをどこかで聞いた覚えがあります(不確か情報ですが・・・)。

75頁 「-クロスライセンスを結んでいる一方の企業が倒産してしまった場合には、どうなるのでしょうか。 丸島 ・・・、現状では破産法が優先するのです。 ・・・、あるいは会社更生法を適用した場合は、」

 前後関係はどうでもよくって、企業でライセンスの仕事をしていると、会社更生法やら破産法やらもでてくるのですね。 明細書書きの弁理士として仕事しているとこういった法律とは殆ど知り合うことがないです。 特許法だけにしがみついてないで、頑張った上での民法、民訴だけでなく、こういった方面の知識も仕入れていかないといかんですな。この点については、

90頁 「ライセンスの使い方にも気をつけないと独占禁止法にひっかかるケースが出てきます。 自分でライセンスを使うなら構わないのですが、競争相手を攻撃するために人の特許を使うのは、認められないのです。」

 って、米国では他人の特許を買って他人に権利行使するといかんということなんですかね。

 90頁 「日本の場合でも優越的な地位の濫用ということで、無効と判断されるかもしれません。」

 とあります。 専用実施権者がいる場合に、特許権者に差止請求権は残るかという論点があるかと思いますが、上記とはちょいと相反してしまう事例な気がしますね(大前提で専用実施権者は差止請求できますよね。)。  米国の射程も、特許権を買った場合のみってことなんですかね!?!? とはいえ、てっきり、日本では、他人の特許権を買ったとしてもその特許権で差止請求できると理解していましたが、そうでもないんですかね。 損害賠償請求はできるけど、差止請求はできないということなんでしょうかね。 とはいえ、米国は独占禁止法が強い国だとも聞いたことがありますが、米国法も勉強しないといかん部分です。

92頁 「特許法に精通しているとか、技術に精通しているということはもちろん大事なことですが、それよりも企業人ならば、その企業が行っている事業にとってどのように有利な展開ができるか、・・・、そういった発想が大切なのだと思います。」

 って、こういった観点で明細書を書けると、弁理士としても一つの売りになると思います。 確かに、時間に追われている中、ここまで気を回す余裕がない、はたまた、そういったことをする能力が欠けている等々、色々理由はあって万人が着手できていないと思いますので、こういった観点を売りにすれば、独立しても食っていけそうな気がします。 そのためには、非常なクレバーさが求められるとは思いますが、弁理士としての一つのビジネスモデルではありますな。

 

 つづく

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