化学・バイオ特許の出願戦略 その1
改訂2版 化学・バイオ特許の出願戦略 細田芳徳(心の上に一が入る) 経済産業調査会
改訂3版が既に出版されていますが、改訂2版でお勉強です。 改訂2版発行の、平成18年から実務はそれほど大きくは変わっていないでしょう。
「抽出物を含む組成物」は、天然物と同じなのか?という議論がある。 抽出物は、もともと天然にあったものであり、抽出物を「含む」組成物とすると、天然物に戻ってしまうという考え方である。 しかし、
5頁 「天然物としての微生物は土壌中で土壌と共に存在するのであって、培地上で培養するなど人為的手段を経て培養されている微生物はもはや天然物とはみないというのが、特許における考え方である。生理活性物質の抽出物や精製品等も抽出物、精製品自体は天然には独立して存在しないものであるからもはや天然物ではない。」
ということから考えると、抽出物は天然物ではなく、人工物なので、人工物を含む組成物は、天然物足りえないということになろう。
IPDLで、「抽出物を含む」、「抽出物を含有する」+「食品。」で検索してヒットした中から、
特許4090861号
請求項2 焼成栗皮の抽出物を含有することを特徴とする食品。
で特許されているわけであるが、
元の請求項は、
請求項2 焼成栗皮のタンニンを含有することを特徴とする食品。
クレームの範囲が広くなって認められているという中々に珍しいケースかもしれない。
拒絶理由をみると、焼成栗皮自体は引例となっていない。 ということから、抽出物となった以上、抽出物を含む組成物が、天然物に戻ると考える必要はなさそうな感じである。
拒絶理由で、
「(なお、栗の調理方法として栗の渋皮煮が周知であり、この食品には、渋皮由来の様々な物質(タンニンも含む)が「含有」されているから、このような食品と
請求項2の発明とは区別できない点にも留意されたい。)」
とあることから、この場合、抽出物を含む食品は、元の食品に戻っているともいえなくもない。 とはいえ、タンニンという「物質を含む」と、「抽出物を含む」とは若干意味合いも違う気もする。
途中で、
請求項2 焼成栗皮の抽出物からなることを特徴とする食品。
と補正されているのはご愛敬。
審判を経過して特許審決となっているものとして、特許4104180号があるので、そのうち参考になるかも。
5頁 「クレームしている物が天然物か否か、あるいは天然物を含み得るか否かが問題となった場合には、クレームしている物が天然物ではないことを明らかにする必要がある。この場合、例えば、「単離された○○○」、「精製された○○○」のように表現することで、容易に天然物との区別化が図ることができる。」
天然物か否か分からないということは、クレームされている物が、天然物と同一である物を意味しているということではないのか? この場合、「単離された」や「精製された」との限定を入れても、物として相違するものにはならないような気がするが。 また、天然物として既に存在していても、単離することにより、発明として認められるわけなので、「単離された」と記載しても、既に天然物とは違うと認められている以上、何らかの効果があるのか? 区別化ということは、新規性の問題だと思うんだが。。。
広範な範囲をクレームしていて、明確にするために「単離された」を記載することは、まだ理由があるといえる。
5頁 「人為的処理を反映する用語として「単離」、「精製」等の用語が使用される。 米国の特許実務では、この点が厳密であり、クレーム表現によっては、「天然の蛋白質」、「天然の遺伝子」をクレームしていると認定されて、米国特許法第101条の法定の主題に該当しないという理由の拒絶理由が出される。」
単離された○○、単離物といった記載はある意味、プロダクトバイプロセスクレームといえる。 そうすると、天然からの抽出物の場合、プロダクトバイプロセスクレームとすることにより、発明となり、新規性が出てくるというのは不思議な考えともいえる。 抽出物の場合は、組成物なので、物としても相違するというのは、その成分が異なることがあるので、まだ理解できるが、化学物質の場合、微妙である。 とはいえ、化学物質では、構造が明らかにされない以上、そこに存在していても、新規性は喪失しないと考えられると理解している(要確認:アジスロマイシンの判決。)。 ただし、プロダクトバイクレームといえるという前提がなければ、生じない論である。
なお、米国実務としては、「A gene encoding ・・・」で天然遺伝子をコードしていると指摘された場合には、「A isolated gene encofing ・・・」と補正するとよいようである(5-6頁)。
6頁 「下記式により定義される、分子内の原子の空間的配置を有するファーマコフォアで規定された化合物」は、発明の対象足り得ると紹介されているが、審査基準で、特許要件を満たさないことが明確に記載されている(実施可能要件違反、明確性違反)。
7頁 塩基配列は特許にならないはずであるが、
特許2549504号では、
・・・を特徴とするDNA塩基配列。
特許2799735号では、
・・・ポリペプチドをコードする塩基配列。
として、特許されている(登録年代が古いからであろう。)。
通常、
請求項1 以下の塩基配列からなるDNA。
・・・をコードする塩基配列。
といった記載が多い。
つづく
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