御社の特許戦略がダメな理由
御社の特許戦略がダメな理由 9割の日本企業が、特許を取っても利益に結びついていない 長谷川曉司 中経出版
★特許と事業を結びつけるために必要なのは、研究部門、事業部門、知的財産部門による「三位一体の特許戦略」だ
久々に読書感&知財ネタですが、期待していた方向とは異なるものでした。コンサル系のよくある話ですが、大上段は分かる、では、それをどのように実践するの?というところなんですが、この本も、大上段で止まっています。著者から言わせれば、思考プロセスすらできていないということかもしれませんが、今さら出す本でもないように感じます。もう少し、ノウハウというか、企業で培われた実践、ケーススタディを(具体的にどのように実践したのか)厚く書いて欲しかったですね。
私は全く手を出さずじまいになりそうなんですが、弁理士会、周辺業務だぁ~と、知財コンサル等に手を出して、ドツボっているという感じがあります。著作権・不正競争は身を結んでいない感じがありますし。当座を凌げれば由みたいなところで、百年の計がないように感じてしまいます(なんだか、秋葉原のも、多様性が失われている感じがあります。)。セメテ、10年、20年を見据えた業務として、打ち出してほしいものです。そもそも知識や知恵の継続がなく、一匹狼的な要素の強い業界ですから(1人事務所が最も多いですよね。)、長期にわたる考えというものは生まれない(必要がない)業界なのかもしれません(特許1つは20年のお付き合いなので、そんなこっちゃいかんのですが。。。老舗の事務所の噂として、リストラだぁ、給料削減だぁ、クライアントが引き上げているだぁ、リーマンショック以来良い噂は流れていませんし。会長職も、最近でこそ2年ですが、依然は、総括副会長→会長という流れのチャンチャン職位でしたからねぇ~)。
著者は、特許事務所ではなく、長谷川知財戦略コンサルティングというものを立ち上げておられますが、本書籍からも、一部上場企業をクライアントとしてという体がにじみ出ています。ということで、上述してもいますが正直中身はあまりありませんで、読み物として1時間程度でさーーっと読んでしまうのがよいでしょう。また、二度、三度の読み込みはないかなというところです。ちなみに、この本の想定読者層は、企業の経営陣でしょうね。
本書籍は、化学系大企業にいらした方が書かれた本ですので、当然に、事例が化学系の話に終始します。化学系の内容で攻めるなら、守秘義務もあるでしょうが、その企業経験を生かして、もう少し、具体的な内容が欲しかったですね(化学分野の特異性として、実施例重視、実施可能要件違反と常に隣り合わせという現状がありますので。以下に詳述しますが、どのような研究ストラテジーを組むのかといったところが欲しかったなぁ~と)。
36頁 「排他力が大きくて強い特許とすることができるのか。これが本書の課題である。」
特許戦略会議を開くということにつきるのですが、どのようなマインドで対処すれば排他力を大きくできるのか、どのようすれば具体的に排他的な特許を取れるのか?ここの味噌までも欲しいです。
実施例を増やせでは、元も子もないですし、特許実務において、排他性を高めるためには企業研究とは合わない研究をする必要があるわけで、そのあたりの知恵も記載されているとなおよかったと思います。私自信、日々ご相談しつつ悩んでいるのですが、企業研究は、どちらかというと最適化(=研究の先鋭化、より詳細に下位概念化、チャンピオンデータの取得)、広い特許を取るためには、どちらかというと派生化(=研究のダイバーシティ、最適化はある意味度外視してめったらめっぽう作る、同様のデータが出る範囲をより上位概念で見出す、時にはネガティブデータも)だと考えているので、相いれないんですよね。研究者も、功績につながらないのでやりたくないでしょうし、企業も研究費を払いたくない部分ですよね(因みに、その点は、問題点としては取り上げられています。なお、実務でも悩ましい部分ですが、チャンピオンデータを固めればよかろうという思想のもと、時に、そこまで限定しなくても良いのでは?という、原稿をもらうときありますし。)。
特許では、数値限定などに、臨界的意義を求めますけど、企業にとっては臨界的意義なんて正直どっちゃでもいいですよね。特に、選択発明的であればあるだけ、最適化される箇所を見出すことが重要なんであって、臨界点の結果なんてどうでもいいわけです(この姿勢がいかんのでしょうけど。とはいえ、排他性を求めるには、ダイバーシティが必要で、あーーー、やっぱりこのあたりの厚い記述を次の本で期待したい。)。
日本の実務では、発明思想を保護しようという意識が、お国側にないことも一つ問題があるのかもしれません。
とはいえ、否定的であるだけではなく、この本の中で私も強く共感したのは、日本では特許は独占権ですが、米欧のように排他権として考えようという思想を打ち出しているという点です。であるからして、
89頁 「本書は、特許は重要であるから、発明はきちんと出願しなければならないという考え方ではなく、本当に事業に役立つような、すなわち競合他社が入ってこれないような参入障壁を作り上げるには、もっと必要なことがほかにあるのではないか、ということを考え、提案するためのものである。」
って、この考え方が浸透していくと、出願が減って、ただでさえ増えまくっている弁理士のおまんまがさらに食いあげることになりそうです。特許は排他権であるという観点から、特許法を大改正するということも必要かもです。
227頁 「① 同じ事業分野で、他社の特許出願状況はどうなっているのか ② 他社が類似技術で事業化する可能性がないのか ③ 他社の進出を抑えられるような特許網はできているのか」
を特許戦略を考える時の経営者側からの質問として非常に効果的と記載されているのですが、これって、もはや各社取り組んでいることではないんですかね?それとも、経営者が質問をするというところに重きを置いているんでしょうか?経営者マインドからの再徹底のような。まぁ、小泉政権時代から、知財知財といわれてきてはいても、知財部出身者が社長になるということは可能性として少ないでしょうから(知財部出身者はある程度の専門性が必要になってくるのに対し、社長に求められる資質は、異なっていそうですから。。。)、知財に疎い社長さんへの再徹底と。
最後に、
240頁 「特許戦略を構築するためには、できる限り早い段階で三位一体の議論を行い、競合する第三者は誰であって、どういう特許を取得すれば類似技術を含めた、排他力の強い特許となるかという議論を行う必要がある。」
まさに、誰もが分かっているけど、答えのない、言うは易く行うは難しですね。なお、化学以外では、分割出願を多用して、他社の動向にあわせて、イ号が含まれるように第2世代、第3世代と戦略的出願をすることがあると思いますが、化学ではあまり聞きませんよね(また、新規事項の考え方も違いますよね。化学の補正では、明細書の記載どんずばりを通常補正していくと思いますが、機械・電気では、結構大胆な補正しますよね。)。この辺りについても、詳細が記載されていると面白かったのですが。
本日のキーワード: より詳細かつ具体的なケーススタディーの重要性(MOTではなく、知財MBA!?)
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