☆在外者が特許管理人によらずとも取り得る措置は何か?
原則、在外者は特許管理人によらなければ手続をすることができない(8条)。しかし、国際特許出願の場合には、国内移行手続に関し例外が認められている。
8条1項
日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない者(在外者)は、政令で定める場合を除き、その者の特許に関する代理人であって日本国内に住所又は居所を有するもの(特許管理人)によらなければ、手続をし、又はこの法律若しくはこの法律に基づく命令の規定により行政庁がした処分を不服として訴えを提起することができない。
(青本38頁)もし、このような規定をおかないときは、特許庁が在外者に手続する場合も直接その者に対してえざるを得ず、到底その煩にたえ得ない。
8条の規定の趣旨は、青本上は上記だけである。 特に、出願人側から特許管理人を定めないことにより、手続き上煩雑になるとも思えず、出願人の点から特許管理人を定めなければならないということはないように思える。
184条の11第1項
在外者である国際特許出願の出願人は、国内処理基準時までは、8条1項の規定にかかわらず、特許管理人によらないで手続をすることができる。
8条の例外として、国際特許出願において国内処理基準時までは、特許管理人によらずとも手続をすることができる。
★国際処理基準時とは?
184条の4第4項
1項に規定する請求の範囲の翻訳文を提出した出願人は、条約19条(1)の規定に基づく補正をしたときは、国内書面提出期間が満了する時(国内書面提出期間内に出願人が出願審査の請求をするときは、その請求の時。以下「国内処理基準時」という。)の属する日までに限り、当該補正後の請求の範囲の日本語による翻訳文を更に提出することができる。
国内処理基準時といったときの国内書面提出期間は、優先日から2年6月(30月)だけではない点に注意が必要である。
184条の4第3項で、国内書面提出期間(1項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間。次項において同じ。)とあるので、国内処理基準時が、優先日から2年8月程度となることがあるということである。
国内処理基準時までに提出する翻訳文等の書面として、
184条の4第1項
外国語特許出願の出願人は、優先日から2年6月(国内書面提出期間)以内に、国際出願日における条約3条(2)に規定する明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
第2項
前項の場合において、外国語特許出願の出願人が条約19条(1)の規定に基づく補正をしたときは、同項に規定する請求の範囲の翻訳文に代えて、当該補正後の請求の範囲の翻訳文を提出することができる。
第4項
1項に規定する請求の範囲の翻訳文を提出したときは、国内書面提出期間が満了する時(国内処理基準時)の属する日までに限り、当該補正後の請求の範囲の日本語による翻訳文を更に提出することができる。
外国語特許出願については、翻訳文の提出の仕方は、
1.請求の範囲の翻訳文(184条の4第1項)
2.19条補正の翻訳文(184条の4第2項)
3.請求の範囲の翻訳文+19条補正の翻訳文(184条の4第4項)
となる。
184条の5第1項
国際特許出願の出願人は、国内書面提出期間内に、次に掲げる事項を記載した書面を特許庁長官に提出しなければならない。
1号 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
2号 発明者の氏名及び住所又は居所
3号 国際出願番号その他の経済産業省令で定める事項
第2項5号
195条2項の規定により納付すべき手数料を国内書面提出期間内に納付しないとき。
184条の7第1項
日本語特許出願の出願人は、条約19条(1)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、同条(1)の規定に基づき提出された補正書の写しを特許庁長官に提出しなければならない。
184条の8第1項
国際特許出願の出願人は、条約34条(2)(b)の規定に基づく補正をしたときは、国内処理基準時の属する日までに、日本語特許出願に係る補正にあっては同条(2)(b)の規定に基づき提出された補正書の写しを、外国語特許出願に係る補正にあっては当該補正書の日本語による翻訳文を、特許庁長官に提出しなければならない。
とあり、在外者が特許管理人によらずとも、国内移行手続のうち、184の5の書面、翻訳文、手数料、19条補正及び34条補正の翻訳文は提出することができる。
★条文をよくよく読んでみると。
184条の12第3項
国際特許出願の出願人は、17条の3の規定にかかわらず、優先日から1年3月以内(184条の4第1項の規定により翻訳文が提出された外国語特許出願のうち、国内書面提出期間内に出願人から出願審査の請求のあった国際特許出願であって国際公開されているものについては、出願審査の請求のあった後を除く。)に限り、願書に添付した要約書について補正をすることができる。
優先日から1年3月なので、国内書面提出期間が優先日から2年6月であることを考慮すると、あまり意味のある規定とはいえないが、要約書の補正自体は、在外者が特許管理人によらずともできると読める。
184条の17
国際特許出願の出願人は、日本語特許出願にあっては184条の5第1項、外国語特許出願にあっては184条の4第1項及び184条の5第1項の規定による手続をし、かつ、195条2項の規定により納付すべき手数料を納付した後、国際特許出願の出願人以外の者は、国内書面提出期間(184条の4第1項ただし書の外国語特許出願にあっては、翻訳文提出特例期間)の経過後でなければ、国際特許出願についての出願審査の請求をすることができない。
審査請求は、特許出願の日から3年以内にすることができる(48条の3第1項)。 国内書面提出期間とは、優先日から2年6月であるから、優先期間を1年とすれば、特許出願の日から1年6月の期間内に国内移行手続をすることとなる(2月の翻訳文提出特例期間のない場合)。 よって、国内移行手続の後、1年6月の審査請求期間が設けられているわけである。 出願審査請求に関し、特例の期間が設けられていないのは、出願審査請求期間としては、十分な期間が設けられているということであろう。
出願審査請求は、184条の5の書面、翻訳文、手数料を納付すればすることができる手続であるから、国内書面提出期間の経過前に出願審査請求をするまでは、国内処理基準時とはならず、特許管理人によらずともできる手続である。
☆☆在外者が、第9章の規定においてできる手続としては、
1.184条の5の書面の提出
2.明細書、請求の範囲、図面(図面の中の説明に限る。)及び要約の日本語による翻訳文の提出
3.手数料の納付
4.19条補正、34条補正の日本語による翻訳文の提出
5.出願審査の請求
が答といえよう。
細かく見ていくとまだまだやれる手続はありそうであるが、本質的でないし、キリがないのでストップ
★確実にできないもの
184条の12第1項
日本語特許出願については184条の5第1項の規定による手続をし、かつ、195条2項の規定により納付すべき手数料を納付した後、外国語特許出願については184条の4第1項及び184条の5第1項の規定による手続をし、かつ、195条2項の規定により納付すべき手数料を納付した後であって国内処理基準時を経過した後でなければ、17条1項本文の規定にかかわらず、手続の補正(・・・)をすることができない。
ここを読むと、国内処理基準時を経過しなければ補正はできないとも読める。 ただし、17条本文というのが味噌かもしれない。 明細書等の補正は、17条1項本文の補正ではなく、ただし書に基づくものといえるので、要約書については補正ができるということでいいのかな? でないと、3項が規定されている意味がなくなる。 宿題か???
184条の14
30条1項又は3項の規定の適用を受けようとする国際特許出願の出願人は、その旨を記載した書面及び29条1項各号の一に該当するに至った発明が30条1項又は3項の規定の適用を受けることができる発明であることを証明する書面を、同条4項の規定にかかわらず、国内処理基準時の属する日後経済産業省令で定める期間内に特許庁長官に提出することができる。
国内処理基準時の日後なので、証明書面は特許管理人によらなければ提出できない。
★余談
国内処理基準時までは、特許管理人によらずとも在外者は手続ができるが、国内処理基準時を経過すると、特許管理人によらなければ手続ができなくなる。 ここで、19条補正は、国内処理基準時の属する日にすることができる。 すなわち、国内処理基準時を経過しても19条補正は、その日内であればできるのである。 しかし、国内処理基準時を経過すると特許管理人によらなければ、19条補正はできない。
ようは、同じ1日でも時を経過しているか否かで、取り得る措置が異なるということである。
~とある1日~
・・19条補正可能・・出願審査請求・・特許管理人によらなければ19条補正不可・・
↑ 出願審査請求の時が国内処理基準時となる。
これでいくと、出願審査請求は、その受理の時で判断しているということである。 郵便で出すと発信主義ということか?
最近のコメント