2010年12月 9日 (木)

日本弁理士会の決議文

超、久しぶりの投稿です。
 
英語は、一身上の都合により、多少先延ばししている状態にあります。
投資額が半端ないので、必ずや復活します。
 
さて、今日は、私の所属する団体が、どうも決議を出したようですので一筆。
 
遡ると、日本弁理士会は、平成22年9月15日付けで、会長名で、以下の提言を行っていました。
 
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[提言]特許出願件数激減への対応策をとるべきである

 平成21年、我国の特許出願件数は平成20年に比して11%以上減少し、34万件に止まりました。米国や中国の特許出願件数が順調に増加している状況下、我国の特許出願件数減少は「異常な状況である」と認識しなければなりません。
 我々は、日本国特許庁への多くの特許出願は日本国企業の技術開発力の成果であると共に、将来の産業競争力を占うバロメータであると考えます。特許出願の減少は、日本国企業の国際競争力の低下を意味し、我国の将来的な国力低下を予測させるものでもあり、あってはならないことであると考えます。
 これまで、我国は知的財産を活用した科学技術立国、知的財産立国の目標を掲げてきました。しかし、このような状況では目標達成も覚束なくなり、世界はもとより、アジアにおける主導的立場をとることすらできません。
 このような状況に鑑み、我々は特許出願件数を回復させるべきであり、また、国家として、そのための対応策を速やかに採るべきであることを強く提言するものであります。
 日本弁理士会は、今まで以上に知的財産権の重要性を会員に周知すると共に、独自の施策を速やかに実行するものであります。また、日本弁理士会の各会員は、今まで以上に特許を含む知的財産権の重要性を説き、優れた発明について強い特許権を得るべく、特許出願を鋭意奨励し、我国のために力を尽くさなければなりません。
 もちろん、特許庁をはじめとする各官庁は、我国の基本的開発力の成果としての特許出願を奨励し、産業再生に尽くし、国民にその成果を還元しなければなりません。特許庁は、特許出願件数増大を奨励する意見表明をし、企業などに特許、意匠、商標の出願を奨励し、特許制度的支援策を採り、審査請求料等の料金や税制などの財政面での支援策を採用するなど多くの施策をとるべきと考えます。
 我国において、唯一の無限資源といえる知的財産を活用することこそが、今後も我国が世界の主導的立場を保ちつつ、人類を繁栄に導く近道であると信じるものであります。
 
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上記は提言だったので、あまり気にも留めていなかったのですが、今度は、決議です。
 
 
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特許等出願件数激減に対する緊急対応策を講じることに関する決議

決議文

 日本弁理士会は、昨今の特許等出願件数減少傾向を、日本の知財力の低下、ひいては産業競争力の低下をもたらす事態として憂慮している。産業財産権制度の適正な運用を担う責任ある専門家集団である日本弁理士会は、かかる事態を座視することなく、その改善に積極的に取り組むべきと考える。
 そこで、日本弁理士会は、関係する政府等国家機関への提言や喚起を積極的に行うとともに、産業財産権制度の現況と展望を広く知らしめる広報活動の強化や、出願援助制度の紹介など、日本弁理士会独自の緊急施策を立案し、これを速やかに実行する。また、日本弁理士会の会員は、自らの職務を通して、今まで以上に産業財産権の重要性を説き、プロパテント政策に沿った適切な特許等出願に助力するほか、知的財産の価値の維持向上に努力する。
 もって日本弁理士会は、会員とともに、政府が標榜するところの知的財産立国の実現に向けて尽力する。
 以上を総会の総意としてここに決議する。

以上
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なんだか血判状のような、果たし状のような、古臭い感じがして、感情論的にまずかっこ悪いなぁと思うのです。
 
私、不肖なことに、弁理士会総会の案内きても、委任状すら出さずに適当に流していたのですが、そのツケとして、知らぬ間に総意として、決議文が出されてしまいました。
会員からなる総会の総意としての決議文ですから、個人的な好嫌はありますが、尽力はしていくつもりです。ですので、弁理士会会員であり、総会で定まったことですので、この投稿を持って、以後内容について文句は言いません。
ただ、弁理士会の決議にならって、私も少しだけ、自分の所属団体の動向に今後は、注意を向けてみようと考えさせられた、ある秋の昼でしたので、思わず、久しぶりに投稿してしまいました。
 
 
なお、何でこんなことに気づいたかというと、
アマチュアサイエンティストさんの、「前代未聞の馬鹿爺ども」というエントリーなのですが、
弁理士会自体は、今や、2/3くらいが昨今の易化した弁理士試験合格者(ようするに、相対として若手)が占めている団体ですので、「前代未聞の馬鹿爺ども」ではなく(爺どもとタイトル付けすることにより、老害的なイメージが湧きますので)、「前代未聞の馬鹿弁理士ども」ですね(弁理士全てひっくるめて、爺でしかないというアイロニーかもしれません。)。
 
ほんと、
「日本弁理士会って馬鹿ですか。こんな決議をするような日本弁理士会って、知財立国の弊害にしかならない。」
おっしゃるとおりでございます。。。
 
従前、特許庁が、仕事(審査)に手が回せないので、これ以上の無駄な特許出願を控えてください!実質的な審査請求の取下げを!って、各企業さんにお願いに回っていたことが嘘のような時代になっているわけですが、一応、知財業界の両巨頭足る(足らなきゃならない)、特許庁と日本弁理士会が、このような発想では、日本の知財の発展って大丈夫なんですかね?
この業界に身を置く人間として、悲しい出来事です。
 
左翼ではありませんが、求む!総括
 
 
本日のキーワード: フランスのデモを見ると、日本の平和さ、民意の低さに、思いが寄せられます。
 

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2009年6月14日 (日)

特許権の存続期間の延長制度検討WG 第1回

 平成20年(行ケ)第10458号が出されましたので、ちょっと古いですが、特許権の存続期間の延長制度検討WGを勉強してみることにしました(なお、カルタヘナも議題に挙がっていますが、割愛です。)。 

 まずは、第1回 平成20年10月30日(木)開催です。

 議題は、

1.特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループの設置について

2.特許権の存続期間の延長制度の見直しの論点について

3.特許権の存続期間の延長制度の対象分野とする条件について

4.カルタヘナ法に基づく処分について

5.延長制度の対象分野の拡大に関するアンケートの実施について

 です。

 先端医療特許検討委員会の方には、日本製薬工業協会知的財産委員会からアステラス製薬の知的財産部長が参画されているだけですが(パブコメでも、日本ジェネリック製薬協会が、その点指摘していましたね。)、さすがに、産業構造審議会では、より実務に近い話をするからか、双方から参画しています。

 製薬協からは、武田薬品の弁理士が委員となっています(こんなの見つけました。 私は商標は担当していませんので、参考情報に過ぎませんが、面白いですね。 2009年3月で集計が終わっているのですが、、、 サイトマップからはリンクされていない頁になりますし、サービスをやめたのでしょうか。。。 登録件数の多い弁理士という欄もあると、良いのですけどね!)。

 

 知的財産推進計画2008によれば、

②特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直す
 特許権の存続期間延長制度に関し、遺伝子組換え生物、iPS細胞由来の生物材料、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)等を対象に追加すべく、総合的な検討を実施
(9頁)

(2)特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直す
 特許権の存続期間延長制度に関して、カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物の使用承認に係る手続やiPS細胞由来の生物材料の承認手続のほか、DDSのように革新的な製剤技術を用いた剤型のみが異なる革新的医薬も対象に追加するなどの制度の対象の見直しを検討する。あわせて、延長の要件、延長する特許権の数及び回数、延長された特許権の効力範囲などを含めた制度全般の在り方につき、国際的な動向等も踏まえつつ、総合的な検討を行う。これらの検討は、直ちに開始し、2008年度中に結論を得る。
(経済産業省、関係府省)
(33頁)

 ということで、WGが動いている訳ですね。

 

 あわせてこんなのありましたが、???(何か報告出てましたっけ?)

(3)機能性食品等に関連する用途発明の保護の在り方を検討する
 いわゆる機能性食品等に関連する用途発明について、研究開発の動向や2006年6月の審査基準改訂後の特許出願・審査の状況及び国際的な保護の状況を踏まえ、これらの発明の特許保護の在り方について効力の及ぶ範囲を含め、2008年度の早期に関連業界より意見を得て議論を行い、その結果に応じて必要な方策を講ずる。
(経済産業省)
(33頁)

 

 さて、本題。 議事録を読んでいきます。 ただ、第1回なので、特段の情報はありません。

 「2つ目の論点は、既に期間延長制度の対象になっております医薬品につきましての制度見直しの要否でございます。薬事法上の医薬品の製造販売の承認は、医薬品の有効成分、効能・効果、剤型、用法・用量、製法等、事細かに特定して行われます。しかしながら、特許法68条の2においては、期間延長される特許権の効力は承認された医薬品の有効成分及び効能・効果の観点のみによって特定され、剤型、用法・用量、製法が異なる医薬品であっても有効成分及び効能・効果が一致すれば効力が及ぶことになっております。したがって、その後に有効成分及び効能・効果以外の項目の異なったさらなる医薬品の製造承認があっても、期間延長の対象とはしておりません。

 しかしながら、20年前の制度導入時には想定できなかった、有効成分及び効能・効果が同じであって剤型のみが異なる医薬品、すなわちDDS製剤についても、薬事法上の承認には有効成分や効能が新規の医薬品と同様に長期間を要しているということで、医薬品の有効成分、効能・効果のみならず、剤型の変更を考慮した期間延長制度の再構築が可能か否かという点が2つ目の論点になります

 特許庁においても、現行制度に問題がある(改正を求められていた)ことは、認識していたということですね。 したがって、飯村コートの判断もこのWGの答申案に先駆けてなされたものといえそうです(だから、そんなにセンセーショナルに捉える必要もなかったかもです。)。 平成20年(行ケ)第10458号と同じ出願人である、平成18年(行ケ)第10311号(リュープリン事件)での出願人がどういった主張をしていたのか確認して見る必要がありそうです。

 特許庁の資料4によれば、法制度の趣旨を踏まえた条件と政策的観点からの条件から考察が必要とされていて、

1.制度の趣旨を踏まえた前提条件
(1)法規制による処分が、業としての特許発明の実施を禁止している。
(2)当該規制対象分野全体として、かつ、不可避的な規制審査期間があり、しかも、当該期間の短縮にも、安全性の確保等の観点からおのずから限界がある。
(3)安全性等の審査に農薬や医薬品と同程度の期間がかかる。

2.政策的観点からの条件
(1)処分と関係する特許権者と第三者とのバランスを考慮する。
(2)イノベーションの進展に寄与するか否かも考慮する。
(3)国際的動向も踏まえる。

 が挙げられています。

 企業側からの、要望として、存続期間の延長登録制度において、イノベーションを保護という名のもとに、、、

 「といいますのは、先ほどiPS細胞のお話が出ました。これは医薬品として承認申請はおろか、臨床試験を開始するまでにも相当の時間がかかると思います。つまり、ある技術においてはリードタイムが非常に長いということで、別途医薬の特許が成立すればいいのですが、物として、あるいは基本的な方法として権利を取った場合に、それが実用化されるまでには20年を超えているというような事態もあると思います。その場合には、臨床試験や審査の期間だけを見ても評価できないところがあると思いますので、特許の残存期間もぜひ1つの観点として見ていただければと思います

 とはいえ、特許法における存続期間の延長登録制度は、あくまでも、資料7の

 「特許権の存続期間の延長制度は、行政庁等の認可等のための審査等により特許発明を実施できない期間が発生することにより、特許権による保護期間が浸食されている場合に、浸食された期間を回復して、特許権の対象とされている発明に有効な保護を与えることによって、特許制度の目的を達成することを目的としている。

 という、一橋大学教授の相澤教授の見解があるわけで、明治大学の熊谷教授(弁理士受験生にとっては、”くま”で、・・・)の見解である

 「リードタイムが長い発明その他いろいろあると思いますが、20年という存続期間を決めていることを前提として、例外として存続期間の延長をいかなる要件で認めるのかは、昭和62年の制度が創設された段階と現在と存続期間延長制度の趣旨において違いはないと思います。実態として農薬と医薬品以外の分野で同じような状況が生じていることが実証されるのかどうかが、対象を考えるかというとき重要ではないかと思います。

 も考慮すれば、当然に、

 「すなわち、特許権の存続期間の延長制度は、事業化までの期間を保護するという制度ではなく、特許発明を業として実施できる期間の侵食を保護する規定だと思いますので、その観点から、iPS関連の技術に関して特許発明の実施期間が侵食される可能性が具体的に認識されているのかどうか、その辺に関して知見をお持ちの方がいらっしゃいましたら教えていただきたいのですが。

 です。

 

 

本日のキーワード: 特許権の残存期間と浸食された期間の回復

 

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2009年6月 4日 (木)

武田薬品vs特許庁 2

 平成20(行ケ)10458等の裏でも、武田薬品と特許庁はバトルしてます。 まだ、深くは解析していないですが、完全に、ケ○カ腰ですな。。。 因みに、こちらは判例としての価値はほぼないですね(普通、やらない。。。)。 担当事務所はこちらです。

 

 平成20(行ケ)104761047710478

 

 ワザと?!?

 

 特許庁の審査が酷いですね。。。

 知財高裁で争うネタなんでしょうか。。。

 審判段階での主張ではない可能性が高いですけど。。。

 

 

本日のキーワード: 特許庁だいじょうぶですか?

 

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2009年6月 2日 (火)

武田薬品vs特許庁

 審決取消訴訟で、これまでの実務が大幅に変更になりそうな、判決が出されましたね。

 平成20(行ケ)104581045910460です。

 とうとう、日の目を見たというところでしょうか。 この事務所に頼んだのが良かったんですかね。 とはいえ、特許庁には、是非上告してもらいたいものです。

 

 T社の念願だった用法用量特許が認められる方向に進み、かつ、製剤特許でも存続期間の延長登録がなされると。 昨今の施策といい、先発よりですねぇ~ 今なら、医薬発明のそれはそれは厳しい実施可能要件の審査基準も覆せるかもしれません!!!

 

 業界の動き、要ウォッチングです。

 

 特許庁の特許権の存続期間の延長制度検討WGにも影響が出そうです。

 

 巷では、薬事法の改正による販売制度の変更がもっぱらのニュースですし、ちょっと前までは、豚インフルエンザのニュースで持ちきりでしたし、2010年を前に、製薬業界の賑わいが楽しみなことになっています。

 

 

本日のキーワード: 飯村コートは、とうとう特許庁の審査の運用だけでなく、過去の判例も否定し始めましたね。。。 ほんの2~3年前ですよね。。。

 

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2007年7月27日 (金)

実施例

 今は、オンライン出願が普通だと思いますが、オンライン出願の場合、フォーマットに合致していないとエラーメッセージが出ます。

 例えば、

【実施例】

【実施例1】

【実施例2】

として記載すると、【実施例1】以降がエラーになります。

 この場合は、

【実施例1】

【実施例2】

【実施例3】

と記載しなくてはいけないわけです。 通常、実施例1の前に、実施例の実験項で用いた機材等について記載する欄を設けたかったりするわけです。 論文でいうところのExperimentalの部分です。 しかし、特許法の様式ではそれは許されません。 

【実施例1】を長く書くか、

【発明を実施するための最良の形態】に記載するか、

【実施例】 〔実施例1〕 〔実施例2〕と墨付括弧でない態様にする必要があります。

 因みに、【比較例】とはしません。

 

【実施例】

 【0000】

 【0000】

〔実施例1〕

 【0000】

〔実施例2〕

と書くか、

【実施例1】

 【0000】

【実施例2】

 【0000】

と書く必要があります。

 

 特許法施行規則様式第29 14 ニ の部分に記載されています。

 特許を受けようとする発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができるようにし、発明をどのように実施するかを示す発明の実施の形態を記載し、必要があるときは、これを具体的に示した実施例を記載する。 その這う姪の実施の形態は、特許出願人が最良と思うものを少なくとも一つ掲げて記載する。 この場合において、各記載事項の前には「【発明を実施するための最良の形態】」、「【実施例】」の見出しを付し、「【発明を実施するための最良の形態】」、「【実施例】」の順に原則として発明の効果の記載の次に記載するものとする。 実施例が2つ以上あるときは、「【実施例1】」、「【実施例2】」のように記載する順序により連続番号を付した見出しを付す。

 ここからすると、【実施例】 【実施例1】という記載ができないのが理解できます。 「連続番号を付し」というのは、特許請求の範囲の記載と同じですね。 特許請求の範囲で、【請求項】 【請求項1】と記載できないのと同じようなイメージで考えとくといいのかもしれません。 また、【実施例】〔実施例1〕〔実施例2〕という記載はあまり好ましくありませんね。

 

 

本日のキーワード: なかなか周りに聞けない日々の疑問

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