2008年10月31日 (金)

原子力ルネサンス

原子力ルネサンス エネルギー問題の不可避の選択 矢沢潔 技術評論社

 バイオ燃料の対極とでもいえそうな、原子力についても勉強してみることにしました。 本当は、原子力発電の仕組み(具体的には、炉の構造)について知りたかったのですが、、、 若干、私の要望と離れていました。。。

76頁 「原子力を自国の電力エネルギー源として利用している国は世界31ヵ国にのぼる。」

 核保有国に比べるとずいぶんと少ないですね。 常任理事国と核保有国とが一致しているところが・・・

112頁 日本には稼動中の原子力発電所が55基あるそうです。 で、多くが軽水炉であって、軽水炉は、加圧水型軽水炉と沸騰水型軽水炉に分類されるようです。

 「いずれもアメリカで開発されたこれらの原子炉は、炉心の冷却材および減速材としてふつうの水(軽水)を用いる点が他の型式の原子炉とは異なっている。 燃料にはウラン235の比率を少し高めた低濃縮ウランを使用する。」

231頁 「日本では2008年現在、55基の商業用発電炉が稼動している。 すべてアメリカ由来の軽水炉であり、そのうち23基はウェスティンハウス社の系譜の加圧水型、32基はGE系譜の沸騰水型である。」

 他のエネルギーとの対比をしつつ、全編をとおして読むと、。。。(自粛)といったところですが、

 ドイツのかの有名な風力発電についても、

138頁 「”グリーン・エネルギー”と呼ぶものが本当に自然環境を守るのか。 むしろ自然破壊と景観破壊を起こしているように見える。 地方村落や個人住宅などの電力源としてなら有効かもしれないが、これが産業経済の基幹エネルギーの供給源になるというのだろうか。」

 風力発電は、鳥を殺すとよく言われてますね。。。

212頁 昔、ウランは理論上、永遠の埋蔵量を誇ると読んだかしたことがありますが、

 「ウランは海水にも含まれている。 濃度は10億分の3.3と非常に希薄だが、・・・ ウラン価格がポンドあたり200~400ドルなら海水からウランを抽出できるようになると述べている。 海水に含まれるウランの総量は46億トンに達し、現在の全原子炉を700万年運転できるほどだという。」

 ウラン鉱山ってどんな感じなんでしょうね??? 素人考えだと、放射線はビンビンでているのでしょうかね???

231-232頁 「いま稼動中の55基の原子炉を合計した発電能力(発電設備容量)は5500万キロワットである(WNA=世界原子力協会の最新データでは4757万7000キロワットとなっている)。 これらが生み出している電力は石油・石炭・天然ガスを燃やす化石燃料発電や水力発電などを含めた日本の全発電量の約30パーセントだが、・・・」

 

 こういったエネルギー問題を解決する方策として、

245-248頁 「宇宙太陽光発電所」という構想があるようです。

 「必要な技術はすでにほとんど出揃っている。 ・・・ これはきわめて長期的なエネルギー計画であり、目先の経済性などを問題にしたがるような精神性の国民や国はこうした未来的構想にはかからわなくてよい。」

 「だが、宇宙から大電力をマイクロ波で地上に送れば、その途中の通過空間は電子レンジの内部のようになるかもしれない。 発電衛星と地上アンテナの間を人工衛星や航空機、あるいは鳥や地上生物が横切ったらどうなるのか。 マイクロ波ではなくレーザーで送電しても別の問題が起こり得る。 それはただちに宇宙レーザー兵器という軍事利用の道をも開くことになるので、大国どうしの宇宙軍拡の道具になるおそれもある。」

 こんなHPがあります。 また、特許庁でも紹介されていたりしますね!

 特許庁HP>資料室>技術分野別特許マップについて>化学 9年度 化学 4>1.6 太陽電池の将来展望です。

 シンポジウムがあるようです! SPS研究会というのは発足しているようですが、学会単位にまではなっていないようです。。。(研究会のHPは見つけられず・・・) 特許庁において30条に基づく指定学術団体でもないようです・・・

 

 

本日のキーワード: プルサーマル計画

 

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2008年10月20日 (月)

iPS細胞

Newton別冊 再生医療への道を切り開く iPS細胞 人工多能性幹細胞 ニュートンプレス

 ニュートンですから、カラフルでよいです。 判りやすい!! とはいえ、2008年10月5日のエントリーで京都人さんからご指摘いただいたように、技術的に間違えているところもあるようですが。。。

 よく見るiPS細胞の画像は、1つの細胞のように見えますが、細胞塊なのですね。

70頁 iPS細胞とがん細胞とは、無限に増殖できる点で共通しているそうです。

71頁 がん細胞にも、がん幹細胞というのがあるそうで、がん細胞を機能としてiPS細胞に戻せたりするようなことがあれば、がん治療に一役を担えることになるかもですね。

 「がん幹細胞は、がんの元になると考えられている細胞で、がん細胞のかたまりのうち、1%かそれ以下の割合で含まれるという。 さらに、抗がん剤などの薬剤を吐きだす能力が高いといった特徴がある。 これは、普通の幹細胞とも共通した特徴である。 ・・・、がん幹細胞からはがん細胞だけが生まれる。」

106頁 iPS細胞とは関連がないのですが、「ヒトの精母細胞はが精子になるには、約64日かかるといわれている。」

 卵子は、生まれたときから数が決まっているという点と比較すると、全く異なりますね。

112頁 肥満細胞って、好中球やリンパ球などと同じく、造血幹細胞を基にしていることになっていますが。。。 あ~肥満細胞って、マスト細胞ですね。 脂肪細胞と勘違いしていました・・・ 肥満ってねぇ・・・

 

 

本日のキーワード: 最初に読むといいかもです。

 

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2008年10月14日 (火)

遺伝子とDNAがよ~くわかる本

ポケット図解 遺伝子とDNAがよ~くわかる本 夏緑 秀和システム

 マニュアル的な本でお勉強です。

20頁 「ヒトには四六本の染色体があります。 この四六本は、父親から一セット二三本、母親からも一セット二三本を受け継いだもので、二セット二三対です。」

 染色体の写真を見ると、Xの構造をしていますが、父由来のXと母由来のXがあるわけですよね。 X中は、同じ遺伝子を有するのが結びついているのでしょうか? Xの>と<は別物なんですかね??? 同じだとすると、同じ遺伝子をコードする箇所が4箇所もあることになりますね。。。

30頁 「・・・、メダルを取ったもののセックスチェックで(性別検査)で男性と判って、メダルを剥奪された例があります。」

 XXYの場合の例ですが、クラインフェルター症候群というようです。 一方、XOの場合、ターナー症候群というようです。

84-85頁 「植物は動物に比べ、細胞の全能性が保たれていますから、小さな枝を土に挿しておけば、根などが再分化して新しい個体になります。 また、動物と違って免疫機構がありませんから、移植による拒絶反応が起きません。 ・・・ ウンシュウミカンも枝変わりで発生した品種で、カラタチなどミカン科の植物を台木にして接木で増やします。 突然変異によるおいしいミカンなので、種子を植えたところで、種子の遺伝子はシャッフルされて変わっていますから、同じおいしいミカンにはならないのです。」

 動物細胞の場合、体細胞クローンでは、テロメアの短さなどから、形質をそのまま受け継いでしまって。。。ってなことがあるかと思いますが、植物の場合、接木をし続けることができれば、未来永劫種を残していけるのでしょうかね? その辺りから、ヒトの寿命の制御というものが理解されたりしないのでしょうかね???

114頁 「例えば、体重1キログラムを維持するのに、成人男性では1日30キロカロリーが必要ですが、成人女性は1日25キロカロリーで済みます。」

 これはきっと、消費カロリーベースですよね。 それとも遺伝的に男女では消費カロリーにそもそも違いがあるんでしょうか? 基礎代謝を調べて、必要な1日のカロリーを算出してカロリー制限をきっちりとやれば、痩せますかね!!

164頁 「無農薬栽培をしている畑も、周囲を農薬栽培している畑に囲まれているだけのことで、本当の完全無農薬では虫食いだらけになってしまいます。」

 って、一理あるかとは思いますが、、、 そもそも人間にとって野菜の苦味や渋みといったものは、植物が虫に対する耐性を発揮させるために有していたものであって、それをなくすように品種改良されていったものが野菜なのだから、当然に、虫にも食べやすくなっているわけで、野菜と農薬というのは、切っても切れない関係と言う論だと思われますが、、、 極論だと思いますが、人間が、自然の中で淘汰されてはいけないというのが(利己的遺伝子的には、淘汰されないように振舞うともいえるかもですが)、農薬使用につながっていくのかもしれません。 

182頁 「しかし、植物には免疫というシステムがありませんし、抗体も作りません。 植物の体は動物と違い、葉と茎の無限の繰り返し構造なので、「要らない部分は捨てる」という戦略が使えるからです。 例えば、植物の体内にたまった老廃物は葉の中にためられ、落葉によって体外に排出されます。 病原体に対する抵抗も、同様に「感染した部分は捨てる」という戦略で行われます。」

 「植物の老廃物の代表的なものは、シュウ酸。 細胞内の液胞(・・・)の中に捨てるほか、葉に積極的に集めて落葉し排泄する。」

 今は紅葉のシーズンになっていますが、上記と紅葉化して落葉することは、関連性があるのですかね??? 1年分の不要物を紅葉化して落とすと。

 そういえば、シュウ酸って、ほうれん草に多い成分ではなかったでしたっけね? ほうれん草の苦味とでもいうものはシュウ酸から出ていると。。。

 

192頁 「ヒトのゲノムの1セットは、30億文字のDNA配列を含みます。 DNAの中で遺伝子(タンパク質)を記録している領域は、その中のわずか3パーセントです。 ・・・、DNAから予想されるヒトの遺伝子(タンパク質)は2万2000個だとわかりましたが、実際にタンパク質の数を数えたら10万種もあったのです。 この差から、1種類のDNAが何種類ものタンパク質を作る機構があると予想されました。 10万種の中には、かぶっているものもあり、主要なものはわずか3000種ともいわれています。 これら3000種のタンパク質の構造について解明する「タンパク3000プロジェクト」も、昨年、終了しました。」

 ヒトDNAについてよくわかります。 タンパク3000プロジェクトについて事後評価報告書を一度、読んでみようとおもいます。

 成果データベースを見ると、3000タンパクは公表されていませんね。 442タンパクのようです。

 

 

本日のキーワード: 耳マウスや二母性マウス

 

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2008年10月 5日 (日)

iPS細胞

iPS細胞 世紀の発見が医療を変える 八代嘉美 平凡社新書

 中内先生のところの博士課程の学生さんなんですね。 新書なので、字が多いですが、読みやすいです。 実際に、iPS細胞の研究に携わっている方が書く書籍ですから。。。 とはいえ、研究の最先端の息吹は伝わってこないところが残念です。 また、新書向けなのか、矛盾する記載がちょっとあるところが・・・ 言い回しを分かりやすくするためかと思いますが、真面目に読むと、?!?!と思うところがあります。

26頁 「1981年、イギリスのエヴァンスとカウフマンはマウスを使った実験を行った。 胚盤胞を取り出し、さらにその中の内部細胞塊を取り出してバラバラにし、培養したのである。 ・・・ 次に彼らがこのコロニーの細胞を別のマウスの皮膚を注射すると、注射された細胞はマウスの中で増殖を続け、コブをつくった。」

27-29頁 「また彼らはES細胞の全能性を示すために、ユニークな実験を行った。 ・・・ また、キメラマウス同士を交配すると白いマウス、灰色マウス、そして黒いマウスが生まれてくる。 これはES細胞が精子や卵子にもなれることを示している。」

 ヌードマウスに注入して奇形腫ができるか、キメラマウスが作れるか、そして、キメラマウスは次世代を生み出す能力があるかって、山中氏がiPS細胞を作り出したときにも確認実験として行っている実験ですね。

 エバンス氏が、上記現在のES細胞研究のプロトコルとでもいうものを確立させたのでしょうかね??? さすがにそんなことはないでしょうか??? なお、エバンス氏は2007年のノーベル医学生理学賞を受賞していますが、ES細胞としてもらっているわけではないのですね。

 for their discoveries of principles for introducing specific gene modifications in mice by the use of embryonic stem cells

 ES細胞の使用によるマウスの特定遺伝子に修飾を導入するための原理の発見に対して与えられていますので、ようするにノックアウトマウスの発見にノーベル賞が与えられているのですね。 ですので、山中氏もiPS細胞が臨床応用等されるようになったときに受賞するとすれば受賞するのでしょうな。

31-32頁 「こうした働きを<誘導>と呼び、誘導を引き起こす存在(この場合は移植された背唇)を<オーガナイザー>と呼ぶ。 ・・・ しかし1989年に東京大学の浅島誠教授が画期的な実験を行い、オーガナイザーの実体をとらえることに成功したのだ。 ・・・、加えるアクチビンAの濃度に応じて、心臓や肝臓、筋肉に血液などさまざまな組織をつくることができた。 ・・・ そして<分化>というプロセスは、オーガナイザーが引き金となって引き起こされる誘導の連続である、・・・」

40頁 「・・・、1998年のアメリカのトムソンの論文である。 ・・・ さすがに実験的にキメラ人間をつくって確認することはできないが、マウスと同じような全能性をもつES細胞が確立されたのである。」

 ここが、ES細胞が倫理ときっても離せない所以です。

 iPS細胞の作製自体は、山中氏がマウスで確立させているわけですから、iPS細胞がもっともっと裾野が広がって応用研究が進んでいって臨床試験等もされるようになれば、単独ノーベル賞の受賞もありえるかもですね。 トムソン氏も、ヒトiPS細胞を山中氏と同時に発表しているわけですが、原理自体は山中氏のマウスiPS細胞の樹立の論文に基づいているでしょうからね。 とはいえ、ヒトES細胞、ヒトiPS細胞の樹立を行っているのですから、その業績を考えると同時受賞ですか。。。

47頁 「つまり、受精卵がもつ能力は文字どおり万能だけれど、ES細胞はそうではない。 ・・・ 受精卵が胚盤胞へと成長していくにつれて胎盤をつくる能力を失っていくように、胚盤胞以降の胚にある細胞は日を追うごとに多能性を失っていく。」

 どこかで、マウスでは、受精卵が8分割になったところから1つ1つの細胞に全能性がないことが示されていると読んだことがあります。 一卵性双生児の分割はいつおこるんですかね??? 

69頁 「実はニューロン自体は受精後25週ほどで増殖するのをやめてしまい、20歳をすぎるとニューロンは1日に10万個ずつ死んでいくことが知られている。 ・・・ つまり、ニューロンの場合、細胞の数が重要なのではない。 いかにニューロン同士が複雑につながりあい、情報をやり取りできるかが重要なのである。 そしてこの回路は、20歳をすぎてもつくりつづけることができるので、いくつになっても新しいことを覚えることは不可能ではない。」

 人間、20歳をすぎたらアホになるばっかりである、の根拠としてよく昔聞きました。 1日10万個。。。 ただ、年齢を重ねるにつれて、暗記力が落ちるようになり、日常で出てこない用語を忘れるようになっていますわね。。。 仕事に関連のある専門性のあるところは忘れませんが・・・ 新たなことへの能力の欠落を痛感することしきりです・・・

127頁 「2004年2月12日、科学雑誌『サイエンス』のインターネット上の速報版に1本の論文が掲載された。 それが韓国・ソウル大学の黄禹錫(ファン ウ ソツク)による世界に先駆けてヒトクローン胚からES細胞樹立に成功した、という発表だったのだ。」

 いわずと知れた、韓国の黄教授による偽装ですね。 一時期、日本でも偽装論文が話題になりましたが、最近は下火です。 まぁ、他にもまだまだありそうですが・・・ 特許の世界ではどのように判断されるんでしょうかね??? オーストラリアでは特許が成立したとかしないとか。。。 なお、日本における特許出願は、特表2007-516720号(特願2006-546844号)ですね。 平成18年9月14日に出願審査請求がされています。 その後取り下げられてもいないようですし。。。

 2006年6月27日付でのchosun Onlineの記事によれば、韓国・米国・日本・中国・オーストラリア・カナダ・インド・ニュージーランド・ブラジル・ヨーロッパ連合(EU)の10カ国(地域)での権利取得を目指すようです。 この記事の翌日に国内書面(184の5の書面)が提出されていますね。 ちなみに、日本の代理人は、青和特許法律事務所です。

166-167頁 「山中教授らは、基本技術はヒト、マウスなどの種を限定しない基本特許であるとしているけれど、民間企業によって臨床応用という面での特許を押さえられてしまえば、基礎研究にとって大きな足かせとなりかねない。」

 山中教授の出願が特許査定されたことはニュースになりました。 

 平成20年9月11日付けCiRAニュースリリースの「人工多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cells; iPS細胞)の作製方法に関する特許が成立」によれば、請求項の記載は、

 「体細胞から誘導多能性幹細胞を製造する方法であって、下記の4種の遺伝子: Oct3/4、Klf4、c-Myc、及びSox2を体細胞に導入する工程を含む方法。」

 と、ヒト、マウスによらないんですが、国際出願日を考えるとヒトについては、作成できることが確立していたんでしょうか? 基礎出願の日付を考えると、、、 無効審判に勝てるのでしょうか・・・ なんだか、心配になってきます。 やぼなことはいいっこなしだと思いますし、マウスは確実でしょうけど。。。(中身を熟読していないので、なんともいえませんが。。。) 国際出願にヒトのデータが含まれていなければ、体細胞についてマウス、ヒト等の種類が特定されていないし、また、用いられる細胞も体細胞としか限定されていないし(何でもよいわけではないでしょうし、、、)、実施可能要件的にどうなんでしょう!?(通常の出願なら間違いなくサポート要件及び実施可能要件が通知されるのでは???) また、国際出願においてヒトのデータが後から加わっている場合には、優先権がヒトについては適用されないので、マウスを元に、マウス以外でのiPS細胞の樹立の論文でもって、進歩性が否定なんてこともあり得るのではと思ってしまいます。 そういう意味でも、大学の先生にも、論文発表・学会発表は、基礎出願から1年以降としてもらいたいものですね。 

 なお、「国際出願(PCT/JP2006/324881、国際公開第2007/69666号パンフレット、国際出願日2006年12 月6 日)から日本国に移行手続きをした特許出願(特願2007-550210 号、親出願)をもとに本年5 月20 日に分割した特許出願(特願2008-131577号、分割出願)を行いました。」とのことです。 そのうち、IPDLで出願経過等が確認できるようになるでしょうから、分割出願をせざるを得なかった理由等を確認してみたいと思います。

173-174頁 「実際、これまでの研究から、細胞は平面で培養するよりも<たて・よこ・たかさ>の三次元で、立体的に培養するほうが体の中の環境に近く高い機能を発揮すると考えられている。 ・・・ コラーゲンなどの材料で臓器の形をつくり、その形を<足場>として細胞を培養するという研究が進められている。 こうした方法とまったく異なるユニークな研究として、横浜市立大学の谷口英樹教授らは、NASA(アメリカ航空宇宙局)が開発した擬似的に無重力空間をつくりだす装置を用いて、マウスの胎児から取り出した肝幹細胞を培養するという試みを行った。 ・・・、肝臓にある胆管や血管をもった組織となった。」

 三次元培養についての記述です。 単純にES細胞だけから(iPS細胞だけから)、移植に用いることのできる臓器を作ることはできないでしょうから、材料とバイオの複合化した特許出願とかが今後続きそうです。 

202頁 「本書は、再生医療や幹細胞という言葉を中心に据え、筆を進めてきた。」

 自認されているように、題名と内容は乖離しています。 iPS細胞の話は、1章だけで、そこまでは、歴史とでもいおう話しになります。 とはいえ、山中氏も供述していますが、ES細胞なくして、iPS細胞はないわけですから、、、 題名は、ES細胞からiPS細胞といった方がよいかもです。 少々、新書として題名にインパクトを求めすぎといえるでしょうか・・・

 

 

本日のキーワード: 三大発明は、羅針盤、火薬、活版印刷ですが、バイオの三大発明は、遺伝子組換、PCR、ノックアウトマウスでしょうか!

 

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2008年9月25日 (木)

iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか?

iPS細胞 ヒトはどこまで再生できるか? 田中幹人(編著) 日本実業出版社

 マニュアルに置き換えて説明されているのですが、私にはかえってわかりにくかったです。 分子生物学の素養が少しでもある人には、わかりにくくなっている本かもしれません。 ターゲット層をどの辺りに置いているのでしょうか!? たまに、こういう類の本で置き換えをしている書物を見ることがありますが、読み手を低く見ているのか、根本的に日本人の科学の素養が少なすぎるのか、、、 どっちなんでしょうか。。。 文学、法学系の本の分かり易い本的位置づけなのでしょうか? とはいえ、法学系の本だと、言い換えることなく、庶民にもわかりやすく説明されている気がしますが、こういう科学の本は・・・ 科学離れといわれてしまうところと連動しているともいえるでしょうか。 新聞がもっとガンガン記事を載せるべきなんでしょうかね。 ということで、この本、微妙です。

19頁 「一九八一年、英ケンブリッジ大学のマーティン・エバンスたちが、マウス胚の内部細胞塊から幹細胞を取り出して、培養することに成功した。」

 ES細胞の始まりといえるでしょう。

24頁 「ドリー誕生のニュースの翌年、一九九八年。 米ウィスコンシン大学のジェームス・トムソンが、ついに世界初のヒトES細胞株を樹立した。」

 トムソンは、山中教授と並んで、サイエンスにヒトiPS細胞の報告を行った方ですので、この分野の第一人者といえるのでしょう。 科学を学ぶとき、歴史を学ぶことは絶対に必要です。 ということで、私も引用しています。

 ヒトなどの高等生物の細胞が万能性を失っているのは、必然といえるのかもしれませんね。。。 プラナリアや、植物が、ある意味、分化が目茶苦茶でも、なんとかなるかもしれませんが、ヒトのように種々の組織から成り立っている場合、全ての細胞が分化することができる場合、何かの拍子に分化の制御が崩れると大変なことになりそうですからね。 中小企業が、1社員が全てやるのに対し、大企業が、1社員は1つの働きしか行っていないところと似ているのかもしれません。 って、私も喩えてしまいましたか・・・

65-66頁 「標的候補のリストを一つひとつ潰していく作業が始まった。 ・・・ 山中研究室の助手(当時)・三井薫は、このNanogが細胞の多能性に関係している大事な因子であることを明らかにした。」

 山中教授が立てた仮説「体細胞に多能性を誘導する因子のほとんどは、ES細胞において多能性を維持している因子と一緒であろう」(51頁)から、インシリコで絞込み、ここから傍目には快進撃が進んでいくわけです。

68頁 「山中研最初の学生(当時)の一人である徳澤佳美は、Nanogのもう一つの特徴を発見した。」

 山中研究室で、Nanogの発見が重要になってくるわけですが、iPS細胞作成の因子にはNanogは入っていないんですよね。。。 この辺が科学の面白いところです。

 お二方とももう、研究室には在籍していないようです

 そして、もう1つの重要な因子であるのが、

82頁 「このFbx15ノックインマウスの細胞を使って、普通の体細胞に多能性を持たせる実験に取り組んだのが高橋和利である。」

 高橋氏は、マウスiPS細胞の論文にも名を載せていますし、ヒトiPS細胞の論文でもトップオーサーですから、日本でもっとも有名な助教といっても過言ではありませんね(山中氏がトップオーサーでないところが、氏のすごいところかもしれません。 オーガナイザーであることを認識されているのかもしれません。)。

94頁 「高橋が最初に行った方法では、キメラマウスが生まれなかった。 しかしこの改良に取り組んだのが、山中研究室の研究員である沖田圭介である。 ・・・、Fbx15ノックインマウスではなく、Nanogノックインマウスを作製して、マウスの繊維芽細胞からiPS細胞を作り出したのである。」

 ということで、まだ実験室レベルでは、いろいろの遺伝子改変が行われている段階なんですよね。 臨床応用するには、まだまだハードルはあります。 とはいえ、画期的な発明(発見)であることには変わりないです。

 それにしても山中研究室は、テクニカルスタッフと秘書の数がすごいです。 私の所属していた研究室では、ここまでのテクニカルスタッフがいたことはないですね。 学生のころは、周りは博士号取得者ばかりで、ペーペー感満載でした・・・

108頁 「ところが、ひょんなことおからc-Mycを除いた残りの三因子でも、多能性を実現できるということが明らかにあった。 この発見をもたらしたのは、山中研究室で助教をつとめる中川誠人である。」

 発見ではなくて、発明としなくては!!!

 

87頁 「ちなみに、最初はiPS細胞の日本語名は「誘導多能性幹細胞」だった。」

 確かに、iPS細胞=induced pluripotent stem cellですから、誘導された多数の能力を有する幹の細胞ですから、誘導多能性幹細胞ですね。 それが、今は、人工多能性幹細胞になっています。 確かに、「人工」という方が雰囲気でますよね。 本来なら、artificial pluripotent stem cellでaPS細胞でしょうか!!

121頁 「こう書くと、生命科学とは結果オーライの乱暴な学問であるように思えてしまうかもしれない。」

 確かに、生命工学、医療の絡む特許出願は、発見の要素が強いですよね。 まさに、結果オーライ。 遺伝子特許なんて最たるもので、もともとそこにあるわけですよね。 でも、天然物からの抽出物であっても、人為的に取り出されたものであれば、抽出物事体は発見に過ぎませんが、人為的に取り出したというところに、発明(創作性)を認めるわけですよね。 まぁ、単に取り出しただけではだめで、働きが何かまで突き止める必要があるわけですが。。。 生物多様性条約につながってくるわけですね。

160頁 「ところが、日本には「目利き」が少ない。 材料工学のどんな成果を、どのようにして再生医学と結びつけるのか。 これからどんな研究をするべきなのか。 政府、企業、大学や研究所が一体となって研究を推進するうえでの「仲人」となる人材を発掘し、またその働きを助けていく必要があるだろう。」

 知財コーディネーターといった分野に弁理士としての新しい道があるかもしれませんね。 とはいえ、弁理士にそこまで求めるのも酷かもしれませんね。 私も含めて(自虐的ですが)、まだまだ弁理士は研究者の落ちこぼれですから・・・(科学を見る目が高くない!?) それと、もう少し、大学の先生が金儲けを考えることでしょうか(まだまだ、大学の先生は研究だけやっておけばよいって人多いですよね。)。 そして、エンジェルといわれる金を出す人たちの存在が必要でしょうか。 お役人にも博士課程出身者や、ポスドク経験者がどんどん採用されるようになると行政も変わるかもしれません!

161-162頁 「二〇〇八年三月の日本再生医療学会で、先にも登場した中内啓光は、「胚盤胞補完」という技術を用いて動物体内にヒト臓器を作り出す技術の可能性を発表した。 ・・・ 中内らはすでに、すい臓を欠損したマウスの胚盤胞に対してES細胞を導入し、ES細胞由来の(正常な)すい臓を持つマウスを誕生させることに成功したと発表した。」

 一時期、豚にヒトのすい臓を作って臓器移植しようとか、ヒトインスリンを作らせようとかって動きありませんでしたっけ?

162頁 「さらに現在は異種間の胚盤胞補完として、糖尿病のサルからiPS細胞を作製し、すい臓欠損ブタの胚盤胞に移植して「サルのすい臓を持つブタ」を誕生させ、このすい臓を糖尿病のサルに移植して治療する実験を検討していると明らかにした。」

 糖尿病のサルからiPS細胞を作製し、ってところ間違っていないでしょうかね?

173頁 「この基礎研究成果の社会還元までのあいだにある「足踏み状態」を指して「死の谷」とよぶ。 この表現は、「基礎科学研究への政府の資金投入が、民間企業の応用研究開発(そして、その結果としてもたらせる経済効果)にうまく結びついていない」ことを問題視したアメリカの報告書のなかで用いられた。」

 死の谷って、ベンチャー企業の企業からうまくいくまでの間に発生する時期のことをいうのではなかったのですね。 私、完全に間違えて覚えていたようです

180頁 「ハーバード大学のブランスコムは「死の谷」という言葉に含まれたネガティブなイメージを嫌い、この基礎から応用の間に存在する段階(・・・)は「ダーウィンの海」とよぶべきである、と提案している。 ・・・ ベンチャー企業によるプロジェクトは、アイデアで勝負する小さな生き物だ。 再生医療に対する「ダーウィンの海」を実現するには、大小さまざまな生き物(=研究プロジェクト」が、それぞれの戦略をもって臨まなければならない。」

 そうでもなさそうです

 

 

本日のキーワード: アントレプレナー

 

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2008年9月24日 (水)

なにがスゴイか?万能細胞

なにがスゴイか?万能細胞 その技術で医療が変わる! 中西貴之

 大部分が山中教授のCellの報告に基づいた記述になっています。 とはいえ、ES細胞とは!?、iPS細胞とは!?という点の理解には非常にわかりやすい本だと思います。 わかり易いついでにまとめてみました。

 

 胚性幹細胞(ES細胞):

 「受精卵が何度かの細胞分裂を経て100個程度の細胞に分かれた頃、人間の体は胎児の手も足もまだなくボールのような細胞のかたまりですが、その1個1個の細胞は依然としてほとんど全ての臓器細胞に分化する能力を維持しています。」(13頁)

 「受精卵が卵割によって細胞数を増やし、子宮に着床する準備の整った胚盤胞になる過程で細胞は全能性を失います。 胚盤胞では将来胎盤になる栄養外胚葉と胎児になる内部細胞塊の2種類に分かれ、内部細胞塊はさらに多能性を維持した一群と多能性を失いある特定の組織を構成する細胞に変化する仲間に次々に枝分かれし、胎児を形成します。 ・・・ 内部細胞塊に含まれる一部の細胞は培養皿の中で、多能性を持ったまま増殖を続けることがわかりました。 この内部細胞塊から取り出して培養し、「多能性」と「増殖」の二つの能力を維持している培養細胞を「ES細胞」・・・」(32-33頁)

 「ES細胞は、動物の1個の受精卵がおよそ100個の細胞に分裂した時期に形成される胚盤胞と呼ばれる球状の細胞のかたまりの内部から、内部細胞塊と呼ばれる一群の細胞を取り出して特殊な環境で培養することによって得られる多能性細胞です。 ・・・ マウスの場合は約40個の細胞の集団ですが、それらは均一な細胞ではなく、それらの細胞のうちどの細胞がES細胞になるのかもよくわかっていません。」(35頁)

 「日本には、本書執筆時点で3株のES細胞があるとされているが、その全ては凍結保存されていた余剰の受精卵から作り出されている。」

 植物の場合、細胞を取り出してカルス化させた後、オーキシンやサイトカインなどの植物ホルモンの濃度をちょいちょいといじってやると、完全な植物個体の再生ができるわけです。 ですので、植物の場合、遺伝的に同一の植物体を実験室でたくさん作ることができるわけです。 最近あまりTVでみかけませんが、以前はタカラバイオ社の培養室がよくTVで紹介されていた覚えがあります。

 一方、上記植物細胞に対応する動物の完全な細胞がES細胞と認識していたのですが、どうも違うようです。 しかも、内部細胞塊の中に含まれるどれか一部がES細胞として分離されてくるようです。 すなわち、ES細胞だけから、完全個体を作製(といっていいのか微妙ですが)できるわけではないようです(上記でいうところの栄養外肺葉にはES細胞といえども、分化できないようです。)。 Wikipediaにも、ES細胞は、分化多能性細胞として記載されています。 とはいえ、iPS細胞のところには、ES細胞は分化万能性と記載されているので、矛盾していますが。。。

 

 人工多能性幹細胞(iPS細胞):

 「皮膚などのすでに万能性を失ってしまった細胞を初期化する方法が存在することが発見されました。 ・・・ 皮膚などの体細胞を採取して初期化した細胞・・・」(13頁)

 山中教授、同日にサイエンスにiPS細胞の樹立が報告されたトムソン教授、バイエルのグループと特許の特許出願争いはいずれのチームが先なのでしょうか? そして、米国での先発明主義においてはどのチームが先発明となるのでしょうか??(日本では、山中グループの特許成立との発表がありましたね。) なお、ヒトについても選択発明として出願されているとしたら、マウスiPS細胞で知られていたのだから、ヒトに応用してみるのは容易なんて拒絶理由が無粋にもお役人仕事として通知されるのでしょうかね??? あるいは、政治が働いて、一発特許査定が出たりするのでしょうか・・・

 「山中伸弥」でIPDLで検索すると、ちょっと古い出願しか出てこないですね。 iPS絡みはまだ、日本の公開公報としては検索できないようですね。 ちなみに、全て、住友系との共願ですね。 iPS細胞の出願も住友系との共願なんでしょうか。 楽しみです。 

 そういえば、アメリカでも、「iPS細胞」なのでしょうか???

 

 クローン細胞技術(ドリー):

 「簡単にいうと、体細胞クローンのドリーは羊の卵子から核を除去し、そこに別の羊の皮膚細胞から取り出した細胞核を移植して作り出されました。 ・・・、ES細胞は受精卵が数回分裂した段階で内部の細胞を取り出したもので、核の移植は伴いません。」(131-132頁)

 「ドリーの場合は乳腺細胞が用いられました。 ・・・ 未受精卵の細胞質には体細胞の遺伝子を初期化する成分が含まれています。 ・・・ 除核された卵子の中には初期化因子は残ったままですので、・・・乳腺細胞から、・・・吸い出した核を移植します。 ドリーの場合はこの段階の卵子に電子ショックを与え、あたかも受精が行われたかのように卵子の発生を開始させる操作を行いました。」(133頁)

 「乳腺細胞由来の核の受け入れ先としては、未受精卵が使用されました。 ・・・ クローン作成の成功率を高めるために、すでに発生が開始されている初期の受精卵に核を移植すればそのまま速やかに発生が進行するのだろうか、と考えた学者がいました。 ・・・ しかし、マウスのクローンを作る実験において、受け入れ側の卵子としてあらかじめ受精させておいた活性化卵子を除核して、そこにクローンを作りたい遺伝子を含む核を移植してみても、不思議なことにその方法では発生しません。 調べてみると染色体異常が起きていたのです。」(134頁)

  

EPiS細胞:

 「着床後胚のエピブラストと名付けられた多能性細胞の集団から「EPiS」細胞と呼ばれる多能性細胞株が樹立できることがマウスやラットで確認されました。 ・・・ EPiS細胞はES細胞よりも細胞が成長した段階にある多能性幹細胞であることがわかっています。」(143-144頁)

 

ntES細胞:

 「核移植によるES細胞」(146頁)

 いわゆるクローンES細胞ということでしょう。

 「2005年に発覚した韓国ソウル大学の黄禹錫らによるヒトntES細胞樹立論文捏造問題を経て、2007年、アカゲザルの卵子に皮膚繊維芽細胞の核を導入した霊長類初のntES細胞樹立に成立したとの論文が発表されました。」

 nuclear transfer Embryonic Stem Cell 略語だと意味がわかりにくいですが、原文表記するとわかりやすいです。

 

 そのほか勉強になることとして、

19頁 「胎児を形成することができる能力を「万能性」、胚盤胞が持つあらゆる組織になれる能力を「多能性」」

30頁 「ある種の薬品をドナーに投与し続けると造血幹細胞が循環血中に出てくることが発見され、現在では全身麻酔の必要のない抹消血から造血幹細胞採取を行う手法が確立され、・・・」

 「サイトカインG-CSFと呼ばれる細胞に刺激を与える物質をドナーに数日間投与すると、本来骨髄に収まっている造血幹細胞が循環している血液中に大量に現れることがわかった。」

57頁 「拒絶細胞回避はES細胞の移植において重要な問題です。 ・・・ 患者自身のすでに分化した細胞核の初期化によるES細胞同等の能力を持つiPS細胞の作成なのです。」

177頁 「培養した細胞を立体的に形成するための新しい技術としてインクジェットプリンターの技術を用いた細胞播種技術「バイオ・プリンティング」が開発されています。 ・・・ 噴霧された細胞は秒速30cmで飛び出しますが、・・・ 日本の財団法人神奈川科学技術アカデミーの中村真人博士のように、細胞をゲルで包む工夫をして細胞の破損を防ぐと共に立体構造を作り出す装置も開発されています。」

 

 

本日のキーワード: バイオ燃料と同じく、携わったことないです。。。

 

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2008年9月12日 (金)

iPS細胞ができた!

iPS細胞ができた! ひろがる人類の夢 畑中正一 山中伸弥 集英社

 最近、iPSに関する書籍を読み漁っているので、一度、レビューしたいなぁ~と思っていたら、、、 今日の知財のトップニュースになっていましたね。 製法特許が取得できたとか。 というとこで、今更感ありありですが・・・

 

 山中氏と畑中氏との対談形式の本です。 山中氏本人の口から発せられる言葉な上、口語調で記載されていますので、臨場感が伝わってきます。 iPS細胞確立までの流れがよく理解できます。

33頁 「山中 ES細胞1個からは、個体はできません。 厳密にいうと、受精卵は全能性で、ES細胞やiPS細胞は多能性です。 一般の方向けにはES細胞は万能細胞と呼ばれていますが、正確には多能性細胞です。」

 私自身、(ヒトを再生できちゃうのはどうかという)倫理と結びついててっきり、全能性であると思っていました(作成段階が、倫理上問題となる点は置いといて)。 ES細胞にしても、iPS細胞にしても、多能性であって、全能性ではないんですよね。 ヒトの細胞で全能性なのは、受精卵だけということになるでしょうか。

 以前は、ES細胞は、日本では32条違反で特許が取れないとか取れるとかって聞いていたのですが、、、 ES細胞樹立までには、確かに倫理上の問題はありそうですが、ES細胞をどうにかするというところだけを切り取ってみてみると。。。 ES細胞を増やすことはできるわけで、今そこにあるツールの利用って観点から、32条はクリアーできてそうですね。 桃の新品種黄桃の育種増殖法事件を逆手取りです。

41頁 先人として、イアン・ウィルムットさん(ドリー)、京大 多田高先生「ES細胞と体細胞をくっつけると体細胞が元に戻っちゃうんだと。 ・・・、分化した細胞が元に戻るんだということを教えてもらって、」、ジョン・ガードンさん、トーマス・キングさん「じゃあ、戻す因子は何なんだと。 私たちがやったのは、その因子を絞り込んだだけでして、基本的に分化したものが戻るんだというのは」 (「」内は引用。)

 山中教授のすごいところは発想の転換をしたというところでしょうね。 1つ1つ要因をつぶしていくという、レトロサイエンスを、最先端において使った、という発想はエクセレレントですね。 絞り込んだだけといえるところ、格好いいです。

84頁 「畑中 レトロウイルス使いますと、’02年にフランスで小児の遺伝子治療をやったときに白血病が出たんですね(関連情報)。 ・・・ このウイルスは基本的にはホストのDNAのいろんなところに入り込み組み込まれますから、それがたまたま白血病を起こすようなところに近いところに組み込まれますと、そういったことが起こると。 ・・・ レトロウイルスそのものが遺伝子治療には問題になった、ということになっていますね。 ・・・ 実際に組み込まれないないということで、遺伝子だけを細胞へ入れ込むという意味で、アデノウイルスなどがいろんな意味で使われているわけなんですが。」(注:括弧内付け足し)

 遺伝子治療としては、アデノウイルスと、アデノウイルス随伴ウイルス、センダイウイルス(大阪大学では、HVJと呼ばれているそうです。)ですね。

 日本では、臨床試験として、これまで25本が走った、または走ろうとしているようですね。 ADA欠損か、がん治療がメインですね。 まだまだ、治療法の少ないがんが多いということですね。。。 製薬メーカーのバックアップはどれだけあるのでしょうか。。。

138頁 「畑中 これからは三次元培養というのが盛んになっていくと思います。」

 三次元培養というのは、よく分からないので、勉強課題にしておきます。 イメージはつかめるんですが、定義というか、一般概念が・・・

 

 

本日のキーワード: 人工多能性肝細胞(マウスヒト) 両方とも、論稿のトップ頁ですね!!

 

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2008年8月16日 (土)

よくわかる最新バイオ燃料の基本と仕組み

図解入門 よくわかる最新バイオ燃料の基本と仕組み 井熊均、バイオエネルギーチーム著 秀和システム

 ちょっと前に新聞記事の紹介等していたわけですが、バイオ燃料の勉強再開です。 というか、技術全般に渡ってのマニュアル本での技術のお勉強です。 その第一弾としてのバイオ燃料であり、「よくわかる」の簡便な書籍で基礎の基礎からです。 未だ、バイオ燃料の案件に携われていないところが残念なところです。

13頁 いきなりこんな間違いしているようでは、本の素性がしれてしまいます・・・

 ETBE(Ethyl Tertiay-Butyl Ether)ですから、

 t-Bu-O-Etである必要がありますが。

 CH3-CH2-CH3(CH3)(C)-CH3

 と囲みで記載されています。

 CとCH3の記載を間違えたのでしょうが、それでも、2,2-ジメチルブタンにしかなりません・・・

 製造反応式としては、

 EtOH+CH2=C(CH3)2→CH2-O(CH3)2-C-CH3

 です。 うむ・・・

 「O」が4価というのは・・・ 上記式では、「C」が7価ですけど。。。 「O」と「C」が誤記と考えてあげても、t-Bu-O-Meです。 左端の炭素は一価足りませんが・・・

 せめて、質量保存の法則ぐらいは、守ってもらいたいところです・・・

 

12頁 この本での定義を紹介しておきます。

 「バイオマスエタノールとは、サトウキビ、大麦、トウモロコシ、大豆といった資源に含まれるグルコースなどを発酵させて作るエタノールです。」

22頁 燃料としていることによって、最近、食品の値段が上がっているのは周知のところですが(石油の高騰の方がニュースとしては前面にでてますが)、とうもろこし(アメリカ)やさとうきび(ブラジル)に代わるものとして、食用にならない「スイッチグラス」が挙げられています。

150頁 「スイートソルガム」 サトウキビの代替となるそうです。

 植物がCO2を光合成によりC6H12O6として固定して、それを人間が、C2H6Oとしてから、CO2として排出するという循環ですね。

 6CO2+6H2O+光エネルギー → C6H12O6+6O2

 C6H12O6 → 2C2H6O+2CO2

 2C2H6O+6O2 → 4CO2+6H2O

 とうまくいけば、理想的ですけど・・・ 太陽が燃え尽きるまではいけます。 そういえば、太陽の寿命とかって最近話題に上りませんね。。。 ノストラダムスの大予言の頃にはよく言われてませんでしたっけ!?

 

56頁 「バイオディーゼル(Bio Diesel Fuel、以下BDFとする)は油脂から作られるバイオ燃料で、軽油の代替品としてディーゼルエンジンの燃料に使われます。」

 ようするに、油脂中のグリセリンエステルをエステル交換してメチルエステル化したものが、BDFです。

 日常使っている、油は、脂肪酸とグリセリンのエステルである、グリセリンエステルなんですね。 グリセリンと3つの脂肪酸との組み合わせになりますから、色々な植物油、動物油があるということですな。

63頁 BDFは完全に食品と重なるわけですが、食品とかぶらないものとして「ヤトロファ(ジャトロファ)」というのがあるようです。

 食料として競合しないことも大切ですが、栽培地としても競合したらダメですね。 となると、砂漠緑化とバイオ燃料の連携というのが、ベストな選択になるのでしょうか??? でもそうすると、消費地に運ぶ際の燃料費が無駄になりますな・・・ どこかに落としどころが必要ということですな。。。

 

100頁 「バイオガスには主成分であるメタンガス(約60%)と二酸化炭素(約40%)の他に、硫化水素、アンモニアなどが含まれます。」

101頁 バイオガスは、通常のメタン発酵で、メタン 60%、二酸化炭素 40%になるようです。 都市ガスは、「天然ガスを精製し、-162℃まで冷却した液化天然ガス(LNG)です。 その上で13A規格の都市ガスは、メタン89.60%、エタン5.62%、プロパン3.43%、ブタン1.35%となるように調整されています。」 LPガスは、「プロパン96%、ブタン3%からなる混合ガスです。」

 「都市ガスやプロパンガスは精製純度が高いために本来は無臭です。 そこで、ガス漏れを認知しやすいように、メチルメルカプタンなどで付臭しています。」

 ありゃ!? 私は、今まで、ブタンを混入していると理解してましたよ。。。 あの匂いはメルカプタンの匂いだったんですねぇ~ 

 

153頁 「間伐材、稲わらなど、食料と競合しないセルロース系バイオマスをバイオエタノールに変換するための技術開発は、バイオエネルギー普及のための主要なテーマの一つとして注力されています。」

 セルロースは、グルコースがβ-1,4-結合しているわけで、人間が吸収できないし、グルコースに分解してからでないと利用できないということろなんですが、ここに特許発生の可能性があるわけで、何とか関わっていきたいところなんですが。。。

 

 

本日のキーワード: バイオマス・ニッポン総合戦略骨子

 

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