2011年5月19日 (木)

最高裁判決後の問題の整理

 
最高裁判決が出ても、依然、問題点は抱えているわけでして、
整理のために、現状の私の考える問題点を記載しておきたいと思います。

究極的には、「特許発明の実施」が何を意味しているのか?ということに尽きるのだと思います。


67条2項
 特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。

67条の3
 審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願が次の各号の一に該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一  その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。


条文だけ読むと、特許発明の実施について、限定が付されているわけではありません。
ですので、新有効成分であっても、新剤形であっても、新効能であっても、新用量であっても、製造承認を受ければ、特許発明の実施において、薬事法上の処分は必要であったに該当するということになります。

しかしながら、現状の運用では、実質的に、新有効成分と新効能については延長登録が認められる一方で、新剤形や新用量において製造承認を得ても延長登録が認められない運用になっているわけです。

特許庁は、新効能と、新剤形、新用量との間に線を引く理由付けとして、68条の2を用いていたわけです。すなわち、67条2項の特許発明の実施は、「その」特許発明の実施であることからも単なる特許発明の実施を意味するものではないというスタンスです。


68条の2
 特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。


すなわち、新効能のみ認められるのは延長された後、その効力が、物又は物と用途において及ぶため、これを置き換えれば、物=有効成分であり、用途=効能・効果であるので、であれば、転じて、延長されるべきものは、有効成分と効能・効果で画されるはずというロジックであります。

今般、飯村コートなどの判決により、該ロジックは否定され続けた訳ですが、最高裁は、結論は容認しつつもかかる飯村コートのロジックを否定したものと捉えられるのではないかと考えています(であるから、新要件としての機軸を打ち出している)。その場合、逆説的に捉え、従前の特許庁の考え方は正しかったと言えるのかもしれませんが、最高裁が現状の運用は正しいと明示して認めたものでもないので、宙ぶらりんになってしまっていると感じてしまうわけです。

問題点その1
 まずは、有効成分と、効能・効果で判断する審査はOKなのか?
 最高裁の技術的範囲論は、該庁の運用までも駆逐するのか?

 ただし、今般の最高裁判決を金科玉条ととらえ、全ての案件で、「先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないとき」の要件のみで判断していくことにするのであれば、現状の庁の有効成分+効能効果論に基づく運用はひっくり返りますので、先発メーカーの臨床試験戦略は重要になってくることになります。
 
 医薬品メーカーの一戦略として、
①物質特許を取得
②先行する臨床試験の実施
③延長登録願1
④先行する臨床試験の状況を見て、適用拡大
⑤延長登録願2
ですが、有効成分+効能効果論が有効であるのであれば、延長登録願2も登録されますが、今般の最高裁の技術的範囲論でいくと、延長登録願1のみが登録されることになります。
この場合、先行する適用疾患の市場が大きければ問題ないですが、適用拡大部分でのパイが大きいような場合には、虫食い申請も認められている昨今、うれしくない状況が生まれます。
特に、現状、医薬品メーカーが注力しているような抗がん剤分野には、影響が大きいように思います。

問題点その2
 先行処分とは、別途の特許があるときに、後行処分とは、更に別の効能に係る第2後行処分を受けた場合、どのように扱われるのか?
 今般の最高裁の技術的範囲論が勝つのか、庁の有効成分+効能効果論が勝つのか、どっち?


とはいえ、これまでの、先発メーカーによる、幾多の東京高裁&知財高裁判決は、いわゆる、有効成分+効能効果論を支持しているわけですが、上告受理申立てを却下され、確定しているわけですから、最高裁判決の位置づけとしては、これまでの運用の上に変わる部分が付け加わったということになるのでしょうか。
 

特許庁の審査基準改定が待たれるところです。
なお、特許庁は、審査をストップさせた模様です。
特許権の存続期間の延長登録出願に関する審査基準及び審査の取扱いについて(http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/sonzoku_encho.htm)
平成23年5月16日
  

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2011年5月15日 (日)

平成21年(行ヒ)第326号

 
久々に特許で最高裁判決が出ましたので、ブログも久しぶりに更新です。

特許とは言っても、存続期間延長登録の可否に関する判決ですので、実務的に影響力は大きくても、弁理士万人が関連するものではありませんね。

私は、これまで、該制度について、非常に注力して勉強してきていましたので、色々と散文的に考察をしていきたいと思います。


まずは、最高裁判決文の中からのみで考えてみます。


本件では、平成20年(行ケ)第10460号のみが判示されているわけですが、
平成20年(行ケ)第10458号は、平成21年(行ヒ)第324号で判示されているようですので、
第10459号は、間をとって、平成21年(行ヒ)325号なんでしょう。
判決文のDBだと、タイトルの事件のみが公開されているような感じです。


上告代理人は、「須藤典明ほか」となっています。
日本弁護士連合会の検索ページで探してみても、ヒットしません。
一方、e-hokiの裁判官検索を行うと、お一方ヒットし、法務省訟務総括審議官というのをやられている方が出てきます。
ググってみても、同一人と思われる方がヒットします(書籍もそれなりに出されていて、法曹では著名人のようですね。)。

今は行政官かもしれませんが、本来司法に属する裁判官である方が最高裁に対し、行政に属する特許庁の代理人として訴えるという図式であろうと想像しておきます。


前置きが長くなりましたので、本題に戻しまして、
以下、おいおい事例との関係は述べて行きますが、
まずは、判決文だけから思いつくままに。


『2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。』
として、「2」で(1)~(5)として事実関係が述べられています。

2の中で目を引く部分は、(3)中の
『本件先行医薬品は、本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない。』
です。


「3」が判断部分になりますので、まずは、全文引用してみましょう。

『3 特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった薬事法14条1項による製造販売の承認(以下「後行処分」という。)に先行して,後行処分の対象となった医薬品(以下「後行医薬品」という。)と有効成分並びに効能及び効果を同じくする医薬品(以下「先行医薬品」という。)について同項による製造販売の承認(以下「先行処分」という。)がされている場合であっても,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分がされていることを根拠として,当該特許権の特許発明の実施に後行処分を受けることが必要であったとは認められないということはできないというべきである。なぜならば,特許権の存続期間の延長制度は,特許法67条2項の政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を回復することを目的とするところ,後行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくする先行医薬品について先行処分がされていたからといって,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない以上,上記延長登録出願に係る特許権のうち後行医薬品がその実施に当たる特許発明はもとより,上記特許権のいずれの請求項に係る特許発明も実施することができたとはいえないからである。そして,先行医薬品が,延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分により存続期間が延長され得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲(特許法68条の2)をどのように解するかによって上記結論が左右されるものではない。
 本件先行医薬品は,本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないのであるから,本件において,本件先行処分がされていることを根拠として,その特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められないということはできない。』

そして、下線部分ですが、

『特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった薬事法14条1項による製造販売の承認(以下「後行処分」という。)に先行して,後行処分の対象となった医薬品(以下「後行医薬品」という。)と有効成分並びに効能及び効果を同じくする医薬品(以下「先行医薬品」という。)について同項による製造販売の承認(以下「先行処分」という。)がされている場合であっても,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分がされていることを根拠として,当該特許権の特許発明の実施に後行処分を受けることが必要であったとは認められないということはできないというべきである。』

ここだけ読むとWスタンダードの容認ととれなくもありませんね。
最高裁の考えはどうなんでしょうか?
というのも、現行、特許庁は、存続期間の延長登録の出願に対して、
物と用途、医薬品でいうなれば、有効成分と効能・効果を先行品と後行品(本件処分に相当するもの)とで対比して、いずれかが異なる場合に(通常は、効能・効果の差異に着目して)、延長登録を認めているわけです。

特許庁の審査基準には、

『(3) 一の特許権に対応する処分が複数あるとき
  一の特許権に対応する処分が複数ある場合、処分を受けた物が異なる処分(処分 において物の用途が特定されている場合にあっては、物又はその特 定される用途のいずれかが異なる処分)であれば、それぞれの処分を受けることはその特許発明の実施に必要であったと認 められるため、異なる複数の処分に基づく同一の特許権の存続期間の延長登録が処分ごとに認められる。
 例えば、医薬品に関する一の特許権に対して、有効成分又は効能・効果のいずれかが異なる複数の承認が与えられている場合には、それらの承認に基づく複数の延長登録が認められる。

(注) 政令で定める処分を受けた物と実質的に同一の物の取扱いについては、(4)を参照。

 逆に、有効成分及びその効能・効果が同一の他の承認(例えば剤型、製法等のみが異なる承認)を受けることは、当該特許発明の実施に必要であったとは認められないこととなるため、当該他の承認に基づく延長登録の出願は拒絶される。』

『(5)医薬品の承認等を受けた物の用途
 第一の処分を受けた物の用途と第二の処分を受けた同一の物の用途が一部重複している場合には、その重複部分を除いた用途についての特許発明の実施が、第二の処分を受 けることによって初めて可能となる 。したがって、第二の処分を受けることは、特許発明の実施に必要であったと認められることとなる。
 例えば、下位概念の用途(例えば、慢性アレルギー性鼻炎治療剤)を有する有効成分に対して承認が与えられた後 、上位概念の用途(例えば、アレルギー性鼻炎治療剤)を有する同一の有効成分に対して承認が与えられた場合には、上記の考え方に従 って、後者の承認を受けることも特許発明の実施に必要であったと認められることとなる。』

です。

本件では、(3)の考え方を複数の特許権がある場合というか、後行品をカバーする特許権がある場合にまで、拡大して適用したことが問われているわけですが、
(5)の場合や、(3)の効能・効果が異なる複数の承認が与えられている場合においては、
『先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないとき』
の要件が考慮されずに延長登録が認めらています。
すなわち、現在の存続期間の延長登録の実務では、
物質特許があって、先行処分が効能・効果X、後行処分が効能・効果Yの場合には、XとYが異なっていれば、あるいは、YがXを包含する場合でも、新効能・効果と評価される部分があれば、後行処分に基づいて延長登録が認められているわけです。
この場合、先行処分によって、先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲に属する場合になりますので、今回の新たな要件である
『先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないとき』
は、現行の審査基準の下での審査に合致することになるんでしょうか。
また、どのように条文を解釈していくのでしょうか。


私は、現状では、以下のように進んでいくのだろうと思っていますが、今後、産業構造審議会のWGも再開され動くでしょうからウォッチングしておきましょう。。

まずは、現行通り、有効成分と効能・効果で判断する。
一方が異なっていれば、延長登録を認める。
双方同じであっても、後行処分に係る特許権の存在を確認する。
先行処分に係る医薬品が、該特許権の技術的範囲に属していなければ、後行処分に基づく延長登録を認める。


有効成分と効能・効果が異なる場合には、技術的範囲に属するか否かというのは問われず、
すなわち、特許庁がこれまで行ってきており、今般の飯村コート判決が出るまでの裁判所の判断を踏襲するものといえるでしょう。
この特許庁の考え方の本質は、68条の2に基づくものであるとともに、特許庁が主張している、(私の解釈では)医薬の本質は、有効成分と効能・効果であるということになると思います。
すると、最高裁は、ここの考え方については、飯村コートの考え方を否定していると捉えることもでき、その後、出されている塩月コートの判決等にも影響はないのでしょうか?
おいおい、眺め直してみようと思います。

私の今後の実務に対する想像では、上記のように、(3)の例外的事例として、今般のようなケースが審査基準に定められ、特段大きな変更はないと想定していますが(承認される一事例が増えるに過ぎない)、より考察を深めていきたいと考えておる次第であります(浅はかな考えかもしれません)。

なお、最高裁が、現行の特許庁の運用を容認しているのではないかと考えたのは、
『後行処分の対象となった医薬品(以下「後行医薬品」という。)と有効成分並びに効能及び効果を同じくする医薬品(以下「先行医薬品」という。)について同項による製造販売の承認(以下「先行処分」という。)がされている場合であっても,』
という前提を置いていることから、有効成分と、効能・効果に基づく現行審査基準を前提として考えて、両者が異質の場合は現行通り、同質の場合には、少し考慮が必要としているのではないかと考えたからです。


ただし、なぜならば以下の理由づけの部分が、今回の事例のような場合にのみ適用される考え方というのは若干、違和感を覚えます。存続期間延長登録制度全般にかかわる事項についての一般論に該当するともいえ、とても一般的なことを述べていないでしょうか?

『なぜならば,特許権の存続期間の延長制度は,特許法67条2項の政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を回復することを目的とするところ,後行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくする先行医薬品について先行処分がされていたからといって,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない以上,上記延長登録出願に係る特許権のうち後行医薬品がその実施に当たる特許発明はもとより,上記特許権のいずれの請求項に係る特許発明も実施することができたとはいえないからである。』

この考え方でいけば、現行の、物質特許に対しての、効能・効果までを考慮して延長登録を認める特許庁の運用はありなのでしょうか?
68条の2の解釈としても、特許発明として用途が特定されている場合には、用途までみると読まないと上記の最高裁判決の、判示事項に沿うのか疑問が残ります。
この辺りは、もう少し考えてみたいと思います。


なお、最高裁は、
『そして,先行医薬品が,延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分により存続期間が延長され得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲(特許法68条の2)をどのように解するかによって上記結論が左右されるものではない。』
と続けますが、この部分では何を言いたいのでしょうか?
68条の2が有効成分、効能・効果において異なるときは、考慮するにしても、そうでない場合には、68条の2の解釈は関係なく、禁止されていた範囲が解除されたか否かで、製剤特許に対応する新規剤形医薬品(延長登録における新剤形医薬品の新規登録形態といえそうです)として、すなわち、新規有効成分医薬品のような場合と同様に延長登録を認めればよいというスタンスなのでしょうか?

今後、後行処分とは別の用途で同一製剤について処分がさらにあったとしても、延長登録は認めれないということを意味しているのでしょうか。
物質特許については、有効成分及び効能・効果の異同についても判断してよい。
製剤特許については、有効成分及び効能・効果の異同については判断してはいけない。
ということなのでしょうか?
製剤特許においては、延長登録のためには、一つ一つの有効成分や用途ごとに、他社排除の観点からすると、有効成分を特定せずに取得することが望まれることになりますが、
そうすると、改善多項性との関係で、まとめた大きい特許を取ると、延長登録の点では不利、個別具体的に細分化して権利を取得しておいた方が延長登録の点では有利となりますが、ここはおかしなことになりそうな気がします。

最高裁は、発明の本質は何かということを求めているのでしょうか。
『本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないのであるから』
との『いずれの』という判示事項にある意味戸惑いを覚えています。

今後、製剤特許の取り扱いがどうなっていくのかは、注視しておこうと思います。
 

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2009年7月12日 (日)

日本経済新聞あれこれ

 2009年7月8日(水)付け朝刊

 「世界のM&A 5年ぶり低水準 ファンド主導激減 医薬・資源は活発化」として、

 「医薬では1月、米ファイザーが同ワイスを09年上期で最大金額となる644億ドルで買収。 米メルクは3月に同シェリング・プラウを459億ドルで買収することを明らかにした。 資金力に余裕のある大手が事業規模を拡大し、新薬開発などに向けて経営強化を推進している。」

 欧米で同業間での大きなディールが動くのは、手元資金は株主へ!という強制力が働くからでしょうか。 株主重視といいつつも、株主に還元するくらいなら、他社を買ってしまいましょうと。 それで、経営陣としては、収入もドンドン増えていき、、、っという。

 第一三共、アステラス、田辺三菱、大日本住友となったとはいえ、日本では、まだ大型のディールは動いていないですね。 エーザイ、小野、大塚、塩野義の今後が気になるところです。

 まだまだ、創業家が強いのが日本の製薬で大型のM&Aが起こっていない所以ですかね。

 

 2009年7月11日(土)付け朝刊

 「製薬中堅の日本ケミカルリサーチ(JCR)は特許切れのバイオ医薬品と似た製法で作る「バイオ後発薬」の量産を始める。」

 「JCRの製品は10年初めにも国産品として初めて承認が得られるとみており、本格的な量産準備に入る。」

 JCRが販売を予定しているのは、EPOなわけですが、

 「EPOの新薬は中外製薬とキリンビールの医薬事業本部が1990年に発売、04年から05年にかけて特許が切れた。 08年度国内売上高(薬価ベース)は両社合計で約1100億円。」 

 EPOって、アドレナリンとエピネフリンのようなネーミングの違いってありませんでしたっけ???

 

 エスポー(キリン エポエチン アルファ)とエポジン(中外 エポエチン ベータ)です。

 

 

 なお、JCRは、先立て、本邦でバイオ後発薬として認可されたソマトロピンを販売しているようです。

 

 

本日のキーワード: バイオシミラー

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年7月 6日 (月)

日本経済新聞2009年7月5日(日)付け朝刊

 最近、とみに専門性を高める必要があるなぁ~と考えているわけですが、、、 特に、技術面での知識の補充を図りたいなぁ~と思っていて、医薬発明の分野については、今後出願が益々増加するであろう(先端というよりは、製剤特許なぞを意識です。)、抗体医薬、抗ガン剤、抗ウイルス薬、感染症薬の勉強をすべきかなぁ~と考えていたら、ピッタリな記事が!!!

 当然に、iPSなどの再生医療の知識も必要なんですが(こちらは、有効成分としてのいわゆる物質特許、リサーチツールのような方法特許になりますが)、まずは、化学系からの知識の補充ということで。。。

 

 「塩野義や武田 バイオ抗ガン剤製品化へ」

 「塩野義が開発するがんワクチンは、がん細胞だけに発生する特殊なたんぱく質をワクチンとして投与し、体内の免疫細胞を刺激してがん細胞を攻撃する仕組み。 ぼうこうがんが対象で、今年度中に国内の患者に投与を始め安全性を確かめる。」

 現時点では、塩野義製薬のHPでも、製薬協の開発中の新薬でも確認できない内容ですね。 P-I入りのための機構相談が終わったというとこでしょうか!

 

 「エーザイや武田薬品が手掛ける抗体医薬品は、がん細胞に栄養や酸素を供給する働きを抑える。 エーザイはこのほど米国で治験を開始。 武田薬品は来年にも他者から導入した結腸・直腸がん対象の抗体医薬品を国内で発売するのに続き、・・・」

 エーザイは、MGI Pharma, Inc.絡みというとこでしょうか。

 武田薬品は、Amgenから導入している、完全ヒト型抗EGFRモノクローナル抗体であるPanitumumab(Vectibix)ですな。

 

 それにしても、塩野義の臨床試験前の提燈記事が多い気がします。 業績が悪いんですかね。

 

 「・・・、新薬開発ではがん細胞がある部位に重点的に効果を発揮する薬剤や、がん細胞そのものを免疫機能を活用して攻撃するバイオ医薬品に注目が集まるようになってきた。 バイオ抗ガン剤は人体の免疫機能を利用してがん細胞に働きかけるため、・・・」

 「米調査会社IMSヘルスによると08年の抗がん剤の市場規模は日本が6500億円、米国が約1兆8400億円。」

 添付されている図を見ると、米国での2004年から2008年の伸びが凄いです。 日本の市場はほぼ微増にすぎないのに、米国だとほぼ倍増です。 不謹慎ではありますが、今後、抗ガン剤の分野でどんなブロックバスターが生まれてくるのでしょうか。。。

 

 

本日のキーワード: 根源的に治療できる、あるいは進行を完全に止めれるような薬剤が現れるといいのですが、どういったメカニズムでそのような薬剤が生み出されていくのか、科学的な興味はつきないところです。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月27日 (土)

日本経済新聞からあれこれ

 2009年6月26日付け朝刊

 「後発薬比率 7.2%どまり」

 「厚生労働省が25日発表した2008年の「社会医療診療行為別調査」によると、薬剤費に占める後発医薬品の割合は金額ベースで前年比0.4㌽上昇し、7.2%だった。」

 元ネタはこれです。

 虫食い申請が、今後認められていくので来年その影響がどこまででてくるかですね。 そうそう先発メーカーから有力な抗生物質が新薬として発売されることはないでしょうが、おいおいとさして重要でない起因菌に対して承認申請を得る存続期間延長登録戦略に違いは出てくるのでしょうか。。。 

 そーいえば、「虫食い申請」改め「基本効能申請」と称するだとか。。。

 

 「バイオ後発薬 日本初の承認」

 「バイオ医薬品の後発薬が日本で承認されたのは初めて。 承認を得た成長ホルモン製剤の新薬は、製薬世界最大手ファイザーが販売している。」

 『厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会は29日、報告品目として、サンドのバイオ後続品「ソマトロピンBS皮下注5㎎」「同皮下注10㎎」(一般名=ソマトロピン〈遺伝子組換え〉)の承認を了承した。バイオ後続品の開発要件などを示した3月の通知に基づいて審査・了承された初めての製品。再審査期間は付かず、6月中に正式承認される。薬価については「現行ルールに基づく」(医療課)ため、後発医薬品と同様、0.7掛けで11月収載となる可能性が高い。 』といった日刊薬業の2009年5月20日付け記事もありますので、承認自体は、随分前に出ていたようですね。

 

 なお、上記通知に関するパブコメの結果は、これで、

 「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」(案)に関する意見募集に対して寄せられた御意見について

 パブコメ自体は、こちらです。

 「バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針」(案)に関する意見募集について

 

 厚生労働省から出された通知としては、

 バイオ後続品の品質・安全性・有効性確保のための指針(平成21年3月4日付薬食審査発第0304007号)になります。

 
 三重県の三重県薬事工業情報提供システムから、該通知をリンクします。

 薬食審査発第0304007号

 

 2009年6月14日付け朝刊

 「日本でも、冬季に向けて再び流行する懸念がある。 製薬業界の備えは十分か。 輸入に頼るタミフル、リレンザに続き、国産で「第3のインフル治療薬」の開発を進める塩野義製薬の手代木功社長に聞いた。」

 「-日本全土で流行した場合、治療薬は足りるのか。

 「国内にはタミフル4千万人分、リレンザ300万人分弱の備蓄があるとされている。 ・・・」」

 

 現在日本で保険適用のあるインフルエンザ治療薬としては、

 いわずとしれた、

 タミフル(オセルタミビルリン酸塩 中外)

450045_6250021r1024_1_11_fig05_2

薬効分類名 抗インフルエンザウイルス剤

効能又は効果 A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防

  

 です(構造式は添付文書より。 以下、同様。)。

 他にも、

リレンザ(ザナミビル水和物 グラクソ・スミスクライン)

340278_6250702g1028_1_12_fig03薬効分類名 抗インフルエンザウイルス剤

効能又は効果 A型又はB型インフルエンザウイルス感染症及びその予防

 

  

シンメトレル(アマンタジン塩酸塩 ノバルティス ファーマ)

300242_1161001c1089_2_06_fig08_3薬効分類名 抗A型インフルエンザウイルス剤

効能又は効果 A型インフルエンザウイルス感染症

  

 

 アマンタジンは、予防剤としては承認は下りていないんですね。 また、正確には、塩野義のペラミビルは、第4の抗インフルエンザウイルス剤です。

 いずれも、インフルエンザウイルスに対する効能・効果を有しているのであり、インフルエンザ治療薬というものではなさそうです!

 

 アメリカはCDCのHPによれば、

 Antiviral drugs are prescription medicines (pills, liquid or an inhaler) with activity against influenza viruses, including swine influenza viruses. (抗ウイルス薬は、豚インフルエンザウイルスを含む、インフルエンザウイルスに対して活性を有する処方医薬(錠剤、液剤、又は吸入剤)である。) Antiviral drugs can be used to treat swine flu or to prevent infection with swine flu viruses. (抗ウイルス薬は、豚fluの治療又は豚fluウイルスによる感染の防止に用い得る。) These medications must be prescribed by a health care professional. (これらの医薬は、ヘルスケアのプロによって処方されなければならない。) Influenza antiviral drugs only work against influenza viruses -- they will not help treat or prevent symptoms caused by infection from other viruses that can cause symptoms similar to the flu. (インフルエンザ抗ウイルス薬は、インフルエンザウイルスのみに対して機能する-fluに類似の症状の起因となる別のウイルスよる感染によって引き起こされる症状を治療又は防止することはない。) flu=流感、インフルエンザ

There are four influenza antiviral drugs approved for use in the United States (oseltamivir, zanamivir, amantadine and rimantadine). (USにおいて、承認されている4つのインフルエンザ抗ウイルス薬がある(オセルタミビル、ザナミビル、アマンタジン及びリマンタジン)。) The swine influenza A (H1N1) viruses that have been detected in humans in the United States and Mexico are resistant to amantadine and rimantadine so these drugs will not work against these swine influenza viruses. (US及びメキシコでヒトに感染している豚A型インフルエンザ(H1N1)ウイルスは、アマンタジン及びリマンタジンに耐性があるので、これらの薬は、これらの豚インフルエンザウイルスに対しては機能しないだろう。) Laboratory testing on these swine influenza A (H1N1) viruses so far indicate that they are susceptible (sensitive) to oseltamivir and zanamivir. (これらの豚A型インフルエンザ(H1N1)ウイルスに対するラボ実験により、これらは、オセルタミビル及びザナミビルに対して感受性であることがこれまでのところ示されている。)

 

 日本との違いは、リマンタジンが日本未承認ということですな(下記構造式は、日化辞Webより)。

J8105a  

   

 

 

 

 備蓄というとき、4千万人分というのは何を意味しているのでしょうかね。 タミフルを例にとれば、用法用量は、1回75mgを1日2回、5日間経口投与するですから、1人分というには、10錠備蓄されているということなんですかね。

 

 現在日本で、臨床試験が行われている抗インフルエンザウイルス剤としては(製薬協の開発中の新薬を参照すると、)、

  塩野義の、

 治験薬記号 剤型 国内  国外 

 S-021812  注射 第Ⅲ相 第Ⅱ/Ⅲ相 導入(バイオクリスト)

  グラクソ・スミスクラインの、

 GSK1557484A   第Ⅱ相 承認 自社

  ただし、こちらは、アジュバント添加(プレ)パンデミック(H5N1)インフルエンザワクチンですから、いわゆる、鳥インフルエンザのワクチンだと思われます。 

  第一三共の、

 CS-8958       第Ⅲ相 -  自社

  財団法人化学及血清療法研究所の、

 KD-334-W  注射 申請   -  自社

  インフルエンザワクチンですが、沈降新型インフルエンザワクチンということで、鳥インフルエンザですね。

 沈降新型インフルエンザワクチンは、2社が平成19年10月には承認申請を既に受けているようです。

  財団法人阪大微生物病研究会と

  社団法人北里研究所(現在は、学校法人北里研究所だと思います。)です。

 前者からは、既に添付文書も発行されていました。

 この会社は、会社HPも更新されていないようですが、どうなってるんでしょうか。。。 他にも重要なワクチンを製造販売しているわけですので、逐次更新をしてもらい広報活動にも力をいれてもらいたいものです。

 

 Wikipediaによれば、富山化学工業のT-705というのもあるようです。

 

 

本日のキーワード: ノイラミニダーゼ阻害剤だらけですねぇ~ 何だか、耐性の観点からすると、βラクタム系抗菌剤と同じ道をたどりそうです。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月21日 (日)

日本経済新聞2009年6月19日付け朝刊

 「後発薬の調剤促す」として、

 「厚生労働省は調剤薬局に対し、後発医薬品を使用する努力義務規定の徹底などを求める通知を月内にも出す。」

 元ネタは、これでしょうか。 今頃ニュースにする必要があるのですかね???

 

 きっと、ジェネリックメーカーからの依頼記事なんでしょうね! 19日はジェネリックメーカーの株価も上がったそうです。

 例えば、とあるメーカーの株価の推移をYahooファイナンスから引用です。

 チャート画像
期間: 1日 | 1週 | 1か月 | 3か月 | 6か月 | 1年

 

 調剤薬局ってどういう形式で儲けがでるんでしょうかね。 ジェネリックを売るのと、先発品を売るのとで、薬局としての売上高に差が出たりするのでしょうか? 昔は、薬価差益(参考: Wikipedia 薬価)とか騒がれ、医薬分業が進められたと理解しとるわけですが、薬による儲けの構造を今一つ理解できておりませぬ。

 

 薬価自体は、こんな感じで複雑に定めらているようですけど。

 

 

本日のキーワード: 後発医薬品使用促進規定 診療報酬の算定方法(調剤報酬点数表)

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月14日 (日)

特許権の存続期間の延長制度検討WG 第1回

 平成20年(行ケ)第10458号が出されましたので、ちょっと古いですが、特許権の存続期間の延長制度検討WGを勉強してみることにしました(なお、カルタヘナも議題に挙がっていますが、割愛です。)。 

 まずは、第1回 平成20年10月30日(木)開催です。

 議題は、

1.特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループの設置について

2.特許権の存続期間の延長制度の見直しの論点について

3.特許権の存続期間の延長制度の対象分野とする条件について

4.カルタヘナ法に基づく処分について

5.延長制度の対象分野の拡大に関するアンケートの実施について

 です。

 先端医療特許検討委員会の方には、日本製薬工業協会知的財産委員会からアステラス製薬の知的財産部長が参画されているだけですが(パブコメでも、日本ジェネリック製薬協会が、その点指摘していましたね。)、さすがに、産業構造審議会では、より実務に近い話をするからか、双方から参画しています。

 製薬協からは、武田薬品の弁理士が委員となっています(こんなの見つけました。 私は商標は担当していませんので、参考情報に過ぎませんが、面白いですね。 2009年3月で集計が終わっているのですが、、、 サイトマップからはリンクされていない頁になりますし、サービスをやめたのでしょうか。。。 登録件数の多い弁理士という欄もあると、良いのですけどね!)。

 

 知的財産推進計画2008によれば、

②特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直す
 特許権の存続期間延長制度に関し、遺伝子組換え生物、iPS細胞由来の生物材料、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)等を対象に追加すべく、総合的な検討を実施
(9頁)

(2)特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直す
 特許権の存続期間延長制度に関して、カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物の使用承認に係る手続やiPS細胞由来の生物材料の承認手続のほか、DDSのように革新的な製剤技術を用いた剤型のみが異なる革新的医薬も対象に追加するなどの制度の対象の見直しを検討する。あわせて、延長の要件、延長する特許権の数及び回数、延長された特許権の効力範囲などを含めた制度全般の在り方につき、国際的な動向等も踏まえつつ、総合的な検討を行う。これらの検討は、直ちに開始し、2008年度中に結論を得る。
(経済産業省、関係府省)
(33頁)

 ということで、WGが動いている訳ですね。

 

 あわせてこんなのありましたが、???(何か報告出てましたっけ?)

(3)機能性食品等に関連する用途発明の保護の在り方を検討する
 いわゆる機能性食品等に関連する用途発明について、研究開発の動向や2006年6月の審査基準改訂後の特許出願・審査の状況及び国際的な保護の状況を踏まえ、これらの発明の特許保護の在り方について効力の及ぶ範囲を含め、2008年度の早期に関連業界より意見を得て議論を行い、その結果に応じて必要な方策を講ずる。
(経済産業省)
(33頁)

 

 さて、本題。 議事録を読んでいきます。 ただ、第1回なので、特段の情報はありません。

 「2つ目の論点は、既に期間延長制度の対象になっております医薬品につきましての制度見直しの要否でございます。薬事法上の医薬品の製造販売の承認は、医薬品の有効成分、効能・効果、剤型、用法・用量、製法等、事細かに特定して行われます。しかしながら、特許法68条の2においては、期間延長される特許権の効力は承認された医薬品の有効成分及び効能・効果の観点のみによって特定され、剤型、用法・用量、製法が異なる医薬品であっても有効成分及び効能・効果が一致すれば効力が及ぶことになっております。したがって、その後に有効成分及び効能・効果以外の項目の異なったさらなる医薬品の製造承認があっても、期間延長の対象とはしておりません。

 しかしながら、20年前の制度導入時には想定できなかった、有効成分及び効能・効果が同じであって剤型のみが異なる医薬品、すなわちDDS製剤についても、薬事法上の承認には有効成分や効能が新規の医薬品と同様に長期間を要しているということで、医薬品の有効成分、効能・効果のみならず、剤型の変更を考慮した期間延長制度の再構築が可能か否かという点が2つ目の論点になります

 特許庁においても、現行制度に問題がある(改正を求められていた)ことは、認識していたということですね。 したがって、飯村コートの判断もこのWGの答申案に先駆けてなされたものといえそうです(だから、そんなにセンセーショナルに捉える必要もなかったかもです。)。 平成20年(行ケ)第10458号と同じ出願人である、平成18年(行ケ)第10311号(リュープリン事件)での出願人がどういった主張をしていたのか確認して見る必要がありそうです。

 特許庁の資料4によれば、法制度の趣旨を踏まえた条件と政策的観点からの条件から考察が必要とされていて、

1.制度の趣旨を踏まえた前提条件
(1)法規制による処分が、業としての特許発明の実施を禁止している。
(2)当該規制対象分野全体として、かつ、不可避的な規制審査期間があり、しかも、当該期間の短縮にも、安全性の確保等の観点からおのずから限界がある。
(3)安全性等の審査に農薬や医薬品と同程度の期間がかかる。

2.政策的観点からの条件
(1)処分と関係する特許権者と第三者とのバランスを考慮する。
(2)イノベーションの進展に寄与するか否かも考慮する。
(3)国際的動向も踏まえる。

 が挙げられています。

 企業側からの、要望として、存続期間の延長登録制度において、イノベーションを保護という名のもとに、、、

 「といいますのは、先ほどiPS細胞のお話が出ました。これは医薬品として承認申請はおろか、臨床試験を開始するまでにも相当の時間がかかると思います。つまり、ある技術においてはリードタイムが非常に長いということで、別途医薬の特許が成立すればいいのですが、物として、あるいは基本的な方法として権利を取った場合に、それが実用化されるまでには20年を超えているというような事態もあると思います。その場合には、臨床試験や審査の期間だけを見ても評価できないところがあると思いますので、特許の残存期間もぜひ1つの観点として見ていただければと思います

 とはいえ、特許法における存続期間の延長登録制度は、あくまでも、資料7の

 「特許権の存続期間の延長制度は、行政庁等の認可等のための審査等により特許発明を実施できない期間が発生することにより、特許権による保護期間が浸食されている場合に、浸食された期間を回復して、特許権の対象とされている発明に有効な保護を与えることによって、特許制度の目的を達成することを目的としている。

 という、一橋大学教授の相澤教授の見解があるわけで、明治大学の熊谷教授(弁理士受験生にとっては、”くま”で、・・・)の見解である

 「リードタイムが長い発明その他いろいろあると思いますが、20年という存続期間を決めていることを前提として、例外として存続期間の延長をいかなる要件で認めるのかは、昭和62年の制度が創設された段階と現在と存続期間延長制度の趣旨において違いはないと思います。実態として農薬と医薬品以外の分野で同じような状況が生じていることが実証されるのかどうかが、対象を考えるかというとき重要ではないかと思います。

 も考慮すれば、当然に、

 「すなわち、特許権の存続期間の延長制度は、事業化までの期間を保護するという制度ではなく、特許発明を業として実施できる期間の侵食を保護する規定だと思いますので、その観点から、iPS関連の技術に関して特許発明の実施期間が侵食される可能性が具体的に認識されているのかどうか、その辺に関して知見をお持ちの方がいらっしゃいましたら教えていただきたいのですが。

 です。

 

 

本日のキーワード: 特許権の残存期間と浸食された期間の回復

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月 8日 (月)

平成20年(行ケ)第10458号

平成20年(行ケ)第10458号 審決取消請求事件 平成21年5月29日判決言渡

 審決取消(下線は付記)

裁判所の判断

 「当裁判所は,本件出願に対し,本件先行処分があったことを理由として,本件発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとした審決の判断には,以下の2点(「特許法67条の3第1項1号該当性の誤り」及び「先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤り」)において誤りがあり,その誤りは,いずれも審決の結論に影響するものであるから,審決を取り消すべきものと判断する。」(45頁)

 ということで、これまでの存続期間の延長登録の出願の審査実務に影響が出そうです。 また、延長登録の効力範囲にまで影響が・・・ 審査は通りやすくなるけれども、権利範囲は狭くなる方向に行く可能性がありますので、今後の判例を要チェックです。 ただし、本判決の射程がどこまでかも考慮する必要があります。

 争点となった条文

67条の3第1項第1号 その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。

68条の2 特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。

 「上記規定によれば、特許権の存続期間の延長登録の出願に関し,同条1号所定の拒絶査定をするための処分要件(要件事実)は,「その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分(判決注 本件においては,薬事法14条1項所定の医薬品の承認)を受けることが必要であつたとは認められないとき」であり,そのいわゆる主張,立証責任は,あげて,拒絶査定をする被告において負担する。」(46頁)

 ということで、拒絶理由は(後に繋がっていく中で、「あくまでも」と読めると思いますが)、あくまでも67条の3第1項第1号から導くことが必要としていると判示しています。

 先に感想をば、、、 改正時の事情も勉強できていませんし、判決の中で多々挙げられている見解にも目を通したわけではないので、間違った解釈かもしれませんが、存続期間の延長登録制度が導入された昭和62年改正法から、時代趨勢が変更しているのに、特許庁が条文の文言を変えてこなかったというところにも問題がありそうです。 そもそも、存続期間の延長登録の審査については、平成18年ごろまでに判決が出揃って、実務の方向性がようやく定まったと考えられていたと思います。 その後も、武田薬品だけは、頑張っていたということになると思いますが。。。 特許権の存続期間がトピックになってきているのも、2010年問題、ジェネリックの台頭、LCMの観点からの結晶、製剤特許の活用といった点も大きいでしょう。 そもそも、三極で唯一、何回でも、また、どの特許に対しても延長できるという制度設計をしているところも争いが増える点でしょう。 また、ブロックバスターは売れると分かっているのですから、何としてでも独占を延長したいというのが企業の意向でしょうし。 昭和62年時と現状は、製薬業界の置かれている状況、特許戦略の状況も違う気がしてますので、抜本的な改正(解釈も含めて)が必要かもです。 (参考 Wikipedia ブロックバスター) 

 「特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許発明を実施する意思及び能力があってもなお,特許発明を実施することができなかった特許権者に対して,「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除されることとなった特許発明の実施行為について,当該「政令で定める処分」を受けるために必要であった期間,特許権の存続期間を延長するという方法を講じることによって,特許発明を実施することができなかった不利益の解消を図った制度であるということができる。」(49頁)

 特許法67条の3第1項第1号の「政令で定める処分」の用語を解釈する上で、法の趣旨をまずは、明確にしています。

 「以上の点を前提として整理する。特許法67条の3第1項1号は,「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と,審査官(審判官)が,延長登録出願を拒絶するための要件として規定されているから,審査官(審判官)が,当該出願を拒絶するためには,①「政令で定める処分」を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと,又は,②「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」が「『その特許発明の実施』に該当する行為」に含まれないことを論証する必要があるということになる(なお,特許法67条の2第1項4号及び同条2項の規定に照らし,「政令で定める処分」の存在及びその内容については,出願人が主張,立証すべきものと解される。)。」(49頁)

 ここまでで、「政令で定める処分」の解釈については何も裁判所はいっていません。

 67条の3第1項第1号により審査官(審判官)が拒絶するためには、条文の解釈として、

 ①「政令で定める処分」を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと

 出願人が立証した、出願人が受けた「政令で定める処分」については、証拠として、通常、医薬品医療機器総合機構による審査結果が添付されているわけですから、、、 そうすると、条文の文言に当て嵌めてみると、一般には「禁止が解除されたとはいえない」とはならないこととなります。 言い直せば、機構により承認されていれば、政令で定める処分によって何らかの禁止は解除されているので、拒絶理由は①に基づいては発生しないことになります。 ところが、これまでの特許庁の運用では、機構による承認がなされたとしても、新たに禁止が解除されていない、既に禁止は解除されていたとして、①に該当すると判断していたわけです。 ここでの、「政令で定める処分」を、文言通り解釈するのではなく、68条の2から導いて、「有効成分」と「効能・効果」の点からの処分でなければならないとしたわけです。 すなわち、「政令で定める処分」を、「有効成分」と「効能・効果」に関する処分として、同様の「有効成分」及び「効能・効果」についての先の処分があれば、禁止が新たに解除されていないとしていたということです。

 ②「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」が「『その特許発明の実施』に該当する行為」に含まれないこと

 ②が審査の課程で問題になることはあまりないでしょう。 「政令で定める処分」を受けた医薬品が、特許発明の技術的範囲に属するか確認するということだと思いますので、通常は、大丈夫ですね。 医薬発明の場合、用途発明の出願も多数なされている訳ですが、製造販売している医薬品の直接関連する用途は、通常、物質特許の際に明細書中で記載されていることが多いですからね(用途発明に基づいた延長登録の出願はあまりないでしょう。)。 また、存続期間の延長登録の出願の場合、用途特許は特段関連せず、物質特許、結晶特許、又は製剤特許が関与してくるでしょうし。

 また、②について、これまでの審査では、「有効成分」と「効能・効果」について判断していたわけですので、問題はなかったでしょう。

 「しかし,本件先行処分の対象となった先行医薬品は,本件発明の技術的範囲に含まれないこと,本件先行処分を受けた者が,本件特許権の特許権者である原告でもなく,専用実施権者又は登録された通常実施権者でもないことは,当事者間に争いがなく,本件先行処分によって禁止が解除された先行医薬品の製造行為等は本件発明の実施行為に該当するものではない。本件においては,本件先行処分が存在するものの,本件先行処分を受けることによって禁止が解除された行為が,本件発明の技術的範囲に属し,本件発明の実施行為に該当するという関係が存在するわけではない。」(50頁)

 本件は、これまでの延長登録の出願とは若干事例を異にするわけですので、射程がどこまでかは、今後の課題になるわけです。

 これまでの延長登録の出願は、簡単に言うと、

 物質特許に対して、(効能・効果に変更なく、効能・効果での延長登録は既にされている中で)新用量又は新剤型での承認を得た場合に、延長登録が認められるかという点が争点だったわけですが、

 今回の案件では、

 製剤特許に対して、新剤型医薬品として承認を受けた場合に、延長登録が認められるかという点が争点になったわけですので、若干、事例が異なるといえば異なる訳ですが・・・

 「したがって,本件先行処分の存在は,本件発明に係る特許権者である原告にとって,本件発明の技術的範囲に含まれる医薬品について薬事法所定の承認を受けない限り,本件発明を実施することができなかった法的状態の解消に対し,何らかの影響を及ぼすものとはいえない。本件先行処分の存在は,本件発明の実施に当たり,「政令で定める処分」(本件では薬事法所定の承認)を受けることが必要であったことを否定する理由とならない。」(50-51頁)

 物質特許に対して、新剤型・新用量医薬品として承認を受けた場合には、どうなるんでしょうか? 前段部分を読むと、物質特許に対して、新製剤の承認を得なくても禁止は解除されているわけで、先行処分の存在により、新剤型については、延長登録は、認められないとも読めます。

 物質特許に対しては、新剤型・新用量医薬品の承認を受けたとしても、禁止が解除されたわけではないと判断されるとなると、製剤特許に対してだけ、新剤型医薬品の承認を受ければ禁止が解除されたといえ、新用量では、製剤特許の禁止は解除されるものではないとなりそうです。 そうなってくると、先に「先発メーカー寄り」とコメントしましたが、効力範囲が狭まる可能性を鑑みると、寧ろ、武田薬品は自分の首を締めると共に、製薬協全体の首も締めたかもしれません。 まぁ、審査基準の改定によって、用法用量についても特許が認められるようになれば、新用量医薬品での承認を受けた場合に用法用量特許について延長されるとは思いますが。。。

 現行で、先の処分がある中で、後の処分として、新たに、新効能医薬品、新剤型医薬品、新用量医薬品として承認を受けた場合を考えてみます

          新効能医薬品 新剤型医薬品 新用量医薬品

物質特許       ○         ×        ×

製造方法特許    ○(?)      ×        ×

用途特許       ○         ×        ×

結晶特許       ○         ×        ×

製剤特許       ○         ×        ×

用法用量特許    ○         ×        ×

 (認められていればとして)

 ではないかと思いますが、今回の判決を受けた最悪のケースとして、まとめてみると、

           新効能医薬品 新剤型医薬品 新用量医薬品

物質特許       ×         ×        ×

製造方法特許    ×         ×        ×

用途特許       ○         ×        ×

結晶特許       ×         ×        ×

製剤特許       ×         ○        ×

用法用量特許    ×         ×        ○

 となってしまわないでしょうか?

 「本件発明を実施することができなかった法的状態の解消に対し」をどう解釈するかだと思うのですが、疑問が残ってしまいました。。。 

 物質特許のうち、新効能に係る物資特許の部分は、請求項の記載に対する黙示の下位概念とでもいうような位置づけで、やはり本件発明を実施することができなかった部分であると判断されるという理解でよいんですかね??? そのように考えると、機構による全ての承認に対して、延長登録が認められることになると思いますが。。。 出願すればよいという状態が生まれそうです。。。

 そして、今後は、②の要件に合致しているのかという点の判断が求められることになりそうですが、そうすると、出願する方も②の要件の充足性を述べなければいけないわけで、結構大変なことになりそうです。 というのも、これまでは、製剤のミソですので、製剤における添加剤については黒塗りしていたんではないでしょうか? しかし、②の要件が有効成分と効能・効果だけではなく、構成要件を満たしているかという点に移ってくるとすると、製剤特許において少なくとも請求項1に規定している構成要件を充足していることを証拠として提示する義務は出願人に課せられたわけで、黒塗りできなくなるのでは???

 

 先発メーカーにとってはもろ手を挙げて喜べないというか、寧ろ好ましくない状況が生まれていないでしょうか? 

 本件特許の請求項1は、 

(A)薬物を含有し,最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である速放性組成物と,
(B)薬物を含んでなる核を,(1)水不溶性物質,(2)硫酸基を有していてもよい多糖類,ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基を有する多糖類,メチルセルロース,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコールから選ばれる親水性物質および(3)酸性の解離基を有しpH依存性の膨潤を示す架橋型アクリル酸重合体を含む被膜剤で被覆してなる放出制御組成物とを組み合わせてなる医薬。

 です。 ②に該当する証拠の提出は、出願人に課されたわけで、審判部に戻されたとしても、、、 ①は容易にクリアーしますが、②のクリアーは無理(難しい)でしょう! 多分、臨床試験では、(A)のみの確認試験はやっていないと思いますので、武田薬品、自爆でしょうか・・・ きっと、審判では、②を満たさないとして拒絶され、また、審決取消訴訟でしょうか! そうなったときに初めて、知財高裁の意向も読めると思いますが、転勤がつきものの裁判官ですから、飯村コートはその時まで待っていてくれるのでしょうか???

 

 

本日のキーワード: 68条の2について検討を加えると共に、武田の主張も要チェックです。

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

平成20年(行ケ)第10458号 その2

 「2 先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤り
 当裁判所は,審決が,先行処分を理由とする特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力を,処分の対象となった品目とは関係なく,「有効成分(物)」,「効能・効果(用途)」を同一とする医薬品に及ぶものと解して,原告のした延長登録の出願に対して,政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないと判断した点に関し,特許法68条の2の解釈上の誤りがあると解する
(51頁)

 としています。 上告することで、知財高裁(飯村コート)の出した「解する」との考え方が間違いと判定されなくもないと思いますので、上告されるのか、上告されないのか、また、今後どのようにして登録査定又は拒絶査定が出されるのかについても要チェックです(何回も要チェックモードになります。)。

 これは,特許請求の範囲の記載によって特定される特許発明の技術的範囲が「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された範囲よりも広い場合に,「政令で定める処分」を受けることが必要なために特許権者がその特許発明を実施することができなかった範囲(「物」又は「物及び用途」の範囲)を超えて,延長された特許権の効力が及ぶとすることは,特許権者と第三者の公平を欠くことになるからである。すなわち,特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許権者がその特許発明を実施する意思及び能力を有するにもかかわらず,特許法67条2項所定の「安全性の確保等を目的とする法律」の規定によりその特許発明の実施が妨げられた場合に,実施機会の喪失による不利益を解消させる制度であるから,そのような不利益の解消を超えて,特許権者を有利に扱うことは,制度の趣旨に反することになる。」(52頁)

 判決の根底として、審査を終えた状態から、初めて68条の2の判断ができるとの判示がなされたと考えられます。 すなわち、68条の2の解釈をする前に、審査の結果としての、「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された範囲が定まっている必要があるということであり、67条の3の拒絶理由を判断する際に、68条の2は、関係なく、67条の3の拒絶理由に該当しないとして、登録された後に、68条の2により効力範囲の調整が行われるということですね。 したがって、効力範囲の調整規定である68条の2に基づいて、67条の3第1項第1号を判断するのは、明らかにおかしいことになります。

 「以上のとおり,特許法68条の2は,特許発明の実施に薬事法所定の承認が必要であったことを理由として存続期間が延長された場合,当該特許権の効力は,薬事法所定の承認の対象となった物(物及び用途)についての当該特許発明の実施以外の行為には及ばないとする規定である。」(52頁)

 とりあえず、延長しちゃいなさいということでしょうか。 そして、権利範囲で調整すると。 この考え方は、先発メーカーに取っては、両刃の剣ですね。

 今までは、製剤特許とかでも、「有効成分」と「効能・効果」で延長がされていたわけですから、別製剤についても効力の延長がなされていたわけですよね(一応)。 ところが、今回の文理解釈により、承認を受けた製剤そのもの以外については、効力範囲外になりますので、虫食い申請を許す厚生労働省の動きからすると、先発の製剤に類似する製剤がより早く出てくることになりそうです!

 青本や注解特許法を眺めてみようと思います。

 「薬事法14条1項が,「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」と規定しており,同項に係る承認に必要な審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」(薬事法14条2項3号参照。なお,平成16年法律第135号による改正前の薬事法14条2項柱書きでは,審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用等」とされている。)とされていること,薬事法14条9項が,「第一項の承認を受けた者は,当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)は,その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては,第二項から前項までの規定を準用する。」と規定していること(なお,平成16年法律第135号による改正前の薬事法14条7項の規定も同じ。)に照らすならば,薬事法上の「品目」とは,形式的には,上記の各要素によって特定されたそれぞれの物を指し,それぞれを単位として,承認が与えられるものというべきである。」(53頁)

 読み下すと、

 薬事法14条1項が,「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」と規定しており,同項に係る承認に必要な審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項とされていること,

 薬事法14条9項が,「第一項の承認を受けた者は,当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするときは,その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては,第二項から前項までの規定を準用する。」と規定していることに照らすならば,

 薬事法上の「品目」とは,形式的には,上記の各要素によって特定されたそれぞれの物を指し,それぞれを単位として,承認が与えられるものというべきである。

 なので、14条1項及び9項が重要です。

薬事法第十四条  医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品及び第二十三条の二第一項の規定により指定する体外診断用医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)、厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品又は医療機器(一般医療機器及び同項の規定により指定する管理医療機器を除く。)の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない
 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の承認は、与えない。
 申請者が、第十二条第一項の許可(申請をした品目の種類に応じた許可に限る。)を受けていないとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器を製造する製造所が、第十三条第一項の許可(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)又は第十三条の三第一項の認定(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)を受けていないとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項の審査の結果、その物が次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 申請に係る医薬品、医薬部外品又は医療機器が、その申請に係る効能、効果又は性能を有すると認められないとき。
ロ 申請に係る医薬品、医薬部外品又は医療機器が、その効能、効果又は性能に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品、医薬部外品又は医療機器として使用価値がないと認められるとき。
ハ イ又はロに掲げる場合のほか、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合していると認められないとき。
 第一項の承認を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならない。この場合において、当該申請に係る医薬品又は医療機器が厚生労働省令で定める医薬品又は医療機器であるときは、当該資料は、厚生労働大臣の定める基準に従つて収集され、かつ、作成されたものでなければならない。
 第一項の申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が、第十四条の十一第一項に規定する原薬等登録原簿に収められている原薬等(原薬たる医薬品その他厚生労働省令で定める物をいう。以下同じ。)を原料又は材料として製造されるものであるときは、第一項の承認を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該原薬等が原薬等登録原簿に登録されていることを証する書面をもつて前項の規定により添付するものとされた資料の一部に代えることができる。
 第二項第三号の規定による審査においては、当該品目に係る申請内容及び第三項前段に規定する資料に基づき、当該品目の品質、有効性及び安全性に関する調査(既に製造販売の承認を与えられている品目との成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能等の同一性に関する調査を含む。)を行うものとする。この場合において、当該品目が同項後段に規定する厚生労働省令で定める医薬品又は医療機器であるときは、あらかじめ、当該品目に係る資料が同項後段の規定に適合するかどうかについての書面による調査又は実地の調査を行うものとする。
 第一項の承認を受けようとする者又は同項の承認を受けた者は、その承認に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が第二項第四号に規定する厚生労働省令で定める基準に適合しているかどうかについて、当該承認を受けようとするとき、及び当該承認の取得後三年を下らない政令で定める期間を経過するごとに、厚生労働大臣の書面による調査又は実地の調査を受けなければならない。
 厚生労働大臣は、第一項の承認の申請に係る医薬品又は医療機器が、希少疾病用医薬品、希少疾病用医療機器その他の医療上特にその必要性が高いと認められるものであるときは、当該医薬品又は医療機器についての第二項第三号の規定による審査又は前項の規定による調査を、他の医薬品又は医療機器の審査又は調査に優先して行うことができる。
 厚生労働大臣は、第一項の申請があつた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、同項の承認について、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。
 申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品が、既に製造販売の承認を与えられている医薬品、医薬部外品又は化粧品と、有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なるとき。
 申請に係る医療機器が、既に製造販売の承認を与えられている医療機器と、構造、使用方法、効能、効果、性能等が明らかに異なるとき。
 第一項の承認を受けた者は、当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)は、その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては、第二項から前項までの規定を準用する。
10  第一項の承認を受けた者は、前項の厚生労働省令で定める軽微な変更について、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣にその旨を届け出なければならない。
11  第一項及び第九項の承認の申請(政令で定めるものを除く。)は、機構を経由して行うものとする。

 申請に係る医薬品の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項

 品目の品質、有効性及び安全性に関する調査(既に製造販売の承認を与えられている品目との成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能等の同一性に関する調査を含む。)

 との記載からすると、

 品質、有効性及び安全性には、名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用が含まれるということで、

 すなわち、

 品質、有効性、安全性についての審査とは、名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用の審査をするということです。 14条5項では、副作用が品質のうちから削除されているのですが、副作用については同一性よりも再度審査されるということでしょうか(成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能はいずれもポジティブな特性なので、同一性が担保されていれば問題ないですが、副作用については、成分~性能のいずれかが異なれば同一性が担保されることはないということで、再度審査されるということでしょうか。)。 この場合、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能が同一であれば、副作用も審査するとはいえ、同一ということでしょうかね。 逆にいうと、副作用は、成分~性能の同一性が示されれば、審査の対象ではないという道が示されているということでしょうか。

 したがって、薬事法上の、審査の対象は、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能ということになります(プラスとして、副作用)。

 「さらに,「用法」,「用量」,「使用方法」,「効能」,「効果」,「性能」は,「用途発明」における「用途」に該当することがあり得るとしても(この点,「用途」に該当するというためには,特許法上,「用途発明」として,保護されるべき内容を備えていること,すなわち,客観的な「物」それ自体の構成は同一であっても,「用途」が異なることにより,特許法上,「物」の発明として「同一」とは認められないと評価されるだけの内容を備えていることが必要である。),客観的な「物」それ自体の構成を特定するものではない。」(54頁)

 さらには、

 「したがって,「政令で定める処分」が薬事法所定の承認である場合,「政令で定める処分」の対象となった「物」とは,当該承認により与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって特定された「物」を意味するものというべきである。なお,薬事法所定の承認に必要な審査の対象となる「成分」とは,薬効を発揮する成分(有効成分)に限定されるものではない。」(54頁)

 とすると、

 68条の2の解釈においては、

 物としては、「成分、分量、構造」であり、

 用途としては、「用法、用量、使用方法、効能、効果、性能」ということになります。

 これまでは、

 物としては、成分の一要素である、「有効成分」と、

 用途としては、「効能、効果」で判断していたということだったと思いますので、

 えらく権利範囲が狭まることになります。

 67条の3第1項第1号では、

 とりあえず、機構からの承認が下りていれば、①の要件はクリアーすると思いますが(より認められやすくなるというプラスの方向)、②の要件を満たすために、出願人が証拠の提出が求められることを考えると(負担の増大、秘密事項の開示必要というマイナスの方向)、結構、出願人(先発メーカー)にとって、マイナス面の方が大きく、良い判決とはいえないような気がしてきました。

 このことは、

 「以上のとおり,特許発明が医薬品に係るものである場合には,その技術的範囲に含まれる実施態様のうち,薬事法所定の承認が与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施,及び当該医薬品の「用途」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施についてのみ,延長された特許権の効力が及ぶものと解するのが相当である(もとより,その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは,技術的範囲の通常の理解に照らして,当然であるといえる。)。」(54頁)

 と判示されていることからも、言えるのではないでしょうか。 それがゆえのなお書きでしょうね。 ようは、均等を持ち出さないと権利範囲が狭くなりすぎるということなのでしょう。 ここで、製剤特許で、製剤の成分がマーカッシュで記載されている場合に、その1つについて承認を受けた場合に、マーカッシュ中の他の成分についても、ジェネリックメーカーは承認を受けることができないということなんでしょうか? ここでいう、均等物や実質的に同一と評価される物とは何を意味しているのでしょうかね??? 分量が100mg錠である場合に、110mg錠ぐらいは均等物ということなんでしょうかね???

 「しかし,上記の説明は,合理性がない。すなわち,「承認」を受けることによって,禁止が解除される範囲に関して,①医薬品を特定する各要素によって画された範囲と解すべきか,②有効成分(物質)と効能・効果(用途)のみによって画された広い範囲と解すべきかの論点に対して,単に,「薬事法の本質」や「規制のポイント」との用語を使って結論を導いているにすぎず,およそ論理的な説明はされていない
 薬事法の承認が,多くの要素で画された単位でされている以上,その承認の効果は,特段の合理的な事情がない限り,その範囲を超えて効力を有することはないはずである。すなわち,製造販売の禁止が解除される範囲は,一要素にすぎない「有効成分」や「効能・効果」で画された範囲よりも狭いはずである。」
(59頁)

 前段では、特許庁の主張がぼろくそに叩かれています。 この判決を通して特許庁の主張でとりいれられた部分は一切ないので、仕方ないところなのかもしれませんけど。。。

 後段から、68条の2により延長される効力範囲は、非常に狭いということになることが明示されたといえます。

 「それにもかかわらず,物質を医薬品として製造販売することを規制することが薬事法の本質であるとして,物質(有効成分)で画された広範な範囲に解除の効果が生じるとする説明は,解釈論によって,特許権の存続期間の延長登録の出願の拒絶理由として,①「その特許権の存続期間が既に延長されたものであるとき。」,②「その特許発明が医薬品に関するものである場合において,当該発明が延長登録出願の理由とされた処分に先行する別の処分の対象となった医薬品と有効成分及び効能・効果において重複するとき。」を付加したのと同様の結果を導く,いわば事実上の立法をしたものと評価すべきであって,合理的な解釈とはいえない。」(60頁)

 こうなってくると、2011年に予定されているとかという噂の特許法の大改正で、立法するしかないでしょう! といいつつも、特許庁は立法府ではありませんけど。。。

 「また,医薬品の「成分」は,「有効成分」以外のものであっても,医薬品の有効性,安全性を左右することがあり,「分量」,「構造」も同様である。さらに,「用法」,「用量」,「使用方法」,「性能」,「副作用その他の品質」も,「効能」,「効果」と同じく,医薬品の有効性,安全性を左右するものである。」(62頁)

 「ところで,このような実務を前提とした上で考察すると,仮に,特許法68条の2の「物」を「有効成分」と解釈するとしたならば,薬事法所定の承認を受けた医薬品を技術的範囲に含まない請求項に係る発明についてまで,存続期間の延長登録の効果を及ぼすことになり,そのような結果は,特許権者に不当な利益を与え,本来の存続期間の満了後に特許発明を実施しようとする者に著しい不利益を課すことになり,存続期間の延長登録の制度の趣旨に反する,不公平な結果を招く。
 この点,「政令で定める処分」の対象となった「物」に係る存続期間の延長登録の効果が及ぶ範囲を,当該承認が与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって画された「物」についての特許発明を実施する行為と解するならば,「物」を「有効成分」と解することによって生ずる,特許権の存続期間の延長登録の制度の趣旨に反する不当な結果を避けることができるものといえよう。」
(63頁)

 決定的ですね。。。 

 ただ、用法用量は、今後、物に付随してくるはずですが、特許法の審査における運用がまた否定されることになるのでしょうか。。。 医薬品における「物」を、成分、分量、構造に限った今回の判決をも考慮した基準作りがなされるのでしょうか。。。 飯村コートは、用法用量を、効能効果のように用途発明の観点から審査しなさいということを演繹しているのでしょうか。。。

 今後の手続きについても、

 「しかし,出願人は,願書に政令で定める処分の内容を記載し(特許法67条の2第1項4号),資料を添付しなければならないこと(特許法67条の2第2項),資料等に営業秘密が記載されている場合には,閲覧・謄写の制限も可能であること(特許法186条1項ただし書),詳細な情報が開示されないのは,特許庁が特許法68条の2にいう「物」を「有効成分」と解釈する実務を採用していることによるものであることからすれば,被告の上記主張は,特許法68条の2にいう「物」を「成分」,「分量」及び「構造」と解することを妨げる
ものとはいえない。」
(64頁)

 とはいえ、効力範囲にもろに影響を与える以上、承認を受けた部分については、公示する必要があるでしょうから、閲覧・謄写の制限はどうなんでしょうか? 法律上はできるようですが。。。 判決確定後のこの辺の運用の変遷にも留意が必要そうです。 今、存続期間の延長登録の出願したくないですね。。。

第百八十六条  何人も、特許庁長官に対し、特許に関し、証明、書類の謄本若しくは抄本の交付、書類の閲覧若しくは謄写又は特許原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分に記録されている事項を記載した書類の交付(第三項において「証明等」という。)を請求することができる。ただし、次に掲げる書類については、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるときは、この限りでない。

 願書、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書若しくは外国語書面若しくは外国語要約書面若しくは特許出願の審査に係る書類(特許権の設定の登録又は出願公開がされたものを除く。)又は第六十七条の二第二項の資料
 拒絶査定不服審判に係る書類(当該事件に係る特許出願について特許権の設定の登録又は出願公開がされたものを除く。)
 特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する再審に係る書類であつて、当事者又は参加人から当該当事者又は参加人の保有する営業秘密が記載された旨の申出があつたもの
 個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがあるもの
 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるもの
 
第六十七条の二  特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
 特許番号
 延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)
 前条第二項の政令で定める処分の内容
 前項の願書には、経済産業省令で定めるところにより、延長の理由を記載した資料を添付しなければならない。

 67条の2第2項の資料は、

特許法施行規則第三十八条の十六  特許法第六十七条の二第二項の規定により、願書に添付しなければならない延長の理由を記載した資料は、次のとおりとする。
 その延長登録の出願に係る特許発明の実施に特許法第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたことを証明するため必要な資料
 前号の処分を受けることが必要であつたためにその延長登録の出願に係る特許発明の実施をすることができなかつた期間を示す資料
 第一号の処分を受けた者がその延長登録の出願に係る特許権についての専用実施権者若しくは登録した通常実施権者又は当該特許権者であることを証明するため必要な資料

 です。

 

  

本日のキーワード: 予定通りなのかしらん?

 

宿題: 武田薬品の主張内容&青本、注解特許法

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2009年6月 6日 (土)

日本経済新聞あれこれ

 昨今、日本の製薬メーカーは、ガン領域への進出をM&Aにより明確化させているわけですが、、、

 武田薬品-Millenium Pharmaceuticals, Inc.

 エーザイ-MGI Pharma, Inc.

 関連して、2009年5月19日(火)付け朝刊に出ています。

 上記以外に、

 塩野義-サイエル・ファーマ 

 第一三共-ランバクシー・ラボラトリーズ

 武田薬品-IDMファーマ

 塩野義-ビクトリー・ファーマ

 日本製薬メーカーベスト4の一角アステラスは動けていないですね。 CV Therapeutics, Inc.の件で、買収に失敗したことから出遅れているというとこでしょうか。 日本の製薬メーカーも2010年問題を抱えていることから、被買収の対象にはなり難いでしょうか。 とはいえ、また、「Pfizer to aquire Wyeth」(2009年1月26日発表)という動きもあるわけですので、欧米の再編が進むときに、日本製薬メーカーも巻き込まれるのか?! 楽しみなところです。 とはいえ、各国ごとの薬事行政があるので、M&Aが国を跨いでは起こり難いという事情もあるとは思いますが。。。

 

 前に、(M&Aの様子が各企業の国旗付きで)分かりやすい図を見た気がするのですが、見つけられなかったので、こちらのPDFファイルを(図表14です。)。 そして、2009年5月11日(月)付け朝刊に繋がるということでしょう。

 「米ファイザーに中止勧告」

 「エーザイが製薬世界最大手の米ファイザーに対し、アルツハイマー型認知症治療薬「アリセプト」の米国での共同販売促進契約などを打ち切ると申し入れたことが分かった。 ・・・ エーザイはこの買収が、アリセプトに関連した事前協定に抵触したとして、「契約を終了する権利がある」と主張した。」(参考:エーザイHP

 ワイスのAAB-001 Bapineuzumab 軽度から中等度のアルツハイマー型認知症(注射剤)の存在が、契約条項に違反するということなんでしょうかね。

 

 2009年5月31日(日)付け朝刊

 「塩野義など製薬大手 肥満症治療薬に参入」

 「エーザイや塩野義製薬など製薬各社は、肥満症治療薬に参入する。」

 「エーザイが開発中の新薬候補は、脳にある神経伝達物質の働きを強め、満腹感を高める作用があるとみられる。 米製薬大手アボット・ラボラトリーズが開発し、エーザイが日本での開発販売権を得た。 ・・・二-三年以内の発売を目指す。」

 とありますが、エーザイ(シブトラミン SNRI)のネタは古くないですかね? 2007年に製造承認申請していますので、もうじき結果が分かるんでしょうか。 抗肥満薬は概ね、中枢に働きかける薬剤ですので、機構による審査も、慎重なんでしょうか。。。 まぁ、両者の株価上昇のための新聞戦略の一環だとは思われますけど、1面に乗せるネタなんでしょうか? Photo_8

 本邦で既承認の抗肥満薬としては、ノバルティスファーマのマジンドール(サノレックス)があります(Wikipedia)。 マジンドールは、例えば、BMI35以上の患者さんに適用ですので、身長170cmとした場合、1.7×1.7×35=約101kg以上となります。 抗肥満薬に関しては、まだまだ予防の観点での投与ということにはなっていないようですね。 まずは、食事療法、運動療法で治しなさいということなんでしょうね。。。

 

 「武田薬品工業は食事で摂取した脂肪の吸収を抑制する新薬の開発に取り組んでいる。」

 Alizymeから導入しているATL-963(リパーゼ阻害剤)のことですね。 AlizymeのHPによれば、導入先である武田の方が臨床試験が進行しているようで、その状況は面白いですね。

 

 「塩野義は今夏にも、健康な人が新薬候補を飲んで安全性を確かめる第一段階の治験を始める。 ・・・ 十年以内の発売を目指す。」

 って、随分先の話ですな。。。 

 PⅠ段階にある薬剤としては、ニューロペプタイドY(NPY) Y5受容体アンタゴニストのS-2367のことでしょうか(USでの関連情報)。 

 

 武田薬品のHPを見ていて面白いなぁ~と思ったのが、2009年5月15日(金)付け朝刊にも関わるのですが(武田薬品HP)、

 「米で特許 実質延長 糖尿病薬 2016年までに」

 「武田薬品工業は十四日、主力製品の糖尿病薬「アクトス」に他の糖尿病薬の成分を配合し、「アクト・プラスメットXR」の販売許可を米食品医薬品局(FDA)から取得したと発表した。 アクトスの米国特許は二〇一一年一月に切れるが、今回の配合剤の特許は一六年まで有効。 主力製品の特許を実質的に五年間延長できることになる。」(参考 Wikipedia 2010年問題

 Photo

 Photo_9  

 

   

 

 武田薬品HPのニュースリリースを見てみると、

 長期投与の追加臨床試験(糖尿病治療薬として)

  SYR-322(alogloptin DPP-IV阻害剤)+アクトス(pioglitazone)

 製造販売承認申請(高血圧症治療薬として)

  ブロプレス(カンデサルタン シレキセチル ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗剤))+アムロジピンベシル酸塩(カルシウム拮抗薬)  Photo_2

 

 

Photo_10

 

 

 

 などなど、合剤に関するニュースリリースが多いわけです。 武田薬品が、既存薬の売上を如何に減らさないようにするかのLCM(Life Cycle Management)に眼を向けて昨今動いている(4、5年前の戦略が合剤に向いていたということですが)ことが良く分かります。

 

 上記化学式は添付文書より

 

 

本日のキーワード: 痩せ薬

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)