2009年6月14日 (日)

特許権の存続期間の延長制度検討WG 第1回

 平成20年(行ケ)第10458号が出されましたので、ちょっと古いですが、特許権の存続期間の延長制度検討WGを勉強してみることにしました(なお、カルタヘナも議題に挙がっていますが、割愛です。)。 

 まずは、第1回 平成20年10月30日(木)開催です。

 議題は、

1.特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループの設置について

2.特許権の存続期間の延長制度の見直しの論点について

3.特許権の存続期間の延長制度の対象分野とする条件について

4.カルタヘナ法に基づく処分について

5.延長制度の対象分野の拡大に関するアンケートの実施について

 です。

 先端医療特許検討委員会の方には、日本製薬工業協会知的財産委員会からアステラス製薬の知的財産部長が参画されているだけですが(パブコメでも、日本ジェネリック製薬協会が、その点指摘していましたね。)、さすがに、産業構造審議会では、より実務に近い話をするからか、双方から参画しています。

 製薬協からは、武田薬品の弁理士が委員となっています(こんなの見つけました。 私は商標は担当していませんので、参考情報に過ぎませんが、面白いですね。 2009年3月で集計が終わっているのですが、、、 サイトマップからはリンクされていない頁になりますし、サービスをやめたのでしょうか。。。 登録件数の多い弁理士という欄もあると、良いのですけどね!)。

 

 知的財産推進計画2008によれば、

②特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直す
 特許権の存続期間延長制度に関し、遺伝子組換え生物、iPS細胞由来の生物材料、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)等を対象に追加すべく、総合的な検討を実施
(9頁)

(2)特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直す
 特許権の存続期間延長制度に関して、カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物の使用承認に係る手続やiPS細胞由来の生物材料の承認手続のほか、DDSのように革新的な製剤技術を用いた剤型のみが異なる革新的医薬も対象に追加するなどの制度の対象の見直しを検討する。あわせて、延長の要件、延長する特許権の数及び回数、延長された特許権の効力範囲などを含めた制度全般の在り方につき、国際的な動向等も踏まえつつ、総合的な検討を行う。これらの検討は、直ちに開始し、2008年度中に結論を得る。
(経済産業省、関係府省)
(33頁)

 ということで、WGが動いている訳ですね。

 

 あわせてこんなのありましたが、???(何か報告出てましたっけ?)

(3)機能性食品等に関連する用途発明の保護の在り方を検討する
 いわゆる機能性食品等に関連する用途発明について、研究開発の動向や2006年6月の審査基準改訂後の特許出願・審査の状況及び国際的な保護の状況を踏まえ、これらの発明の特許保護の在り方について効力の及ぶ範囲を含め、2008年度の早期に関連業界より意見を得て議論を行い、その結果に応じて必要な方策を講ずる。
(経済産業省)
(33頁)

 

 さて、本題。 議事録を読んでいきます。 ただ、第1回なので、特段の情報はありません。

 「2つ目の論点は、既に期間延長制度の対象になっております医薬品につきましての制度見直しの要否でございます。薬事法上の医薬品の製造販売の承認は、医薬品の有効成分、効能・効果、剤型、用法・用量、製法等、事細かに特定して行われます。しかしながら、特許法68条の2においては、期間延長される特許権の効力は承認された医薬品の有効成分及び効能・効果の観点のみによって特定され、剤型、用法・用量、製法が異なる医薬品であっても有効成分及び効能・効果が一致すれば効力が及ぶことになっております。したがって、その後に有効成分及び効能・効果以外の項目の異なったさらなる医薬品の製造承認があっても、期間延長の対象とはしておりません。

 しかしながら、20年前の制度導入時には想定できなかった、有効成分及び効能・効果が同じであって剤型のみが異なる医薬品、すなわちDDS製剤についても、薬事法上の承認には有効成分や効能が新規の医薬品と同様に長期間を要しているということで、医薬品の有効成分、効能・効果のみならず、剤型の変更を考慮した期間延長制度の再構築が可能か否かという点が2つ目の論点になります

 特許庁においても、現行制度に問題がある(改正を求められていた)ことは、認識していたということですね。 したがって、飯村コートの判断もこのWGの答申案に先駆けてなされたものといえそうです(だから、そんなにセンセーショナルに捉える必要もなかったかもです。)。 平成20年(行ケ)第10458号と同じ出願人である、平成18年(行ケ)第10311号(リュープリン事件)での出願人がどういった主張をしていたのか確認して見る必要がありそうです。

 特許庁の資料4によれば、法制度の趣旨を踏まえた条件と政策的観点からの条件から考察が必要とされていて、

1.制度の趣旨を踏まえた前提条件
(1)法規制による処分が、業としての特許発明の実施を禁止している。
(2)当該規制対象分野全体として、かつ、不可避的な規制審査期間があり、しかも、当該期間の短縮にも、安全性の確保等の観点からおのずから限界がある。
(3)安全性等の審査に農薬や医薬品と同程度の期間がかかる。

2.政策的観点からの条件
(1)処分と関係する特許権者と第三者とのバランスを考慮する。
(2)イノベーションの進展に寄与するか否かも考慮する。
(3)国際的動向も踏まえる。

 が挙げられています。

 企業側からの、要望として、存続期間の延長登録制度において、イノベーションを保護という名のもとに、、、

 「といいますのは、先ほどiPS細胞のお話が出ました。これは医薬品として承認申請はおろか、臨床試験を開始するまでにも相当の時間がかかると思います。つまり、ある技術においてはリードタイムが非常に長いということで、別途医薬の特許が成立すればいいのですが、物として、あるいは基本的な方法として権利を取った場合に、それが実用化されるまでには20年を超えているというような事態もあると思います。その場合には、臨床試験や審査の期間だけを見ても評価できないところがあると思いますので、特許の残存期間もぜひ1つの観点として見ていただければと思います

 とはいえ、特許法における存続期間の延長登録制度は、あくまでも、資料7の

 「特許権の存続期間の延長制度は、行政庁等の認可等のための審査等により特許発明を実施できない期間が発生することにより、特許権による保護期間が浸食されている場合に、浸食された期間を回復して、特許権の対象とされている発明に有効な保護を与えることによって、特許制度の目的を達成することを目的としている。

 という、一橋大学教授の相澤教授の見解があるわけで、明治大学の熊谷教授(弁理士受験生にとっては、”くま”で、・・・)の見解である

 「リードタイムが長い発明その他いろいろあると思いますが、20年という存続期間を決めていることを前提として、例外として存続期間の延長をいかなる要件で認めるのかは、昭和62年の制度が創設された段階と現在と存続期間延長制度の趣旨において違いはないと思います。実態として農薬と医薬品以外の分野で同じような状況が生じていることが実証されるのかどうかが、対象を考えるかというとき重要ではないかと思います。

 も考慮すれば、当然に、

 「すなわち、特許権の存続期間の延長制度は、事業化までの期間を保護するという制度ではなく、特許発明を業として実施できる期間の侵食を保護する規定だと思いますので、その観点から、iPS関連の技術に関して特許発明の実施期間が侵食される可能性が具体的に認識されているのかどうか、その辺に関して知見をお持ちの方がいらっしゃいましたら教えていただきたいのですが。

 です。

 

 

本日のキーワード: 特許権の残存期間と浸食された期間の回復

 

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2009年6月 8日 (月)

平成20年(行ケ)第10458号

平成20年(行ケ)第10458号 審決取消請求事件 平成21年5月29日判決言渡

 審決取消(下線は付記)

裁判所の判断

 「当裁判所は,本件出願に対し,本件先行処分があったことを理由として,本件発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとした審決の判断には,以下の2点(「特許法67条の3第1項1号該当性の誤り」及び「先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤り」)において誤りがあり,その誤りは,いずれも審決の結論に影響するものであるから,審決を取り消すべきものと判断する。」(45頁)

 ということで、これまでの存続期間の延長登録の出願の審査実務に影響が出そうです。 また、延長登録の効力範囲にまで影響が・・・ 審査は通りやすくなるけれども、権利範囲は狭くなる方向に行く可能性がありますので、今後の判例を要チェックです。 ただし、本判決の射程がどこまでかも考慮する必要があります。

 争点となった条文

67条の3第1項第1号 その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。

68条の2 特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。

 「上記規定によれば、特許権の存続期間の延長登録の出願に関し,同条1号所定の拒絶査定をするための処分要件(要件事実)は,「その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分(判決注 本件においては,薬事法14条1項所定の医薬品の承認)を受けることが必要であつたとは認められないとき」であり,そのいわゆる主張,立証責任は,あげて,拒絶査定をする被告において負担する。」(46頁)

 ということで、拒絶理由は(後に繋がっていく中で、「あくまでも」と読めると思いますが)、あくまでも67条の3第1項第1号から導くことが必要としていると判示しています。

 先に感想をば、、、 改正時の事情も勉強できていませんし、判決の中で多々挙げられている見解にも目を通したわけではないので、間違った解釈かもしれませんが、存続期間の延長登録制度が導入された昭和62年改正法から、時代趨勢が変更しているのに、特許庁が条文の文言を変えてこなかったというところにも問題がありそうです。 そもそも、存続期間の延長登録の審査については、平成18年ごろまでに判決が出揃って、実務の方向性がようやく定まったと考えられていたと思います。 その後も、武田薬品だけは、頑張っていたということになると思いますが。。。 特許権の存続期間がトピックになってきているのも、2010年問題、ジェネリックの台頭、LCMの観点からの結晶、製剤特許の活用といった点も大きいでしょう。 そもそも、三極で唯一、何回でも、また、どの特許に対しても延長できるという制度設計をしているところも争いが増える点でしょう。 また、ブロックバスターは売れると分かっているのですから、何としてでも独占を延長したいというのが企業の意向でしょうし。 昭和62年時と現状は、製薬業界の置かれている状況、特許戦略の状況も違う気がしてますので、抜本的な改正(解釈も含めて)が必要かもです。 (参考 Wikipedia ブロックバスター) 

 「特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許発明を実施する意思及び能力があってもなお,特許発明を実施することができなかった特許権者に対して,「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除されることとなった特許発明の実施行為について,当該「政令で定める処分」を受けるために必要であった期間,特許権の存続期間を延長するという方法を講じることによって,特許発明を実施することができなかった不利益の解消を図った制度であるということができる。」(49頁)

 特許法67条の3第1項第1号の「政令で定める処分」の用語を解釈する上で、法の趣旨をまずは、明確にしています。

 「以上の点を前提として整理する。特許法67条の3第1項1号は,「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と,審査官(審判官)が,延長登録出願を拒絶するための要件として規定されているから,審査官(審判官)が,当該出願を拒絶するためには,①「政令で定める処分」を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと,又は,②「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」が「『その特許発明の実施』に該当する行為」に含まれないことを論証する必要があるということになる(なお,特許法67条の2第1項4号及び同条2項の規定に照らし,「政令で定める処分」の存在及びその内容については,出願人が主張,立証すべきものと解される。)。」(49頁)

 ここまでで、「政令で定める処分」の解釈については何も裁判所はいっていません。

 67条の3第1項第1号により審査官(審判官)が拒絶するためには、条文の解釈として、

 ①「政令で定める処分」を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと

 出願人が立証した、出願人が受けた「政令で定める処分」については、証拠として、通常、医薬品医療機器総合機構による審査結果が添付されているわけですから、、、 そうすると、条文の文言に当て嵌めてみると、一般には「禁止が解除されたとはいえない」とはならないこととなります。 言い直せば、機構により承認されていれば、政令で定める処分によって何らかの禁止は解除されているので、拒絶理由は①に基づいては発生しないことになります。 ところが、これまでの特許庁の運用では、機構による承認がなされたとしても、新たに禁止が解除されていない、既に禁止は解除されていたとして、①に該当すると判断していたわけです。 ここでの、「政令で定める処分」を、文言通り解釈するのではなく、68条の2から導いて、「有効成分」と「効能・効果」の点からの処分でなければならないとしたわけです。 すなわち、「政令で定める処分」を、「有効成分」と「効能・効果」に関する処分として、同様の「有効成分」及び「効能・効果」についての先の処分があれば、禁止が新たに解除されていないとしていたということです。

 ②「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」が「『その特許発明の実施』に該当する行為」に含まれないこと

 ②が審査の課程で問題になることはあまりないでしょう。 「政令で定める処分」を受けた医薬品が、特許発明の技術的範囲に属するか確認するということだと思いますので、通常は、大丈夫ですね。 医薬発明の場合、用途発明の出願も多数なされている訳ですが、製造販売している医薬品の直接関連する用途は、通常、物質特許の際に明細書中で記載されていることが多いですからね(用途発明に基づいた延長登録の出願はあまりないでしょう。)。 また、存続期間の延長登録の出願の場合、用途特許は特段関連せず、物質特許、結晶特許、又は製剤特許が関与してくるでしょうし。

 また、②について、これまでの審査では、「有効成分」と「効能・効果」について判断していたわけですので、問題はなかったでしょう。

 「しかし,本件先行処分の対象となった先行医薬品は,本件発明の技術的範囲に含まれないこと,本件先行処分を受けた者が,本件特許権の特許権者である原告でもなく,専用実施権者又は登録された通常実施権者でもないことは,当事者間に争いがなく,本件先行処分によって禁止が解除された先行医薬品の製造行為等は本件発明の実施行為に該当するものではない。本件においては,本件先行処分が存在するものの,本件先行処分を受けることによって禁止が解除された行為が,本件発明の技術的範囲に属し,本件発明の実施行為に該当するという関係が存在するわけではない。」(50頁)

 本件は、これまでの延長登録の出願とは若干事例を異にするわけですので、射程がどこまでかは、今後の課題になるわけです。

 これまでの延長登録の出願は、簡単に言うと、

 物質特許に対して、(効能・効果に変更なく、効能・効果での延長登録は既にされている中で)新用量又は新剤型での承認を得た場合に、延長登録が認められるかという点が争点だったわけですが、

 今回の案件では、

 製剤特許に対して、新剤型医薬品として承認を受けた場合に、延長登録が認められるかという点が争点になったわけですので、若干、事例が異なるといえば異なる訳ですが・・・

 「したがって,本件先行処分の存在は,本件発明に係る特許権者である原告にとって,本件発明の技術的範囲に含まれる医薬品について薬事法所定の承認を受けない限り,本件発明を実施することができなかった法的状態の解消に対し,何らかの影響を及ぼすものとはいえない。本件先行処分の存在は,本件発明の実施に当たり,「政令で定める処分」(本件では薬事法所定の承認)を受けることが必要であったことを否定する理由とならない。」(50-51頁)

 物質特許に対して、新剤型・新用量医薬品として承認を受けた場合には、どうなるんでしょうか? 前段部分を読むと、物質特許に対して、新製剤の承認を得なくても禁止は解除されているわけで、先行処分の存在により、新剤型については、延長登録は、認められないとも読めます。

 物質特許に対しては、新剤型・新用量医薬品の承認を受けたとしても、禁止が解除されたわけではないと判断されるとなると、製剤特許に対してだけ、新剤型医薬品の承認を受ければ禁止が解除されたといえ、新用量では、製剤特許の禁止は解除されるものではないとなりそうです。 そうなってくると、先に「先発メーカー寄り」とコメントしましたが、効力範囲が狭まる可能性を鑑みると、寧ろ、武田薬品は自分の首を締めると共に、製薬協全体の首も締めたかもしれません。 まぁ、審査基準の改定によって、用法用量についても特許が認められるようになれば、新用量医薬品での承認を受けた場合に用法用量特許について延長されるとは思いますが。。。

 現行で、先の処分がある中で、後の処分として、新たに、新効能医薬品、新剤型医薬品、新用量医薬品として承認を受けた場合を考えてみます

          新効能医薬品 新剤型医薬品 新用量医薬品

物質特許       ○         ×        ×

製造方法特許    ○(?)      ×        ×

用途特許       ○         ×        ×

結晶特許       ○         ×        ×

製剤特許       ○         ×        ×

用法用量特許    ○         ×        ×

 (認められていればとして)

 ではないかと思いますが、今回の判決を受けた最悪のケースとして、まとめてみると、

           新効能医薬品 新剤型医薬品 新用量医薬品

物質特許       ×         ×        ×

製造方法特許    ×         ×        ×

用途特許       ○         ×        ×

結晶特許       ×         ×        ×

製剤特許       ×         ○        ×

用法用量特許    ×         ×        ○

 となってしまわないでしょうか?

 「本件発明を実施することができなかった法的状態の解消に対し」をどう解釈するかだと思うのですが、疑問が残ってしまいました。。。 

 物質特許のうち、新効能に係る物資特許の部分は、請求項の記載に対する黙示の下位概念とでもいうような位置づけで、やはり本件発明を実施することができなかった部分であると判断されるという理解でよいんですかね??? そのように考えると、機構による全ての承認に対して、延長登録が認められることになると思いますが。。。 出願すればよいという状態が生まれそうです。。。

 そして、今後は、②の要件に合致しているのかという点の判断が求められることになりそうですが、そうすると、出願する方も②の要件の充足性を述べなければいけないわけで、結構大変なことになりそうです。 というのも、これまでは、製剤のミソですので、製剤における添加剤については黒塗りしていたんではないでしょうか? しかし、②の要件が有効成分と効能・効果だけではなく、構成要件を満たしているかという点に移ってくるとすると、製剤特許において少なくとも請求項1に規定している構成要件を充足していることを証拠として提示する義務は出願人に課せられたわけで、黒塗りできなくなるのでは???

 

 先発メーカーにとってはもろ手を挙げて喜べないというか、寧ろ好ましくない状況が生まれていないでしょうか? 

 本件特許の請求項1は、 

(A)薬物を含有し,最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である速放性組成物と,
(B)薬物を含んでなる核を,(1)水不溶性物質,(2)硫酸基を有していてもよい多糖類,ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基を有する多糖類,メチルセルロース,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコールから選ばれる親水性物質および(3)酸性の解離基を有しpH依存性の膨潤を示す架橋型アクリル酸重合体を含む被膜剤で被覆してなる放出制御組成物とを組み合わせてなる医薬。

 です。 ②に該当する証拠の提出は、出願人に課されたわけで、審判部に戻されたとしても、、、 ①は容易にクリアーしますが、②のクリアーは無理(難しい)でしょう! 多分、臨床試験では、(A)のみの確認試験はやっていないと思いますので、武田薬品、自爆でしょうか・・・ きっと、審判では、②を満たさないとして拒絶され、また、審決取消訴訟でしょうか! そうなったときに初めて、知財高裁の意向も読めると思いますが、転勤がつきものの裁判官ですから、飯村コートはその時まで待っていてくれるのでしょうか???

 

 

本日のキーワード: 68条の2について検討を加えると共に、武田の主張も要チェックです。

 

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平成20年(行ケ)第10458号 その2

 「2 先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤り
 当裁判所は,審決が,先行処分を理由とする特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力を,処分の対象となった品目とは関係なく,「有効成分(物)」,「効能・効果(用途)」を同一とする医薬品に及ぶものと解して,原告のした延長登録の出願に対して,政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないと判断した点に関し,特許法68条の2の解釈上の誤りがあると解する
(51頁)

 としています。 上告することで、知財高裁(飯村コート)の出した「解する」との考え方が間違いと判定されなくもないと思いますので、上告されるのか、上告されないのか、また、今後どのようにして登録査定又は拒絶査定が出されるのかについても要チェックです(何回も要チェックモードになります。)。

 これは,特許請求の範囲の記載によって特定される特許発明の技術的範囲が「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された範囲よりも広い場合に,「政令で定める処分」を受けることが必要なために特許権者がその特許発明を実施することができなかった範囲(「物」又は「物及び用途」の範囲)を超えて,延長された特許権の効力が及ぶとすることは,特許権者と第三者の公平を欠くことになるからである。すなわち,特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許権者がその特許発明を実施する意思及び能力を有するにもかかわらず,特許法67条2項所定の「安全性の確保等を目的とする法律」の規定によりその特許発明の実施が妨げられた場合に,実施機会の喪失による不利益を解消させる制度であるから,そのような不利益の解消を超えて,特許権者を有利に扱うことは,制度の趣旨に反することになる。」(52頁)

 判決の根底として、審査を終えた状態から、初めて68条の2の判断ができるとの判示がなされたと考えられます。 すなわち、68条の2の解釈をする前に、審査の結果としての、「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された範囲が定まっている必要があるということであり、67条の3の拒絶理由を判断する際に、68条の2は、関係なく、67条の3の拒絶理由に該当しないとして、登録された後に、68条の2により効力範囲の調整が行われるということですね。 したがって、効力範囲の調整規定である68条の2に基づいて、67条の3第1項第1号を判断するのは、明らかにおかしいことになります。

 「以上のとおり,特許法68条の2は,特許発明の実施に薬事法所定の承認が必要であったことを理由として存続期間が延長された場合,当該特許権の効力は,薬事法所定の承認の対象となった物(物及び用途)についての当該特許発明の実施以外の行為には及ばないとする規定である。」(52頁)

 とりあえず、延長しちゃいなさいということでしょうか。 そして、権利範囲で調整すると。 この考え方は、先発メーカーに取っては、両刃の剣ですね。

 今までは、製剤特許とかでも、「有効成分」と「効能・効果」で延長がされていたわけですから、別製剤についても効力の延長がなされていたわけですよね(一応)。 ところが、今回の文理解釈により、承認を受けた製剤そのもの以外については、効力範囲外になりますので、虫食い申請を許す厚生労働省の動きからすると、先発の製剤に類似する製剤がより早く出てくることになりそうです!

 青本や注解特許法を眺めてみようと思います。

 「薬事法14条1項が,「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」と規定しており,同項に係る承認に必要な審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」(薬事法14条2項3号参照。なお,平成16年法律第135号による改正前の薬事法14条2項柱書きでは,審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用等」とされている。)とされていること,薬事法14条9項が,「第一項の承認を受けた者は,当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)は,その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては,第二項から前項までの規定を準用する。」と規定していること(なお,平成16年法律第135号による改正前の薬事法14条7項の規定も同じ。)に照らすならば,薬事法上の「品目」とは,形式的には,上記の各要素によって特定されたそれぞれの物を指し,それぞれを単位として,承認が与えられるものというべきである。」(53頁)

 読み下すと、

 薬事法14条1項が,「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」と規定しており,同項に係る承認に必要な審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項とされていること,

 薬事法14条9項が,「第一項の承認を受けた者は,当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするときは,その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては,第二項から前項までの規定を準用する。」と規定していることに照らすならば,

 薬事法上の「品目」とは,形式的には,上記の各要素によって特定されたそれぞれの物を指し,それぞれを単位として,承認が与えられるものというべきである。

 なので、14条1項及び9項が重要です。

薬事法第十四条  医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品及び第二十三条の二第一項の規定により指定する体外診断用医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)、厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品又は医療機器(一般医療機器及び同項の規定により指定する管理医療機器を除く。)の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない
 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の承認は、与えない。
 申請者が、第十二条第一項の許可(申請をした品目の種類に応じた許可に限る。)を受けていないとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器を製造する製造所が、第十三条第一項の許可(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)又は第十三条の三第一項の認定(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)を受けていないとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項の審査の結果、その物が次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 申請に係る医薬品、医薬部外品又は医療機器が、その申請に係る効能、効果又は性能を有すると認められないとき。
ロ 申請に係る医薬品、医薬部外品又は医療機器が、その効能、効果又は性能に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品、医薬部外品又は医療機器として使用価値がないと認められるとき。
ハ イ又はロに掲げる場合のほか、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合していると認められないとき。
 第一項の承認を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならない。この場合において、当該申請に係る医薬品又は医療機器が厚生労働省令で定める医薬品又は医療機器であるときは、当該資料は、厚生労働大臣の定める基準に従つて収集され、かつ、作成されたものでなければならない。
 第一項の申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が、第十四条の十一第一項に規定する原薬等登録原簿に収められている原薬等(原薬たる医薬品その他厚生労働省令で定める物をいう。以下同じ。)を原料又は材料として製造されるものであるときは、第一項の承認を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該原薬等が原薬等登録原簿に登録されていることを証する書面をもつて前項の規定により添付するものとされた資料の一部に代えることができる。
 第二項第三号の規定による審査においては、当該品目に係る申請内容及び第三項前段に規定する資料に基づき、当該品目の品質、有効性及び安全性に関する調査(既に製造販売の承認を与えられている品目との成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能等の同一性に関する調査を含む。)を行うものとする。この場合において、当該品目が同項後段に規定する厚生労働省令で定める医薬品又は医療機器であるときは、あらかじめ、当該品目に係る資料が同項後段の規定に適合するかどうかについての書面による調査又は実地の調査を行うものとする。
 第一項の承認を受けようとする者又は同項の承認を受けた者は、その承認に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が第二項第四号に規定する厚生労働省令で定める基準に適合しているかどうかについて、当該承認を受けようとするとき、及び当該承認の取得後三年を下らない政令で定める期間を経過するごとに、厚生労働大臣の書面による調査又は実地の調査を受けなければならない。
 厚生労働大臣は、第一項の承認の申請に係る医薬品又は医療機器が、希少疾病用医薬品、希少疾病用医療機器その他の医療上特にその必要性が高いと認められるものであるときは、当該医薬品又は医療機器についての第二項第三号の規定による審査又は前項の規定による調査を、他の医薬品又は医療機器の審査又は調査に優先して行うことができる。
 厚生労働大臣は、第一項の申請があつた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、同項の承認について、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。
 申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品が、既に製造販売の承認を与えられている医薬品、医薬部外品又は化粧品と、有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なるとき。
 申請に係る医療機器が、既に製造販売の承認を与えられている医療機器と、構造、使用方法、効能、効果、性能等が明らかに異なるとき。
 第一項の承認を受けた者は、当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)は、その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては、第二項から前項までの規定を準用する。
10  第一項の承認を受けた者は、前項の厚生労働省令で定める軽微な変更について、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣にその旨を届け出なければならない。
11  第一項及び第九項の承認の申請(政令で定めるものを除く。)は、機構を経由して行うものとする。

 申請に係る医薬品の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項

 品目の品質、有効性及び安全性に関する調査(既に製造販売の承認を与えられている品目との成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能等の同一性に関する調査を含む。)

 との記載からすると、

 品質、有効性及び安全性には、名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用が含まれるということで、

 すなわち、

 品質、有効性、安全性についての審査とは、名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用の審査をするということです。 14条5項では、副作用が品質のうちから削除されているのですが、副作用については同一性よりも再度審査されるということでしょうか(成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能はいずれもポジティブな特性なので、同一性が担保されていれば問題ないですが、副作用については、成分~性能のいずれかが異なれば同一性が担保されることはないということで、再度審査されるということでしょうか。)。 この場合、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能が同一であれば、副作用も審査するとはいえ、同一ということでしょうかね。 逆にいうと、副作用は、成分~性能の同一性が示されれば、審査の対象ではないという道が示されているということでしょうか。

 したがって、薬事法上の、審査の対象は、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能ということになります(プラスとして、副作用)。

 「さらに,「用法」,「用量」,「使用方法」,「効能」,「効果」,「性能」は,「用途発明」における「用途」に該当することがあり得るとしても(この点,「用途」に該当するというためには,特許法上,「用途発明」として,保護されるべき内容を備えていること,すなわち,客観的な「物」それ自体の構成は同一であっても,「用途」が異なることにより,特許法上,「物」の発明として「同一」とは認められないと評価されるだけの内容を備えていることが必要である。),客観的な「物」それ自体の構成を特定するものではない。」(54頁)

 さらには、

 「したがって,「政令で定める処分」が薬事法所定の承認である場合,「政令で定める処分」の対象となった「物」とは,当該承認により与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって特定された「物」を意味するものというべきである。なお,薬事法所定の承認に必要な審査の対象となる「成分」とは,薬効を発揮する成分(有効成分)に限定されるものではない。」(54頁)

 とすると、

 68条の2の解釈においては、

 物としては、「成分、分量、構造」であり、

 用途としては、「用法、用量、使用方法、効能、効果、性能」ということになります。

 これまでは、

 物としては、成分の一要素である、「有効成分」と、

 用途としては、「効能、効果」で判断していたということだったと思いますので、

 えらく権利範囲が狭まることになります。

 67条の3第1項第1号では、

 とりあえず、機構からの承認が下りていれば、①の要件はクリアーすると思いますが(より認められやすくなるというプラスの方向)、②の要件を満たすために、出願人が証拠の提出が求められることを考えると(負担の増大、秘密事項の開示必要というマイナスの方向)、結構、出願人(先発メーカー)にとって、マイナス面の方が大きく、良い判決とはいえないような気がしてきました。

 このことは、

 「以上のとおり,特許発明が医薬品に係るものである場合には,その技術的範囲に含まれる実施態様のうち,薬事法所定の承認が与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施,及び当該医薬品の「用途」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施についてのみ,延長された特許権の効力が及ぶものと解するのが相当である(もとより,その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは,技術的範囲の通常の理解に照らして,当然であるといえる。)。」(54頁)

 と判示されていることからも、言えるのではないでしょうか。 それがゆえのなお書きでしょうね。 ようは、均等を持ち出さないと権利範囲が狭くなりすぎるということなのでしょう。 ここで、製剤特許で、製剤の成分がマーカッシュで記載されている場合に、その1つについて承認を受けた場合に、マーカッシュ中の他の成分についても、ジェネリックメーカーは承認を受けることができないということなんでしょうか? ここでいう、均等物や実質的に同一と評価される物とは何を意味しているのでしょうかね??? 分量が100mg錠である場合に、110mg錠ぐらいは均等物ということなんでしょうかね???

 「しかし,上記の説明は,合理性がない。すなわち,「承認」を受けることによって,禁止が解除される範囲に関して,①医薬品を特定する各要素によって画された範囲と解すべきか,②有効成分(物質)と効能・効果(用途)のみによって画された広い範囲と解すべきかの論点に対して,単に,「薬事法の本質」や「規制のポイント」との用語を使って結論を導いているにすぎず,およそ論理的な説明はされていない
 薬事法の承認が,多くの要素で画された単位でされている以上,その承認の効果は,特段の合理的な事情がない限り,その範囲を超えて効力を有することはないはずである。すなわち,製造販売の禁止が解除される範囲は,一要素にすぎない「有効成分」や「効能・効果」で画された範囲よりも狭いはずである。」
(59頁)

 前段では、特許庁の主張がぼろくそに叩かれています。 この判決を通して特許庁の主張でとりいれられた部分は一切ないので、仕方ないところなのかもしれませんけど。。。

 後段から、68条の2により延長される効力範囲は、非常に狭いということになることが明示されたといえます。

 「それにもかかわらず,物質を医薬品として製造販売することを規制することが薬事法の本質であるとして,物質(有効成分)で画された広範な範囲に解除の効果が生じるとする説明は,解釈論によって,特許権の存続期間の延長登録の出願の拒絶理由として,①「その特許権の存続期間が既に延長されたものであるとき。」,②「その特許発明が医薬品に関するものである場合において,当該発明が延長登録出願の理由とされた処分に先行する別の処分の対象となった医薬品と有効成分及び効能・効果において重複するとき。」を付加したのと同様の結果を導く,いわば事実上の立法をしたものと評価すべきであって,合理的な解釈とはいえない。」(60頁)

 こうなってくると、2011年に予定されているとかという噂の特許法の大改正で、立法するしかないでしょう! といいつつも、特許庁は立法府ではありませんけど。。。

 「また,医薬品の「成分」は,「有効成分」以外のものであっても,医薬品の有効性,安全性を左右することがあり,「分量」,「構造」も同様である。さらに,「用法」,「用量」,「使用方法」,「性能」,「副作用その他の品質」も,「効能」,「効果」と同じく,医薬品の有効性,安全性を左右するものである。」(62頁)

 「ところで,このような実務を前提とした上で考察すると,仮に,特許法68条の2の「物」を「有効成分」と解釈するとしたならば,薬事法所定の承認を受けた医薬品を技術的範囲に含まない請求項に係る発明についてまで,存続期間の延長登録の効果を及ぼすことになり,そのような結果は,特許権者に不当な利益を与え,本来の存続期間の満了後に特許発明を実施しようとする者に著しい不利益を課すことになり,存続期間の延長登録の制度の趣旨に反する,不公平な結果を招く。
 この点,「政令で定める処分」の対象となった「物」に係る存続期間の延長登録の効果が及ぶ範囲を,当該承認が与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって画された「物」についての特許発明を実施する行為と解するならば,「物」を「有効成分」と解することによって生ずる,特許権の存続期間の延長登録の制度の趣旨に反する不当な結果を避けることができるものといえよう。」
(63頁)

 決定的ですね。。。 

 ただ、用法用量は、今後、物に付随してくるはずですが、特許法の審査における運用がまた否定されることになるのでしょうか。。。 医薬品における「物」を、成分、分量、構造に限った今回の判決をも考慮した基準作りがなされるのでしょうか。。。 飯村コートは、用法用量を、効能効果のように用途発明の観点から審査しなさいということを演繹しているのでしょうか。。。

 今後の手続きについても、

 「しかし,出願人は,願書に政令で定める処分の内容を記載し(特許法67条の2第1項4号),資料を添付しなければならないこと(特許法67条の2第2項),資料等に営業秘密が記載されている場合には,閲覧・謄写の制限も可能であること(特許法186条1項ただし書),詳細な情報が開示されないのは,特許庁が特許法68条の2にいう「物」を「有効成分」と解釈する実務を採用していることによるものであることからすれば,被告の上記主張は,特許法68条の2にいう「物」を「成分」,「分量」及び「構造」と解することを妨げる
ものとはいえない。」
(64頁)

 とはいえ、効力範囲にもろに影響を与える以上、承認を受けた部分については、公示する必要があるでしょうから、閲覧・謄写の制限はどうなんでしょうか? 法律上はできるようですが。。。 判決確定後のこの辺の運用の変遷にも留意が必要そうです。 今、存続期間の延長登録の出願したくないですね。。。

第百八十六条  何人も、特許庁長官に対し、特許に関し、証明、書類の謄本若しくは抄本の交付、書類の閲覧若しくは謄写又は特許原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分に記録されている事項を記載した書類の交付(第三項において「証明等」という。)を請求することができる。ただし、次に掲げる書類については、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるときは、この限りでない。

 願書、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書若しくは外国語書面若しくは外国語要約書面若しくは特許出願の審査に係る書類(特許権の設定の登録又は出願公開がされたものを除く。)又は第六十七条の二第二項の資料
 拒絶査定不服審判に係る書類(当該事件に係る特許出願について特許権の設定の登録又は出願公開がされたものを除く。)
 特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する再審に係る書類であつて、当事者又は参加人から当該当事者又は参加人の保有する営業秘密が記載された旨の申出があつたもの
 個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがあるもの
 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるもの
 
第六十七条の二  特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
 特許番号
 延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)
 前条第二項の政令で定める処分の内容
 前項の願書には、経済産業省令で定めるところにより、延長の理由を記載した資料を添付しなければならない。

 67条の2第2項の資料は、

特許法施行規則第三十八条の十六  特許法第六十七条の二第二項の規定により、願書に添付しなければならない延長の理由を記載した資料は、次のとおりとする。
 その延長登録の出願に係る特許発明の実施に特許法第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたことを証明するため必要な資料
 前号の処分を受けることが必要であつたためにその延長登録の出願に係る特許発明の実施をすることができなかつた期間を示す資料
 第一号の処分を受けた者がその延長登録の出願に係る特許権についての専用実施権者若しくは登録した通常実施権者又は当該特許権者であることを証明するため必要な資料

 です。

 

  

本日のキーワード: 予定通りなのかしらん?

 

宿題: 武田薬品の主張内容&青本、注解特許法

 

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2009年6月 4日 (木)

武田薬品vs特許庁 2

 平成20(行ケ)10458等の裏でも、武田薬品と特許庁はバトルしてます。 まだ、深くは解析していないですが、完全に、ケ○カ腰ですな。。。 因みに、こちらは判例としての価値はほぼないですね(普通、やらない。。。)。 担当事務所はこちらです。

 

 平成20(行ケ)104761047710478

 

 ワザと?!?

 

 特許庁の審査が酷いですね。。。

 知財高裁で争うネタなんでしょうか。。。

 審判段階での主張ではない可能性が高いですけど。。。

 

 

本日のキーワード: 特許庁だいじょうぶですか?

 

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2009年6月 2日 (火)

武田薬品vs特許庁

 審決取消訴訟で、これまでの実務が大幅に変更になりそうな、判決が出されましたね。

 平成20(行ケ)104581045910460です。

 とうとう、日の目を見たというところでしょうか。 この事務所に頼んだのが良かったんですかね。 とはいえ、特許庁には、是非上告してもらいたいものです。

 

 T社の念願だった用法用量特許が認められる方向に進み、かつ、製剤特許でも存続期間の延長登録がなされると。 昨今の施策といい、先発よりですねぇ~ 今なら、医薬発明のそれはそれは厳しい実施可能要件の審査基準も覆せるかもしれません!!!

 

 業界の動き、要ウォッチングです。

 

 特許庁の特許権の存続期間の延長制度検討WGにも影響が出そうです。

 

 巷では、薬事法の改正による販売制度の変更がもっぱらのニュースですし、ちょっと前までは、豚インフルエンザのニュースで持ちきりでしたし、2010年を前に、製薬業界の賑わいが楽しみなことになっています。

 

 

本日のキーワード: 飯村コートは、とうとう特許庁の審査の運用だけでなく、過去の判例も否定し始めましたね。。。 ほんの2~3年前ですよね。。。

 

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2008年10月 6日 (月)

特許法67条の2第5項

 自説なので、ひっそりと。。。

 某方のブログに記載されていたので考えてみました。

特許法67条の2第5項

 特許権の存続期間の延長登録の出願があったときは、存続期間は延長されたものとみなす。 ただし、その出願について拒絶をすべき旨の査定が確定し、又は特許権の存続期間を延長した旨の登録があったときは、この限りでない。

 なぜ、拒絶をすべき旨の査定若しくは審決でないのでしょうか、というのが疑問のようです。 面白い疑問なので考えてみました。

 青本(第16版)199頁の記載を見ると、「本条は、昭和62年の一部改正により新設されたものであり、」とあり、5項については、その後改正されていないことが分かります。

 青本201頁の記載を見ると、「5項は、拒絶査定や延長登録の査定が本来の存続期間の満了後になされた場合の法律関係について規定したものであり、特許権の存続期間の延長登録の出願があったときに、存続期間は、延長されたものとみなすこととしている。 また、ただし書は、拒絶査定が確定したとき、又は存続期間の延長登録の延長がなされたときは、この擬制的な効果は排除されることを規定している。」とあります。

 ここで、条文ができたのは、67条の2の2が規定される前ですから、存続期間の満了前6月を超えて出願することができなかった頃になります。 ですので、存続期間の延長登録の出願は存続期間の満了の6月前までにされているわけですから、延長登録についての処分は定まっているのが通常と考えることができます(特許庁において、登録の可否が定まっていることを予定していたことでしょう。)。 特許庁において、存続期間が満了しているのに、延長がどうなるかわからないという状況を由とするはずがないと考えられるからです(行政庁ですから)。 ですので、レアーなケースとして(法制度的には考えら得る状況ですので)、67条の2第5項は規定されていると考えることができます。 そして、そのような状況が想定されることを加味して、存続期間の延長登録の出願があったら延長を擬制し、拒絶査定の確定、延長登録がされた場合には擬制を解くと規定していたことになります。 すなわち、存続期間の延長登録制度ができた当初から、拒絶査定の確定と規定されているわけです。 ではなぜ、当時、拒絶査定の確定及び拒絶審決の確定と規定しなかったのでしょうか? きっと、拒絶審決の確定=拒絶査定の確定だからでしょう。 それか、法制定時に、拒絶審決までは考えていなかったということでしょうか。

 67条の3第1項の拒絶理由を見れば、そうそう拒絶の理由が審査と審判で変更になるとは思いませんが、拒絶査定不服審判においては、159条2項により、50条の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。と、規定されていますので、「拒絶をすべき旨の査定若しくは審決」と念のため両者を明記してもらいたいものです。 まぁ、拒絶審決が確定すれば、拒絶査定は確定するでしょうから、法的効果(拒絶という点だけ)は一緒になるように思えるところではありますが。。。

 なお、拒絶審決が予定されていることは、特許審査・審判の法理と課題に「この規定はあくまで存続期間の延長を擬制するものであるから、審査(審判、訴訟)を経て登録査定又は拒絶査定が確定した場合には、この擬制による効果は排除される。 同項の但書はこれを意味している。」とあることからも明らかです(第525頁)。

 ここで、拒絶審決の確定と規定されている条文を見てみましょう。

39条5項 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第二項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。

65条4項 出願公開後に特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第百十二条第六項の規定により特許権が初めから存在しなかつたものとみなされたとき(更に第百十二条の二第二項の規定により特許権が初めから存在していたものとみなされたときを除く。)、又は第百二十五条ただし書の場合を除き特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。

 上記2つの条文になります。

 39条5項の「拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき」については、ブラックボックスを解消するために平成10年改正時に導入されているわけです。 このときは、査定及び審決の双方をきっちりと規定しているわけです。 

 65条4項については、青本189頁にあるように、「4項は、これまで旧4項において準用していた仮保護の権利の消滅に関する旧52条3項の規定が平成6年の一部改正により削除されたことに伴い、本項において規定し直したものである。」とあるので、これまた、平成6年改正できっちりと規定されているわけです。 

 こうなってくると、旧52条3項の規定を見てみる必要がありそうです。 

 My結論としては、昭和62年当時には、拒絶査定の確定と拒絶審決の確定を区別してなかったが、平成の世では、きっちり書き分けるようになったと。 拒絶審決の確定と規定していないことが立法論として、改正しないと意味が変わるわけではないので、条文に「審決」を追加していないのでしょう。

 なお、

67条の3第3項 特許権の存続期間の延長登録をすべき旨の査定又は審決があったときは、特許権の存続期間を延長した旨の登録をする。

 とあるのは、昔は、延長登録出願の拒絶査定不服審判において登録審決を出すことができなかったのを、平成11年改正でできるようにしたから、上記条文では、「審決」と記載されているのですね。 いまさらながら勉強になります。 

 疑問が残ったのですが、平成11年改正前は、拒絶査定不服審判で、拒絶審決はできたけれども、登録審決を出すことができなっかたのでしょうかね。 平成11年改正本を読むと、延長登録をすべき旨の審決を行うことができるようにしたと記載されているだけですので、そう解釈されるでしょうか・・・

 

 

本日のキーワード: 特許法の歴史も勉強になります。 古い条文をさくさく見れるツールがあるといいんですけどねぇ~

 

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2008年6月29日 (日)

平成20年度特許法等改正

 「弁理士安瀬の日記 東京・湯島にて」の2008.06.27のエントリー「平成20年特許法等の改正」を読んで、ちょっと私も考えてみた。

 本当は、私のコメントを直接伝えられるのがベストなんですが、コメント、TBを受け付けておられないようなので、こんなところで書いている次第です。 なお、私は、仕事の都合で説明会にはいけないので誰か確定情報が分かったら教えてください。

 今回の改正法の関東近辺の説明会は満席になっているわけですから(今だと関東から一番近くは長野ですかね。)、ここ5年の知財ブームというのは凄いことになったと痛感している次第です。 予約すら急がないといけない状況になったわけですから。 私が受験生の頃は当日にさらっと普通に行けてたのですが。。。

 

 さて、本題、

 現行法、

特許法44条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる期間内にするとき。

二 特許をすべき旨の査定(163条3項において準用する51条の規定による特許をすべき旨の査定及び160条1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達のあった日から三十日以内にするとき。

三  拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から三十日以内にするとき。

 以下、略。

 現行、拒絶査定を最初に受けてから分割出願をすることができるのは、

① 拒絶査定の謄本の送達後、30日以内

と、

②拒絶査定不服審判を請求した場合の、補正をすることができる期間となるわけです。

 すなわち、

17条の第1項4号 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求の日から三十日以内にするとき。

 よって、現行法だと、実質、30日+30日の約60日間できるわけです。 旧法では、拒絶査定不服審判を請求しなければ分割することはできなかったわけです。

 

 改正法では、

17条の2第1項4号 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

44条1項1号 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

44条1項3号 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。

 確かに、私が勉強を開始したときも、分割は補正の一態様だからって説明がなされていたのですが(当時、2号と3号はなかった。)、今は、2号及び3号ができたわけですから、もはや、分割は補正の一態様ではなくて(その名残は1号にしかなくて)、2号と3号は、権利化戦略のための一手段と考える必要がありそうです。 平成18年改正でも、出願人及び特許庁双方の利便性が1つの趣旨になっているわけです(特許庁の思いである、無駄な拒絶査定不服審判を減らしたいというのが一番の趣旨だと思いますが。)。

 また、1号→3号とならんでいるわけですから、原則から例外へと流れていると考えれば、1号で分割ができる時又は期間が終わった後も、3号でできると考えるのが普通な気がします。 出ないと、審判を請求したら、その後分割できないのに、審判を請求しなければ3月は分割ができるというのは、特許庁の金科玉条である公平の観点が失われてしまいますしね。

 しかも、今までは、審判請求すると、30日のさらなる期間が与えられていたのですから、審判請求したときの方が分割できる期間が長かったわけです。 また、分割出願は親出願の範囲内でする必要があるとはいえ、あくまで新たな出願であることに変わりはないわけです(関連意匠みたいに親出願に付随しているわけではないのです。出願日についてはあくまで遡及効です。 すなわち、効力です。)。 補正の一態様以外にも、別発明の権利化という分割出願の趣旨があり、それをまっとうさせるためにも、1号の期間経過後も3号で分割可能というのが、私の考えるところです。

 とはいえ、この辺は、しっかりと、特許庁に確認しておく必要があることは、変わりありません。 弁理士は、手続きの代理人であるので、手続き上の失敗はしてはいけないですから。

 

 一番大事なことは、今後、この短い間で運用が変わっていることに気づかずになんてことのないように、期間管理をするということでしょうか。 施行規則等をしっかり押さえておく必要があるでしょう。

 また、クライアントとの、拒絶査定後の対応についても考えなおす必要がありますね。

 今まで、

 拒絶査定の報告→審判請求しますか?→審判請求→補正どうしますか?分割します?→補正又は分割→補充指令→請求の理由どうしますか?→請求の理由の補正

 って動いていたわけですが(ゆっくりなイメージ)、

 これからは、

 拒絶査定の報告→審判請求しますか?補正も同時にする必要があります→審判請求+補正

 (急ぐイメージ)

 補正を最初から考える必要があるわけで、最初から補正を考えるということは、請求の理由もある程度考えておく必要があるわけで、かといって、3月に延びたからといって、直前にならないと動かないのは、そんなに変わるもんでもないわけで、事務所の負担が増えるだけな気がしますね。

 また、海外のクライアントに対してはさらに大変です。 きっと、海外の場合、補正と請求の理由は一緒にインストラクションに含まれて送られてくるでしょう。 かといって、海外の代理人経由のクライアントが動きを早くしてくれるとも限らないし。。。 こちらも、事務所の負担が増えそうです。。。 

 

 

本日のキーワード: すぐ変えているんじゃ、ちょっとセンスない、H18改正でしたね。

 

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2007年4月10日 (火)

指定代理人

 審決取消訴訟の判決を読んでいると、被告が特許庁長官になっている。 そして、その下に指定代理人という方々がいる。 拒絶査定不服審判と訂正審判の審決取消訴訟においては、特許庁長官が被告となるのは、特許法179条による。

179条 前条1項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。 ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する171条1項の再審の審決に対するものにあっては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。

 

 特許法上、代理人といえば、法定代理人(7条)と委任による代理人(9条)である。 では、審決取消訴訟の指定代理人とは何者なのか。

 

 指定代理人とは、「審判便覧 23-03 指定代理人」の項によれば、

1.指定代理人とは、国や行政庁等を当事者とする手続に行政庁等から指定され手続を行う職員をいう。

2.指定代理人の代理権は、国や行政庁から指定又は選任により発生し、指定解除、解任により消滅する。

3.審決取消訴訟における指定代理人について(→80-01)

 ということなので、「審判便覧 80-01 訴え提起に伴う事務」の項によれば、

5.代理人の指定等

 指定代理人とは、特許庁長官により審決などに対する取消しの訴訟を行うものとして指定された職員をいう。

(参考) 

 国の利害に関係ある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律§5①。

「①行政庁は、所部の職員でその指定するものに行政庁を当事者又は参加人とする訴訟を行わせることができる。」

 指定代理人は、審決などに対する取消しの訴訟について、代理人の選任以外の一切の裁判上の行為をする権限を有する(同法§8。) 審決などに対する取消しの訴訟が定期されたときは、訟務室は被告特許庁長官の代理人指定の手続をとり、代理人指定書を知的財産高等裁判所に送付する。

 指定代理人は、部門の審判長・審判官および訟務室所属の審判長・審判官が当たり、前者を主任指定代理人とする。 ただし、取消理由が一般的法律解釈・適用に関するもの、一般的審査基準及び慣行違反ないし変更を求める案件(共通的案件)に係る場合は、後者を主任指定代理人とする。

 

 鹿児島地方法務局のHPには、Q&Aとして

Q.国側の代理人となることのできる根拠はなんですか。【訴訟に関する質問】

A.国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、その所部の職員又は所管行政庁の職員を指定して訴訟を行わせることができるものとされ(「国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」第2条)、行政庁を当時者又は参加人とする訴訟については、行政庁又は、法務大臣がそれぞれの所部の職員を指定して訴訟を行わせることができるものとされています。 このように、法務大臣又は行政庁がその所部の職員を指定して訴訟を行わせる場合の、その指定された職員を「指定代理人」と呼んでいます。

 とある。

国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律

5条1項 行政庁は、所部の職員でその指定するものに、当該行政庁の処分(行政事件訴訟法3条2項に規定する処分をいう。)・・・に係る同法11条1項(・・・)の規定による国を被告とする訴訟又は当該行政庁を当事者若しくは参加人とする訴訟を行わせることができる。

3項 1項の規定は、行政庁が弁護士を訴訟代理人に選任し、同項の訴訟を行わせることを妨げない。

 です。 審決に対しては、特許法195条の4により行政不服審査法による不服申立てをすることができないとされ、行政事件訴訟法に基づく178条の訴えです。 特許庁長官は、弁護士に依頼することもできる。

 

 法令データ提供システムで「指定代理人」で用語検索をかけると、

経済産業省組織規則 

324条(審判課及び審判長)

1項 審判部に、審判課及び審判長126人を置く。

2項 審判課は、次に掲げる事務をつかさどる。

3号 工業所有権に関する審決及び商標登録の取消決定の取消しに係る訴訟事件に関する特許庁長官の指定代理人に関すること。

 審判長の数が決まっている・・・

 

 

本日のキーワード: 審判長は126人

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2007年3月31日 (土)

審査基準前段

 今後出てくる審査基準等は、知的財産推進計画2006&AMARIプランに基づいて定められる(あたりまえ)。 昨今、上記に絡んで進歩性からみの報告書が2発特許庁から発表されている(3月30日付けHP発表の平成18年度(社)日本国際知的財産保護協会委託研究としての「進歩性等に関する各国運用等の調査研究報告書」と3月26日付けHP発表の特許庁審判部の「進歩性検討会報告書」)。 ということで、知的財産推進計画2006等の審査関連部分について読んでみることにした。

 

知的財産推進計画2006 本編 第2章 

2.知的財産権の安定性を高める

(1)特許性の判断基準を統一する

 個々の審査官、審判官が統一的かつ安定した特許権の付与を行えるよう、2006年度から、審査官、審判官による協議や意見交換を促進するとともに、特許性の判断基準、特に進歩性の判断基準についての一層の客観化と明確化について、国際的な運用統一の観点も踏まえて検討し、審査基準の改定等必要な措置を講ずる。 また、特許法168条等に基づく裁判所との間の情報交換をより一層促進するなど、特許庁における判断の裁判所の判断との食い違いの防止に努める。

 とあることから、進歩性の審査基準もゆくゆくは改定されるかもしれない。 また、国際的な運用統一の観点を踏まえることから、進歩性の基準を米国や欧州にそろえるということか(巷では、日本の基準が最も厳しいといわれている)。 しかしながら、最後の一文によれば裁判所の判断基準を特許庁において踏襲することが明記されているに等しいので、どうするのだろう。 手段として情報交換をしておけばよいってことだろうか・・・ 

(2)特許無効審判の蒸し返しを防止する

 同一人又はその関係者等が、実質的に同一の理由により無効審判の請求を繰り返すといった無効審判の蒸し返しを防止するための方策について、2006年度中に、審判を受ける権利との関係にも留意しつつ検討し、結論を得る。

 「審判を受ける権利」というのは、123条2項により何人にも保障されている。 それを制限するとなると、法改正か・・・ 不適法というからには、条文なりで規定する必要があると思われるし・・・

4.知的財産権制度の的確な利用を促す

(1)特許の出願・審査請求構造改革を推進する

③出願人による先行技術調査の質の向上を促す

i)2006年度も引き続き、企業に対し、特許出願前及び審査請求前に、十分な先行技術調査を行うことにより、権利取得に至らない特許出願を削減し、質の高い特許を重点的に取得することを促す。 ・・・

 進歩性の観点で、従来技術との差を明確にするための手段であるとも言える。

7.知的財産の国際的な保護及び協力を推進する

(1)世界特許システムの構築に向けた取組を強化する

①日米欧三極特許長官で特許の相互承認の実現を図る

a)・・・、第2ステップとして、2006年度から、日米欧三極特許庁相互に、第1庁で特許となった出願について第2庁において簡易な手続で早期審査が受けられるようにする「特許審査ハイウェイ」の構築にむけまず日米間での試行を開始するなど、三極間のサーチ・審査結果の相互利用を促進する。 その際、第1庁のサーチ・審査結果の利用が制度的に担保されるよう、第2庁における追加的な調査が不要な部分をガイドラインにおいて明示するなどの運用の明確化又は必要な制度整備を行う。

 「第2庁における追加的な調査が不要な部分をガイドラインにおいて明示する」とあるが、そもそも、新規性の考え方も微妙に違うし(理論上は同じとしているかもしれないが、運用は随分違うのではないか)、進歩性なんかは全然違うのに、調査が不要とはどういった観点でおこなうのだろうか。 日本では、引用文献になるものであっても、外国庁では引用文献に該当しないこともあろうし、また、その逆も真である。 発明の単一性にしたって、今後、日本では審査ができた範囲については、単一性があるとするわけだし(PCTの考え方と異なるはず)、各国運用が違うのは明らかである。

b)上記a)の取組状況を見つつ、第3ステップとして、日米欧三極特許庁間で、一国で成立した特許は他国でも原則認めるよう、実質的な特許相互承認制度を実現する。 2006年度は、日米欧三極特許庁会合の場において、ワーキンググループを設置し、試験的な他の特許庁の審査結果の受入れを検討するなど、特許相互承認制度の実現に向けた具体的な議論を開始することを提案する。

 って、パリ条約の大原則である属地主義の考え方しか知らない一受験生に毛が生えた程度の私にはこの文章は違和感を感じる。 裁判所の判断にそろえるとする進歩性の議論はどうするのだろうか。 この部分からすると、将来に向けて、米国KSR事件は要チェックだし、米欧の審決・判決は今から勉強しておく必要がある・・・ 阻害要因という進歩性の判断基準をバリバリ採用しているのは、日本だけではないのかな?

c)2006年度以降、米・欧特許庁以外の外国特許庁への対象拡大についても、上記a)及びb)と並行して進め、最終的に世界特許を実現する。

 いやぁ、WIPOでの議論が進まないことを考えても、南北問題は知的財産の世界においては非常に根強い問題ですから、世界特許はいつ達成できるのだろうか。 PCTの国際調査機関ができたら、世界特許になるであろうか!

 

番外だが、

第5章 人材の育成と国民意識の向上

3.知的財産人材育成機関を整備する

(3)知的財産専門職大学院における知的財産教育を推進する

 2006年度も引き続き、知財専門職大学院において、弁護士、弁理士に限らず、広く知財に携わる専門家を目指す者に対して、実務、ビジネス、知財政策、国際面を含めた教育を施し、知財ビジネスを多方面で支援できる知財専門家の育成を促す。

 知財専門職大学院の位置付けが読める気がする。

4.各分野の知的財産人材を育成する

(1)知的財産専門人材を育成する

①弁理士の大幅な増員や資質の向上を図る

i)2006年度も、弁理士の大幅な増加を図る。 その中で、経営や会計など企業の知財戦略に関連した分野にも明るい弁理士を増加させるよう、関係研究機関等の取組を促す。

 「大幅」ってどこまで増えるのか? 過去の知的財産推進計画を見直す必要があるかもしれない。 今年の合格者にも多かったし、学生で合格している人は結構目指す人が多かったみたいだし、経営・会計分野の勉強も必要である。 増加のために、特別に易しくしたりするのだろうか。 弁理士試験の場合、企業名とかも願書に記載するし、専門科目という枠でも、・・・ができるので、増加を恣意的にすることはできる・・・

③弁護士の大幅な増員や資質の向上を図る

i)2006年度も引き続き、法曹人口の大幅な増加を図る。 その中で、知財に強い弁護士を増加させる。 また、知財法を含む選択科目別の司法試験合格者数を調査するなど、知財に強い法曹人材の養成が適切に行われているか検証する。

 検証して、適切でなかったら、増えるということ? 知財法曹人口が増える=弁理士の世界にもビックバンが起き得る。 競争が増えるというのはいいことである。 ネット世界のように、新興でも勝ち組になることができる可能性が広がる。 ニーズにあった実力が必要となってくるのは当然であるが。。。

成果編として

5.人材の育成と国民意識の向上

○知的財産専門人材の量的・質的拡大

・弁理士試験の合格者数(2005年は711人)の増加により、弁理士の数が6695人に増加した(2006年3月末時点)。

・知財関連業務に対応できる弁護士のネットワークとして「弁護士知財ネット」が発足した(2005年4月)。 会員弁護士数は、2006年3月末時点で約1200人である。

 今後未登録の弁理士試験合格者が増えることから(特許事務所に居ない限り、合格後速攻登録ということはないようなので)、一定の合格者数が確保され続けるともいえる。 しかしながら、弁理士法の改正で登録に研修が必須になることから、来年度の駆け込み登録が増えちゃって、一気に弁理士数1万人なんてこともあるのかもしれない。 新人研修を修了していれば、該法改正による研修必須が適用されないというのであれば別だろうが・・・ ただ、弁理士登録と弁理士試験合格は、きっとリンクしていないと思われる。 合格年度の法律による登録の要件が適用されれば、研修は不要である。 特許出願と審判とで、どちらの法律が適用されるのかという点がずっと疑問として残っている。

 「弁護士知財ネット」って、何?

○知的財産専門人材の育成機関の整備

・知財専門職大学院が東京理科大学、大阪工業大学に設置された(2005年4月)

 

 報告書末の付属資料の「5.用語集」は結構使えるかもしれない。

 

 審査基準関連で、調べたはずが、方向性が変わってしまった・・・

 

 

本日のキーワード: 脱線しすぎ・・・

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2007年3月30日 (金)

審査基準編に入る前に

 弁理士受験時代には、特許法関連で、進歩性の論理付けのところ以外については、そんなに審査基準を読まないでしょう。 そして、受かるともっと読まない。 というのはよくないので、改定された審査基準を読んでみることにした。 以前、改正本にのっとって、コメントを書いたのだけど、意匠だけやって、特許をやり始めて飽きてしまったので、今回は特許法の改定された審査基準について考えてみようと思う。 

 というか、私は、将来弁理士として活動することがあったとしても、現時点の考えとしては、意匠・商標には手を出さない予定なので(それよりも、プロフェッショナルといえるほど特許で専門性を高めたい!と思っている。)、意匠・商標も審査基準が改定されているけど、まじめには読まないでしょう!

 そうそう、ブログを書いていると、誰に向けて書いているのかということが気になってくるのだけど(やっぱり書いているとアクセス数とか気になったりもするわけで)。。。(作家や記者ってまぁ、、、購買層を意識するのでしょうけど、一度どういった感じで書いているのかきいてみたいですね。) ということで、ブログって話しかけ系が結構多いわけです。 この文章もそうなってますね。。。 で、何がいいたいのかというと、合格初年度って難しいんですよね。 実務家でもないから、諸先輩のような知財に関するコメントをのっけたブログは到底書けない。 ということもあって、顧客を意識することもない。 かといって、受験生でもないので、勉強ネタはない。 また、受験生に向けて書いても講師を生業にしていないので、知識が抜けおちてる以上これまた書けない。 しかも、私自身の経験なんて大したこたぁない。 いやぁ、ホント中途半端です。 誰かも書いてたけど、やっぱネタ切れになるのです。 実は書くことはたくさんあるんだけど、ブログ向きなのがないのです。 受験時代に比べれば時間もあるので、考える時間が増えたおかげでできる勉強等したことはブログとして纏めるのには、時間は増えてはいますがメンドクサイというのがあるわけです。 

 ということで、自分自身を三人称化して、将来の自分自身へのコメントとして書き続けていくことにしました。 まぁ、少ないながらもちょこちょこ見てくれてる人も意識することで(外に発信する以上、ある程度纏める必要がありますので)、理解が深まるという副次的な作用にも期待です。 そういった観点で、ブログに書き込んでみたいと思います。

 

 平成18年合格者はちょうどこの時期、色々落ち着いてきて、送別会のシーズンを向かえ、今自分を見つめなおしているころかもしれません。 弁理士試験の願書の提出が始まることですし、ちょうどあれから1年かぁ~なんてじぃさんばぁさんみたいに感傷にひたれたりもするわけで。。。 

 

 いやぁ、感傷?

 

 

本日のキーワード: 日記風

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2007年3月11日 (日)

方式審査と実体審査

手続補正書と意見書の提出先

 

 まずは、意見書から、

50条 審査官は、拒絶をすべき旨の査定をしようとするときは、特許出願人に対し、拒絶の理由を通知し、相当の期間を指定して、意見書を提出する機会を与えなければならない。 ただし、17条の2第1項第3号に掲げる場合において、53条1項の規定による却下の決定をするときは、この限りでない。

 なので、出願人が意見書を提出することができるのは、審査官の拒絶理由に応答するからである。 ということで、意見書の提出先は、審査官となる。

特許法施行規則32条1項 特許法48条の7及び50条の意見書は、様式48により作成しなければならない。

様式48(32条関係)

【あて先】 特許庁審査官  殿

備考2 「【あて先】」は、特許庁審査官の命令による場合はその命令を発した特許庁審査官、特許庁審判長の命令による場合はその命令を発した特許庁審判長とする。

 

 続いて、手続補正書について、

 願書に添付した明細書等についてする補正のための手続補正書は、提出することができる期間が17条の2で定められている。 そして、手続補正は、拒絶理由に対応してするものでもあるが、自発的にもできる手続である。

17条の2第1項 特許出願人は、特許をすべき旨の査定の謄本の送達前においては、願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる。 ただし、50条の規定による通知を受けた後は、次に掲げる場合に限り、補正をすることができる。 (以下、略)

 なので、願書に添付した明細書等について手続補正をすることができることの根拠条文は1つで(厳密には、17条とかの補正命令に応じてする補正がありますからね。)、自発補正であれ、拒絶理由に対応する補正であれ、17条の2に同じように規定されているので、審査官に提出するものではなく、特許庁長官に提出することになることがわかる。 拒絶理由に対応する補正のときだけ、審査官が提出先というのも変ですからね・・・ 

 長いので割愛するが、特許法施行規則11条によれば、手続の補正は、様式13か様式14によりしなければならないこととされている。 そして、願書は様式26、明細書は様式29、特許請求の範囲は様式29の2、図面は様式30により作成しなければらない(特許法施行規則23条1項、24条、24条の4、25条)。 割愛した特許法施行規則11条には、・・・、様式26から様式32まで、・・・により作成した書面を特許庁に提出することによりした手続の補正は様式13によりしなければならないとされているので、明細書等の手続補正は、様式13によることとなる。

様式13(11条関係)

【あて先】 特許庁長官  殿

(特許庁審判官  殿)

(特許庁審査官  殿)

 となっていて、備考にも、誰をあて先にすべきか書かれてないね・・・ とはいえ、明細書等の手続補正書は、特許庁長官があて先になるはず。

 意見書って、審査官あてに提出するということは、特許庁長官による方式審査ってなされないのかしらね・・・ 特許法18条、18条の2双方とも、主体は特許庁長官である。 となると、審査官あての意見書を特許庁長官が却下したり、補正命令を出したりするのはナンセンスといえる。 となると、意見書については、ぶっちゃけ、方式を守らなくても問題ないってことかしらん!?!? まぁ、電子手続のときには、フォーマットを守らないと発信できないって話を聞いたことがあるので、勝手な書類を送ることはできないんだろうけど・・・

 

 ここは、平成18年の短答試験で問われている部分と被ったりしますね。

5条1項 特許庁長官、審判長又は審査官は、この法律の規定により手続をすべき期間を指定したときは、請求により又は職権で、その期間を延長することができる。

 で、他人の土俵には踏み込まないという解説がなされていたと思う(青本にもその旨の記載あったような。)。 自分の指定した期間については、延長できるけど、同じ行政庁に属するとはいえ、他人の指定期間を延長はできないと。

 

 

 続いて、話変わって、分割出願。

 現行審査基準では、分割出願に係る発明と分割後の原出願に係る発明が同一である場合の取扱として、39条2項の適用をする旨明記されている。 まぁ、ちゃんと引用すると、

3.その他の留意事項

3.1 分割出願に係る発明と分割後の原出願に係る発明が同一である場合の取扱い

 分割出願が適法であり、分割出願に係る発明と分割後の原出願に係る発明が同一である場合には、39条2項の規定が適用される。 

 39条2項の規定の適用は、「第Ⅱ部第4章特許法第39条」に従って行う。

(説明)

 分割出願に係る発明と分割後の原出願に係る発明が同一である場合、両発明を特許することは一発明一特許の原則に反する。 したがって上記のように取り扱う。

 ただ、ここって運用が変わっているのよね。。。

 特許・実用新案 審査ハンドブック63.03

によれば、原出願が平成6年1月1日以前の出願である場合に(平成5年までの出願日を持つ場合)、原出願と分割出願とが同一である場合には、出願日の遡及が認められないとして、審査が行われていたことが理解できるのよね。

 とはいえ、ここってどうなんでしょうね。 分割出願の審査基準では、分割出願の実態的要件として、

 分割直前の原出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明の全部を分割出願に係る発明としたものでないこと

 というのがある。 実務ではよく、審査官を代えるためにとか、分割するならどうせ最初から審査が始まるんだから、当初の請求項と同じでって感じで分割していると思う。 まぁ、一緒じゃないの出して新規事項を加えちゃうよりはいいものね!(まぁ、そのおかげで、平成18年改正では、厳しいものがありますが・・・) で、この場合、当然に、原出願と分割出願は同一の発明になるわけだが(まぁ、原出願が補正により別発明になっていることも多々あろうが。)、とすると、分割出願の実体的要件を満たしていないこととなる。 でも、現在の審査基準では、分割出願は適法として出願日を遡及させ、39条2項で処理するとしている。 法の適用という観点では、昔のように、同一の発明であるから分割出願としての効果である遡及効は得られず、29条1項3号又は39条1項により拒絶というほうがすっきりしているよね。 

 だって、新規事項追加も分割出願が不適法とされるわけだけど、この場合は、出願日の遡及が認められないわけですからね。 分割出願の実体的要件として上げられているにも関わらず、その後の取扱が違うというのは、ちょっと・・・、じゃないのかしら。。。 それとも、全部が同一という観点では、全部同一なら、39条2項でなく、39条1項になるということなのかしら・・・ 実務で、原も分割も全部が同一発明ってことはあまりないだろうから、まぁ、いいんだろうけど。。。 

 ただ、上をよく読んでみると、

 分割直前の原出願の明細書、特許請求の範囲又は図面に記載された発明の全部を分割出願に係る発明としたものでないこと

ってなっているので、特許請求の範囲に図面まで書かなきゃならんってことかいな??? 特許請求の範囲って明細書等で表されている発明全てである場合ってほぼなくって、明細書の方が通常広いもんね。 「好ましくは、・・・」とか「・・・であっても良い」って記載あるもんね。 まぁ、そういう意味ではないんでしょうけどね。 また、少しでも記載をかえれば全部とはいえなくなりそうだし・・・

 

 うじゃうじゃ書いたけど、この辺を鑑みてみれば、平成18改正って、分割出願の本来の趣旨とかけ離れたところで使用されている制度になっていることの是正という意味が一番の理由でなされたんでしょうね。 そもそも分割出願に係る発明が原出願に係る発明と同一っていうのは、趣旨から考えておかしいことですもんね。 そして、今の制度だと金さえあれば何度でも分割出願できるって寸法になりますもんね。 因みに、出願日から20年過ぎたときに審査が終わっていないときって、出願ってどうなるんですかね? 審査は終了するんですかね・・・ 分割して分割して戦い続ける出願人がいてもおかしくないですよね。。。 バブル期の「24時間戦えますかぁ~♪」じゃないですけど・・・

 

 

本日のキーワード: 特許庁審査官 ○○ ○○殿

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2007年2月 1日 (木)

気づき その4

特許法36条4項2号 

 その発明に関連する文献公知発明(29条1項3号に掲げる発明をいう。 以下この号において同じ。)のうち、特許を受けようとする者が特許出願の時に知っているものがあるときは、その文献公知発明が記載された刊行物の名称その他のその文献公知発明に関する情報の所在を記載したものであること。

 なので、先行技術文献情報開示要件は、29条1項3号に掲げる発明のみで、29条1項1号及び2号の公知、公用の発明については課せられていない。

 ただ、29条1項3号に掲げる発明だけ記載すればよいのかというと、そうではなくて、

特許法施行規則様式29 14

 「発明の詳細な説明」は、24条の2及び特許法36条に規定するところに従い、「【発明の名称】」の欄の次に、次の要領で記載する。 ・・・ また、文献公知発明を含め、特許を受けようとする発明に関連する従来の技術についても、なるべくそれを記載する。 ・・・ これらの場合において、その記載は、原則として技術分野の記載の次に記載するものとし、当該記載事項の前には、「【背景技術】」の見出しを付す。

と、特許法施行規則で、29条1項1号及び2号に該当するような発明についても、背景技術として記載することが求められている。 まぁ、29条1項3号の発明の所在(ようは文献名)を開示しない場合には、拒絶理由になる可能性があるが、29条1項3号の発明の内容並びに29条1項1号及び2号に関しては、拒絶理由にはなりえないということで、勘違いしてはいけないけど、開示を求められているのはあくまで、文献名ね!!! 従来技術として、発明の詳細な説明に、その内容まで記載されていなくても、文献名さえ記載されていれば、審査官/審判官は自分で取り寄せて読むことができるからね。

 

 

意匠法施行規則 様式6 11

 物品の部分について意匠登録を受けようとする場合は、・・・、意匠に係る物品のうち、意匠登録を受けようとする部分を実線で描き、その他の部分を破線で描く等により意匠登録を受けようとする部分を特定し、かつ、意匠登録を受けようとする部分を特定する方法を願書の「【意匠の説明】」の欄に記載する。

 意匠登録を受けようとする部分の特定は、あくまでも、図面でである。 図面と【意匠の説明】の欄の記載により意匠登録を受けようとする部分が特定されるものと理解していた。 でもなんか日本語変ですね。 特定できているのに、更に特定する方法を記載しなくてはいけないなんて。。。

 審査基準(71.2.1(3))にも、

 したがって、部分意匠の意匠登録出願においては、一組の図面において、「意匠登録を受けようとする部分」をどのようにして特定したか、その方法が願書の「意匠の説明」の欄に記載されていなければならない。

となっていて、やっぱり、規定としては、

 意匠登録を受けようとする部分の特定の方法を【意匠の説明】の欄に記載し、かつ、斯かる特定の方法により意匠登録を受けようとする部分を特定する。

ではないかな??? 時系列を意味してはないんだろうけど、やっぱりね。

 

 

本日のキーワード: うろ覚え&間違えて覚えているか、理解が変な方向に進んでいることが多い

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2007年1月28日 (日)

気づき その2

 国内優先権とパリ優先権 (甲が特許出願Aをし、乙が特許出願Bを基礎として優先権を主張して特許出願Bをする際に留意すべき事項)

1.国内優先権主張をする場合

41条1項 特許を受けようとする者は、次に掲げる場合を除き、その特許出願に係る発明について、その者が特許又は実用新案登録を受ける権利を有する特許出願又は実用新案登録出願であって先にされたもの(以下「先の出願」という。)の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲若しくは実用新案登録請求の範囲又は図面(先の出願が外国語書面出願である場合にあっては、外国語書面)に記載された発明に基づいて優先権を主張することができる。

ということで、乙が特許出願Aを基礎として国内優先権を主張して特許出願Bをするためには、「その者が特許を受ける権利を有する特許出願の願書に最初に添付した明細書等に記載された発明に基づいて優先権を主張することができる」ことから、乙が、特許出願Aについて特許を受ける権利を有している必要がある。

 特許出願Aについての特許を受ける権利を甲から乙へ承継する必要があるということである。 手続き的には、甲から乙へ出願人の名義変更手続をする必要があるということであり、すなわち、特許出願Aの出願人は乙へと変更されるということである。

2.パリ優先権主張をする場合

パリ条約4条A(1) いずれかの同盟国において正規に特許出願若しくは実用新案、意匠若しくは商標の登録出願そした者又はその承継人は、他の同盟国において出願することに関し、以下に定める期間中優先権を有する。

ということで、乙が特許出願Aを基礎としてパリ優先権を主張して特許出願Bをするためには、「その承継人は、他の同盟国において出願することに関し、以下に定める期間中優先権を有する」ことから、乙が、特許出願Aについて優先権を有している必要がある。

 特許出願Aについての優先権を甲から乙へ承継する必要があるということである。 また、乙が発明をしているわけではないので、乙は、(日本での)特許を受ける権利についても承継する必要がある。 この場合、特許出願Aの出願人は甲のままである。

 

 新規性喪失の例外規定も考察してみると、

新規性喪失→ 特許出願A→ 特許出願B(優先権主張)

 国内優先権主張の場合は、特許出願Aで30条適用の手続をしておれば、特許出願Bは、特許出願Aの日から1年以内に出願をすると共に、国内優先権主張及び新規性喪失の例外の適用の手続を行うことで、新規性喪失の事実によって、特許を受けることができなくなることはない。

 一方、パリ優先権主張の場合は、特許出願Bを新規性喪失の日から6月以内に出願しなければ、新規性喪失の事実によって、特許を受けることができなくなる。 パリ優先権主張した場合は、あくまでも、パリ条約4条Bに規定されているように、他の同盟国においてされた後の出願は、その間に行われた行為、例えば、他の出願、当該発明の公表又は実施、・・・によって不利な取扱いを受けないにすぎないのであるから、優先期間中の行為ではない新規性喪失の事実は優先権主張による効力の範囲外といえるからである。

 

 

本日のキーワード: 出願人名義

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2007年1月27日 (土)

気づき その1

1. 甲会社の従業員乙が、丙会社の従業員丁と共同で職務発明を完成させた場合に、甲会社が特許出願をする際に留意すべき事項

 特許を受ける権利は、発明者である乙と丁に原始的に帰属する(29条1項柱書)。 甲が、特許出願をする際には、乙と丁から特許を受ける権利を承継する必要がある。 特許を受ける権利を承継しないでした特許出願は、冒認出願として拒絶理由になるからである(49条7号)。 ここで、職務発明の場合には、乙から甲へ特許を受ける権利の予約承継は有効である(35条2項)。 しかしながら、特許を受ける権利が共有に係る場合には、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することはできない(33条3項)。 ということで、乙から甲への特許を受ける権利の予約承継の旨の規定があったとしても、丁の同意がなければ、斯かる予約承継は有効とはならず、甲が特許出願した場合に、冒認出願となる。 結局のところ、職務発明如何にかかわらず、共同発明を発明者以外の者が特許出願する場合には、必ず、発明者の持分の譲渡について同意を得た上で、特許を受ける権利を承継した後に特許出願をすることが必要となる。 33条3項の規定は重要な条文である。

 さて、実務の中で、共同研究というのはよく行われていることである。 ロイヤリティを支払う代わりに一社出願、又は共同出願等出願形態は色々とあるかと思うが、いずれにしても、発明者(従業員)から特許を受ける権利について、持分移転の同意及び承継について契約をする必要があるということである。 共同研究の契約をする場合に、研究者も持分移転の同意について予約同意みたいなのをするのだろうか? 特許を受ける権利は、発明を完成しないことには発生しないのだし、35条2項のような規定があるわけではないので、きっと予約同意みたいな考え方はなじまないのではないかな?とも思う。 それとも契約自由の原則でOKなのかな? 予約同意が無効だとすると、特許出願する際に、持分移転の同意に関し、会社と再度取り交わしみたいなことをしているのだろうか? うーむ、疑問に思ったところである。 そのうち、わかるじゃろぉ。。。

 

2. 新規性喪失の例外と優先権主張

 新規性喪失(発明イ)→ 特許出願A(イ)→ 特許出願B(イ:優先権主張)

 出願Aにおいて、30条の適用を受けている場合、出願Bの際に30条4項の手続をすることで、出願Bの日が新規性喪失の日から6月以上経過していても、41条2項の規定により、出願Bにおいても30条の適用を受けることができる。 なお、出願Aで30条適用していても、出願Bで30条適用の手続をしない場合には、出願Bで30条の適用を受けることはできないので、代理人としては、要注意である。 国内優先権主張した場合の効果として、41条2項があるが、30条は1項~3項の適用については、先の出願の時にしたものとみなされるけど、30条4項は規定されていないからね。

 出願Aにおいて、30条の適用を受けていない場合、出願Bの際に30条4項の手続をしたときどうなるのであろう??? 国内優先権の主張をすることにより、30条1項から3項の規定の適用については、出願Aの時にしたものとみなされるわけである(41条2項)。 とすると、出願Bを新規性喪失の日から6月以内にした場合、30条4項&41条1項の手続をすると、30条1項から3項の規定の適用については出願Aの時にしたものとみなされ、出願Aのときに30条の適用を受けていないので、出願Bにおいて30条の適用を受けることができない??? ここは、ちょいと変な感じもするけど、特許要件の審査については優先権の効果を得るのに、仮に出願Bが新規性喪失の日から6月以内にされているものであっても、30条の適用についてだけは現実の出願日でというのは虫が良すぎということでいいのだろう。

 

 新規性喪失(イ)→ 特許出願A(イ)→ 特許出願B(イ、ロ:優先権主張)

 この場合は、出願Bを新規性喪失の日から6月以内にしないと、発明ロについては特許を受けることができない(29条2項)。 優先権主張を伴っていても、発明ロは出願Bの時が特許要件の判断基準日となるからね。

 特許出願A(イ)→ 新規性喪失(イ)→ 特許出願B(イ、ロ:優先権主張)

 新規性を喪失するに至った場合であっても、新規性喪失の例外規定の適用を受けることにより、29条1項各号の一に該当しなかったものとみなされる(30条)。 ここで、国内優先権主張をした場合には(41条)、41条2項の適用により、発明イについては、出願Aの時にしたものとみなして、特許要件の審査がおこなわれる。 なので、出願Bにおいて30条の適用を受けて発明イの30条の適用については、出願Aの時にしたものとみなされても、29条の判断も出願Aの時にしたものとみなされているので、新規性が喪失していない。 この場合には、発明ロについて、30条適用を受けるという点で重要なわけである。

 なお、

 特許出願A(イ)→ 新規性喪失(イ)→ 特許出願B(イ:優先権主張)

 この場合、出願Bにおいて30条4項の手続をするとどういった扱いになるのかな? 発明イについては、特許要件等は出願Aの時にしたものとみなされるので、30条1項から3項の適用は受けることができず、優先権主張の効果により(41条2項)、出願Aのときにしたものとみなされて新規性を喪失しないという考え方になるのかな?

 

 

本日のキーワード: 論文答練を参考に考えてます。 

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2006年8月 8日 (火)

高林標準【その3 ~40頁】

37頁 「天然物として単一化合物の形のままで存在するものを見いだすことは発見にすぎないとしても、化学方法により未知の物質を作り出し、その物質の多様な属性のうちの1つの有用性を見いだしたときには、現行法上は(その用途に限られない)化学物質自体の特許を取得できる。」=「絶対的物質クレーム」

「化学物質が発明となるためには、その物質の1つの有用性が見だされることが創作性の要件として必要になる。この場合の有用性は、特許要件としての産業上の利用可能性とは別の、発明としての成立要件であり、・・・」

 ここにいう有用性とはどこまでのものが求められるのだろうか? 36条4項の審査基準には、「作ることができること」及び「使用できること」が要件とされている。 ただ、これって、発明の成立要件というよりは、記載要件だからちょっと違うかな。。。 しかも、使用できないから実施不可能っていう拒絶理由はあまりないような・・・

 そして、さらに、「どのように使用できるかについて具体的な記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を使用できる場合を除き、どのような使用ができるかについて具体的に記載しなければならない。 例えば、化学物質の発明の場合は、当該化学物質を使用できることを示すためには、一つ以上の技術的に意味のある特定の用途を記載する必要がある。」とあって、技術常識から判断できればいいのかと思いきや、医薬発明の審査基準では、「一般に物の構造や名称からその物をどのように作り、又はどのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野に属する発明であることから、当業者がその発明を実施することができるように発明の詳細な説明を記載するためには、通常、一つ以上の代表的な実施例が必要である。そして、医薬用途を裏付ける実施例として、通常、薬理試験結果の記載が求められる」としていて、技術常識では分かりませんってしている。 この辺りの審査におけるノウハウ的な部分は実務をやってみないことには分からないところかもしれない。 しかし、特許庁が審査をノウハウ的にやってるっていうのがおもろいところだよね。 

 何が発明として成立してて、記載要件としてどこまで求められるのかって、ヨーロッパや米国の特許庁においても、この辺の運用ってあまり明確ではないのかな? 結局、中山特許法上&高林標準特許法を読んでみても、発明とは、に関してはさすがに明確に数学のように1つに答えがでてこない。 この辺は、あまり深入りせずに、学者の先生方に任せておくのがよいのかもしれない。。。 プログラムが物の発明として保護される昨今、「発明とは・・・」について厚く語っても意味がないかもなのです。 

 

 といいつつ、もう少しお勉強は続く。

39頁 「遺伝子についても化学物質発明の発明該当性と同様の立場が採用されている。 すなわち、遺伝子は、アミノ酸配列により特定し、当該遺伝子の機能等を記載することで発明として成立しうるが、・・・」

40頁 「生命の設計図というべきゲノムを分析してその全配列を読み取ること自体は、すでに存在する物の構造を見いだしたにすぎないが、一部分であれその機能を分析して、医薬品への利用可能性を見いだした場合には、発明該当性が生ずるとされている。」

「遺伝子配列部分に机上で確認される有用性があるというだけで当該遺伝子配列自体に発明該当性を認めて、特許権による独占を認めてしまうことには危惧がある。 ・・・具体性のない推定上の機能を指摘しただけでは遺伝子自体の特許を認めるべきではないし、・・・」

 遺伝子についても化学物質発明と同様の立場が採用されているとあるけど、遺伝子発明の方が、機能・用途に関して厳しくないかな??? 化学物質発明のときは、遺伝子発明のようには求められてない気がするが・・・

 

 ここまで述べてきた部分って、2条1項の「発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」の説明だったんだよね。 ってことは、本来、29条1項柱書の審査基準のところにもっと書いてないといけない部分なんでないの??? 29条1項柱書の審査基準ってきっと、医薬発明の分野でわんさかと人間を手術、治療又は診断する方法に該当するとした適用があるのみで、他分野では適用されるものなのかしらん!?

 

 

本日のキーワード: 中々先に進まん・・・(中山特許法上の二の舞か!?)

  

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2006年8月 7日 (月)

高林標準【その2 ~35頁】

 ちょっと古い話だけど、もう一寸早く言いなよ大幸サンってとこだな。 世の中ゾロだしね。 2.85倍の価格格差を、ぼったくりだろぉ~って言われちゃった感じ。 

 

12頁 「工業所有権保護は一国の産業政策と密接不可分であって、権利は原則として国単位で成立し、その国の領域内でのみ効力を生じ、また保護される(属地主義、権利独立の原則)。」

 

15頁 「法定された態様による利益侵害を不正競争行為として禁止するもので、民法709条の特別法である。 原則的には民法709条に基づいて差止めを請求することはできないが、不正競争防止法は損害賠償請求のほかに差止請求も認めている(不正競争防止法3条)。」

 「不正競争防止法により保護される利益は必ずしも権利として確立しておらず、財産権として使用収益および処分できるものではない。」

 となると、不正競争防止法って民法におけるその権利の位置づけってどうなるんでしょ??? 特許法の物権的権利や債権的権利ともまた違った考え方で法が規定されていそうである(深入り厳禁)。

 

28頁 「A, B, Cの3要件を加えることで一定の結果が得られると発明者は認識していたものの、実はC要件は不要であり、A, B要件だけでも一定の結果が生じる場合であっても、A, B, Cの3つを要件とする発明として成立できる。 この場合に、第三者がより効率的にA, B要件だけを用いて同様の結果を生じさせた場合には、A, B, Cを要件とする発明とは別発明となってしまい、権利侵害を主張できないことになる。」

 これって後願権利は、「A, Bからなる」となるはずなので、権利関係が錯綜することはなかろう。 「A, Bを含む」だとA, B, Cの先願権利の上位概念になって、権利は発生しないだろう(29条1項3号、39条)。 それか、「A, Bを含む(但し、Cを含有しない)」と除くクレームで権利発生かな。 特許権がA, B, C要件からなる場合に、A, B要件からなる発明を実施してもそれは、発明特定事項の全部を実施したことにならないから権利侵害とならないのはわかる(権利一体の原則)。 ただ、要件抜け落ちた場合でも侵害といえる場合あるんではなかったか???(要チェック) 

 

31頁 「特許庁の公表している審査基準は出願手続に関する内規にすぎず、法的拘束力はないが、この基準に適合しない出願は拒絶されるし、拒絶を争う者が現れて、裁判所によってその当否が審理判断されるまでは従わざるをえないという大きな影響力を有している。」

 ここは、補正の新規事項についてが当にそれである。 「直接的かつ一義的」から「自明な事項」に変更したものね。 最近だと、人口乳首事件を受けての、優先権の審査基準もそうである。

 

 未完成発明と実施可能要件について、7/27の中山特許法上【その5】で云々していたところが、割とスパッと記載されていて、分かりやすい。

34頁 「技術内容が「反復実施可能性」「具体性」および「客観性」を欠いている場合には発明は未完成であり、特許法2条1項にいう「発明」に該当しないとするのが判例」

「技術内容の開示のしかたが稚拙であるために、当業者が反復実施できるような具体的・客観的な構成となっていないときは、特許法2条1項にいう発明該当性は認めたうえで、開示のしかたが不十分であることを理由に特許としての成立を否定すべきであろう。」

 

 

本日のキーワード: 口述対策もしないと・・・

 

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2006年7月29日 (土)

高林標準【その1 ~9頁】

 中山特許法上は、thinkingのスイートスポットにはまってなかなか先に進めないので、一度読んでみたいと思っていた、高林標準特許法を読むことに。 こちらは、あまりはまりこまずにさらっと読めるのではないかと思っている。 

 大阪地裁の判決が公表されたら検討してみたいと思っている。

 

3頁 「物に対する排他的支配権である物権は、民法その他の法律によらなければ創設することはできない(物権法定主義、民法175条)。」

民法175条

 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。

 特許権は物権であるとは規定はされていないなぁ。 物権的権利と解されているだけか。

 「有体物を直接に支配して使用・収益・処分できる排他的な権利を物権という。 債権とは特定の相手方に対して一定の給付を請求する権利である。 すなわち、物権は誰にでも主張できる絶対的権利であるのに対し、債権は相手方にのみ主張できる相対的権利である。 なお、他人の権利の侵害は不法行為となる(民法709条)が、この場合の権利とは物権、債権といった厳格な意味での権利でなくとも、保護に値する権利であれば足りる。 ・・・ 不法行為に対する救済としては、利益を侵害されることで被った損害を金銭により回復するのが原則であり、不法行為を原因として差止めを請求することはできない。」 

民法216条

 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

 債権的な権利に対しても、不法行為は成立して金銭債権を請求しえるということだが、通常実施権を侵害しても不法行為に基づく損害賠償は請求できないのに、独占的通常実施権に対しては不法行為が成立し損害賠償請求できるのはなんでだろ~♪

8頁 「無体物に排他的支配権を与えるために有体物に対する排他的支配権である物権の概念を借用している」

9頁 「排他的に占有(準占有:民法205条)することが不可能であること。」

 「新たな創作をした者に対する報酬として与えられる知的財産権は、一定期間経過後にはこの創作物を公衆に開放することが独占権付与のいわば必須の条件となっている。 商標は、新たな創作に着目して権利が付与されるのではないから、流通過程で商品等の出所の指標としての作用を奏しており流通秩序形成に役立っている間は、商標の独占をずっと認めても益こそあれ害はない。」

 そもそも特許権は、無体物に関するものであって、物権という考えに馴染まないものを物権と擬制して、種々の権利を認めているので、こういった記載になるのは当然だろう。

 

 

本日のキーワード: 物権的権利と債権的権利と不法行為(よく、わからん。)

 

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2006年7月27日 (木)

中山特許法上【その5 ~113頁】

 「未完成発明は、特許法上の発明とは言えない。 ・・・ 未完成発明とは、一応発明らしき外観を呈しているものの、その発明の課題解決の具体的方法に欠けているものを指す。 このような未完成発明は、単なる思いつきに過ぎず、第三者はその明細書を見ただけでは実施することはできないため、社会一般の技術水準の向上に役立つものではないものが多い(108頁)。」

 「化学は実験の科学と言われ、実験により裏付けられていない以上、・・・、実施例あるいはそれから当業者が容易に実施できる範囲を超えている部分については、発明未完成とされるのがわが国の実務である(108頁)。」

 「未完成発明については、特許法29条1項柱書に該当しない、という理由によって拒絶査定を受ける。 ただし、発明の完成、未完成は出願書類によってのみ判断されるため、現実には開示不十分との区別が判然としないこともある(109頁)。」

「実施例等によって化学反応の裏付け、作用効果の確認がなければ、発明未完成か開示不十分とする外なく、そのいずれかが明らかでないときは、未完成発明としても誤りではない。(110頁)」

 

 29条1項

 産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、その発明について特許を受けることができる。

 36条4項

 前項三号の発明の詳細な説明の記載は、次の各号に適合するものでなければならない。

1号 経済産業省令で定めるところにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものであること

 

 この条文の流れを考えると、やはり先ずは、発明に該当することが要件である。 発明として完成していなければ、先ずもって出願の体をなさないはずなので、36条を考察する余地もないといえよう。 発明に該当するけれど、記載ぶりが悪いから、その記載内容では実施をすることができないというのが、本来の条文のつくりだろうけど。。。 法改正によって、「実施をすることができる程度に明確かつ十分に」なるに実施可能要件を変更したことによって、未完成発明と開示不十分との境界がより分かりにくくなったのではないだろうか。 現行、未完成発明か開示不十分のどちらに該当するのかなんて考えずに、審査実務では全て36条4項違反となっているであろう! そういった意味では、要件を「その実施をすることができる程度に明確かつ十分に」としたことにより、発明としては成立しているけど、開示が不十分ですよという本来の36条4項の趣旨を超えて、未完成発明までも含む運用となっている気来があるのではなかろうか? 「明確かつ十分」ってそりゃ曖昧だよね。 その点、従前の36条4項は、「容易にその実施をすることができる程度に、その発明の目的、構成、効果」として開示すべき点が明確であったので、未完成発明については、29条1項柱書違反とすることもあったのであろう。 まぁ、「構成」が記載されていないとして、未完成発明に該当するものも36条4項違反とされることもあったろうが。 でも、この問題はデリケートだ。 ぶっちゃけ今はどっちでもいいだろう。 どうせ、36条4項違反である。

 

 しかし、審査基準ってなんで、記載要件から入るんだろう。。。 条文上は29条が先にあるのだから、29条の判断が先にくるのではないのかな? 記載要件が先にあって、そこで、実施可能要件を見てしまうから、もはや、未完成発明として29条1項柱書違反の拒絶理由がくることはないのでは・・・

 

発明に該当しないものとして、審査基準では、

①自然法則それ自体

②単なる発見であって創作でないもの

③自然法則に反するもの

④自然法則を利用していないもの

⑤技術的思想でないもの

⑥発明の課題を解決するための手段は示されているものの、その手段によっては、課題を解決することが明らかに不可能なもの

と、6類型を提示している。 ここから考えると、⑥は未完成発明のことを意味しているともいえそうだけど、その例示されているのを考慮すると、未完成発明というよりは、前提となる論理が破綻しているものといえそうなものを意味しているので、未完成発明は⑥の類型に合致するとはいいづらいだろう。 ある意味未完成発明だが、まぁ、⑥は未完成発明というよりは、不可能発明とでもいうところだ。

  

産業上利用することができない発明としては、

①人間を手術、治療又は診断する方法

②その発明が業として利用できない発明

③実際上、明らかに実施できない発明

ある意味、③が未完成発明といえそうでもあるけど。。。

 でも、③はあくまで、産業上利用することができない発明に該当する類型なので、発明としては成立していると考えられるので、やっぱり、未完成発明とはいえないかな。

 

 ようは、未完成発明については、審査基準上、29条1項柱書違反になることは明示されてない。 なんだか最近グダグダなので、弁理士試験に志向するように、舵をきりなおさないと・・・

 

 「微生物に係る発明で、当業者がその微生物を容易に入手できない場合、その微生物を特許庁長官の指定する期間に寄託しない限り、その発明は未完成として扱われる。 ・・・、書面主義の例外として、当該微生物の寄託により、発明完成として扱われることになる(109頁)。」

 特許法施行規則27条の2第1項

 微生物に係る発明について特許出願しようとする者は、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者がその微生物を容易に入手することができる場合を除き、・・・受託証のうち最新のものの写し又は特許庁長官の指定する機関にその微生物を寄託したことを証明する書面を願書に添付しなければならない。

 寄託自体は出願時にはなされてないといけないということだろう。 

 

 

本日のキーワード: 口述では、原則と例外が重要で、原則から流すこと。

 

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2006年7月25日 (火)

中山特許法上【その4 ~94頁】

 「職務発明であっても、自己の使用者にそれらの譲渡等をなすには他の共有者の同意をとらなければならない。(87頁)」

 特許を受ける権利が共有に係るとき、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡することはできない(33条3項)。 そして、特許権が共有に係るとき、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡できない(73条1項)。 となると、共同研究などで、別会社の従業者が共同で発明をした場合に問題が生じる。 予約承継の旨の契約、勤務規則その他の定めの条項があっても、特許を受ける権利や特許権が承継されないということである。 従業者が、共同発明者の同意を得る必要があるということである。 いまどき、特許を受ける権利の帰属について共同研究の際に契約条項を設けない企業は少ないだろうが、弁理士として間に入って共同研究をまとめる状況になるときには、上記した点は非常に重要なポイントである。 共同研究のときって、会社同士は契約書を締結するけど、研究者は承継について同意している旨の法上の契約ってなされてるのかな??? 厳密に考えると、会社が勝手にやってるんじゃねぇの???  共同発明について、特許を受ける権利を譲渡する旨の同意の予約契約みたいなのって結べるのかな? 共同発明が完成しないことには、特許を受ける権利が共有に係ることはないから、予約同意なんてぇのができない場合には、共同発明が完成して始めて同意を要する法的状態ができあがるので、斯かる場面に厳密に73条を適用したら世の中廻らなくなるやもしれない。

 

 「特許権者から権利の享有の認められない外国人に特許権が譲渡された場合は、特許権それ自体が無効となるのではなく、当該譲渡が無効になると解すべきである。(94頁)」

25条1項柱書

 日本国内に住所又は居所(法人にあっては、営業所)を有しない外国人は、次の各号の一に該当する場合を除き、特許権その他特許に関する権利を享有することができない。

 25条違反は拒絶理由であり(49条2号)、無効理由である(123条1項2号)。 また、特許がされた後において、その特許権者が25条の規定により特許権を享有することができない者になったとき(123条1項7号)、後発的無効理由に該当し、無効審決の確定により、123条1項7号に該当するに至った時から存在しなかったものとみなされる(125条)。

 権利能力がないということは、そもそも特許権者になり得ないということなので、斯かる外国人に特許権を譲渡するという法律行為自体が無効と考えるのかな? 権利能力のない外国人には、当然に、特許権の譲渡という手続能力がないという論理だとちょっと変だな。。。 この場合は、権利能力のない外国人との特許権の譲渡の契約自体が無効ということでよいだろう。

 仮に、譲渡が有効となると、特許権の移転は登録が効力発生要件なので(98条1項1号)、登録により特許権の移転は有効となるが、無効理由には該当しないと考えられる。 なぜならば、123条は、特許が次の各号のいずれかに該当するときは、その特許を無効にすることについて特許無効審判を請求することができると規定されており、123条1項1号では、その特許が25条の規定に違反してされたときに無効理由に該当するので、権利能力のない者に特許権が譲渡された場合は射程ではない。 斯かる無効理由は、25条に違反している者による特許出願について登録された場合が該当するからである。 また、123条1項7号の後発的無効理由では、その特許権者が事後的に25条に該当することとなった場合をいっているので、譲渡を想定しているとはいえないと思われる。 まぁ上記状況をこの後発的無効理由で読めなくもないけど、そうすると、譲渡、移転までは有効で、無効審判により特許権が無効とされない限り、特許権が存続することとなってしまう。 

 

 捏ねくり回しの与太話2丁であった。

 

 

本日のキーワード: 選択非免除者の負担って大きいのぉ。

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2006年7月24日 (月)

中山特許法上【その3 ~85頁】

へぇーへぇーーへぇーー♪

 「「契約、勤務規則その他の定」とは、単に使用者と従業者の合意、すなわち契約だけを意味するものではなく、それ以外の方法によっても権利承継等の条項を設けうるということをも意味しており、使用者の一方的意思表示によっても、権利承継等の定めをなすこともできると解すべきである(78頁)。」

 「権利譲渡等の方法が契約に限定されるとしたならば、もし従業者がそのような契約の締結を拒否したら、使用者としてはもはや権利承継等を求める方法がないことになってしまう。・・・、契約によらない使用者の一方的意思表示による定めも有効と解釈せざるをえない(78頁)。」

 改正本を熟読していないので何ともいえないが、この説には乗れない気が若干する。 この説に乗ると、契約は必要なく、使用者の一方的な意思表示で特許を受ける権利や特許権の承継をすることができるとなるが、そうすると、35条4項との整合性がとりずらい。 承継は、使用者の自由意志なのに、対価については両者の協議が必要というのは、どうもしっくりこない。 特許を受ける権利や特許権の承継が一方的な意思表示のみで有効な場合に、従業者としては、承継を認めてないのに、対価については協議に応じるって???

 

35条4項

  契約、勤務規則その他の定めにおいて前項の対価について定める場合には、対価を決定するための基準の策定に際して使用者等と従業者等との間で行われる協議の状況、策定された当該基準の開示の状況、対価の額の算定について行われる従業者等からの意見の聴取の状況等を考慮して、その定めたところにより対価を支払うことが不合理と認められるものであってはならない。

 

 とある。 特許を受ける権利等の承継についての定めと、相当の対価についての定めについては、別の法律行為と考えられる。 特許を受ける権利の承継についての契約、勤務規則その他の定めは、使用者が一方的に定めることができ、それに併せて対価について定めるのも可であり、使用者と従業者の協議があれば、それが参酌されるということだ。 ただ、対価の定めについて協議がなくても、相当の対価が不合理と認められなければいいわけなので、中山説に乗ると、全て使用者の自由意志で対価まで含めて定めることができるといえようか。 ただ、自由意志で勝手に決めてもいいけど、その算出方法等で不合理な場合には、従業者との協議がないことを理由として、35条5項の適用ということであろう。 ようは、法律論的には、使用者が勝手に定めても、職務発明をなした従業者の権利が不当に狭められなければよいということであろう。 手前味噌に納得である。

 

 「従業者が第三者に特許を受ける権利を譲渡した場合は、使用者と第三者は対抗の関係に立ち、先に対抗要件を取得したものが完全な権利を取得するだけのことである(83頁)。」

 特許を受ける権利は、発明者に原始的に帰属する(29条1項柱書)。 そして、特許を受ける権利の予約承継についての契約等存在する場合には、一端、発明者に帰属したとしてもその瞬間すなわち発明完成と同時に特許を受ける権利が使用者に帰属すると考えられる。  しかしながら、上記によれば、斯かる場合であっても二重譲渡はあり得るとされていて、この場合、従業者から使用者への予約承継による特許を受ける権利の承継も有効であり、従業者が第三者にした特許を受ける権利の承継も有効となる(34条1項が存在しているのも、特許を受ける権利の二重譲渡が予定されているからというのを習った覚えがある。)。 特許出願前の特許を受ける権利の承継は出願が第三者対抗要件である(34条1項)。 この場合、使用者が、職務発明について特許を受ける権利を承継しても出願する前に、第三者が出願してしまったら、対抗できないこととなる。 しかも、後願は、冒認出願となる。 この場合、予約承継による特許を受ける権利の承継自体は有効であると思われるので、そうすると、使用者は、特許を受ける権利と実施する権利を享有したこととなり、混同により、実施する権利は消滅する? となると、この場合、使用者には法定通常実施権も発生せず、不当ではないのか? 先願主義である以上、後願となったのであれば保護を受ける価値なしという考え方でいいのか? こういったときは、35条1項の通常実施権は混同により消滅したとはされないと考えることとなるのであろうか?? そうであれば、少なくとも使用者には、通常実施権は残るので、法的には由ということだろうけど。。。

 

 「特許出願後登録前の特許を受ける権利の譲渡は、届出が効力発生要件となっていはいるものの(34条4項)、・・・、その届出に際し譲渡証書の添付は必要なく、使用者に出願の権原さえあれば単独で届出をなしうる(81頁)。」

 

特許施行規則5条

 特許を受ける権利の承継を届け出るときは、その権利の承継を証明する書面を提出しなければならない。

2項 特許庁長官は、特許を受ける権利を承継した者の特許出願について必要があると認めるときは、その権利の承継を証明する書面の提出を命ずることができる。

 

 施行規則5条1項上必要ともよめるけど、どうなんでしょ。 2項を読むと、特許庁長官が必要と認めた時に書面の提出が命ぜられるので、原則必要ないとも読める。 ただ、特許を受ける権利の出願後の承継についての判例では、確か単独でできたのにしなかったのだから、、、って判示されていたような気もする(判例100選の確認必要)。

  

 「特許登録後の譲渡は登録が効力発生要件であり(98条1項1号)、その登録は、登録権利者と登録義務者の双方の申請によるか(特許登録令18条)、登録義務者の承諾書を添付する必要がある(特許登録令19条)。 ・・・、申請という従業者の協力があって始めて権利が移転する。 ・・・、従業者が協力を拒否した場合には、使用者は判決を得て単独で権利移転登録をすることになる(特許登録令20条)(82頁)。」  (登録権利者=使用者、登録義務者=従業者となる。)

 

特許登録令20条

 判決又は相続その他の一般承継による登録は、登録権利者だけで申請することができる。

 

 特許を受ける権利を有する旨の確認訴訟を提起しても、本人が出願してないと認められないんじゃなかったっけ?  認められるのは、出願していていつのまにか、特許を受ける権利の承継がなされていて、勝手な移転により出願人としての地位を喪失した場合のみであった気がしたが・・・。  職務発明のときは、確認訴訟を提起すれば認められるってことなのね(これまた、判例100選の確認必要だ)。

 

へぇへぇへぇー パート2

 「特許出願せずにノウハウとして秘匿したとしても、対価については特許法35条の適用はあり、事実上独占的地位を取得したことによる利益を考慮して対価が算定される(85頁)。」

 

 確かに、35条3項には、特許を受けたときに対価の支払いを受ける権利を有すると規定されているわけではなく、特許を受ける権利の承継があれば、相当の対価の支払いを受ける権利を有するとあるので、その後、特許出願せずに、ノウハウとして秘匿したとしても、従業者は対価を得ることができるのだ。 ふむふむ。

 

35条3項

 従業者等は、契約、勤務規則その他の定めにより、職務発明について使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ、又は使用者等のため専用実施権を設定したときは、相当の対価の支払いを受ける権利を有する

 

 

本日のキーワード: 職務発明てんこ盛り。

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2006年7月23日 (日)

中山特許法上【その2 ~76頁】

 前回はぐだぐだになった。。。 参照部分を見てみたら、うんうん考えてた部分が後にでてるようである。 考え方が間違ってなかったようなので由としよう。 しかし、真面目に特許法を勉強しようと思うと、民法の知識は絶対的に必要だなぁ~と痛感する。 やっぱし、民法の特別法だからね。 弁護士とれば、弁理士ついてるしなぁ。。。 しかし、大量合格者時代を終えつつある今、量から質の時代へと弁理士の世界も転換していくようで、弁理士の理系としての専門性うんぬんを今後求めていくなら、弁護士だからって弁理士を与えている制度をかえなきゃいけないよね。 

 

≪論点1≫

 使用者が特許を受ける権利の譲渡を受け、さらに当該使用者がそれを従業者に返還しあるいは第三者に譲渡し、第三者が特許権を取得した場合にも、使用者に通常実施権は残るか?(74頁)

「従業者から使用者に特許を受ける権利が譲渡された段階で、使用者は特許を受ける権利と実施する権利の双方を取得したのであり、使用者の実施権は混同により消滅する。(74頁)」

 

 混同により消滅するなる中山説の方がしっくりくる。 

 従業者が職務発明につき特許権を取得すると、35条1項により、使用者には、法定通常実施権が発生する(35条1項)。 その後、使用者が従業者から、特許権を取得すると(98条1項1号)、法定通常実施権は混同により消滅する。 ← 根拠条文は何になるのだ?!? 特許を受ける権利の譲渡を受けた場合も、中山説どおり、特許を受ける権利と実施をすることができる権利とを使用者が同時に有することになるので、使用者の有する実施をする権利は消滅すると考えて問題はないだろう。 そうでないとするならば、職務発明について、使用者が予約承継を受け特許権を取得した場合、第三者に特許権を譲渡したり、専用実施権を設定したりすることがあると思われるが、法定通常実施権が残るとするとちょっと変だよね。 譲渡により取得した特許権者に対しては、法定通常実施権を主張できるし、専用実施権者に対しては、法定通常実施権を主張できるは、特許権者の承諾あれば(これ、使用者の承諾ということになるけど)、法定通常実施権の移転できるわと、やりたい放題になる。 

 ただ、ここって微妙な問題だ。 使用者が法定通常実施権を有するのは、あくまでも、従業者や従業者が特許を受ける権利を第三者に譲渡した場合に、特許権が発生した場合である(35条1項)。 となると、特許を受ける権利の段階における混同って微妙な考え方ではある。 

 とはいえ、職務発明制度の趣旨から考えれば、一度特許権を取得し得る立場にたったのに、その後、その権利を他人に譲渡したにもかかわらず、35条の通常実施権を持ち出すというのは、なんとなくフェアじゃないのは理解できるので、混同により消滅という中山説に軍配をあげるということで、決着。

<結論>

 35条の通常実施権を有する使用者が、特許権の譲渡を受けた場合には、混同により斯かる通常実施権は消滅する。 したがって、その後、特許権を第三者に譲渡した場合に、使用者は、法定通常実施権(35条1項)を主張することはできない。 となると、特許を受ける権利を一度使用者が取得した場合には、その後、特許を受ける権利を従業者に返還した場合や、第三者に譲渡した場合に、特許権が設定登録されたとしても、使用者は、一度は特許を受ける権利と実施する権利とを同時取得したことになるので、実施する権利は混同により消滅し、使用者は、法定通常実施権(35条1項)を主張することはできないと解する。

 

≪論点2≫

 特許法35条における使用者の通常実施権は、特許を受けたとき発生するように規定されているが、・・・、特許が付与される前に、使用者が当該発明を実施することができるか?(75頁)

 補償金請求権の場合に、先使用権者や35条の通常実施権者に補償金請求権を請求し得るかという論点があって、これは、青本上答えがでている。 厳密に考えると法上の状況は異なるので同列に論じることはできないとは思うけど、理解するという点でなら同じに考えてもいい気がする。

(青本 188頁)

 その実施者が、その出願に係る発明が特許になった場合に、その特許権に対し有効に対抗できる地位、たとえば先使用(79条)、職務発明の場合に使用者等の地位を有する者であるときは、補償金を支払う義務を負わない。

 青本の方が覚えやすいし、また、青本の記載の方が弁理士試験では説得力があるだろう。 ただ、実施できるか否かは、やはり、中山先生の書いているとおりでいいと思われる。

「35条の趣旨は、資金や資材等の提供者である使用者と、技術的思想の提供者である従業者との間の利益を調整するということにあり、この趣旨は特許の付与の前後で変わるものではない。 したがって、特許付与前においても、使用者は当然に無償で職務発明を実施し得ると解すべきである(76頁)。」

<結論>

 35条1項の法定通常実施権は、特許権が設定登録されることにより発生する(35条1項、66条1項)。 したがって、特許権が設定登録される前に、使用者が当該発明について実施権原を有するのか否かが問題となる。 特許権の設定登録後であれば、使用者は通常実施権を有しているので、正当権原として特許発明の実施をすることができる。 しかるに、特許権の設定登録前には、実施できないとすると、出願公開後、所定の要件を満たすことにより、使用者が実施すると補償金請求権の行使をされることとなる(65条1項)。 特許権の侵害とはならないのに、補償金請求権の行使を受けるというのは、不当である。 したがって、特許権の設定登録前であっても、使用者は当該発明の実施をすることができると解する(2条3項)。 

 また、35条の制度趣旨は、使用者の利益を考慮して、特許権の設定登録後において実施権原を認めることにあると考えられるので、特許権の設定登録前において、使用者の権原を縮小して考えることはその制度趣旨を滅殺するものといえ、不当であるといわざるを得ない。 したがって、特許権の設定登録前についても、使用者は当該発明の実施をすることができると解する(2条3項)。 

 

 

本日のキーワード: オレは中山信奉者か?! 

 

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2006年7月21日 (金)

中山特許法上【その1 ~73頁】

 中山特許法を読むことにした。 結果が出るまで何もしないわけにもいかないし、かといって、青本・条文を今から必死こく気にもならんし。 落ち着いて読めるこの時期ということで、熟読バージョン。

 

35条2項

 従業者がした発明については、その発明が職務発明である場合を除き、あらかじめ使用者等に特許を受ける権利若しくは特許権を承継させ又は使用者等のため専用実施権を設定することを定めた契約、勤務規則その他の定めの条項は、無効とする。

 

 35条2項の反対解釈として、職務発明については予約承継する旨の契約が有効であるとされているが、これはあくまでも、予約承継する旨の契約を結んでも無効とされないというだけであって、「使用者には、職務発明につき、当該従業者に対して、発明後に譲渡等の請求をする権利は当然にはないことになる。(67頁)」

 勘違いしがちだけど、職務発明の特許を受ける権利はあくまでも発明者である従業者に帰属し、いまどきないだろうけど、予約承継する旨の勤務規則等なければ、使用者である会社は指くわえてみているしかないということだ。 従業者が首を縦に振らないかぎり、会社は特許権や特許を受ける権利の承継を請求できないのね。 ただ、法定通常実施権が発生するだけなのだ。

 なるほど。

 因みに、35条2項反対解釈ってよくいう気がするけど、(青本 108頁)には、

 職務発明以外の発明については発明がされる前に特許を受ける権利または特許権の承継についての予約をしても無効である旨を定め、裏から職務発明については、発明がされる前に特許を受ける権利または特許権の承継について予約をすることができる旨を明らかにした。

 とある。 「裏」って反対なのかな??? 裏命題=反対解釈でいいみたいよの。

 

 「使用者の実施権は、従業者が当該特許権を第三者に譲渡した場合や、専用実施権を設定した場合であっても、使用者は登録なしに新特許権者等に対抗できると規定されている。 しかし、それをさらに進め、使用者の通常実施権の移転についても登録なく第三者に対抗できるとする説もあるが、不当である。 99条2項は特許権が譲渡されたり、専用実施権が設定された場合の規定であり、通常実施権が譲渡された場合は99条3項により、たとえ法定実施権であっても登録が対抗要件とされている。 規定の上では、そうなってはいるものの、現実には99条3項が適用される事例は考えにくい。(74頁)」

 

 「使用者の実施権は、従業者が当該特許権を第三者に譲渡した場合や、専用実施権を設定した場合であっても、使用者は登録なしに新特許権者等に対抗できると規定されている。」の部分は、99条2項なので理解できる。  

 「通常実施権が譲渡された場合は99条3項により、たとえ法定実施権であっても登録が対抗要件とされている。」がよく分からない。 よく考えてみると、条文上明らかなので、当然のことをいっているということでいいのかも。 あくまでも、通常実施権の移転については、登録が第三者対抗要件ということ。 

(青本 259頁)  第三者に対して通常実施権の移転等を主張することができないということである。 たとえば、甲から通常実施権を譲り受けた乙が移転の登録をしない間に丙がさらに甲から譲り受けたときは、乙は丙に対して通常実施権を取得していることを主張し得ないから、丙に対する関係では甲はなお通常実施権者であり、したがって、丙は甲から通常実施権を譲り受けることができる。

 ようするに、第三者対抗要件ってことは、二重譲渡が予定されているということだろう。 しかし、

99条3項

 通常実施権の移転、・・・は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。

とあって、譲渡以外の移転の場合でも、登録が第三者対抗要件である。

 法定通常実施権者である甲から乙に一般承継がされた場合に、登録されてなければ、乙は第三者対抗要件を有さないので、特許権者の承諾を得れば、甲は丙に譲渡できるってことか???  なんか釈然としない・・・ 

 とはいえ、通常実施権が登録されることは基本としてないだろうから、「規定の上では、そうなってはいるものの、現実には99条3項が適用される事例は考えにくい。」とあるようにあんまり気にする条文ではないだろう。 移転だけ登録するなんてことはできないから、当然に、前の通常実施権者の登録がされていて初めて、その移転の登録が意味あるものといえるだろうから。

 

 法定通常実施権の移転は、94条1項

 通常実施権は、・・・の裁定による通常実施権を除き、実施の事業とともにする場合、特許権者(専用実施権についての通常実施権にあっては、特許権者及び専用実施権者)の承諾を得た場合及び相続その他の一般承継の場合に限り、移転することができる。

 

 だから、職務発明による法定通常実施権についても、

①実施の事業とともにする場合

②特許権者の承諾を得た場合

③相続その他の一般承継の場合

には、移転できる。

 

 

本日のキーワード: 重箱の隅をつついてはいけない。

 

 

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