2011年5月19日 (木)

最高裁判決後の問題の整理

 
最高裁判決が出ても、依然、問題点は抱えているわけでして、
整理のために、現状の私の考える問題点を記載しておきたいと思います。

究極的には、「特許発明の実施」が何を意味しているのか?ということに尽きるのだと思います。


67条2項
 特許権の存続期間は、その特許発明の実施について安全性の確保等を目的とする法律の規定による許可その他の処分であつて当該処分の目的、手続等からみて当該処分を的確に行うには相当の期間を要するものとして政令で定めるものを受けることが必要であるために、その特許発明の実施をすることができない期間があつたときは、五年を限度として、延長登録の出願により延長することができる。

67条の3
 審査官は、特許権の存続期間の延長登録の出願が次の各号の一に該当するときは、その出願について拒絶をすべき旨の査定をしなければならない。
一  その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。


条文だけ読むと、特許発明の実施について、限定が付されているわけではありません。
ですので、新有効成分であっても、新剤形であっても、新効能であっても、新用量であっても、製造承認を受ければ、特許発明の実施において、薬事法上の処分は必要であったに該当するということになります。

しかしながら、現状の運用では、実質的に、新有効成分と新効能については延長登録が認められる一方で、新剤形や新用量において製造承認を得ても延長登録が認められない運用になっているわけです。

特許庁は、新効能と、新剤形、新用量との間に線を引く理由付けとして、68条の2を用いていたわけです。すなわち、67条2項の特許発明の実施は、「その」特許発明の実施であることからも単なる特許発明の実施を意味するものではないというスタンスです。


68条の2
 特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。


すなわち、新効能のみ認められるのは延長された後、その効力が、物又は物と用途において及ぶため、これを置き換えれば、物=有効成分であり、用途=効能・効果であるので、であれば、転じて、延長されるべきものは、有効成分と効能・効果で画されるはずというロジックであります。

今般、飯村コートなどの判決により、該ロジックは否定され続けた訳ですが、最高裁は、結論は容認しつつもかかる飯村コートのロジックを否定したものと捉えられるのではないかと考えています(であるから、新要件としての機軸を打ち出している)。その場合、逆説的に捉え、従前の特許庁の考え方は正しかったと言えるのかもしれませんが、最高裁が現状の運用は正しいと明示して認めたものでもないので、宙ぶらりんになってしまっていると感じてしまうわけです。

問題点その1
 まずは、有効成分と、効能・効果で判断する審査はOKなのか?
 最高裁の技術的範囲論は、該庁の運用までも駆逐するのか?

 ただし、今般の最高裁判決を金科玉条ととらえ、全ての案件で、「先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないとき」の要件のみで判断していくことにするのであれば、現状の庁の有効成分+効能効果論に基づく運用はひっくり返りますので、先発メーカーの臨床試験戦略は重要になってくることになります。
 
 医薬品メーカーの一戦略として、
①物質特許を取得
②先行する臨床試験の実施
③延長登録願1
④先行する臨床試験の状況を見て、適用拡大
⑤延長登録願2
ですが、有効成分+効能効果論が有効であるのであれば、延長登録願2も登録されますが、今般の最高裁の技術的範囲論でいくと、延長登録願1のみが登録されることになります。
この場合、先行する適用疾患の市場が大きければ問題ないですが、適用拡大部分でのパイが大きいような場合には、虫食い申請も認められている昨今、うれしくない状況が生まれます。
特に、現状、医薬品メーカーが注力しているような抗がん剤分野には、影響が大きいように思います。

問題点その2
 先行処分とは、別途の特許があるときに、後行処分とは、更に別の効能に係る第2後行処分を受けた場合、どのように扱われるのか?
 今般の最高裁の技術的範囲論が勝つのか、庁の有効成分+効能効果論が勝つのか、どっち?


とはいえ、これまでの、先発メーカーによる、幾多の東京高裁&知財高裁判決は、いわゆる、有効成分+効能効果論を支持しているわけですが、上告受理申立てを却下され、確定しているわけですから、最高裁判決の位置づけとしては、これまでの運用の上に変わる部分が付け加わったということになるのでしょうか。
 

特許庁の審査基準改定が待たれるところです。
なお、特許庁は、審査をストップさせた模様です。
特許権の存続期間の延長登録出願に関する審査基準及び審査の取扱いについて(http://www.jpo.go.jp/torikumi/t_torikumi/sonzoku_encho.htm)
平成23年5月16日
  

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2011年5月15日 (日)

平成21年(行ヒ)第326号

 
久々に特許で最高裁判決が出ましたので、ブログも久しぶりに更新です。

特許とは言っても、存続期間延長登録の可否に関する判決ですので、実務的に影響力は大きくても、弁理士万人が関連するものではありませんね。

私は、これまで、該制度について、非常に注力して勉強してきていましたので、色々と散文的に考察をしていきたいと思います。


まずは、最高裁判決文の中からのみで考えてみます。


本件では、平成20年(行ケ)第10460号のみが判示されているわけですが、
平成20年(行ケ)第10458号は、平成21年(行ヒ)第324号で判示されているようですので、
第10459号は、間をとって、平成21年(行ヒ)325号なんでしょう。
判決文のDBだと、タイトルの事件のみが公開されているような感じです。


上告代理人は、「須藤典明ほか」となっています。
日本弁護士連合会の検索ページで探してみても、ヒットしません。
一方、e-hokiの裁判官検索を行うと、お一方ヒットし、法務省訟務総括審議官というのをやられている方が出てきます。
ググってみても、同一人と思われる方がヒットします(書籍もそれなりに出されていて、法曹では著名人のようですね。)。

今は行政官かもしれませんが、本来司法に属する裁判官である方が最高裁に対し、行政に属する特許庁の代理人として訴えるという図式であろうと想像しておきます。


前置きが長くなりましたので、本題に戻しまして、
以下、おいおい事例との関係は述べて行きますが、
まずは、判決文だけから思いつくままに。


『2 原審の適法に確定した事実関係等の概要は、次のとおりである。』
として、「2」で(1)~(5)として事実関係が述べられています。

2の中で目を引く部分は、(3)中の
『本件先行医薬品は、本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない。』
です。


「3」が判断部分になりますので、まずは、全文引用してみましょう。

『3 特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった薬事法14条1項による製造販売の承認(以下「後行処分」という。)に先行して,後行処分の対象となった医薬品(以下「後行医薬品」という。)と有効成分並びに効能及び効果を同じくする医薬品(以下「先行医薬品」という。)について同項による製造販売の承認(以下「先行処分」という。)がされている場合であっても,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分がされていることを根拠として,当該特許権の特許発明の実施に後行処分を受けることが必要であったとは認められないということはできないというべきである。なぜならば,特許権の存続期間の延長制度は,特許法67条2項の政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を回復することを目的とするところ,後行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくする先行医薬品について先行処分がされていたからといって,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない以上,上記延長登録出願に係る特許権のうち後行医薬品がその実施に当たる特許発明はもとより,上記特許権のいずれの請求項に係る特許発明も実施することができたとはいえないからである。そして,先行医薬品が,延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分により存続期間が延長され得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲(特許法68条の2)をどのように解するかによって上記結論が左右されるものではない。
 本件先行医薬品は,本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないのであるから,本件において,本件先行処分がされていることを根拠として,その特許発明の実施に本件処分を受けることが必要であったとは認められないということはできない。』

そして、下線部分ですが、

『特許権の存続期間の延長登録出願の理由となった薬事法14条1項による製造販売の承認(以下「後行処分」という。)に先行して,後行処分の対象となった医薬品(以下「後行医薬品」という。)と有効成分並びに効能及び効果を同じくする医薬品(以下「先行医薬品」という。)について同項による製造販売の承認(以下「先行処分」という。)がされている場合であっても,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分がされていることを根拠として,当該特許権の特許発明の実施に後行処分を受けることが必要であったとは認められないということはできないというべきである。』

ここだけ読むとWスタンダードの容認ととれなくもありませんね。
最高裁の考えはどうなんでしょうか?
というのも、現行、特許庁は、存続期間の延長登録の出願に対して、
物と用途、医薬品でいうなれば、有効成分と効能・効果を先行品と後行品(本件処分に相当するもの)とで対比して、いずれかが異なる場合に(通常は、効能・効果の差異に着目して)、延長登録を認めているわけです。

特許庁の審査基準には、

『(3) 一の特許権に対応する処分が複数あるとき
  一の特許権に対応する処分が複数ある場合、処分を受けた物が異なる処分(処分 において物の用途が特定されている場合にあっては、物又はその特 定される用途のいずれかが異なる処分)であれば、それぞれの処分を受けることはその特許発明の実施に必要であったと認 められるため、異なる複数の処分に基づく同一の特許権の存続期間の延長登録が処分ごとに認められる。
 例えば、医薬品に関する一の特許権に対して、有効成分又は効能・効果のいずれかが異なる複数の承認が与えられている場合には、それらの承認に基づく複数の延長登録が認められる。

(注) 政令で定める処分を受けた物と実質的に同一の物の取扱いについては、(4)を参照。

 逆に、有効成分及びその効能・効果が同一の他の承認(例えば剤型、製法等のみが異なる承認)を受けることは、当該特許発明の実施に必要であったとは認められないこととなるため、当該他の承認に基づく延長登録の出願は拒絶される。』

『(5)医薬品の承認等を受けた物の用途
 第一の処分を受けた物の用途と第二の処分を受けた同一の物の用途が一部重複している場合には、その重複部分を除いた用途についての特許発明の実施が、第二の処分を受 けることによって初めて可能となる 。したがって、第二の処分を受けることは、特許発明の実施に必要であったと認められることとなる。
 例えば、下位概念の用途(例えば、慢性アレルギー性鼻炎治療剤)を有する有効成分に対して承認が与えられた後 、上位概念の用途(例えば、アレルギー性鼻炎治療剤)を有する同一の有効成分に対して承認が与えられた場合には、上記の考え方に従 って、後者の承認を受けることも特許発明の実施に必要であったと認められることとなる。』

です。

本件では、(3)の考え方を複数の特許権がある場合というか、後行品をカバーする特許権がある場合にまで、拡大して適用したことが問われているわけですが、
(5)の場合や、(3)の効能・効果が異なる複数の承認が与えられている場合においては、
『先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないとき』
の要件が考慮されずに延長登録が認めらています。
すなわち、現在の存続期間の延長登録の実務では、
物質特許があって、先行処分が効能・効果X、後行処分が効能・効果Yの場合には、XとYが異なっていれば、あるいは、YがXを包含する場合でも、新効能・効果と評価される部分があれば、後行処分に基づいて延長登録が認められているわけです。
この場合、先行処分によって、先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲に属する場合になりますので、今回の新たな要件である
『先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないとき』
は、現行の審査基準の下での審査に合致することになるんでしょうか。
また、どのように条文を解釈していくのでしょうか。


私は、現状では、以下のように進んでいくのだろうと思っていますが、今後、産業構造審議会のWGも再開され動くでしょうからウォッチングしておきましょう。。

まずは、現行通り、有効成分と効能・効果で判断する。
一方が異なっていれば、延長登録を認める。
双方同じであっても、後行処分に係る特許権の存在を確認する。
先行処分に係る医薬品が、該特許権の技術的範囲に属していなければ、後行処分に基づく延長登録を認める。


有効成分と効能・効果が異なる場合には、技術的範囲に属するか否かというのは問われず、
すなわち、特許庁がこれまで行ってきており、今般の飯村コート判決が出るまでの裁判所の判断を踏襲するものといえるでしょう。
この特許庁の考え方の本質は、68条の2に基づくものであるとともに、特許庁が主張している、(私の解釈では)医薬の本質は、有効成分と効能・効果であるということになると思います。
すると、最高裁は、ここの考え方については、飯村コートの考え方を否定していると捉えることもでき、その後、出されている塩月コートの判決等にも影響はないのでしょうか?
おいおい、眺め直してみようと思います。

私の今後の実務に対する想像では、上記のように、(3)の例外的事例として、今般のようなケースが審査基準に定められ、特段大きな変更はないと想定していますが(承認される一事例が増えるに過ぎない)、より考察を深めていきたいと考えておる次第であります(浅はかな考えかもしれません)。

なお、最高裁が、現行の特許庁の運用を容認しているのではないかと考えたのは、
『後行処分の対象となった医薬品(以下「後行医薬品」という。)と有効成分並びに効能及び効果を同じくする医薬品(以下「先行医薬品」という。)について同項による製造販売の承認(以下「先行処分」という。)がされている場合であっても,』
という前提を置いていることから、有効成分と、効能・効果に基づく現行審査基準を前提として考えて、両者が異質の場合は現行通り、同質の場合には、少し考慮が必要としているのではないかと考えたからです。


ただし、なぜならば以下の理由づけの部分が、今回の事例のような場合にのみ適用される考え方というのは若干、違和感を覚えます。存続期間延長登録制度全般にかかわる事項についての一般論に該当するともいえ、とても一般的なことを述べていないでしょうか?

『なぜならば,特許権の存続期間の延長制度は,特許法67条2項の政令で定める処分を受けるために特許発明を実施することができなかった期間を回復することを目的とするところ,後行医薬品と有効成分並びに効能及び効果を同じくする先行医薬品について先行処分がされていたからといって,先行医薬品が延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しない以上,上記延長登録出願に係る特許権のうち後行医薬品がその実施に当たる特許発明はもとより,上記特許権のいずれの請求項に係る特許発明も実施することができたとはいえないからである。』

この考え方でいけば、現行の、物質特許に対しての、効能・効果までを考慮して延長登録を認める特許庁の運用はありなのでしょうか?
68条の2の解釈としても、特許発明として用途が特定されている場合には、用途までみると読まないと上記の最高裁判決の、判示事項に沿うのか疑問が残ります。
この辺りは、もう少し考えてみたいと思います。


なお、最高裁は、
『そして,先行医薬品が,延長登録出願に係る特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないときは,先行処分により存続期間が延長され得た場合の特許権の効力の及ぶ範囲(特許法68条の2)をどのように解するかによって上記結論が左右されるものではない。』
と続けますが、この部分では何を言いたいのでしょうか?
68条の2が有効成分、効能・効果において異なるときは、考慮するにしても、そうでない場合には、68条の2の解釈は関係なく、禁止されていた範囲が解除されたか否かで、製剤特許に対応する新規剤形医薬品(延長登録における新剤形医薬品の新規登録形態といえそうです)として、すなわち、新規有効成分医薬品のような場合と同様に延長登録を認めればよいというスタンスなのでしょうか?

今後、後行処分とは別の用途で同一製剤について処分がさらにあったとしても、延長登録は認めれないということを意味しているのでしょうか。
物質特許については、有効成分及び効能・効果の異同についても判断してよい。
製剤特許については、有効成分及び効能・効果の異同については判断してはいけない。
ということなのでしょうか?
製剤特許においては、延長登録のためには、一つ一つの有効成分や用途ごとに、他社排除の観点からすると、有効成分を特定せずに取得することが望まれることになりますが、
そうすると、改善多項性との関係で、まとめた大きい特許を取ると、延長登録の点では不利、個別具体的に細分化して権利を取得しておいた方が延長登録の点では有利となりますが、ここはおかしなことになりそうな気がします。

最高裁は、発明の本質は何かということを求めているのでしょうか。
『本件特許権のいずれの請求項に係る特許発明の技術的範囲にも属しないのであるから』
との『いずれの』という判示事項にある意味戸惑いを覚えています。

今後、製剤特許の取り扱いがどうなっていくのかは、注視しておこうと思います。
 

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2009年6月14日 (日)

特許権の存続期間の延長制度検討WG 第1回

 平成20年(行ケ)第10458号が出されましたので、ちょっと古いですが、特許権の存続期間の延長制度検討WGを勉強してみることにしました(なお、カルタヘナも議題に挙がっていますが、割愛です。)。 

 まずは、第1回 平成20年10月30日(木)開催です。

 議題は、

1.特許権の存続期間の延長制度検討ワーキング・グループの設置について

2.特許権の存続期間の延長制度の見直しの論点について

3.特許権の存続期間の延長制度の対象分野とする条件について

4.カルタヘナ法に基づく処分について

5.延長制度の対象分野の拡大に関するアンケートの実施について

 です。

 先端医療特許検討委員会の方には、日本製薬工業協会知的財産委員会からアステラス製薬の知的財産部長が参画されているだけですが(パブコメでも、日本ジェネリック製薬協会が、その点指摘していましたね。)、さすがに、産業構造審議会では、より実務に近い話をするからか、双方から参画しています。

 製薬協からは、武田薬品の弁理士が委員となっています(こんなの見つけました。 私は商標は担当していませんので、参考情報に過ぎませんが、面白いですね。 2009年3月で集計が終わっているのですが、、、 サイトマップからはリンクされていない頁になりますし、サービスをやめたのでしょうか。。。 登録件数の多い弁理士という欄もあると、良いのですけどね!)。

 

 知的財産推進計画2008によれば、

②特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直す
 特許権の存続期間延長制度に関し、遺伝子組換え生物、iPS細胞由来の生物材料、DDS(ドラッグ・デリバリー・システム)等を対象に追加すべく、総合的な検討を実施
(9頁)

(2)特許権の存続期間延長制度を抜本的に見直す
 特許権の存続期間延長制度に関して、カルタヘナ法上の遺伝子組換え生物の使用承認に係る手続やiPS細胞由来の生物材料の承認手続のほか、DDSのように革新的な製剤技術を用いた剤型のみが異なる革新的医薬も対象に追加するなどの制度の対象の見直しを検討する。あわせて、延長の要件、延長する特許権の数及び回数、延長された特許権の効力範囲などを含めた制度全般の在り方につき、国際的な動向等も踏まえつつ、総合的な検討を行う。これらの検討は、直ちに開始し、2008年度中に結論を得る。
(経済産業省、関係府省)
(33頁)

 ということで、WGが動いている訳ですね。

 

 あわせてこんなのありましたが、???(何か報告出てましたっけ?)

(3)機能性食品等に関連する用途発明の保護の在り方を検討する
 いわゆる機能性食品等に関連する用途発明について、研究開発の動向や2006年6月の審査基準改訂後の特許出願・審査の状況及び国際的な保護の状況を踏まえ、これらの発明の特許保護の在り方について効力の及ぶ範囲を含め、2008年度の早期に関連業界より意見を得て議論を行い、その結果に応じて必要な方策を講ずる。
(経済産業省)
(33頁)

 

 さて、本題。 議事録を読んでいきます。 ただ、第1回なので、特段の情報はありません。

 「2つ目の論点は、既に期間延長制度の対象になっております医薬品につきましての制度見直しの要否でございます。薬事法上の医薬品の製造販売の承認は、医薬品の有効成分、効能・効果、剤型、用法・用量、製法等、事細かに特定して行われます。しかしながら、特許法68条の2においては、期間延長される特許権の効力は承認された医薬品の有効成分及び効能・効果の観点のみによって特定され、剤型、用法・用量、製法が異なる医薬品であっても有効成分及び効能・効果が一致すれば効力が及ぶことになっております。したがって、その後に有効成分及び効能・効果以外の項目の異なったさらなる医薬品の製造承認があっても、期間延長の対象とはしておりません。

 しかしながら、20年前の制度導入時には想定できなかった、有効成分及び効能・効果が同じであって剤型のみが異なる医薬品、すなわちDDS製剤についても、薬事法上の承認には有効成分や効能が新規の医薬品と同様に長期間を要しているということで、医薬品の有効成分、効能・効果のみならず、剤型の変更を考慮した期間延長制度の再構築が可能か否かという点が2つ目の論点になります

 特許庁においても、現行制度に問題がある(改正を求められていた)ことは、認識していたということですね。 したがって、飯村コートの判断もこのWGの答申案に先駆けてなされたものといえそうです(だから、そんなにセンセーショナルに捉える必要もなかったかもです。)。 平成20年(行ケ)第10458号と同じ出願人である、平成18年(行ケ)第10311号(リュープリン事件)での出願人がどういった主張をしていたのか確認して見る必要がありそうです。

 特許庁の資料4によれば、法制度の趣旨を踏まえた条件と政策的観点からの条件から考察が必要とされていて、

1.制度の趣旨を踏まえた前提条件
(1)法規制による処分が、業としての特許発明の実施を禁止している。
(2)当該規制対象分野全体として、かつ、不可避的な規制審査期間があり、しかも、当該期間の短縮にも、安全性の確保等の観点からおのずから限界がある。
(3)安全性等の審査に農薬や医薬品と同程度の期間がかかる。

2.政策的観点からの条件
(1)処分と関係する特許権者と第三者とのバランスを考慮する。
(2)イノベーションの進展に寄与するか否かも考慮する。
(3)国際的動向も踏まえる。

 が挙げられています。

 企業側からの、要望として、存続期間の延長登録制度において、イノベーションを保護という名のもとに、、、

 「といいますのは、先ほどiPS細胞のお話が出ました。これは医薬品として承認申請はおろか、臨床試験を開始するまでにも相当の時間がかかると思います。つまり、ある技術においてはリードタイムが非常に長いということで、別途医薬の特許が成立すればいいのですが、物として、あるいは基本的な方法として権利を取った場合に、それが実用化されるまでには20年を超えているというような事態もあると思います。その場合には、臨床試験や審査の期間だけを見ても評価できないところがあると思いますので、特許の残存期間もぜひ1つの観点として見ていただければと思います

 とはいえ、特許法における存続期間の延長登録制度は、あくまでも、資料7の

 「特許権の存続期間の延長制度は、行政庁等の認可等のための審査等により特許発明を実施できない期間が発生することにより、特許権による保護期間が浸食されている場合に、浸食された期間を回復して、特許権の対象とされている発明に有効な保護を与えることによって、特許制度の目的を達成することを目的としている。

 という、一橋大学教授の相澤教授の見解があるわけで、明治大学の熊谷教授(弁理士受験生にとっては、”くま”で、・・・)の見解である

 「リードタイムが長い発明その他いろいろあると思いますが、20年という存続期間を決めていることを前提として、例外として存続期間の延長をいかなる要件で認めるのかは、昭和62年の制度が創設された段階と現在と存続期間延長制度の趣旨において違いはないと思います。実態として農薬と医薬品以外の分野で同じような状況が生じていることが実証されるのかどうかが、対象を考えるかというとき重要ではないかと思います。

 も考慮すれば、当然に、

 「すなわち、特許権の存続期間の延長制度は、事業化までの期間を保護するという制度ではなく、特許発明を業として実施できる期間の侵食を保護する規定だと思いますので、その観点から、iPS関連の技術に関して特許発明の実施期間が侵食される可能性が具体的に認識されているのかどうか、その辺に関して知見をお持ちの方がいらっしゃいましたら教えていただきたいのですが。

 です。

 

 

本日のキーワード: 特許権の残存期間と浸食された期間の回復

 

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2009年6月 8日 (月)

平成20年(行ケ)第10458号

平成20年(行ケ)第10458号 審決取消請求事件 平成21年5月29日判決言渡

 審決取消(下線は付記)

裁判所の判断

 「当裁判所は,本件出願に対し,本件先行処分があったことを理由として,本件発明の実施に政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないとした審決の判断には,以下の2点(「特許法67条の3第1項1号該当性の誤り」及び「先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤り」)において誤りがあり,その誤りは,いずれも審決の結論に影響するものであるから,審決を取り消すべきものと判断する。」(45頁)

 ということで、これまでの存続期間の延長登録の出願の審査実務に影響が出そうです。 また、延長登録の効力範囲にまで影響が・・・ 審査は通りやすくなるけれども、権利範囲は狭くなる方向に行く可能性がありますので、今後の判例を要チェックです。 ただし、本判決の射程がどこまでかも考慮する必要があります。

 争点となった条文

67条の3第1項第1号 その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。

68条の2 特許権の存続期間が延長された場合(第六十七条の二第五項の規定により延長されたものとみなされた場合を含む。)の当該特許権の効力は、その延長登録の理由となつた第六十七条第二項の政令で定める処分の対象となつた物(その処分においてその物の使用される特定の用途が定められている場合にあつては、当該用途に使用されるその物)についての当該特許発明の実施以外の行為には、及ばない。

 「上記規定によれば、特許権の存続期間の延長登録の出願に関し,同条1号所定の拒絶査定をするための処分要件(要件事実)は,「その特許発明の実施に第六十七条第二項の政令で定める処分(判決注 本件においては,薬事法14条1項所定の医薬品の承認)を受けることが必要であつたとは認められないとき」であり,そのいわゆる主張,立証責任は,あげて,拒絶査定をする被告において負担する。」(46頁)

 ということで、拒絶理由は(後に繋がっていく中で、「あくまでも」と読めると思いますが)、あくまでも67条の3第1項第1号から導くことが必要としていると判示しています。

 先に感想をば、、、 改正時の事情も勉強できていませんし、判決の中で多々挙げられている見解にも目を通したわけではないので、間違った解釈かもしれませんが、存続期間の延長登録制度が導入された昭和62年改正法から、時代趨勢が変更しているのに、特許庁が条文の文言を変えてこなかったというところにも問題がありそうです。 そもそも、存続期間の延長登録の審査については、平成18年ごろまでに判決が出揃って、実務の方向性がようやく定まったと考えられていたと思います。 その後も、武田薬品だけは、頑張っていたということになると思いますが。。。 特許権の存続期間がトピックになってきているのも、2010年問題、ジェネリックの台頭、LCMの観点からの結晶、製剤特許の活用といった点も大きいでしょう。 そもそも、三極で唯一、何回でも、また、どの特許に対しても延長できるという制度設計をしているところも争いが増える点でしょう。 また、ブロックバスターは売れると分かっているのですから、何としてでも独占を延長したいというのが企業の意向でしょうし。 昭和62年時と現状は、製薬業界の置かれている状況、特許戦略の状況も違う気がしてますので、抜本的な改正(解釈も含めて)が必要かもです。 (参考 Wikipedia ブロックバスター) 

 「特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許発明を実施する意思及び能力があってもなお,特許発明を実施することができなかった特許権者に対して,「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除されることとなった特許発明の実施行為について,当該「政令で定める処分」を受けるために必要であった期間,特許権の存続期間を延長するという方法を講じることによって,特許発明を実施することができなかった不利益の解消を図った制度であるということができる。」(49頁)

 特許法67条の3第1項第1号の「政令で定める処分」の用語を解釈する上で、法の趣旨をまずは、明確にしています。

 「以上の点を前提として整理する。特許法67条の3第1項1号は,「その特許発明の実施に・・・政令で定める処分を受けることが必要であつたとは認められないとき。」と,審査官(審判官)が,延長登録出願を拒絶するための要件として規定されているから,審査官(審判官)が,当該出願を拒絶するためには,①「政令で定める処分」を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと,又は,②「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」が「『その特許発明の実施』に該当する行為」に含まれないことを論証する必要があるということになる(なお,特許法67条の2第1項4号及び同条2項の規定に照らし,「政令で定める処分」の存在及びその内容については,出願人が主張,立証すべきものと解される。)。」(49頁)

 ここまでで、「政令で定める処分」の解釈については何も裁判所はいっていません。

 67条の3第1項第1号により審査官(審判官)が拒絶するためには、条文の解釈として、

 ①「政令で定める処分」を受けたことによっては,禁止が解除されたとはいえないこと

 出願人が立証した、出願人が受けた「政令で定める処分」については、証拠として、通常、医薬品医療機器総合機構による審査結果が添付されているわけですから、、、 そうすると、条文の文言に当て嵌めてみると、一般には「禁止が解除されたとはいえない」とはならないこととなります。 言い直せば、機構により承認されていれば、政令で定める処分によって何らかの禁止は解除されているので、拒絶理由は①に基づいては発生しないことになります。 ところが、これまでの特許庁の運用では、機構による承認がなされたとしても、新たに禁止が解除されていない、既に禁止は解除されていたとして、①に該当すると判断していたわけです。 ここでの、「政令で定める処分」を、文言通り解釈するのではなく、68条の2から導いて、「有効成分」と「効能・効果」の点からの処分でなければならないとしたわけです。 すなわち、「政令で定める処分」を、「有効成分」と「効能・効果」に関する処分として、同様の「有効成分」及び「効能・効果」についての先の処分があれば、禁止が新たに解除されていないとしていたということです。

 ②「『政令で定める処分』を受けたことによって禁止が解除された行為」が「『その特許発明の実施』に該当する行為」に含まれないこと

 ②が審査の課程で問題になることはあまりないでしょう。 「政令で定める処分」を受けた医薬品が、特許発明の技術的範囲に属するか確認するということだと思いますので、通常は、大丈夫ですね。 医薬発明の場合、用途発明の出願も多数なされている訳ですが、製造販売している医薬品の直接関連する用途は、通常、物質特許の際に明細書中で記載されていることが多いですからね(用途発明に基づいた延長登録の出願はあまりないでしょう。)。 また、存続期間の延長登録の出願の場合、用途特許は特段関連せず、物質特許、結晶特許、又は製剤特許が関与してくるでしょうし。

 また、②について、これまでの審査では、「有効成分」と「効能・効果」について判断していたわけですので、問題はなかったでしょう。

 「しかし,本件先行処分の対象となった先行医薬品は,本件発明の技術的範囲に含まれないこと,本件先行処分を受けた者が,本件特許権の特許権者である原告でもなく,専用実施権者又は登録された通常実施権者でもないことは,当事者間に争いがなく,本件先行処分によって禁止が解除された先行医薬品の製造行為等は本件発明の実施行為に該当するものではない。本件においては,本件先行処分が存在するものの,本件先行処分を受けることによって禁止が解除された行為が,本件発明の技術的範囲に属し,本件発明の実施行為に該当するという関係が存在するわけではない。」(50頁)

 本件は、これまでの延長登録の出願とは若干事例を異にするわけですので、射程がどこまでかは、今後の課題になるわけです。

 これまでの延長登録の出願は、簡単に言うと、

 物質特許に対して、(効能・効果に変更なく、効能・効果での延長登録は既にされている中で)新用量又は新剤型での承認を得た場合に、延長登録が認められるかという点が争点だったわけですが、

 今回の案件では、

 製剤特許に対して、新剤型医薬品として承認を受けた場合に、延長登録が認められるかという点が争点になったわけですので、若干、事例が異なるといえば異なる訳ですが・・・

 「したがって,本件先行処分の存在は,本件発明に係る特許権者である原告にとって,本件発明の技術的範囲に含まれる医薬品について薬事法所定の承認を受けない限り,本件発明を実施することができなかった法的状態の解消に対し,何らかの影響を及ぼすものとはいえない。本件先行処分の存在は,本件発明の実施に当たり,「政令で定める処分」(本件では薬事法所定の承認)を受けることが必要であったことを否定する理由とならない。」(50-51頁)

 物質特許に対して、新剤型・新用量医薬品として承認を受けた場合には、どうなるんでしょうか? 前段部分を読むと、物質特許に対して、新製剤の承認を得なくても禁止は解除されているわけで、先行処分の存在により、新剤型については、延長登録は、認められないとも読めます。

 物質特許に対しては、新剤型・新用量医薬品の承認を受けたとしても、禁止が解除されたわけではないと判断されるとなると、製剤特許に対してだけ、新剤型医薬品の承認を受ければ禁止が解除されたといえ、新用量では、製剤特許の禁止は解除されるものではないとなりそうです。 そうなってくると、先に「先発メーカー寄り」とコメントしましたが、効力範囲が狭まる可能性を鑑みると、寧ろ、武田薬品は自分の首を締めると共に、製薬協全体の首も締めたかもしれません。 まぁ、審査基準の改定によって、用法用量についても特許が認められるようになれば、新用量医薬品での承認を受けた場合に用法用量特許について延長されるとは思いますが。。。

 現行で、先の処分がある中で、後の処分として、新たに、新効能医薬品、新剤型医薬品、新用量医薬品として承認を受けた場合を考えてみます

          新効能医薬品 新剤型医薬品 新用量医薬品

物質特許       ○         ×        ×

製造方法特許    ○(?)      ×        ×

用途特許       ○         ×        ×

結晶特許       ○         ×        ×

製剤特許       ○         ×        ×

用法用量特許    ○         ×        ×

 (認められていればとして)

 ではないかと思いますが、今回の判決を受けた最悪のケースとして、まとめてみると、

           新効能医薬品 新剤型医薬品 新用量医薬品

物質特許       ×         ×        ×

製造方法特許    ×         ×        ×

用途特許       ○         ×        ×

結晶特許       ×         ×        ×

製剤特許       ×         ○        ×

用法用量特許    ×         ×        ○

 となってしまわないでしょうか?

 「本件発明を実施することができなかった法的状態の解消に対し」をどう解釈するかだと思うのですが、疑問が残ってしまいました。。。 

 物質特許のうち、新効能に係る物資特許の部分は、請求項の記載に対する黙示の下位概念とでもいうような位置づけで、やはり本件発明を実施することができなかった部分であると判断されるという理解でよいんですかね??? そのように考えると、機構による全ての承認に対して、延長登録が認められることになると思いますが。。。 出願すればよいという状態が生まれそうです。。。

 そして、今後は、②の要件に合致しているのかという点の判断が求められることになりそうですが、そうすると、出願する方も②の要件の充足性を述べなければいけないわけで、結構大変なことになりそうです。 というのも、これまでは、製剤のミソですので、製剤における添加剤については黒塗りしていたんではないでしょうか? しかし、②の要件が有効成分と効能・効果だけではなく、構成要件を満たしているかという点に移ってくるとすると、製剤特許において少なくとも請求項1に規定している構成要件を充足していることを証拠として提示する義務は出願人に課せられたわけで、黒塗りできなくなるのでは???

 

 先発メーカーにとってはもろ手を挙げて喜べないというか、寧ろ好ましくない状況が生まれていないでしょうか? 

 本件特許の請求項1は、 

(A)薬物を含有し,最高血中薬物濃度到達時間が約60分以内である速放性組成物と,
(B)薬物を含んでなる核を,(1)水不溶性物質,(2)硫酸基を有していてもよい多糖類,ヒドロキシアルキル基またはカルボキシアルキル基を有する多糖類,メチルセルロース,ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコールおよびポリエチレングリコールから選ばれる親水性物質および(3)酸性の解離基を有しpH依存性の膨潤を示す架橋型アクリル酸重合体を含む被膜剤で被覆してなる放出制御組成物とを組み合わせてなる医薬。

 です。 ②に該当する証拠の提出は、出願人に課されたわけで、審判部に戻されたとしても、、、 ①は容易にクリアーしますが、②のクリアーは無理(難しい)でしょう! 多分、臨床試験では、(A)のみの確認試験はやっていないと思いますので、武田薬品、自爆でしょうか・・・ きっと、審判では、②を満たさないとして拒絶され、また、審決取消訴訟でしょうか! そうなったときに初めて、知財高裁の意向も読めると思いますが、転勤がつきものの裁判官ですから、飯村コートはその時まで待っていてくれるのでしょうか???

 

 

本日のキーワード: 68条の2について検討を加えると共に、武田の主張も要チェックです。

 

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平成20年(行ケ)第10458号 その2

 「2 先行処分に係る延長登録の効力の及ぶ範囲についての誤り
 当裁判所は,審決が,先行処分を理由とする特許権の存続期間が延長された場合の当該特許権の効力を,処分の対象となった品目とは関係なく,「有効成分(物)」,「効能・効果(用途)」を同一とする医薬品に及ぶものと解して,原告のした延長登録の出願に対して,政令で定める処分を受けることが必要であったとは認められないと判断した点に関し,特許法68条の2の解釈上の誤りがあると解する
(51頁)

 としています。 上告することで、知財高裁(飯村コート)の出した「解する」との考え方が間違いと判定されなくもないと思いますので、上告されるのか、上告されないのか、また、今後どのようにして登録査定又は拒絶査定が出されるのかについても要チェックです(何回も要チェックモードになります。)。

 これは,特許請求の範囲の記載によって特定される特許発明の技術的範囲が「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された範囲よりも広い場合に,「政令で定める処分」を受けることが必要なために特許権者がその特許発明を実施することができなかった範囲(「物」又は「物及び用途」の範囲)を超えて,延長された特許権の効力が及ぶとすることは,特許権者と第三者の公平を欠くことになるからである。すなわち,特許権の存続期間の延長登録の制度は,特許権者がその特許発明を実施する意思及び能力を有するにもかかわらず,特許法67条2項所定の「安全性の確保等を目的とする法律」の規定によりその特許発明の実施が妨げられた場合に,実施機会の喪失による不利益を解消させる制度であるから,そのような不利益の解消を超えて,特許権者を有利に扱うことは,制度の趣旨に反することになる。」(52頁)

 判決の根底として、審査を終えた状態から、初めて68条の2の判断ができるとの判示がなされたと考えられます。 すなわち、68条の2の解釈をする前に、審査の結果としての、「政令で定める処分」を受けることによって禁止が解除された範囲が定まっている必要があるということであり、67条の3の拒絶理由を判断する際に、68条の2は、関係なく、67条の3の拒絶理由に該当しないとして、登録された後に、68条の2により効力範囲の調整が行われるということですね。 したがって、効力範囲の調整規定である68条の2に基づいて、67条の3第1項第1号を判断するのは、明らかにおかしいことになります。

 「以上のとおり,特許法68条の2は,特許発明の実施に薬事法所定の承認が必要であったことを理由として存続期間が延長された場合,当該特許権の効力は,薬事法所定の承認の対象となった物(物及び用途)についての当該特許発明の実施以外の行為には及ばないとする規定である。」(52頁)

 とりあえず、延長しちゃいなさいということでしょうか。 そして、権利範囲で調整すると。 この考え方は、先発メーカーに取っては、両刃の剣ですね。

 今までは、製剤特許とかでも、「有効成分」と「効能・効果」で延長がされていたわけですから、別製剤についても効力の延長がなされていたわけですよね(一応)。 ところが、今回の文理解釈により、承認を受けた製剤そのもの以外については、効力範囲外になりますので、虫食い申請を許す厚生労働省の動きからすると、先発の製剤に類似する製剤がより早く出てくることになりそうです!

 青本や注解特許法を眺めてみようと思います。

 「薬事法14条1項が,「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」と規定しており,同項に係る承認に必要な審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項」(薬事法14条2項3号参照。なお,平成16年法律第135号による改正前の薬事法14条2項柱書きでは,審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用等」とされている。)とされていること,薬事法14条9項が,「第一項の承認を受けた者は,当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)は,その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては,第二項から前項までの規定を準用する。」と規定していること(なお,平成16年法律第135号による改正前の薬事法14条7項の規定も同じ。)に照らすならば,薬事法上の「品目」とは,形式的には,上記の各要素によって特定されたそれぞれの物を指し,それぞれを単位として,承認が与えられるものというべきである。」(53頁)

 読み下すと、

 薬事法14条1項が,「医薬品・・・の製造販売をしようとする者は,品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。」と規定しており,同項に係る承認に必要な審査の対象となる事項は,「名称,成分,分量,構造,用法,用量,使用方法,効能,効果,性能,副作用その他の品質,有効性及び安全性に関する事項とされていること,

 薬事法14条9項が,「第一項の承認を受けた者は,当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするときは,その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては,第二項から前項までの規定を準用する。」と規定していることに照らすならば,

 薬事法上の「品目」とは,形式的には,上記の各要素によって特定されたそれぞれの物を指し,それぞれを単位として,承認が与えられるものというべきである。

 なので、14条1項及び9項が重要です。

薬事法第十四条  医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品及び第二十三条の二第一項の規定により指定する体外診断用医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)、厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品又は医療機器(一般医療機器及び同項の規定により指定する管理医療機器を除く。)の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない
 次の各号のいずれかに該当するときは、前項の承認は、与えない。
 申請者が、第十二条第一項の許可(申請をした品目の種類に応じた許可に限る。)を受けていないとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器を製造する製造所が、第十三条第一項の許可(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)又は第十三条の三第一項の認定(申請をした品目について製造ができる区分に係るものに限る。)を受けていないとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項の審査の結果、その物が次のイからハまでのいずれかに該当するとき。
イ 申請に係る医薬品、医薬部外品又は医療機器が、その申請に係る効能、効果又は性能を有すると認められないとき。
ロ 申請に係る医薬品、医薬部外品又は医療機器が、その効能、効果又は性能に比して著しく有害な作用を有することにより、医薬品、医薬部外品又は医療機器として使用価値がないと認められるとき。
ハ イ又はロに掲げる場合のほか、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器として不適当なものとして厚生労働省令で定める場合に該当するとき。
 申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が、厚生労働省令で定める基準に適合していると認められないとき。
 第一項の承認を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、申請書に臨床試験の試験成績に関する資料その他の資料を添付して申請しなければならない。この場合において、当該申請に係る医薬品又は医療機器が厚生労働省令で定める医薬品又は医療機器であるときは、当該資料は、厚生労働大臣の定める基準に従つて収集され、かつ、作成されたものでなければならない。
 第一項の申請に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が、第十四条の十一第一項に規定する原薬等登録原簿に収められている原薬等(原薬たる医薬品その他厚生労働省令で定める物をいう。以下同じ。)を原料又は材料として製造されるものであるときは、第一項の承認を受けようとする者は、厚生労働省令で定めるところにより、当該原薬等が原薬等登録原簿に登録されていることを証する書面をもつて前項の規定により添付するものとされた資料の一部に代えることができる。
 第二項第三号の規定による審査においては、当該品目に係る申請内容及び第三項前段に規定する資料に基づき、当該品目の品質、有効性及び安全性に関する調査(既に製造販売の承認を与えられている品目との成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能等の同一性に関する調査を含む。)を行うものとする。この場合において、当該品目が同項後段に規定する厚生労働省令で定める医薬品又は医療機器であるときは、あらかじめ、当該品目に係る資料が同項後段の規定に適合するかどうかについての書面による調査又は実地の調査を行うものとする。
 第一項の承認を受けようとする者又は同項の承認を受けた者は、その承認に係る医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器が政令で定めるものであるときは、その物の製造所における製造管理又は品質管理の方法が第二項第四号に規定する厚生労働省令で定める基準に適合しているかどうかについて、当該承認を受けようとするとき、及び当該承認の取得後三年を下らない政令で定める期間を経過するごとに、厚生労働大臣の書面による調査又は実地の調査を受けなければならない。
 厚生労働大臣は、第一項の承認の申請に係る医薬品又は医療機器が、希少疾病用医薬品、希少疾病用医療機器その他の医療上特にその必要性が高いと認められるものであるときは、当該医薬品又は医療機器についての第二項第三号の規定による審査又は前項の規定による調査を、他の医薬品又は医療機器の審査又は調査に優先して行うことができる。
 厚生労働大臣は、第一項の申請があつた場合において、次の各号のいずれかに該当するときは、同項の承認について、あらかじめ、薬事・食品衛生審議会の意見を聴かなければならない。
 申請に係る医薬品、医薬部外品又は化粧品が、既に製造販売の承認を与えられている医薬品、医薬部外品又は化粧品と、有効成分、分量、用法、用量、効能、効果等が明らかに異なるとき。
 申請に係る医療機器が、既に製造販売の承認を与えられている医療機器と、構造、使用方法、効能、効果、性能等が明らかに異なるとき。
 第一項の承認を受けた者は、当該品目について承認された事項の一部を変更しようとするとき(当該変更が厚生労働省令で定める軽微な変更であるときを除く。)は、その変更について厚生労働大臣の承認を受けなければならない。この場合においては、第二項から前項までの規定を準用する。
10  第一項の承認を受けた者は、前項の厚生労働省令で定める軽微な変更について、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣にその旨を届け出なければならない。
11  第一項及び第九項の承認の申請(政令で定めるものを除く。)は、機構を経由して行うものとする。

 申請に係る医薬品の名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用その他の品質、有効性及び安全性に関する事項

 品目の品質、有効性及び安全性に関する調査(既に製造販売の承認を与えられている品目との成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能等の同一性に関する調査を含む。)

 との記載からすると、

 品質、有効性及び安全性には、名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用が含まれるということで、

 すなわち、

 品質、有効性、安全性についての審査とは、名称、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能、副作用の審査をするということです。 14条5項では、副作用が品質のうちから削除されているのですが、副作用については同一性よりも再度審査されるということでしょうか(成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能はいずれもポジティブな特性なので、同一性が担保されていれば問題ないですが、副作用については、成分~性能のいずれかが異なれば同一性が担保されることはないということで、再度審査されるということでしょうか。)。 この場合、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能が同一であれば、副作用も審査するとはいえ、同一ということでしょうかね。 逆にいうと、副作用は、成分~性能の同一性が示されれば、審査の対象ではないという道が示されているということでしょうか。

 したがって、薬事法上の、審査の対象は、成分、分量、構造、用法、用量、使用方法、効能、効果、性能ということになります(プラスとして、副作用)。

 「さらに,「用法」,「用量」,「使用方法」,「効能」,「効果」,「性能」は,「用途発明」における「用途」に該当することがあり得るとしても(この点,「用途」に該当するというためには,特許法上,「用途発明」として,保護されるべき内容を備えていること,すなわち,客観的な「物」それ自体の構成は同一であっても,「用途」が異なることにより,特許法上,「物」の発明として「同一」とは認められないと評価されるだけの内容を備えていることが必要である。),客観的な「物」それ自体の構成を特定するものではない。」(54頁)

 さらには、

 「したがって,「政令で定める処分」が薬事法所定の承認である場合,「政令で定める処分」の対象となった「物」とは,当該承認により与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって特定された「物」を意味するものというべきである。なお,薬事法所定の承認に必要な審査の対象となる「成分」とは,薬効を発揮する成分(有効成分)に限定されるものではない。」(54頁)

 とすると、

 68条の2の解釈においては、

 物としては、「成分、分量、構造」であり、

 用途としては、「用法、用量、使用方法、効能、効果、性能」ということになります。

 これまでは、

 物としては、成分の一要素である、「有効成分」と、

 用途としては、「効能、効果」で判断していたということだったと思いますので、

 えらく権利範囲が狭まることになります。

 67条の3第1項第1号では、

 とりあえず、機構からの承認が下りていれば、①の要件はクリアーすると思いますが(より認められやすくなるというプラスの方向)、②の要件を満たすために、出願人が証拠の提出が求められることを考えると(負担の増大、秘密事項の開示必要というマイナスの方向)、結構、出願人(先発メーカー)にとって、マイナス面の方が大きく、良い判決とはいえないような気がしてきました。

 このことは、

 「以上のとおり,特許発明が医薬品に係るものである場合には,その技術的範囲に含まれる実施態様のうち,薬事法所定の承認が与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施,及び当該医薬品の「用途」によって特定された「物」についての当該特許発明の実施についてのみ,延長された特許権の効力が及ぶものと解するのが相当である(もとより,その均等物や実質的に同一と評価される物が含まれることは,技術的範囲の通常の理解に照らして,当然であるといえる。)。」(54頁)

 と判示されていることからも、言えるのではないでしょうか。 それがゆえのなお書きでしょうね。 ようは、均等を持ち出さないと権利範囲が狭くなりすぎるということなのでしょう。 ここで、製剤特許で、製剤の成分がマーカッシュで記載されている場合に、その1つについて承認を受けた場合に、マーカッシュ中の他の成分についても、ジェネリックメーカーは承認を受けることができないということなんでしょうか? ここでいう、均等物や実質的に同一と評価される物とは何を意味しているのでしょうかね??? 分量が100mg錠である場合に、110mg錠ぐらいは均等物ということなんでしょうかね???

 「しかし,上記の説明は,合理性がない。すなわち,「承認」を受けることによって,禁止が解除される範囲に関して,①医薬品を特定する各要素によって画された範囲と解すべきか,②有効成分(物質)と効能・効果(用途)のみによって画された広い範囲と解すべきかの論点に対して,単に,「薬事法の本質」や「規制のポイント」との用語を使って結論を導いているにすぎず,およそ論理的な説明はされていない
 薬事法の承認が,多くの要素で画された単位でされている以上,その承認の効果は,特段の合理的な事情がない限り,その範囲を超えて効力を有することはないはずである。すなわち,製造販売の禁止が解除される範囲は,一要素にすぎない「有効成分」や「効能・効果」で画された範囲よりも狭いはずである。」
(59頁)

 前段では、特許庁の主張がぼろくそに叩かれています。 この判決を通して特許庁の主張でとりいれられた部分は一切ないので、仕方ないところなのかもしれませんけど。。。

 後段から、68条の2により延長される効力範囲は、非常に狭いということになることが明示されたといえます。

 「それにもかかわらず,物質を医薬品として製造販売することを規制することが薬事法の本質であるとして,物質(有効成分)で画された広範な範囲に解除の効果が生じるとする説明は,解釈論によって,特許権の存続期間の延長登録の出願の拒絶理由として,①「その特許権の存続期間が既に延長されたものであるとき。」,②「その特許発明が医薬品に関するものである場合において,当該発明が延長登録出願の理由とされた処分に先行する別の処分の対象となった医薬品と有効成分及び効能・効果において重複するとき。」を付加したのと同様の結果を導く,いわば事実上の立法をしたものと評価すべきであって,合理的な解釈とはいえない。」(60頁)

 こうなってくると、2011年に予定されているとかという噂の特許法の大改正で、立法するしかないでしょう! といいつつも、特許庁は立法府ではありませんけど。。。

 「また,医薬品の「成分」は,「有効成分」以外のものであっても,医薬品の有効性,安全性を左右することがあり,「分量」,「構造」も同様である。さらに,「用法」,「用量」,「使用方法」,「性能」,「副作用その他の品質」も,「効能」,「効果」と同じく,医薬品の有効性,安全性を左右するものである。」(62頁)

 「ところで,このような実務を前提とした上で考察すると,仮に,特許法68条の2の「物」を「有効成分」と解釈するとしたならば,薬事法所定の承認を受けた医薬品を技術的範囲に含まない請求項に係る発明についてまで,存続期間の延長登録の効果を及ぼすことになり,そのような結果は,特許権者に不当な利益を与え,本来の存続期間の満了後に特許発明を実施しようとする者に著しい不利益を課すことになり,存続期間の延長登録の制度の趣旨に反する,不公平な結果を招く。
 この点,「政令で定める処分」の対象となった「物」に係る存続期間の延長登録の効果が及ぶ範囲を,当該承認が与えられた医薬品の「成分」,「分量」及び「構造」によって画された「物」についての特許発明を実施する行為と解するならば,「物」を「有効成分」と解することによって生ずる,特許権の存続期間の延長登録の制度の趣旨に反する不当な結果を避けることができるものといえよう。」
(63頁)

 決定的ですね。。。 

 ただ、用法用量は、今後、物に付随してくるはずですが、特許法の審査における運用がまた否定されることになるのでしょうか。。。 医薬品における「物」を、成分、分量、構造に限った今回の判決をも考慮した基準作りがなされるのでしょうか。。。 飯村コートは、用法用量を、効能効果のように用途発明の観点から審査しなさいということを演繹しているのでしょうか。。。

 今後の手続きについても、

 「しかし,出願人は,願書に政令で定める処分の内容を記載し(特許法67条の2第1項4号),資料を添付しなければならないこと(特許法67条の2第2項),資料等に営業秘密が記載されている場合には,閲覧・謄写の制限も可能であること(特許法186条1項ただし書),詳細な情報が開示されないのは,特許庁が特許法68条の2にいう「物」を「有効成分」と解釈する実務を採用していることによるものであることからすれば,被告の上記主張は,特許法68条の2にいう「物」を「成分」,「分量」及び「構造」と解することを妨げる
ものとはいえない。」
(64頁)

 とはいえ、効力範囲にもろに影響を与える以上、承認を受けた部分については、公示する必要があるでしょうから、閲覧・謄写の制限はどうなんでしょうか? 法律上はできるようですが。。。 判決確定後のこの辺の運用の変遷にも留意が必要そうです。 今、存続期間の延長登録の出願したくないですね。。。

第百八十六条  何人も、特許庁長官に対し、特許に関し、証明、書類の謄本若しくは抄本の交付、書類の閲覧若しくは謄写又は特許原簿のうち磁気テープをもつて調製した部分に記録されている事項を記載した書類の交付(第三項において「証明等」という。)を請求することができる。ただし、次に掲げる書類については、特許庁長官が秘密を保持する必要があると認めるときは、この限りでない。

 願書、願書に添付した明細書、特許請求の範囲、図面若しくは要約書若しくは外国語書面若しくは外国語要約書面若しくは特許出願の審査に係る書類(特許権の設定の登録又は出願公開がされたものを除く。)又は第六十七条の二第二項の資料
 拒絶査定不服審判に係る書類(当該事件に係る特許出願について特許権の設定の登録又は出願公開がされたものを除く。)
 特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する再審に係る書類であつて、当事者又は参加人から当該当事者又は参加人の保有する営業秘密が記載された旨の申出があつたもの
 個人の名誉又は生活の平穏を害するおそれがあるもの
 公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがあるもの
 
第六十七条の二  特許権の存続期間の延長登録の出願をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した願書を特許庁長官に提出しなければならない。
 出願人の氏名又は名称及び住所又は居所
 特許番号
 延長を求める期間(五年以下の期間に限る。)
 前条第二項の政令で定める処分の内容
 前項の願書には、経済産業省令で定めるところにより、延長の理由を記載した資料を添付しなければならない。

 67条の2第2項の資料は、

特許法施行規則第三十八条の十六  特許法第六十七条の二第二項の規定により、願書に添付しなければならない延長の理由を記載した資料は、次のとおりとする。
 その延長登録の出願に係る特許発明の実施に特許法第六十七条第二項の政令で定める処分を受けることが必要であつたことを証明するため必要な資料
 前号の処分を受けることが必要であつたためにその延長登録の出願に係る特許発明の実施をすることができなかつた期間を示す資料
 第一号の処分を受けた者がその延長登録の出願に係る特許権についての専用実施権者若しくは登録した通常実施権者又は当該特許権者であることを証明するため必要な資料

 です。

 

  

本日のキーワード: 予定通りなのかしらん?

 

宿題: 武田薬品の主張内容&青本、注解特許法

 

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2009年6月 4日 (木)

武田薬品vs特許庁 2

 平成20(行ケ)10458等の裏でも、武田薬品と特許庁はバトルしてます。 まだ、深くは解析していないですが、完全に、ケ○カ腰ですな。。。 因みに、こちらは判例としての価値はほぼないですね(普通、やらない。。。)。 担当事務所はこちらです。

 

 平成20(行ケ)104761047710478

 

 ワザと?!?

 

 特許庁の審査が酷いですね。。。

 知財高裁で争うネタなんでしょうか。。。

 審判段階での主張ではない可能性が高いですけど。。。

 

 

本日のキーワード: 特許庁だいじょうぶですか?

 

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2009年6月 2日 (火)

武田薬品vs特許庁

 審決取消訴訟で、これまでの実務が大幅に変更になりそうな、判決が出されましたね。

 平成20(行ケ)104581045910460です。

 とうとう、日の目を見たというところでしょうか。 この事務所に頼んだのが良かったんですかね。 とはいえ、特許庁には、是非上告してもらいたいものです。

 

 T社の念願だった用法用量特許が認められる方向に進み、かつ、製剤特許でも存続期間の延長登録がなされると。 昨今の施策といい、先発よりですねぇ~ 今なら、医薬発明のそれはそれは厳しい実施可能要件の審査基準も覆せるかもしれません!!!

 

 業界の動き、要ウォッチングです。

 

 特許庁の特許権の存続期間の延長制度検討WGにも影響が出そうです。

 

 巷では、薬事法の改正による販売制度の変更がもっぱらのニュースですし、ちょっと前までは、豚インフルエンザのニュースで持ちきりでしたし、2010年を前に、製薬業界の賑わいが楽しみなことになっています。

 

 

本日のキーワード: 飯村コートは、とうとう特許庁の審査の運用だけでなく、過去の判例も否定し始めましたね。。。 ほんの2~3年前ですよね。。。

 

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2008年10月 6日 (月)

特許法67条の2第5項

 自説なので、ひっそりと。。。

 某方のブログに記載されていたので考えてみました。

特許法67条の2第5項

 特許権の存続期間の延長登録の出願があったときは、存続期間は延長されたものとみなす。 ただし、その出願について拒絶をすべき旨の査定が確定し、又は特許権の存続期間を延長した旨の登録があったときは、この限りでない。

 なぜ、拒絶をすべき旨の査定若しくは審決でないのでしょうか、というのが疑問のようです。 面白い疑問なので考えてみました。

 青本(第16版)199頁の記載を見ると、「本条は、昭和62年の一部改正により新設されたものであり、」とあり、5項については、その後改正されていないことが分かります。

 青本201頁の記載を見ると、「5項は、拒絶査定や延長登録の査定が本来の存続期間の満了後になされた場合の法律関係について規定したものであり、特許権の存続期間の延長登録の出願があったときに、存続期間は、延長されたものとみなすこととしている。 また、ただし書は、拒絶査定が確定したとき、又は存続期間の延長登録の延長がなされたときは、この擬制的な効果は排除されることを規定している。」とあります。

 ここで、条文ができたのは、67条の2の2が規定される前ですから、存続期間の満了前6月を超えて出願することができなかった頃になります。 ですので、存続期間の延長登録の出願は存続期間の満了の6月前までにされているわけですから、延長登録についての処分は定まっているのが通常と考えることができます(特許庁において、登録の可否が定まっていることを予定していたことでしょう。)。 特許庁において、存続期間が満了しているのに、延長がどうなるかわからないという状況を由とするはずがないと考えられるからです(行政庁ですから)。 ですので、レアーなケースとして(法制度的には考えら得る状況ですので)、67条の2第5項は規定されていると考えることができます。 そして、そのような状況が想定されることを加味して、存続期間の延長登録の出願があったら延長を擬制し、拒絶査定の確定、延長登録がされた場合には擬制を解くと規定していたことになります。 すなわち、存続期間の延長登録制度ができた当初から、拒絶査定の確定と規定されているわけです。 ではなぜ、当時、拒絶査定の確定及び拒絶審決の確定と規定しなかったのでしょうか? きっと、拒絶審決の確定=拒絶査定の確定だからでしょう。 それか、法制定時に、拒絶審決までは考えていなかったということでしょうか。

 67条の3第1項の拒絶理由を見れば、そうそう拒絶の理由が審査と審判で変更になるとは思いませんが、拒絶査定不服審判においては、159条2項により、50条の規定は、拒絶査定不服審判において査定の理由と異なる拒絶の理由を発見した場合に準用する。と、規定されていますので、「拒絶をすべき旨の査定若しくは審決」と念のため両者を明記してもらいたいものです。 まぁ、拒絶審決が確定すれば、拒絶査定は確定するでしょうから、法的効果(拒絶という点だけ)は一緒になるように思えるところではありますが。。。

 なお、拒絶審決が予定されていることは、特許審査・審判の法理と課題に「この規定はあくまで存続期間の延長を擬制するものであるから、審査(審判、訴訟)を経て登録査定又は拒絶査定が確定した場合には、この擬制による効果は排除される。 同項の但書はこれを意味している。」とあることからも明らかです(第525頁)。

 ここで、拒絶審決の確定と規定されている条文を見てみましょう。

39条5項 特許出願若しくは実用新案登録出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、又は特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したときは、その特許出願又は実用新案登録出願は、第一項から前項までの規定の適用については、初めからなかつたものとみなす。ただし、その特許出願について第二項後段又は前項後段の規定に該当することにより拒絶をすべき旨の査定又は審決が確定したときは、この限りでない。

65条4項 出願公開後に特許出願が放棄され、取り下げられ、若しくは却下されたとき、特許出願について拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき、第百十二条第六項の規定により特許権が初めから存在しなかつたものとみなされたとき(更に第百十二条の二第二項の規定により特許権が初めから存在していたものとみなされたときを除く。)、又は第百二十五条ただし書の場合を除き特許を無効にすべき旨の審決が確定したときは、第一項の請求権は、初めから生じなかつたものとみなす。

 上記2つの条文になります。

 39条5項の「拒絶をすべき旨の査定若しくは審決が確定したとき」については、ブラックボックスを解消するために平成10年改正時に導入されているわけです。 このときは、査定及び審決の双方をきっちりと規定しているわけです。 

 65条4項については、青本189頁にあるように、「4項は、これまで旧4項において準用していた仮保護の権利の消滅に関する旧52条3項の規定が平成6年の一部改正により削除されたことに伴い、本項において規定し直したものである。」とあるので、これまた、平成6年改正できっちりと規定されているわけです。 

 こうなってくると、旧52条3項の規定を見てみる必要がありそうです。 

 My結論としては、昭和62年当時には、拒絶査定の確定と拒絶審決の確定を区別してなかったが、平成の世では、きっちり書き分けるようになったと。 拒絶審決の確定と規定していないことが立法論として、改正しないと意味が変わるわけではないので、条文に「審決」を追加していないのでしょう。

 なお、

67条の3第3項 特許権の存続期間の延長登録をすべき旨の査定又は審決があったときは、特許権の存続期間を延長した旨の登録をする。

 とあるのは、昔は、延長登録出願の拒絶査定不服審判において登録審決を出すことができなかったのを、平成11年改正でできるようにしたから、上記条文では、「審決」と記載されているのですね。 いまさらながら勉強になります。 

 疑問が残ったのですが、平成11年改正前は、拒絶査定不服審判で、拒絶審決はできたけれども、登録審決を出すことができなっかたのでしょうかね。 平成11年改正本を読むと、延長登録をすべき旨の審決を行うことができるようにしたと記載されているだけですので、そう解釈されるでしょうか・・・

 

 

本日のキーワード: 特許法の歴史も勉強になります。 古い条文をさくさく見れるツールがあるといいんですけどねぇ~

 

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2008年6月29日 (日)

平成20年度特許法等改正

 「弁理士安瀬の日記 東京・湯島にて」の2008.06.27のエントリー「平成20年特許法等の改正」を読んで、ちょっと私も考えてみた。

 本当は、私のコメントを直接伝えられるのがベストなんですが、コメント、TBを受け付けておられないようなので、こんなところで書いている次第です。 なお、私は、仕事の都合で説明会にはいけないので誰か確定情報が分かったら教えてください。

 今回の改正法の関東近辺の説明会は満席になっているわけですから(今だと関東から一番近くは長野ですかね。)、ここ5年の知財ブームというのは凄いことになったと痛感している次第です。 予約すら急がないといけない状況になったわけですから。 私が受験生の頃は当日にさらっと普通に行けてたのですが。。。

 

 さて、本題、

 現行法、

特許法44条 特許出願人は、次に掲げる場合に限り、二以上の発明を包含する特許出願の一部を一又は二以上の新たな特許出願とすることができる。

一 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる期間内にするとき。

二 特許をすべき旨の査定(163条3項において準用する51条の規定による特許をすべき旨の査定及び160条1項に規定する審査に付された特許出願についての特許をすべき旨の査定を除く。)の謄本の送達のあった日から三十日以内にするとき。

三  拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があった日から三十日以内にするとき。

 以下、略。

 現行、拒絶査定を最初に受けてから分割出願をすることができるのは、

① 拒絶査定の謄本の送達後、30日以内

と、

②拒絶査定不服審判を請求した場合の、補正をすることができる期間となるわけです。

 すなわち、

17条の第1項4号 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求の日から三十日以内にするとき。

 よって、現行法だと、実質、30日+30日の約60日間できるわけです。 旧法では、拒絶査定不服審判を請求しなければ分割することはできなかったわけです。

 

 改正法では、

17条の2第1項4号 拒絶査定不服審判を請求する場合において、その審判の請求と同時にするとき。

44条1項1号 願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面について補正をすることができる時又は期間内にするとき。

44条1項3号 拒絶をすべき旨の最初の査定の謄本の送達があつた日から三月以内にするとき。

 確かに、私が勉強を開始したときも、分割は補正の一態様だからって説明がなされていたのですが(当時、2号と3号はなかった。)、今は、2号及び3号ができたわけですから、もはや、分割は補正の一態様ではなくて(その名残は1号にしかなくて)、2号と3号は、権利化戦略のための一手段と考える必要がありそうです。 平成18年改正でも、出願人及び特許庁双方の利便性が1つの趣旨になっているわけです(特許庁の思いである、無駄な拒絶査定不服審判を減らしたいというのが一番の趣旨だと思いますが。)。

 また、1号→3号とならんでいるわけですから、原則から例外へと流れていると考えれば、1号で分割ができる時又は期間が終わった後も、3号でできると考えるのが普通な気がします。 出ないと、審判を請求したら、その後分割できないのに、審判を請求しなければ3月は分割ができるというのは、特許庁の金科玉条である公平の観点が失われてしまいますしね。

 しかも、今までは、審判請求すると、30日のさらなる期間が与えられていたのですから、審判請求したときの方が分割できる期間が長かったわけです。 また、分割出願は親出願の範囲内でする必要があるとはいえ、あくまで新たな出願であることに変わりはないわけです(関連意匠みたいに親出願に付随しているわけではないのです。出願日についてはあくまで遡及効です。 すなわち、効力です。)。 補正の一態様以外にも、別発明の権利化という分割出願の趣旨があり、それをまっとうさせるためにも、1号の期間経過後も3号で分割可能というのが、私の考えるところです。

 とはいえ、この辺は、しっかりと、特許庁に確認しておく必要があることは、変わりありません。 弁理士は、手続きの代理人であるので、手続き上の失敗はしてはいけないですから。

 

 一番大事なことは、今後、この短い間で運用が変わっていることに気づかずになんてことのないように、期間管理をするということでしょうか。 施行規則等をしっかり押さえておく必要があるでしょう。

 また、クライアントとの、拒絶査定後の対応についても考えなおす必要がありますね。

 今まで、

 拒絶査定の報告→審判請求しますか?→審判請求→補正どうしますか?分割します?→補正又は分割→補充指令→請求の理由どうしますか?→請求の理由の補正

 って動いていたわけですが(ゆっくりなイメージ)、

 これからは、

 拒絶査定の報告→審判請求しますか?補正も同時にする必要があります→審判請求+補正

 (急ぐイメージ)

 補正を最初から考える必要があるわけで、最初から補正を考えるということは、請求の理由もある程度考えておく必要があるわけで、かといって、3月に延びたからといって、直前にならないと動かないのは、そんなに変わるもんでもないわけで、事務所の負担が増えるだけな気がしますね。

 また、海外のクライアントに対してはさらに大変です。 きっと、海外の場合、補正と請求の理由は一緒にインストラクションに含まれて送られてくるでしょう。 かといって、海外の代理人経由のクライアントが動きを早くしてくれるとも限らないし。。。 こちらも、事務所の負担が増えそうです。。。 

 

 

本日のキーワード: すぐ変えているんじゃ、ちょっとセンスない、H18改正でしたね。

 

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2007年4月10日 (火)

指定代理人

 審決取消訴訟の判決を読んでいると、被告が特許庁長官になっている。 そして、その下に指定代理人という方々がいる。 拒絶査定不服審判と訂正審判の審決取消訴訟においては、特許庁長官が被告となるのは、特許法179条による。

179条 前条1項の訴えにおいては、特許庁長官を被告としなければならない。 ただし、特許無効審判若しくは延長登録無効審判又はこれらの審判の確定審決に対する171条1項の再審の審決に対するものにあっては、その審判又は再審の請求人又は被請求人を被告としなければならない。

 

 特許法上、代理人といえば、法定代理人(7条)と委任による代理人(9条)である。 では、審決取消訴訟の指定代理人とは何者なのか。

 

 指定代理人とは、「審判便覧 23-03 指定代理人」の項によれば、

1.指定代理人とは、国や行政庁等を当事者とする手続に行政庁等から指定され手続を行う職員をいう。

2.指定代理人の代理権は、国や行政庁から指定又は選任により発生し、指定解除、解任により消滅する。

3.審決取消訴訟における指定代理人について(→80-01)

 ということなので、「審判便覧 80-01 訴え提起に伴う事務」の項によれば、

5.代理人の指定等

 指定代理人とは、特許庁長官により審決などに対する取消しの訴訟を行うものとして指定された職員をいう。

(参考) 

 国の利害に関係ある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律§5①。

「①行政庁は、所部の職員でその指定するものに行政庁を当事者又は参加人とする訴訟を行わせることができる。」

 指定代理人は、審決などに対する取消しの訴訟について、代理人の選任以外の一切の裁判上の行為をする権限を有する(同法§8。) 審決などに対する取消しの訴訟が定期されたときは、訟務室は被告特許庁長官の代理人指定の手続をとり、代理人指定書を知的財産高等裁判所に送付する。

 指定代理人は、部門の審判長・審判官および訟務室所属の審判長・審判官が当たり、前者を主任指定代理人とする。 ただし、取消理由が一般的法律解釈・適用に関するもの、一般的審査基準及び慣行違反ないし変更を求める案件(共通的案件)に係る場合は、後者を主任指定代理人とする。

 

 鹿児島地方法務局のHPには、Q&Aとして

Q.国側の代理人となることのできる根拠はなんですか。【訴訟に関する質問】

A.国を当事者又は参加人とする訴訟については、法務大臣が、その所部の職員又は所管行政庁の職員を指定して訴訟を行わせることができるものとされ(「国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」第2条)、行政庁を当時者又は参加人とする訴訟については、行政庁又は、法務大臣がそれぞれの所部の職員を指定して訴訟を行わせることができるものとされています。 このように、法務大臣又は行政庁がその所部の職員を指定して訴訟を行わせる場合の、その指定された職員を「指定代理人」と呼んでいます。

 とある。

国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律

5条1項 行政庁は、所部の職員でその指定するものに、当該行政庁の処分(行政事件訴訟法3条2項に規定する処分をいう。)・・・に係る同法11条1項(・・・)の規定による国を被告とする訴訟又は当該行政庁を当事者若しくは参加人とする訴訟を行わせることができる。

3項 1項の規定は、行政庁が弁護士を訴訟代理人に選任し、同項の訴訟を行わせることを妨げない。

 です。 審決に対しては、特許法195条の4により行政不服審査法による不服申立てをすることができないとされ、行政事件訴訟法に基づく178条の訴えです。 特許庁長官は、弁護士に依頼することもできる。

 

 法令データ提供システムで「指定代理人」で用語検索をかけると、

経済産業省組織規則 

324条(審判課及び審判長)

1項 審判部に、審判課及び審判長126人を置く。

2項 審判課は、次に掲げる事務をつかさどる。

3号 工業所有権に関する審決及び商標登録の取消決定の取消しに係る訴訟事件に関する特許庁長官の指定代理人に関すること。

 審判長の数が決まっている・・・

 

 

本日のキーワード: 審判長は126人

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