高林標準【その3 ~40頁】
37頁 「天然物として単一化合物の形のままで存在するものを見いだすことは発見にすぎないとしても、化学方法により未知の物質を作り出し、その物質の多様な属性のうちの1つの有用性を見いだしたときには、現行法上は(その用途に限られない)化学物質自体の特許を取得できる。」=「絶対的物質クレーム」
「化学物質が発明となるためには、その物質の1つの有用性が見だされることが創作性の要件として必要になる。この場合の有用性は、特許要件としての産業上の利用可能性とは別の、発明としての成立要件であり、・・・」
ここにいう有用性とはどこまでのものが求められるのだろうか? 36条4項の審査基準には、「作ることができること」及び「使用できること」が要件とされている。 ただ、これって、発明の成立要件というよりは、記載要件だからちょっと違うかな。。。 しかも、使用できないから実施不可能っていう拒絶理由はあまりないような・・・
そして、さらに、「どのように使用できるかについて具体的な記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を使用できる場合を除き、どのような使用ができるかについて具体的に記載しなければならない。 例えば、化学物質の発明の場合は、当該化学物質を使用できることを示すためには、一つ以上の技術的に意味のある特定の用途を記載する必要がある。」とあって、技術常識から判断できればいいのかと思いきや、医薬発明の審査基準では、「一般に物の構造や名称からその物をどのように作り、又はどのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野に属する発明であることから、当業者がその発明を実施することができるように発明の詳細な説明を記載するためには、通常、一つ以上の代表的な実施例が必要である。そして、医薬用途を裏付ける実施例として、通常、薬理試験結果の記載が求められる」としていて、技術常識では分かりませんってしている。 この辺りの審査におけるノウハウ的な部分は実務をやってみないことには分からないところかもしれない。 しかし、特許庁が審査をノウハウ的にやってるっていうのがおもろいところだよね。
何が発明として成立してて、記載要件としてどこまで求められるのかって、ヨーロッパや米国の特許庁においても、この辺の運用ってあまり明確ではないのかな? 結局、中山特許法上&高林標準特許法を読んでみても、発明とは、に関してはさすがに明確に数学のように1つに答えがでてこない。 この辺は、あまり深入りせずに、学者の先生方に任せておくのがよいのかもしれない。。。 プログラムが物の発明として保護される昨今、「発明とは・・・」について厚く語っても意味がないかもなのです。
といいつつ、もう少しお勉強は続く。
39頁 「遺伝子についても化学物質発明の発明該当性と同様の立場が採用されている。 すなわち、遺伝子は、アミノ酸配列により特定し、当該遺伝子の機能等を記載することで発明として成立しうるが、・・・」
40頁 「生命の設計図というべきゲノムを分析してその全配列を読み取ること自体は、すでに存在する物の構造を見いだしたにすぎないが、一部分であれその機能を分析して、医薬品への利用可能性を見いだした場合には、発明該当性が生ずるとされている。」
「遺伝子配列部分に机上で確認される有用性があるというだけで当該遺伝子配列自体に発明該当性を認めて、特許権による独占を認めてしまうことには危惧がある。 ・・・具体性のない推定上の機能を指摘しただけでは遺伝子自体の特許を認めるべきではないし、・・・」
遺伝子についても化学物質発明と同様の立場が採用されているとあるけど、遺伝子発明の方が、機能・用途に関して厳しくないかな??? 化学物質発明のときは、遺伝子発明のようには求められてない気がするが・・・
ここまで述べてきた部分って、2条1項の「発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」の説明だったんだよね。 ってことは、本来、29条1項柱書の審査基準のところにもっと書いてないといけない部分なんでないの??? 29条1項柱書の審査基準ってきっと、医薬発明の分野でわんさかと人間を手術、治療又は診断する方法に該当するとした適用があるのみで、他分野では適用されるものなのかしらん!?
本日のキーワード: 中々先に進まん・・・(中山特許法上の二の舞か!?)
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント