2006年8月 8日 (火)

高林標準【その3 ~40頁】

37頁 「天然物として単一化合物の形のままで存在するものを見いだすことは発見にすぎないとしても、化学方法により未知の物質を作り出し、その物質の多様な属性のうちの1つの有用性を見いだしたときには、現行法上は(その用途に限られない)化学物質自体の特許を取得できる。」=「絶対的物質クレーム」

「化学物質が発明となるためには、その物質の1つの有用性が見だされることが創作性の要件として必要になる。この場合の有用性は、特許要件としての産業上の利用可能性とは別の、発明としての成立要件であり、・・・」

 ここにいう有用性とはどこまでのものが求められるのだろうか? 36条4項の審査基準には、「作ることができること」及び「使用できること」が要件とされている。 ただ、これって、発明の成立要件というよりは、記載要件だからちょっと違うかな。。。 しかも、使用できないから実施不可能っていう拒絶理由はあまりないような・・・

 そして、さらに、「どのように使用できるかについて具体的な記載がなくても明細書及び図面の記載並びに出願時の技術常識に基づき当業者がその物を使用できる場合を除き、どのような使用ができるかについて具体的に記載しなければならない。 例えば、化学物質の発明の場合は、当該化学物質を使用できることを示すためには、一つ以上の技術的に意味のある特定の用途を記載する必要がある。」とあって、技術常識から判断できればいいのかと思いきや、医薬発明の審査基準では、「一般に物の構造や名称からその物をどのように作り、又はどのように使用するかを理解することが比較的困難な技術分野に属する発明であることから、当業者がその発明を実施することができるように発明の詳細な説明を記載するためには、通常、一つ以上の代表的な実施例が必要である。そして、医薬用途を裏付ける実施例として、通常、薬理試験結果の記載が求められる」としていて、技術常識では分かりませんってしている。 この辺りの審査におけるノウハウ的な部分は実務をやってみないことには分からないところかもしれない。 しかし、特許庁が審査をノウハウ的にやってるっていうのがおもろいところだよね。 

 何が発明として成立してて、記載要件としてどこまで求められるのかって、ヨーロッパや米国の特許庁においても、この辺の運用ってあまり明確ではないのかな? 結局、中山特許法上&高林標準特許法を読んでみても、発明とは、に関してはさすがに明確に数学のように1つに答えがでてこない。 この辺は、あまり深入りせずに、学者の先生方に任せておくのがよいのかもしれない。。。 プログラムが物の発明として保護される昨今、「発明とは・・・」について厚く語っても意味がないかもなのです。 

 

 といいつつ、もう少しお勉強は続く。

39頁 「遺伝子についても化学物質発明の発明該当性と同様の立場が採用されている。 すなわち、遺伝子は、アミノ酸配列により特定し、当該遺伝子の機能等を記載することで発明として成立しうるが、・・・」

40頁 「生命の設計図というべきゲノムを分析してその全配列を読み取ること自体は、すでに存在する物の構造を見いだしたにすぎないが、一部分であれその機能を分析して、医薬品への利用可能性を見いだした場合には、発明該当性が生ずるとされている。」

「遺伝子配列部分に机上で確認される有用性があるというだけで当該遺伝子配列自体に発明該当性を認めて、特許権による独占を認めてしまうことには危惧がある。 ・・・具体性のない推定上の機能を指摘しただけでは遺伝子自体の特許を認めるべきではないし、・・・」

 遺伝子についても化学物質発明と同様の立場が採用されているとあるけど、遺伝子発明の方が、機能・用途に関して厳しくないかな??? 化学物質発明のときは、遺伝子発明のようには求められてない気がするが・・・

 

 ここまで述べてきた部分って、2条1項の「発明とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。」の説明だったんだよね。 ってことは、本来、29条1項柱書の審査基準のところにもっと書いてないといけない部分なんでないの??? 29条1項柱書の審査基準ってきっと、医薬発明の分野でわんさかと人間を手術、治療又は診断する方法に該当するとした適用があるのみで、他分野では適用されるものなのかしらん!?

 

 

本日のキーワード: 中々先に進まん・・・(中山特許法上の二の舞か!?)

  

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2006年8月 7日 (月)

高林標準【その2 ~35頁】

 ちょっと古い話だけど、もう一寸早く言いなよ大幸サンってとこだな。 世の中ゾロだしね。 2.85倍の価格格差を、ぼったくりだろぉ~って言われちゃった感じ。 

 

12頁 「工業所有権保護は一国の産業政策と密接不可分であって、権利は原則として国単位で成立し、その国の領域内でのみ効力を生じ、また保護される(属地主義、権利独立の原則)。」

 

15頁 「法定された態様による利益侵害を不正競争行為として禁止するもので、民法709条の特別法である。 原則的には民法709条に基づいて差止めを請求することはできないが、不正競争防止法は損害賠償請求のほかに差止請求も認めている(不正競争防止法3条)。」

 「不正競争防止法により保護される利益は必ずしも権利として確立しておらず、財産権として使用収益および処分できるものではない。」

 となると、不正競争防止法って民法におけるその権利の位置づけってどうなるんでしょ??? 特許法の物権的権利や債権的権利ともまた違った考え方で法が規定されていそうである(深入り厳禁)。

 

28頁 「A, B, Cの3要件を加えることで一定の結果が得られると発明者は認識していたものの、実はC要件は不要であり、A, B要件だけでも一定の結果が生じる場合であっても、A, B, Cの3つを要件とする発明として成立できる。 この場合に、第三者がより効率的にA, B要件だけを用いて同様の結果を生じさせた場合には、A, B, Cを要件とする発明とは別発明となってしまい、権利侵害を主張できないことになる。」

 これって後願権利は、「A, Bからなる」となるはずなので、権利関係が錯綜することはなかろう。 「A, Bを含む」だとA, B, Cの先願権利の上位概念になって、権利は発生しないだろう(29条1項3号、39条)。 それか、「A, Bを含む(但し、Cを含有しない)」と除くクレームで権利発生かな。 特許権がA, B, C要件からなる場合に、A, B要件からなる発明を実施してもそれは、発明特定事項の全部を実施したことにならないから権利侵害とならないのはわかる(権利一体の原則)。 ただ、要件抜け落ちた場合でも侵害といえる場合あるんではなかったか???(要チェック) 

 

31頁 「特許庁の公表している審査基準は出願手続に関する内規にすぎず、法的拘束力はないが、この基準に適合しない出願は拒絶されるし、拒絶を争う者が現れて、裁判所によってその当否が審理判断されるまでは従わざるをえないという大きな影響力を有している。」

 ここは、補正の新規事項についてが当にそれである。 「直接的かつ一義的」から「自明な事項」に変更したものね。 最近だと、人口乳首事件を受けての、優先権の審査基準もそうである。

 

 未完成発明と実施可能要件について、7/27の中山特許法上【その5】で云々していたところが、割とスパッと記載されていて、分かりやすい。

34頁 「技術内容が「反復実施可能性」「具体性」および「客観性」を欠いている場合には発明は未完成であり、特許法2条1項にいう「発明」に該当しないとするのが判例」

「技術内容の開示のしかたが稚拙であるために、当業者が反復実施できるような具体的・客観的な構成となっていないときは、特許法2条1項にいう発明該当性は認めたうえで、開示のしかたが不十分であることを理由に特許としての成立を否定すべきであろう。」

 

 

本日のキーワード: 口述対策もしないと・・・

 

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2006年7月29日 (土)

高林標準【その1 ~9頁】

 中山特許法上は、thinkingのスイートスポットにはまってなかなか先に進めないので、一度読んでみたいと思っていた、高林標準特許法を読むことに。 こちらは、あまりはまりこまずにさらっと読めるのではないかと思っている。 

 大阪地裁の判決が公表されたら検討してみたいと思っている。

 

3頁 「物に対する排他的支配権である物権は、民法その他の法律によらなければ創設することはできない(物権法定主義、民法175条)。」

民法175条

 物権は、この法律その他の法律に定めるもののほか、創設することができない。

 特許権は物権であるとは規定はされていないなぁ。 物権的権利と解されているだけか。

 「有体物を直接に支配して使用・収益・処分できる排他的な権利を物権という。 債権とは特定の相手方に対して一定の給付を請求する権利である。 すなわち、物権は誰にでも主張できる絶対的権利であるのに対し、債権は相手方にのみ主張できる相対的権利である。 なお、他人の権利の侵害は不法行為となる(民法709条)が、この場合の権利とは物権、債権といった厳格な意味での権利でなくとも、保護に値する権利であれば足りる。 ・・・ 不法行為に対する救済としては、利益を侵害されることで被った損害を金銭により回復するのが原則であり、不法行為を原因として差止めを請求することはできない。」 

民法216条

 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

 債権的な権利に対しても、不法行為は成立して金銭債権を請求しえるということだが、通常実施権を侵害しても不法行為に基づく損害賠償は請求できないのに、独占的通常実施権に対しては不法行為が成立し損害賠償請求できるのはなんでだろ~♪

8頁 「無体物に排他的支配権を与えるために有体物に対する排他的支配権である物権の概念を借用している」

9頁 「排他的に占有(準占有:民法205条)することが不可能であること。」

 「新たな創作をした者に対する報酬として与えられる知的財産権は、一定期間経過後にはこの創作物を公衆に開放することが独占権付与のいわば必須の条件となっている。 商標は、新たな創作に着目して権利が付与されるのではないから、流通過程で商品等の出所の指標としての作用を奏しており流通秩序形成に役立っている間は、商標の独占をずっと認めても益こそあれ害はない。」

 そもそも特許権は、無体物に関するものであって、物権という考えに馴染まないものを物権と擬制して、種々の権利を認めているので、こういった記載になるのは当然だろう。

 

 

本日のキーワード: 物権的権利と債権的権利と不法行為(よく、わからん。)

 

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