2007年1月12日 (金)

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説 第一部 意匠法の改正項目 第七章

第七章 秘密意匠制度の見直し(第33~35頁)

 秘密意匠制度は、「直ちに当該意匠の実施を行わない場合に意匠公報が発行されることによる第三者の模倣を防止しようとする趣旨」(33頁)であるので、模倣防止の観点から本改正において、重要な位置を占める改正であるといえる。

14条2項 前項の規定による請求をしようとする者は、次に掲げる事項を記載した書面を意匠登録出願と同時に、又は42条1項の規定による第1年分の登録料の納付と同時に特許庁長官に提出しなければならない。

≪短答ポイント1≫

 意匠登録出願人は、意匠公報の発行の日前であれば、常に、秘密意匠の請求をすることができる。

 否

≪短答ポイント1’≫

 意匠登録出願人は、登録査定の謄本の送達後、登録料を納付するまでは、秘密意匠の請求をすることができる。

 否

 この改正も、時期的要件がらみだけ注意しとけばよい。 ただ、気をつけなければならないのが、過去問で良く出ていたようなの。 

 例えば、話が前日に戻るけど、法改正前は、30条適用の特許出願を意匠登録出願に変更した場合に、特許出願のときに14日以内に30条4項の証明書面を提出していないと、変更後の意匠登録出願において4条の適用を受けることができなかった(はず)。 こういう問題は結構脳裏に焼きついているもので、条件反射で昔の対応をしてしまうんじゃないか!?って思える。 今後は、特許出願時に出願日から15日以降に30条4項の証明書面を提出した場合であっても、4条適用を受けることにより意匠登録を受けることができることとなったので、こういった問題は再度確認しとく必要があるんじゃないかな?って思います。 って、去年の改正が地域団体商標のみで、あまり他の条文とリンクしてなかったので、過去問の解答変更っていうのが少なかったのはラッキーでしたな。 実際、私も法学書院の古い法域別問題集とかで勉強してたからなぁ。

≪短答ポイント2≫

 特許出願から意匠登録出願に変更出願をした場合には、秘密意匠の請求をすることができる場合はない。

 否

も、類題といえるでしょう。

 秘密意匠の請求をすることができるのは、2回しかないわけだが、ここの改正趣旨は、口述で聞かれると思う。 何で、登録料の納付と同時の場合だけに限られるんですか?って。 端的にいえば、特許庁の負担軽減ってところにあるけど、昨今は改正本どおりの内容で言わないと許してくれなかったりするので、口述前には覚えないといかんでしょうな。 適当に言って思いつける趣旨ではないだろうなぁと思えます。

「なお、登録料の納付については、出願人だけでなく利害関係人もすることができるため(・・・)、出願人が登録料の納付と同時に秘密意匠の請求を行おうとしても、先に利害関係人によって登録料が納付され、秘密意匠の請求の機会が失われてしまう場合があり得る。」(35頁)

 いやぁ、こんな状況って結構すごいんでは!? 登録査定の謄本の送達があってから30日以内に登録料を納付しなければならないので(期間が短いよね。)、利害関係人が支払うためには、かなりのウォッチングが必要といえよう!!! まぁ、権利者からするとラッキーだが、勝手に支払われてたなんて事例が今までにあったりするのかな???

≪短答ポイント3≫

 利害関係人が秘密意匠の請求をすることができる。 

 否(これは、過去問にあったかな!?)

 

 秘密意匠を請求する場合には、67条2項により、手数料の納付が必要である。

別表(67条関係) 

二 14条1項の規定により意匠を秘密にすることを請求する者 一件につき5100円

 で、意匠登録出願と同時に秘密意匠の請求をした場合で、拒絶査定又は拒絶審決が確定した場合にはどうなるの?  

67条7項 過誤納の手数料は、納付した者の請求により返還する。

の規定で、返してもらえたりするのかな? って、それはないだろう。

14条1項では、「その期間その意匠を秘密にすることを請求することができる」とあって、あくまで、14条で規定しているのは、秘密意匠の請求についてである。 よって、67条2項に基づいて支払う手数料というのは、秘密意匠の請求の手続に対してであって、条文上は、秘密意匠の意匠公報の編纂のための手数料ではない。 となれば、拒絶査定になって、意匠公報が発行されない場合でも、そのために支払った手数料は過誤納とはならんでしょう!!! そういえば、4条適用の場合には、手数料っていらないのね。 14条の手数料ってなんなんでしょうね!?

 そういえば、短答過去問で、秘密意匠の場合には、登録料のほかに別途手数料が必要である。といった問題がありましたな。

≪短答ポイント4≫

 秘密意匠の意匠登録出願について、登録料とは別の手数料の納付が必要な場合がある。

 是(かな!?)

 秘密意匠の登録料は不要だが、登録料の納付と同時に秘密意匠の請求をする場合には、手数料は必要。

 

 

本日のキーワード: 意匠はおしまい。

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2007年1月11日 (木)

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説 第一部 意匠法の改正項目 第六章

第六章 新規性喪失の例外の適用の手続の見直し(第31~32頁)

「この規定の適用を受けるための手続は、出願時に適用を求める旨を願書に記載し、出願から14日以内に適用の要件を満たす事実を証明する書面を提出することが求められる。 これは登録要件の審査を迅速かつ的確に行い安定した権利を発生させるために、その審査が行われる時までに必要な情報が提供されているべきことを趣旨とするものである。」(31頁)

「近年の企業の製品開発の活発化や多様な情報媒体による情報流通環境の発展に伴い、出願前に自ら意匠を公開するケースが増加している。 ・・・、特に、日本国内又は外国において公然知られた意匠となったことについて第三者からの証明を取得することに要する手間と時間が負担となっているため、・・・」(31~32頁)

「・・・、出願人の利便性の向上の観点と審査着手時期までに適用の要件を判断するための材料が提出されているべきことを考慮し、・・・」(32頁)

 って、意匠の場合は、証明が容易だから14日なんじゃなかったっけ? また、審査着手時期っていうけど、意匠の場合、8月程度ではなかったか???(14日か30日かで揉め事が起きる期間ではなかったのでは?)

青本883頁 「意匠は具体的な物品の形状、模様等であり、抽象的な発明、考案の場合よりも証明書の作成が容易であるため、特許法、実用新案法よりも期間を短縮した。」

 

 

 新規性の喪失の例外については、特にありませんな。

 

 

本日のキーワード: 飲みすぎて気持ちが・・・

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2007年1月10日 (水)

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説 第一部 意匠法の改正項目 第五章

第五章 関連意匠制度の見直し(第25~30頁)

 「関連意匠制度とは何ですか?」と問われれば、「一つのデザインコンセプトに基づいて同時期に創作されるバリエーションの意匠群を保護する制度です。」と答えていたが、本改正で一言定義が変更になる。

 青本896頁にも、「デザイン開発の過程で、一のデザイン・コンセプトから創作されたバリエーションの意匠については、同日に同一出願から出願された場合に限り、同等の価値を有するものとして保護し、・・・」とある。

 とはいえ、イタリック部分を削除すればいいだけか・・・

 

 本改正で時期的要件が緩和されたことにより、要件的には、類似意匠制度のような状態に近づいたといえる(関連意匠が独自の効力範囲を有する点で違うけど)。 今になって考えてみると、なんで類似意匠制度から関連意匠制度に変わるときに、本改正のようにしなかったんだろうか? なんか理由あるんかいな?

 説明されている趣旨としては、「近年のデザイン重視の商品開発においては、開発当初からすべてのバリエーションを創作する場合に限らず、当初製品投入後に需要動向を見ながら追加的にデザイン・バリエーションを開発する等、デザイン戦略がより機動化・多様化しつつある。」が一番理解しやすいかな。 口述のためには全部覚える必要があろうが。。。

 

10条1項 意匠登録出願人は、自己の意匠登録出願に係る意匠又は自己の登録意匠のうちから選択した一の意匠(以下「本意匠」という。)に類似する意匠(以下「関連意匠」という。)については、・・・

 となったので、意匠法施行規則の様式の【本意匠の表示】の欄を設け本意匠を特定し・・・、のところに登録番号も記載できるようになるっつうことかいな? 施行規則は改正されるんかいな??

10条1項 ・・・、当該関連意匠の意匠登録出願の日(・・・)がその本意匠の意匠登録出願の日以後であって、20条3項の規定によりその本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条4項の規定により同条3項4号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前である場合に限り、・・・

 関連意匠の意匠登録出願をできる始期は、「日以後」なので、当該本意匠の出願の日が含まれ、終期は、「日前」なので、意匠公報の発行の日は含まれないとなる。 因みに、関連意匠の出願が先に出願されていても、本意匠の出願が同日であれば関連意匠制度は利用できるんだねぇ(改正部分ではないが、今、気付いた。)。

 そうそう、自己の登録意匠を本意匠として関連意匠の意匠登録出願をすることができるけど、非常にリスキーですな。 登録意匠ということは、登録料を納付した後、設定の登録がされた後をいうのだし、そして、意匠公報が発行される日前に出願しなきゃならんのだから、登録意匠を本意匠にできる機会は少ない。 また、意匠公報の発行は、出願人にがどうこうできるもんでもないしね。 因みに、登録査定の謄本の送達があった場合には、登録査定は確定するので、意匠登録出願は特許庁に係属しているの??? 係属していないとすると、その出願番号で特定するのはいかがなもの? 登録査定の謄本の送達後から設定の登録がなされるまでの間には、まぁ、意匠登録出願を本意匠とするのだろうけど、法的に大丈夫なんかいな??? ただ、登録料未納の場合、出願が却下されるんだから(準特18条1項)、未だ係属しとるんかいな??? 条文上できる期間になっているんだから問題ないんだろうけど(出願という事実行為はあるわけだしね。)。。。 どの状態であれば出願が特許庁に係属しているかなんて、結構、一生懸命覚えるもんだが、特許法での分割出願の時期的要件緩和といい、係属中って考え方はもう古いのかしらね。

 

「当該秘密期間に出願された関連意匠出願は、意匠法9条1項の規定により拒絶することとしている。」(28~29頁)

 この秘密期間中の出願については、関連意匠の場合には9条1項で拒絶されるわけであるが、3条の2の場合でも同様に拒絶理由になっているので、秘密期間との関係でよくよく押さえとく必要がありまんな。 短答ポイントですな。

 

「既に専用実施権を設定した本意匠についての関連意匠は登録できない旨を意匠法10条2項に規定したものである。」(29頁)

10条2項 本意匠の意匠権について専用実施権が設定されているときは、その本意匠に係る関連意匠については、前項の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができない。

 とあるので、解説の方を読むと、一度本意匠に専用実施権を設定してしまうと、金輪際、関連意匠は登録できないとも読めるけど、条文上は、「専用実施権が設定されているときは」なので、関連意匠の査定時において本意匠に専用実施権が設定されていなければOKということになるでしょう。 意匠の審査速度から考えて、ほとんど考えられない世界だとは思うけど。。。

 

 10条1項から3項までが拒絶理由で、10条2項と3項が無効理由。 これって、短答で出そうですな。 過去問でも良く出てますしね。

 

 せっかくなので、一問だけ。

≪短答ポイント1≫

 関連意匠の意匠登録出願の日がその本意匠の意匠登録出願が掲載された意匠公報の発行前である場合には、9条の規定にかかわらず、意匠登録を受けることができる。

 否

 3条の2でも同じ問題が作れる。

 

 

本日のキーワード: あ~だこ~だがすきなのです。

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2007年1月 9日 (火)

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説 第一部 意匠法の改正項目 第四章

第四章 意匠の類似の範囲の明確化(21~24頁)

 本改正において、最も本質的な部分に関する改正であるが、まぁ改正本を読んでも私にはよくわかりやせん。 改正でいいたいことをちゃんと理解するためには、参考としてあげられている判例やら解説やらを読まざるをえんでしょうが、流しておきます。 意匠関連に携わる弁理士となる際にもう一度勉強することにしましょう。 

 いやぁ、ホントよく分からんので、そのまま抜粋すると、

「このように最高裁判例において意匠の類似とは一般需要者から見た美感の類否であるとされているが、裁判例やら実務の一部においては、意匠の類似についてデザイナー等の当業者の視点から評価を行うものもあり・・・、」(22頁)

 ここだけ読むと、当業者の視点からは、類否判断をしないとその後流れていくようにも思え、需要者の観点で類否判断するんであれば、やっぱ、混同説!?って思いたくなるんじゃけど・・・

「意匠の類否判断は、意匠制度の根幹に係る意匠の登録要件や意匠権の効力範囲を司るものであることから、統一性をもって判断されることが望ましいと考えられる。 ・・・、意匠の類似について、最高裁判例等において説示されている取引者、需要者からみた意匠の美感の類否であることを規定する。」(22頁)

 取引者って何? ここには、当業者は含まれないってことでいいのかしら?? 需要者という概念から想起されるのは、お店で買う人である。 で、取引者っていうと、卸業者などの中間業者のことと思う。 取引者というのは、需要者超当業者未満みたいなもんか??? 宅急便(登録商標)というと、一般人は、ヤマト運輸だけでなく、佐川急便も宅急便って思うかもしらんけど、取引者の中では明白に違うみたいな感覚で、取引者を捉えとけばよいのかいな????

24条2項 登録意匠とそれ以外の意匠が類似であるか否かの判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行うものとする。 

 どうでもいいことだけど、昨今の法改正後の四法の条文ってなんか、堅苦しさが抜けてない!? ほんとどうでもいいことだけど・・・ 良く言えば、口語調でより読みやすい、悪く言えば、・・・ってとこである。

「・・・、登録意匠にそれ以外の意匠が類似しているか否かの判断は、当該意匠が需要者に起こさせる美感の共通性の有無に基づいて判断するものであることを規定した。 ここでいう需要者とは、取引者及び需要者を意味する。」(23頁)

 って、何で、取引者を条文上規定しないのかな? 取引者って、法律用語ではないのかな?? でも、前段を読めば、判例において出てくる用語なんだよね! まぁ、弁理士としては、この辺もそのうち仕事になるんだろうから(解釈部分は揉め事のモト→弁理士の出番)、ちょっと明確でないくらいの方が良いですが。。。

≪短答ポイント1≫

 意匠の類否判断は、需要者の視覚を通じて起こさせる美感に基づいて行われるが、取引者の視覚を通じては判断されない。

 否

「最高裁判例上、意匠の類否判断の視点は一般需要者となっているが、意匠法24条2項において一般需要者ではなく需要者としたのは、(a)意匠法における類否判断を物品の出所混同と結びつけるために一般需要者を使用したわけではないとする最高裁判例の解説、・・・」(23頁)

 って、とこから、完全な混同説ではないのだなぁというとこである。 ある意味、最高裁は混同説ではないといっているとも読めるからなぁ。 ホントこの辺は深入りしないのが懸命でしょうな。 ただ、口述が怖いですな・・・

 そういえば、平成18年の短答式試験でも出ていた部分だけど、3条1項3号と3条2項とを比較して、需要者と当業者という用語を使っているのだから、需要者には明らかに当業者は含まれせんわな。 両方に被る部分はあるかもしれないけど、当業者のレベルでは判断してはいけないんだって思っておけばいいのかもしれない。

 

「・・・、意匠法の根幹をなす意匠権の対象である登録意匠の範囲を規定している意匠法第24条に第2項を新たに設け、意匠の類否判断の解釈や手法を規定することとしたものである。 これにより、意匠法第3条第1項第3号をはじめ、他の条項に規定されている意匠の類否についても一定の解釈が及ぶことになるものと考えている。」(24頁)

 って、微妙な言い回しですね。。。 一定の解釈が及ぶに過ぎないともいえてしまわないかい???

 

 

本日のキーワード: なかなか先に進みません・・・

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2007年1月 8日 (月)

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説 第一部 意匠法の改正項目 第三章

第三章 意匠登録要件の見直し(第18~20頁)

 意匠法の法目的はなんなんじゃ?という点は、この改正でも明らかになってないよぉ~。 まぁ明らかにもならんじゃろうね。 単純化して創作説と混同説があるとして、意匠の類否判断については、混同説になった。 でも、創作非容易性が意匠登録の要件となっている点からも、創作説は捨てがたい。 やっぱし、今後は適宜使い分けていくっつうことなのかな。 っつうか、過去に聞かれたことあると思うけど、今般の論文式試験で聞かれることはないだろうから、スルーするのが一番なのかもしれませんわね。 理解しやすく比較して書いてある書籍なんつうのはないしね。 因みに、私は、予備校のレジュメ集でも創作説、混同説はかっ飛ばして読んでるし、高田も斉藤も読んだことないし、じぇんじぇん理解できてないから、この項はかなり適当だと思いますぅ。 だから、なんじゃ!こいつ!!ってなるかもしれないですが、今年の干支ばりの激しい突っ込みは厳禁ですよ(笑)

 私の中では、特許庁は創作説で、裁判所は混同説だと理解していた(2つしか説がないという過程での話しなので、修正混同説とか色々なことは言わないように!!!)。 つまり、権利化前は創作説であり、権利化後は混同説ということである。 そして、特許庁が創作説であると根拠づける最たるものとして、3条の2があると理解していたのだった。 3条の2は創作説で、類否判断(3条2項)は混同説の立場から審査するってちょっと考えにくいかな!?って思ったのもあってね。。。

 まぁ、平成17年度は新人研修(後期)で、小谷先生の講義があったようなので、平成18年度版のそこに期待しよう!!!

 

「意匠制度では、新しい意匠の創作を保護することを制度の趣旨としているため、・・・」

「・・・、新しい意匠の創作をしたものとは認められないことから、・・・」(以上、18頁)

 ってここを読むと、やっぱり特許庁は創作説なんかいなと思えなくもない。 3条の2を改正するにあたっては、平成10年改正の部分意匠制度導入に伴うこの3条の2の趣旨を否定するわけにもいかないし、改正本を書くにあたってどういった感じで書いてくるのか楽しみにしていたのだったが・・・ 何ら新たな意匠を公開することにならないという点は、どういった理由付けをしても変えられないだろうなぁって思っていたので。。。 今年の意匠法の改正は、趣旨だけを考えると部分改正とせずに全面改正としていれば、ちょっとは楽だったのかもしれないけど、まぁ、全面改正はしばらくはないかな? そういえば、商標はどうなったのでしょうか!!! 異議申立てはずっと存続させるのかしらん。。。 SPLT(実体特許法条約)の発効の前には、特許法では全面改正になるかもしれやせんが・・・

 

「デザイン開発においては、先に製品全体の外観デザインが完成し、その後個々の構成物品の詳細のデザインが決定されて製品全体の詳細なデザインが完了するという開発実態がある。」

 ここは、3条の2の改正の前提として成立していない気がするが・・・ 外観デザインが完成し、全体意匠の出願をしたあとに、その構成物品の詳細なデザインが決定されるのであれば、全体意匠において大雑把な部分にしか完成していない意匠は、構成物品の部分の詳細な意匠と類似せんのじゃないか!?と思えるが・・・ それとも、大雑把なものと詳細なものとは大枠で変わらんのだから、3条の2の射程に入るってことが言いたいのかしらん。。。 まぁ、趣旨の項は3文で、その接続詞が「また、」、「このため、」ってなっているんだから、「また、」以下の部分は、並列関係。 そして、「このため、」以下が、並列部分を受けての説明となると考えられる。 したがって、改正本では、上述のような開発実態があることを一の要因として、3条の2の要件緩和が必要と説明していることとなる。 何だか変なのって感じである。 何ら新たな意匠の創作に該当しないから3条の2の適用があるのに、詳細なデザインを後から完了するという開発実態から3条の2の要件緩和って、後から完了している段階で、新たな意匠の創作になっているんじゃねぇの!?ってとこである。 

「また、市場において成功した商品については、需要を喚起する独自性の高い創作部分が模倣の対象となりやるいとされる。」

 こちらの方は分かりやすいかな。 模倣の対象とされやすいのに(そもそも部分意匠制度の導入趣旨が、独創的で特徴ある部分を・・・なのだから、まぁ、模倣の対象とされやすいという点は大合意) 、全体意匠の出願より先に出願してないから、先願意匠の部分に該当する意匠を保護することができないというジレンマに対し、模倣のし得を排除するための要件緩和ということであれば、理解しやすいかな。 この場合には、産業界からの要請とでもいえば聞こえはいいのかもしれない。 何で、今回の改正では今まで良く使われてきた趣旨の一である、産業界からの要請という点が明示されてないんでしょうかね??? 要請がなかったのかしらん!?!?

「このため、独自性の高い自己の製品デザインの保護を強化するため、先に製品全体の意匠について出願し、それに遅れて、先の意匠の一部を部品や部分意匠として出願した場合でも、双方の意匠について意匠登録を受けられるようにする必要がある。」

 しかし、若干、権利期間の実質的な延長につながる改正をするというのは画期的なことではないかな???

青本880頁 「先願として意匠権を得た意匠の一部と同一又は類似の意匠について後日に改めて権利化することは、実質的な権利の延長を招くおそれがあり、不適当であることから、後願の出願人が先願の出願人と同人であるか他人であるかを問わず、新設する規定を一律に適用することとしたものである。」

 なので、やっぱり、今回の改正は、平成10年改正の趣旨を真っ向からなぎ倒すような改正なんだよね。 最近は、部分改正しかしてないから、こういう、前回改正の趣旨をぶった切るような改正が多い。 まさに、受験生泣かせである。

≪短答ポイント1≫

 先願として組物の意匠登録出願がある場合に、その構成物品の意匠登録出願を後にした場合には、その構成物品の意匠登録を受けることができる場合はない。

 否

≪短答ポイント1’≫

 先願の意匠公報に掲載された部分意匠であっても、意匠登録を受けることができる場合がある。

 是

3条の2ただし書 ただし、当該意匠登録出願の出願人と先の意匠登録出願の出願人とが同一の者であって、20条3項の規定により先の意匠登録出願が掲載された意匠公報(同条4項の規定により同条3項4号に掲げる事項が掲載されたものを除く。)の発行の日前に当該意匠登録出願があつたときは、この限りでない。

 どうでもいいことだけど、まだ大きい「つ」なのね。 昭和35年法の名残がまだあるということですわな。

 3条の2の適用対象となる先の意匠登録出願は、意匠権が発生して意匠公報に掲載された場合と、同日出願協議不成立により拒絶査定又は拒絶審決が確定した場合に意匠公報に掲載された場合である。 当然のことながら、後者の場合には、後に同一内容の出願をした場合には、同一出願人であったとしても3条の2の適用はあるという点を忘れてはいけない(ただし書の適用はない。)。

 秘密意匠の場合には、意匠公報に2回掲載されるので、どちらが3条の2の適用除外の終期かをただし書中のかっこ書で規定している。 これは、関連意匠の場合と同じなので、まぁ覚えやすいだろう。 秘密意匠の場合は、意匠の内容が隠された1回目の意匠公報の発行の日前に出願することが必要ということになる。

≪短答ポイント2≫

 意匠公報の発行前であれば、同一の出願人がその意匠の一部について意匠登録出願をすれば、常に意匠登録を受けることができる。

 否

 今年の規定は例外規定が多く設けられているので、こまごまとした条件設定を問題文に表さないといけないので問題を作るのが難しいかもしれやせんね。。。

 秘密意匠に絡めて先に、

「当該秘密期間に出願された後日出願は同一出願人による場合であっても、本条の規定により拒絶することとしている。」(20頁)

≪短答ポイント2’≫

 秘密意匠に関する意匠権については、その一部について同一出願人が意匠登録出願した場合であっても、常に、意匠登録を受けることができない。

 否

 書誌的事項の意匠公報の発行→意匠の内容等実体的事項の意匠公報の発行と秘密意匠の場合に意匠公報が2回発行されるが、その間の出願については、3条の2の適用除外は受けられませんよってことを20頁で説明している。

 

 3条の2の説明で、ちゃんと書いているなぁと思ったのは(その趣旨はいまいちだが。)、

「後願意匠と同一又は類似の意匠が、先願意匠の一部として既に開示されたものであるとしても、同一出願人による場合には、それによって新たな意匠の創作であることを否定しないとするものである。」(20頁)

 やっぱ、創作説なんじゃねぇのぉ~ って、話戻しすぎ・・・

 「後願意匠と同一又は類似の意匠」&「先願意匠の一部」って文言は、短答式試験で使われそうな文言ですなぁぁぁ。 

「本規定の趣旨は(って、ただし書の規定のことと思われるが・・・)、先願意匠の一部をなす後願の意匠権成立による権利の錯綜を避けることにもあることから、同一の者か否かの判断は、可能な限り権利成立に近い時点である査定時に行うこととする。」(20頁)

 査定又は審決時ではないということかな。 商標法では、3条の判断基準時って、査定又は審決時でなかったっけ??? ここは、受験生ではないので、スルーしとこう(そのうち分かるじゃろ)!!! とにもかくにも、特許法の29条の2では、後願の出願時が判断基準時となるが、そことは確実に違うということである。

特許法29条の2ただし書 ただし、当該特許出願の時にその出願人と当該他の特許出願又は実用新案登録出願人とが同一の者であるときは、この限りでない。

 とあって、後願の出願時において出願人同一であることが条文上明記されている。 因みに、発明者同一の判断基準時は本来的には出願時になると思うが、発明者については、補正ができるのでその場合の判断基準時は、なんというのでしょうかね。。。 実質、査定時ということかな。 っつうか、発明者が変わるっつうのが本来おかしいことなんじゃが・・・ まぁ、条文上も発明者同一の場合については、出願時であることを明記してないので補正でひっくり返すことができるっつうことになるわけですよ。 ここの説明としては、

青本91~92頁 一般的には、明細書の詳細な説明の欄に記載し、請求範囲には記載しなかったという発明については、出願人はその発明について特許を請求しない。 いいかえれば公衆に開放するという意思であるとみられるが、中には必ずしもそういう場合だけでなく、その出願び請求範囲に記載された発明の説明にどうしても必要なために詳細な説明の欄で特定の技術を記載し、その特定の技術については後日別に出願して特許権を得たいというものがある。 こういう場合には、後に本人が出願すれば特許が受けられるようにしないと困るのでその旨を規定した。

 とあって、出願人同一の判断時が後願の出願時であることが明らかとなる。

≪短答ポイント3≫

 先願と後願の出願人は、後願の出願時において同一でなければ、3条の2の適用により後願は意匠登録を受けることができない。

 否

 

 

本日のキーワード: 戯れ言が多くなった・・・

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2007年1月 6日 (土)

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説 第一部 意匠法の改正項目 第二章

 今年の改正本には、特に意匠法で改正趣旨が細かく記載されている感じを受ける。 まぁ、大改正であった平成10年の趣旨を超える形で改正がされていたりするので、より詳しく記載されているのかなという感じである。 ということで、短答式試験のために条文を確認し、口述試験のために、制度改正の趣旨を勉強する必要がありそうである。 

 そういえば、雄松堂出版から「意匠法コンメンタール」という本が出てますね。 中を見てないし、買う気もないのですが、試験における基本書となったりするのでしょうかね!? まぁ、昨今流行の勉強法をとる場合には、基本書といわれるものを買う必要は無く、予備校の出している書籍を読めば合格はできるので、基本書という概念自体古いかもしれませんね。 司法試験でも、吾妻とか内田とか読むんですかね!?!?

 

 話戻して、

第二章 意匠の定義の見直し(画面デザインの保護の拡充)(第13~17頁)

2条1項 この法律で「意匠」とは、物品(物品の部分を含む。8条を除き、以下同じ。)の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいう。

2項 前項において、物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合には、物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像であって、当該物品又はこれと一体として用いられる物品に表示されるものが含まれるものとする。

 改正本を読まずに、条文だけを眺めると、、、

 部分意匠とは、物品の部分の形状、模様若しくは色彩またはこれらの結合であって、視覚を通じて美感を生じさせるものをいう。 なので、2条2項において規定されているのは、部分意匠には、物品の操作の用に供される画像が含まれるということである。 いいたいことは、全体意匠としても保護されることは明示されていないということである。 ただ、部分意匠は、全体意匠の一部と読むことができるので(物品には、物品の部分が含まれるので)、まぁ、部分意匠には物品の操作の用に供される画像が含まれるのであるから、その部分意匠を含む全体意匠も保護されるっつうことになるわけですな。

 審査基準を読まないとわからないけど、以前の3要件は、どうなるんでしょうね???

「「物品の操作(当該物品がその機能を発揮できる状態にするために行われるものに限る。)の用に供される画像」が、「物品の部分の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合」に含まれるとは、当該画像が物品の一部分として保護されることをいい、通常の全体意匠の一部分として保護されることをいい、通常の全体意匠の一部を構成する要素、あるいは、部分意匠を構成する要素として保護することを可能とするものである。」(15頁)

 2条1項かっこ書って、部分意匠のことを規定していると理解していたんだが・・・ どうも間違っているのかな??? 上記のようだと、2条1項かっこ書は部分意匠のことだけをいっているのではなくて、部分であっても全体意匠の一部として保護され得るということをも規定しているということになる。 とはいえ、画面デザインが全体意匠としても部分意匠としても保護されるという点は明らかである。

≪短答ポイント1≫

 ゲーム機を使用してゲームを行っている状態はゲーム機の機能を発揮させている状態にあたるので、ゲームソフトによって表示される画像は意匠登録を受けることができる。

 否

 ということで、「機能を発揮できる状態」か「機能を発揮させている状態」かは重要である。 簡単にいえば、初期状態のみの画像が保護されるといえるのである。 という観点から、Windows(登録商標)の画像は意匠登録を受けることができないとなるわけである。 Windowsによる画像は、既に物品であるパソコンの機能を発揮させている状態での表示になるからである。 こうなってくると、Macの場合はどうなるんですかね??? まぁ、保護されないんだろうけど・・・

「「機能を発揮できる状態」とは、当該物品の機能を働かせることが可能となっている状態であり、実際に当該物品がその機能に従って働いている状態は保護対象に含まないことを意味する。」(16頁)

≪短答ポイント2≫

 画像を含む意匠は組物の意匠として保護されることはない。

 否

 結局、画面デザインであっても、部分意匠として出願しているのか、全体意匠として出願しているのかで、組物の意匠として保護されるのかを考えればよいだけである。 ただ、画面デザインを部分意匠でなく、全体意匠で出願した場合には、ある意味あまり意味のない出願となるよね。 だって、画面デザインが全体意匠において要部足りえるかというと・・・ その辺は、(補説)として記載されているところである。 弁理士としては、両方出願することを進めるのが一番いいのだろうな。 因みに、平成18年論文式試験では、部分意匠と全体意匠の利用関係を絡めた問題がでたけど、その辺の理解をする上でも、(補説)の部分が参考にちょっとはなるかな。

≪短答ポイント3≫

 画面デザインが汎用の表示機器に表示されている場合に、斯かる表示機器を製造販売する行為は、物品そのものの表示部に画面デザインが表示される意匠の意匠権の侵害となる。

 否

 って、ここって結構重要な点だと思うけど、問題文でうまく表すのは難しそうである。 口述で絵つきで問われる部分かな。 

「画面デザインが、物品そのものの表示部に表示されておらず、当該機器と接続されている汎用の表示機器等に表示されている場合については、当該表示機器を業として製造、使用、譲渡等する行為が侵害とされるのではなく、意匠権で保護された画面デザインをその部分とする物品の製造、使用、譲渡等が禁止されるものと考えられる。」(17頁)

 なので、画面デザインを部分意匠なり全体意匠として意匠権を有していたとしても、接続される汎用の表示機器等(画面デザインが表示される)の販売行為自体を意匠法では権利侵害とすることはできないということである。 この場合には、意匠法ではのみ品以外は間接侵害に該当しないので、汎用の表示機器に画面デザインが表示されるということのみでは間接侵害にも該当しないだろうしね。 まぁ、汎用品を売っている行為を意匠権の侵害とするほうがおかしいともいえるが。。。 因みに、汎用の表示機器等に画面デザインが表示される場合に、物品とのセットで販売した場合に、意匠が類似となるんですかいな??? 全体意匠だと間違いなく形態が非類似だよね。 部分意匠ではどうなるんですかね・・・ プリンターなんかで考えるといいのかな? プリンターの表示部に画面デザインが表示される場合で、物品がプリンターの意匠権がある場合に、その画面デザインをパソコンのモニターに出るようにして販売したような場合には、やっぱり、意匠は非類似かな。。。 ここの(補説)がどういったケースを意味しているかは、やっぱり絵付の審査基準が必要ですな。 DVDとかで、TV画面に出る画像が該当するのかな。 この場合にゃぁ、出願自体が、TV画面を含めた状態となるであろうから、まぁ、汎用品のTVを販売する行為が侵害っつうのはおかしいのは明らかじゃの。

 

 

本日のキーワード: 改正本を逐一読んだのは初めてですよ。

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2007年1月 5日 (金)

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説 第一部 意匠法の改正項目 第一章

第一章 意匠権の存続期間の延長(第9~12頁)

 実用新案権が10年に延びたのに続いて、意匠権も設定の登録の日から20年に延長。 試験的には、ほとんど寄与しない部分の改正なので、おそるるに足らずである。

 今年の一押しTRIPSとの比較。

 意匠では、

TRIPS 26条3項 保護期間は、少なくとも10年とする。

 特許では、

TRIPS 33条 保護期間は、出願日から計算して20年の期間が経過する前に終了してはならない。

 となっていて、国内法でもTRIPSでも、意匠では、存続期間が規定されていて、特許では、存続期間の終期が規定されている。 ん~、この違いはどこから来るのでしょうか・・・!?

 権利期間の改正は試験的には、どうってことないが、改正本の中には、特許と意匠の違いがさらっと記載されていたりして、勉強になる。

「発明は、あまりに長期間の独占権を与えることにより、技術開発を通じた技術の向上を阻害するおそれがあるのに対し、意匠は、審美的な観点から保護されるものであるため、存続期間を長くすることによる弊害は比較的小さいものと考えられる。」(10頁)

「意匠権は、・・・、権利を早期に手放すことを促進する政策的必要性は特許権に比較して強くないと考えられる。」(11頁)

 とはいいつつも、法目的として、特許法では、「発明の保護及び利用を図ることにより、・・・産業の発達に寄与する・・・」、意匠法では「意匠の保護及び利用を図ることにより、・・・産業の発達に寄与する・・・」なので、同じなんだけどね。 まぁ、利用の部分で軽重があるという理解でいいのだろう。

 確かに、特許料は、

1~3年が、2600円+200円X請求項数

4~6年が、8100円+600円X請求項数

7~9年が、24300円+1900円X請求項数

10~25年が、81200円+6400円X請求項数

となっているのに対し、

 意匠権の登録料は、

1~3年が、8500円

4~10年が、16900円

11~20年が、33800円

とそんなに高い上昇率を見せないね。 こうみてみると、知財って、ほんの少しの金額で強固な権利を得ることができ、莫大な富をもたらす可能性を秘めている点で凄い制度ですな。 何億円という稼ぎをするものが、高々数十万円でその権利が保障されるというのは、面白い制度ではある。 登録料と経常利益という観点で、誰か研究をやってくれないかな。。。 歴史的に見てみるとどうなんだろうか!?

 

 

本日のキーワード: こんなことを牛歩で書いている場合ではないのだが・・・

  

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2007年1月 4日 (木)

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説

平成18年 意匠法等の一部改正 産業財産権法の解説

特許庁総務部総務課制度改正審議室編 発明協会

 

 いわゆる改正本って、著作権が発生しているのね(びっくり!)。 当たり前か・・・ となると青本もなのよね。 そう考えてみると、著作権ってメンドクサイよなぁ(って、弁理士卵がいう台詞ではないか・・・)。

 

 

序章(第1~5頁)

 趣旨として、

「近年、アジア諸国をはじめとする途上国産業の技術、品質、価格面での競争力が高まっており、我が国産業も知的財産を活用した競争力の強化が重要な課題となっている。」

「・・・、競争力をつけつつある途上国産業による製品・サービスからの日本企業の更なる差別化・高付加価値化を可能とするものである。」

「・・・、模倣品の流通・拡散等を防止するための措置を強化することが強く求められている。」

 とある部分からわかることは、日本国の今後の進むべき道として、対外的に知的財産に基づいて権利行使をしていかなくては、国家の繁栄はないと考えているということであり、特許庁もそのための法制度を制定するということである。 権利行使すなわちエンフォースメントといえば、でてくるのはTRIPSである。 ということで、今後の短答式試験では、TRIPSの重要性が増してくることは間違いないであろう。 更には、エンフォースメントをおこなうためには、各国での権利の取得が必要なので、当然に、PCT&マドプロの重要性も増す。 しかも、世界特許とかいって、ある意味、パリ条約の大原則である属地主義の考えが蔑ろにされていることからも、短答式試験でのパリ条約の重要性は衰える。 ということで、TRIPS、PCT&マドプロの出題率が増えるのではないかな?というのが、昨今の知財の状況からみる弁理士試験かしらね。

 制度改正の骨子として、

「第四に、模倣品対策を強化するため、模倣品を輸出することや譲渡等の目的で所持することを産業財産権の侵害行為とするとともに、産業財産権の侵害等についての刑事罰を強化した。」

 模倣品対策を強化するため、模倣品を輸出することを侵害行為とするという部分だけ読むと、よくわからない。 模倣品を輸出するということは、国内で模倣品が生産されていることを意味するのではないかい?と思う。 しかし、模倣品は、アジア諸国で製造されているのである。 となると、???である。 また、「アジア諸国等から日本企業の製品のデザイン等を模倣した商品が流入するなど、」と記載されてもいるように、この場合も模倣品の輸入である(輸入は既に侵害行為となる。)。 だから、余計に???である。

 ここについては、タイムリーな記事があって、

 1月4日の読売新聞の配信記事で、「中国製の模倣「日本ブランド」中東へ、被害9兆円にも」というのがある。 その中で、「日本製を強調するため、中国からいったん神戸港など日本国内へ持ち込んだうえで輸出することもあるという。」と記載されている。 ここから、輸出であっても取り締まることの意味が分かるというものである。 しかも、ここにいう9兆円という額は、特許庁の試算だそうである。

 ということで、模倣品対策を強化するためとは、模倣品の流通を防止するためということであり、模倣品の輸入時に侵害行為として取り締まることができなくても、模倣品の輸出時に取り締まることができれば、二重のチェック機構が働くことになりGOODということで、本改正がされたのやもしれん!と納得することにした。

 

 

本日のキーワード: ちょっと改正本に浮気。

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2006年8月19日 (土)

平成18年度意匠法等改正説明会から徒然⑨(共通)

H18改正について、ようやくラストコメント

 

3点目 所持行為について

特許法101条 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。

(新設)3号 特許が物の発明についてされている場合において、その物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為。

(新設)6号 特許が物の生産する方法の発明についてされている場合において、その方法により生産した物を業としての譲渡等又は輸出のために所持する行為。

 これまで、所持は、100条の差止請求における「侵害のおそれ」の場合として、受験界では処理されていたと思う。

100条1項 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。

(吉藤特許法概説434頁)

 「単なる所持はもちろん、譲渡又は貸渡しの目的をもった所持であっても、特許法上の実施ではないことは条文上明らかである。 もっとも、所持は、実施のおそれのある場合が多い。たとえば、販売業者の侵害品の所持又は特許品を原料として使用する業者の侵害品の所持等は、実施のおそれが客観的に存在しているということができるので、差止請求の対象となり得る。」

 吉藤特許法概説にあるように、所持については、所持している段階では、特許権侵害を構成しないが(68条)、その後、所持品を販売等した場合には、特許発明の実施となる(2条3項)。 したがって、所持する行為は、(特許発明の実施に該当し、その場合特許権侵害を構成する)譲渡等のおそれが高いといえる行為であり、侵害のおそれがあるものと解される。 したがって、所持している者に対して、特許権者は差止請求をすることができるものと解する(100条)。 論文試験としてはこれまで、所持しているという点のみを論証の根拠として、侵害のおそれに該当するので、特許発明の実施には該当しなくても「おそれ」の点で差止請求可!とできてたが。。。 これって、ある意味、従属説である。 そりゃ、所持は特許権侵害構成しないので、特許権侵害がその後必要といえるものな。 しかし、今後は、間接侵害として記載することになる。 で、ここで困ったことになる。 間接侵害の場合、独立説ならなんら悩まないが、従属説だと、所持って微妙である。 侵害品を他人から譲り受けて所持しているだけだと、その後、直接侵害が構成されないと、従属説の場合間接侵害とすることができない。 しかし、所持の後に特許権侵害がなければならないとすると、わざわざこの規定を設けた意味がなくなる。 直接侵害を必要とするということは、すなわち所持している者がその後、特許発明の実施に該当する行為を行うということになるが、そうであれば、そっちで差止等すればよいのであって、所持をわざわざ間接侵害として取り締まる必要もない。 となると、所持については従属説ではなく、独立説といえそうである。 

 この点に絡んで、特許庁の説明者は、フロアーからの質問に対して、

・以前譲渡していること

・複数の侵害品を所持していること

により、間接侵害を立証できると答えていた。

 また、説明会テキストにも「譲渡等によって侵害物品が拡散する前段階である所持の段階における取締りを可能とすることで、意匠権等の権利の侵害の防止の実効性が確保される。」とあり、明らかに3号及び6号については独立説といえそうである。

 まぁ、3号、6号に該当する場合には、既に侵害品は製造されているわけで、未だ直接侵害が構成されていない1号、2号、4号及び5号と比較すれば、状況が違うといえるのかもしれないが、ちょいと、今後の受験界の動向が気になるところである。

 あとは、所持してればこれまでも、侵害のおそれがあるとして差止請求可能としていたのを、解するではなく、条文としてきちんと規定したかったというところから、法改正はきているのだろうし、また、所持していてその後、販売しないなんてことは通常ありえないことだから、そこは深く考えずに所持=間接侵害でいいんじゃないかとも思える。 1台だけ所持している場合や、所持してても絶対に販売等により譲渡しないと客観的に把握される場合だけ(って多分、単に所持しているだけなんて状況はないだろう。)、この規定から修正されるということだろう。 3号、6号は、独立説でGoだな。

 

 

本日のキーワード: 改正事項は、その年の論文試験に出るという噂はマジか。

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2006年8月18日 (金)

平成18年度意匠法等改正説明会から徒然⑧(共通)

 共通改正として、商標法では既に、譲渡、輸出のための所持がいわゆる間接侵害として規定されているので、当該部分の商標法での改正はないけれど。。。 共通改正は、3点。

 

特許法で代表すると、まず1点目、輸出について。

2条1項1号 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあっては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)、輸出、若しくは輸入又は譲渡等の申し出(譲渡等のための展示を含む。以下同じ。)をする行為。

 

(吉藤特許法概説434頁) 

 実施行為として、法2条3項各号以外に、物の輸出、所持、修理・改造の場合に実施に該当するのか?というのがいわゆる吉藤論点とされていたわけだが、今回の改正で2点クリアーになったわけである。 そして、インクカートリッジ事件が最高裁にあがっているので、修理・改造についてもリサイクルという観点から1つの結論が出ると思われる。 

吉藤論点についてその①

 「輸出は譲渡の概念に含まれる場合が大部分であるので、輸出は譲渡の問題として把握すれば足りる。」とされていた。 今回の改正で、物の発明についての実施とは、その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申し出をする行為が該当する。 すなわち、①生産、②使用、③譲渡等。④輸出、⑤輸入、⑥譲渡等の申出が実施行為なので、条文上、輸出は譲渡等に含まれない概念であることが明らかになったわけである。 とすると、これまでは、輸出の申出は、譲渡等の申出として読めていたかもしれないが、申出としては譲渡等の申出のみが実施に該当するので、輸出の申出は該当しないこととなる。 しかしなんで、この条文は、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡等の申出を含む。)、輸出又は輸入、あるいは、その物の生産、使用、譲渡等、輸出、輸入又は譲渡等の申出と規定せずに、わざわざ、その物の生産、使用、譲渡等、輸出若しくは輸入又は譲渡等の申出と規定しているのだろうか??? この場合の本来の条文の姿は、①-(i)生産、①-(ii)使用、①-(iii)譲渡等、①-(iv)輸出、①-(v)輸入、②譲渡等の申出という並びということになる。 まぁ、概念的な問題として①-(i)~(v)と②とを並列に並べたいという意図があったのだろうけど、なんだか微妙な感じ。

 

吉藤論点についてその② 

 「輸出が行われる場合には、通常、輸出用の物は国内で生産又は輸入されているので、生産又は輸入の権原のない者による輸出は、生産又は輸入の点で権利侵害となる・・・」とされていた。 すなわち、輸出があればその前には必ず、生産又は譲渡等に該当する実施がなされているはずなので、そこで差止めればよく、輸出自体は侵害に該当しないとしていたわけで。。。 って、吉藤では生産又は輸入がされていることを前提としているのね。 レジュメとかでは、生産又は譲渡がされていることが前提ってことになっとるよ!!

 しかもその1つの理由付けとして、特許権の効力は属地主義のもと、日本国内においてなされる行為に対してのみ有効なので、外国においての行為には及ばない以上、輸出は外国に対しての行為であるから特許権の効力は及ばないというのが、論文的な記載というか我輩の理解だったのだが・・・ ここの説明ってどうかわるのだ? だから、形式上は間接侵害を構成する物を輸出しても、それによる直接侵害行為が外国で行われ、特許権の効力が及ばない以上、間接侵害も構成せずという従属説で説明するのが、まぁ無難なとこだったと思うのだが。。。 輸出事体が侵害となると、実施行為独立の原則から考えて、Aさんが特許発明に係る物を生産(侵害)→AさんがBさんに譲渡(侵害)→BさんがCさんに譲渡(侵害)→Cさんが輸出(非侵害)だったのが、Cさんが輸出する行為も侵害となる。

 これからは、間接侵害品の輸出の場合にはどうなってくるのだろうか? 101条1号、2号の改正はないので、今までと同じで、独立説でも従属説に関わらず非侵害ということになる。 

101条1号 特許が物の発明についてされている場合においては、業として、その物の生産にのみ用いられる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為

 本改正で輸出は、譲渡等に含まれない概念となったので、最早、間接侵害品の輸出は自由にできるのかいな??? まぁ、ここで、輸出している場合には、生産、譲渡等が成立しているはずなので、そこで差止めれば吉ということになるのだろう。 しっかし、こういった間接侵害品を他人から譲り受けて輸出のみしているときは、本来独立説であったら、輸出は、譲渡等に包含される概念であるので、間接侵害を構成するといなければならんかったのね。 今まで、この類の問題では、大体、乙が間接侵害品を生産、輸出している場合にどうですか?という問題だったから、あまり気にしてなかったが、

 甲:特許権者、乙:のみ品を生産、丙:乙から譲渡されたのみ品を輸出というケースでは、乙の生産する行為及び譲渡する行為は、形式的に間接侵害を構成。 丙の行為は、輸出は譲渡等に包含される概念であるので、形式的に間接侵害を構成。 とする必要がある。 で、、間接侵害は、直接侵害に該当しないが、その蓋然性の高いものを侵害と擬制するものであるので、間接侵害品を輸出している場合には直接侵害の発生が考えられない以上間接侵害構成せずとするのがまぁ、合格答案だったでしょう。 今日までのオレならきっと、丙の輸出する行為は、その物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出に該当しないので(101条1号)、間接侵害を構成しない。としていたな・・・ あぶなかった・・・・

 しかし、完成品を輸出したら侵害になるのに、組み立てセットを専ら輸出しても侵害にならないのは、微妙じゃね??? ここは、のみ品の生産で読む??? でも直接侵害は構成しとらんが・・・ 必殺技の比較考量してということで、ここは、従属説でなく、独立説の採用かしらん。。。

↑ 何だか書いててあやふやだなぁ。 相も変わらず侵害系はあ~でもないこ~でもない考えるのも苦手だ。。。 なんだか、理解をできてないことが如実になってくるし、自分の中で結論を出せん!!!

 

2点目、刑事罰について

  刑事罰は、よくわからんくなったので、短答前にマトメル必要あり。 簡単にいえば、特許権等権利侵害の場合には、罰金刑と懲役刑の併科をすることができるようになったのと、直接侵害と間接侵害とで刑罰に軽重がついたこと。 これなら、やるなら間接侵害だよね。 罪の重さに軽重がつくということは、どことなく従属説のにおいが。。。

 まぁ、刑事罰は論文にはでんだろうし、THE 短答マターといえるので、とにかく覚えるしかない!!!

 

 

本日のキーワード: 間接侵害に輸出はいれられないよね。 独立説の採用!ってなっちまう。

 

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