2006年10月22日 (日)

著作権法①引用について

 前から、基本書の内容をブログ上で引用して公開していいものなのか?という点が気になっていたので、自分なりに考えてみる。

 

1条 この法律は、著作物並びに実演、レコード、放送及び有線放送に関し著作者の権利及びこれに隣接する権利を定め、これらの文化的所産の公正な利用に留意しつつ、著作者等の権利の保護を図り、もって文化の発展に寄与することを目的とする。

 ここだけ読むと、著作権法というのは著作物そのものを守るのではなく、斯かる著作物を創作した者(著作者)を保護する法規であることがわかる。 この点では、商標法と似ている部分がある(なるほどねぇ)。

2条1項 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

1号 著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。

 なので、いわゆる基本書の類は、学術の範囲に属するので、著作物であるといえる。

10条1項 この法律で著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。

1号 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物

 基本書の類は、言語の著作物ということでいいのだろう。

10条2項 事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道は、前項1号に掲げる著作物に該当しない。

 とある。 Yahoo!ニュースとかは、雑報及び時事の報道と片付けて、著作物でないので、自由に引用していいのだろうか? 報道等でも境界領域にあるというものはないのかな?

13条 次の各号のいずれかに該当する著作物は、この章の規定による権利の目的となることができない。

1号 憲法その他の法令

3号 裁判所の判決、決定、命令及び審判並びに行政庁の裁決及び決定で裁判に順ずる手続により行われるもの

 なので、特許法などの法律は著作権の目的に該当せず引用可能である。 また、判決、審決も著作物ではない。 ただ、判例や審決の紹介論文は、著作物といえよう。 青本は、特許庁編 社団法人である発明協会発行なので、まだこの時点では、著作物だな。 因みに、特許公報は、言語の著作物なのか??? 青本って、著作権は特許庁に帰属しているのかしら?

6号 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物

 とあるが、特許公報の明細書と図面で取扱がことなるということなのかな???

 引用の場合は、著作権法で規定する権利のうち、著作者人格権の同一性保持権に最も違反している気がする。

20条1項 著作者は、その著作物及びその題号の同一性を保持する権利を有し、その意に反してこれらの変更、切除その他の改変を受けないものとする。

 なんていったて、引用においては、全文掲載なんてできず、勝手に一部を抜き出すので、引用とは著作物の同一性を破壊する行為といえようからね。

 しかし、

32条1項 公表された著作物は、引用して利用することができる。 この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行われるものでなければならない。

 ここからすると、私の行っている引用は法的に許容されるものといえそうである。 「報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内」とある。 報道、批評を目的としているわけではないが、広義の観点で研究という位置付けでいいのかな?と思う。 仮に、ここにいう研究に当たらないとしても、引用は、法解釈を自分なりに行う上でやっていることであるし、ブログ上での公開も営利を目的とするわけでなく、正当な範囲内であるとはいえるのではないかと考える(ここの理由付けが弱いというかきっちり記載できていないのは自分でも重々承知。 論文式試験でこの書き方では、○はつかないな。。。)。

48条1項 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。

1号 32条、・・・の規定により著作物を複製する場合

2号 ・・・により著作物を利用する場合

3号 32条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合・・・において、その出所を明示する慣行があるとき。

2項 前項の出所の明示に当たっては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。

 とあり、引用は3号の行為に該当しそうである。 そして、2項の規定から、知財関連の基本書は著作者名が明らかになる場合がほとんどであろうから、除かれる場合に該当するものといえそうである。 また、知財関連の基本書については、引用される際、略称で示されていることが多いと思うので、それらに倣って引用している点で、十分かとは思うが、これまでに略称により表示しているものが若干あるので、ここに定義しておく(この定義は、本ブログを通して有効である。)。

 青本: 工業所有権法逐条解説 第16版 特許庁編 発明協会

 吉藤: 特許法概説 第13版 吉藤幸朔 有斐閣

 中山特許法上: 工業所有権法上 第2版増補版 中山信弘 弘文堂

 高林特許法: 標準特許法 第2版 高林龍 有斐閣

とりあえず、これで大丈夫かな。 その他の基本書は適宜、略称で記載する際には定義しようと思う。

 

 

本日のキーワード: 勉強を再開します。

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