「AMARIプラン2007」という「イノベーション促進のための特許審査改革加速プラン2007」が、随分前ですが報告されています。 ようやく読んでみました。 私は、てっきり、甘利経済産業大臣にちなんで、AMARIプランというもんだと思ってました。 一応、この報告書だと2007と銘打たれているように、今後大臣が変わってもAMARIプランというようです。 しかしまぁ、お役人さんも洒落が分かりますね! この辺りは、そこら辺の民間企業より感性が素晴らしいです。
なお、AMARIプランというのは、英語名称「Advanced Measures for Accelerating Reform toward Innovation Plan in Patent Examination」の略称だそうです。
以下、本報告書を眺めてみます。
「経済産業省では、・・・、安倍内閣の基本方針を踏まえ、新たな特許行政の基本方針である「イノベーション促進のための特許審査改革加速プラン」をとりまとめた。」
「特許庁では、従来、「知的財産推進計画」に基づき、「特許審査迅速化の中・長期目標を達成するための実施計画」を策定・公表してきているが、07年度については、プラン2007をもってこれに替えることとし、」
とある。 小泉さんの時の施策の名称って、ここを見ても分かるけど、万人に分かりやすく、単純明快に作られている。 特許審査迅速化だと何がしたいのか分かるけど、特許審査改革では何を改革するのか分からない。 ここだけでなく、安倍さんになってからは、どんな施策でも、小難しいスローガン化している気がする。 なお、小泉さんの時代は、企業における行動指針のようなものとして特許庁が公表してきたものを、安倍さんになってからは経産省の主導でプランを作るようになるということになるかな。 本気の表れなのか、経産省主導でやらなきゃいかんほど差し迫っているのか、独立採算の特別会計が終焉を迎えるであろうことを予期させるものかは知らないが、今後の知的財産に関する施策は、経産省主導でということである。 今までは、小泉さん肝いりで、荒井元長官が内閣の直轄プロジェクトととして動かしてきていたのを、今後は経産省による行政主導になるということかもしれん・・・ その意味では、今後しばらくの政府の動きに注意が必要そうです。 経産省を巻き込んで、行政の負担軽減のためだけに審査待ちを減らすという大作戦に出るのかもしれませんね。。。 そりゃ、特許庁に圧力かけられるより、経産省から圧力かかるほうが、企業は言うこと聞きますよね・・・
「特許庁における一次審査件数は、05年度実績で前年度比3.7%増の24.5万件」
「06年度の目標は約29万件(前年度比+18.4%)」
「07年度には、31万件(前年度比+6.9%)を目標とする。」
って、特許庁の審査官の数がどうなってるのか分からないから、一概には言えないけど、特許庁の審査官が優秀で、今まで100頑張っていたのを120やっているのか、今までが単なる怠慢で75くらいの力でやっていたのをようやく100やるようになったのか(お役人はやれと言わなければ動かないということなのか)、審査の質を落として量をあげているのかのどれかですね。 ちょっと普通の仕事量の増え方ではありません・・・ 任期付審査官が増えた分ですかね。。。
しかも、自ら、
「技術の複雑化・高度化や一出願当たりの発明(請求項)の数の増加に伴う審査負担の増大、特許協力条約に基づき一定期間内に作成すべき国際調査報告書の件数の急増など、特許庁における審査を巡る環境が厳しくなっている・・・」
って書いてるのに、審査件数だけは、増大って・・・
ってか、自ら審査負担って言ってはいかんのじゃないの? 行政はサービス業の1つという観点を忘れている発言だよね。 仮に、不二家とかが、安全に作るのは負担ですなんて言ったら、倒産だろうに・・・
「04年度以降、審査請求件数は一次審査件数を上回っており、・・・。 06年度には前年度比8.6%増の約86万件となり、」
って、凄いですね。 1年30万件やったとしても、既に3年分の仕事がたまっています。 それだけ貯めたのも凄いですが、今は、後の方にも書いてある企業コンタクト等を増やして、仕事量を減らしてくれぇ~と産業界に泣きついている始末。 産業界としても特許権が発生しないのは困りもんですが、それにしても仕事を減らしてくれぇっていうのは、いかがなもんなんでしょうか・・・ 本来なら開店時間なのにスープ切れで店を閉めるラーメン屋みたいで、少し驕りを感じざるを得ません。 どれだけ仕事が溜まってても何とかするっていうのが、筋ではないんですかね。。。
そもそも、
「世界最高水準の特許審査の実現(2013年:審査順番待ち期間を11ヶ月に短縮)」
という目標を立てたところに、こういった状況が生まれているわけよね。 この11ヶ月という数字はどうやって算出したのかしらねぇ。。。 知財の世界に携わろうと思っている私ですから、絵に描いた餅で終わらないことを願っています。
「05年度の審査に係る一請求項当たりの直接コストは2.7万円」
「一出願当たりの発明(請求項)の数の増加(05年度の実績値は、5年前と比較して17.3%増の9.5項となっている」
とのことなので、一出願当たりの直接コストは、2.7万円X9.5項=25.65万円となる。
別表(195条関係)
六 出願審査の請求をする者 一件につき16万8千600円に一請求項につき4千円を加えた額
なので、16万8600円+4000円X9.5項=206600円となって、審査請求料だけなら出願人に優しい制度と言えるかも。 しかも、
一 特許出願(次号に掲げるものを除く。)をする者 1件につき1万6千円
と出願手数料を入れても222600円で、まだまだ特許庁は赤字です。
弁理士試験的には困ったちゃんなことも書かれています。
「日米欧三極特許庁会合において、出願明細書様式の統一について合意を得た。 ・・・ 08年度にPCT規則及び国内規則の改正など必要な準備を行い、09年4月からの運用開始を目指す。」
って、WIPOにおいて、実体特許法条約の議論が南北問題のおかげで進行しないから、三極で勝手に話し合って動いちゃいましょう!みたいのを聞いたことがあるけど、当に同じようなことかしら?!
「手続の簡素化及び出願人の手続上のミスの救済等を認めることにより、特許制度をよりユーザーフレンドリーなものにする「特許法条約」への早期加盟に向け、必要な法令、・・・の整備に関し」
「「実体特許法条約」の骨子案をベースに、・・・。 ・・・条約草案について議論を行い、07年中の合意を目指す。」
ということで、実体特許法条約締結へ向けた一里塚となる出願形式の統一は、行われるようである。 ここは、きっと特許法施行規則レベルの変更といえるだろう。 実務的には重要だろうが、試験的にはまぁたいしたことないじゃろう。 実体特許法条約は、三極で合意してもWIPOの問題もあるからまだまだだろうけど、特許法条約に関しては批准、加盟となると特許法の改正がありますね。 商標法にいう補完制度のようなものが入るであろうことから、出願日の認定の問題が出るでしょうね。 とすれば、その辺はきっと条文で規定されるでしょうね(=法改正となりますね)。
「最終的には、「一出願、一調査、一審査、一特許」が可能となる「世界特許」の実現を目指す。」
とあるけど、パリ条約の原則である属地主義の考え方はどうやって整合性をとるんでしょうか? 属地主義では、権利の発生から各国によるはずですよね・・・
裁判体系に関しては、民法とかの成立が国ごとに全く異なるので世界統一はできないと言われているかと思う。 そんな中、日本の侵害事件では、特許権の有効・無効までもが争われていて、つまり、特許法も今の日本の実務の中では、裁判所の影響をもの凄く受けているわけで、進歩性なんて観点では裁判所までも含めた国際調和が必要になるわけで、どうするんですかね? しかも、TSMテストをしている米国と阻害要因の日本とがどうやって進歩性の判断を歩み寄るんでしょうか? 世界特許が生まれる際には、当然ながら弁理士も世界弁理士みたいになっていくでしょうから、実体特許法条約に関しては非常に気になります。 それとも、特許権発生までしか書かれていないように、特許権発生後は、特許権のの有効・無効を含めて、これまで通り属地主義で行くということになるのでしょうか? しかも、特許権ってその国ごとの経済政策と密接にリンクしているでしょうに、どうするんですかね? 記載方法だって、米国と日本ではまったく違ってて、前例が大好きな役人の一員である日本の審査官が従前と違う形になることに慣れてくれるんですかね??? 審査官にしたって、日本の審査官は、民間経験のないお役人さまですし、欧州や米国は、民間上がりのPh.Dとかだったりするわけですよね。 この差もどう埋めるんでしょうか?
加えて、
「「模倣品・海賊版拡散防止条約」(仮称)の早期実現を目指す。」
とあるので、模倣品・海賊版に特に関連する商標法、著作権法及び意匠法では条約締結に向けて国内法の整備がなされるでしょうね。
ということで、大改正があったばっかりですが、今後は、条約との絡みで種々法改正がありそうです。
ここからは、特許庁の下世話な手伝いともいえる話になりますが・・・
「権利取得の各段階における管理手法、知財管理体制の在り方等に関し、検討を行う。 ・・・、その検討をベースとし、・・・、「戦略的発明管理ガイドライン(事例集)」(仮称)を策定・公表する」
とあって、これは面白そうです。
「特許制度利用上位企業について、海外出願率、特許査定率等の情報を提供する。 また、企業の知財戦略策定に資するよう、・・・、各企業の特許出願件数や審査実績の経年情報等のデータを取得できる「特許戦略ポータルサイト」(仮称)の試行を開始する。」
って、特許公報が開示されることにより中韓に情報が漏れていることを気にしろといいつつ、各社の知財戦略にも関わってくるようなものを開示するという。 いやぁ、ここは、企業からすれば余計なお世話なんじゃないでしょうか? まぁ、上にあるようなことは、お金を払ってどっかに頼めば、調べてもらえることなんでしょうけど・・・ 特許庁HP上でそんなポータルをたちあげるということは、タダでその情報を入れられるんですから、いいっすよね。
「海外への出願比率3割の実現を目指す。」
05年は、22%だそうです。
「49.1%となっている我が国の国内出願の特許査定率について、全体で、海外にも出願する国内出願や欧米における出願並みの数値(05年:55~60%)の実現を目指す。」
ってあるんですが・・・ ここはいつも疑問に思っていて、特に、日本と欧米での特許査定率を比べますが、そもそも日本と米国の進歩性の考え方は、方やinventive stepがないといけないのに、方やnonobviousnessですよ。 全然違うし、しかも、後出しの実験成績証明書とかの認容ぷりとかも異なるから、日米欧に出願されている出願同士でまず、差定率の差を算出してもらって、さらに各国での特許査定率を比べるというのが大事なんじゃないですかね。 統計数字は統計の取り方、解釈段階でいくらでも数字合わせできますからね・・・
「知財戦略、事業戦略及び研究開発戦略を三位一体で推進する観点から、知財戦略に一元的に責任を有する者CPO(Cheif Patent Officer)、CIPO(Chief Intellectual Property Officer)の設置など、企業内における知財体制整備を○○する。」
ここでもCIPOというワードが出ています。 いずれ、CIPOについて調べてみようと思っています。
なお、○○部分には、「慫慂」と記載されています。 ’しょうよう’と読むようで、suggestionの意味みたいです。
「07年度には、・・・全文テキスト検索機能を追加する・・・、特許電子図書館(IPDL)の機能強化を行う。」
って、これは、すばらしいですね! IPDLでサーチをすると原則、請求の範囲サーチなのでノイズが少なくてよかったのですが、たまには全文検索もできたらなぁって思ってたのもあって、グッジョブ!です。 今まで、IPDLが全文検索できるようにしてなかったのは、検索サービス会社の民業圧迫になるからとかいわれてましたけど、解消したんでしょうか???
本日のキーワード: IPCCは財団法人なんですね
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